···········矛盾が怖いよぉぉぉぉぉ!!
難産です。
男子禁制というわけではないが、女性だけで構成されたとある派閥の本拠地。今日も今日もとて報告会が開催された。
内容は
無視されがちな軽犯罪とは違い、闇派閥による犯行はどれも重罪であり無差別殺人がメインときた。さらに厄介なのは徒党を組んで
特に彼女達──【アストレア・ファミリア】は治安維持を生業としているので、闇派閥との激突は免れない。本日の報告会だって戦闘帰りに行われたものだった。
報告会の目的は情報共有。
それを取り仕切るのは、真っ赤な髪をポニーテールに纏めた女性──アリーゼ・ローヴェル、二つ名は【
「で、どうだった?」
「
「スピー、スピー」
「ああ、数が多すぎる。今日だけで五ヶ所だぞ、五ヶ所。しかもだ。あちこちで暴れ回るせいで被害は増える一方だ」
それでも死者が出なかったのは本当に幸運だった、と語る。
だがしかし、闇派閥の襲撃がこうも続くと明日以降には再び死者が出る。誰も何も言わずとも各々が察していた。
そんな深刻な空気でも、
「でも、私達は間に合ったわ!怪我人は出しちゃったけど、それでも最悪な結果にはならなかった。これはすっごくすごいことよ!」
「ぐー、すー」
「アリーゼの言う通りね。襲撃が激化する一方で貴女達は正義を貫いた。胸を張って誇っていいわよ」
アリーゼが重い空気を変え、主神であるアストレアが慈愛に満ちた笑みを浮かべて続ける。
全員の表情が和らいだ。
「それよりも団長様?」
「さっきからずっと気になってたんだけどよ···」
「? どうしたの輝夜、ライラ?」
ある一点に、二人はチラリと視線を移す。
事情を知る者以外の全員が気になっていたのだが、触れていいのかどうか迷っていた。輝夜もライラも例外ではなかったのだが、しびれを切らして切り出した。
ことの顛末を知っているアリーゼの顔はドヤ顔に変わる。うーん、ムカつく。
「「ソファーでぐーすか眠ってるコイツ/この男は誰だ」」
「(。-ω-)zzz」
「あ、私がここに運びました」
「「「「「リオンが!?」」」」」
「ヽ(; ゚д゚)ノ ビクッ!?」
「あ、起きた」
ーーーーーーーーーーーー
おっすおっす、アラン・スミシーだお!
知らぬ間に恩恵も家族も失くしただけでなく、あの闇派閥が復活を果たしていた!···が、実はそうでもないようだ。あくまで予想の範疇だけど。
まあそれは置いといて、襲い掛かる闇派閥の凶刃によって討たれたはずの俺は現在、
「さて、要望通り個室を用意したわ。部屋の作りで外には聴かれないようになってるから安心してね」
「ありがとうございます」
アストレア様と二人っきりになっていた。別にイヤらしい展開など起きない。起きたりしたら愚息と即グッパイで死ぬ。
命の恩人とはいえ、あまり大勢の人達に話したくない。それでも話さないといけないので、彼女達の主神であり善神のアストレア様ならと判断してお願いした。
『ダメですアストレア様!(得たいの知れない)男と二人きりになるなど!』
『大丈夫よ。悪い子じゃないから』
『アストレア様···』
個室に二人だけは女神様は大丈夫と言っても、眷属は違う。当然反対されたが、装備を置いておくこと、鍵を開けておくことをせめてもの条件に二人になることを許した。
まあ、
丸腰でふらついていたのかコイツ、と警戒心が無いマヌケを見るような視線が俺をぶっ刺した。
個室に入って俺は喋る。
「それで今、
「ま、待ちなさい、もういいわ。貴方の潔白は証明されたから」
受け入れられる許容量を超えたのか、あまりの情報量にアストレア様は
ちなみに闇派閥じゃないことは初っ端に言った。
「······信じられないことばかりね。冒険者になって1ヶ月の子がランクアップして、たった五人で百人いる派閥に勝利して、初めての遠征で深層に行くなんて···。貴方も貴方で負けず劣らずの速さでランクアップして、たった一人で階層主に勝っちゃうなんて······。未来は魔境ね」
頭を抱えて独り言を呟く女神に、恐る恐る尋ねる。
「······えと、俺はこれからどうすれば···」
「え?ああ、貴方のことは私が責任を持って保護するわ。この家に居るのもいい、都市外に逃げてもいい、何をするにも貴方の自由よ」
悪に荷担することはやめてね、と付け加えた。
···この女神は、俺を守ることを前提で選択肢をくれる。身の潔白を証明しただけでこうもしてくれるのか。もしくは、俺──アラン・スミシーがもてる情報をほとんど話したからか。
何にせよ、この女神は善性であることを再確認した。
「······一緒に、戦うって選択肢は、ありますか?」
「······本気?」
アストレア様の口調が変わる。
冒険者となってモンスターと戦うのとは訳が違う。一緒になって戦うというのはつまり、極論を言えば人と人、悪と定めた者を殺すということだ。
俺とて人殺しに抵抗はあるし、正義の味方を気取るつもりはない。しかしここは俺がいた“ダンまち”世界の過去に当たるのなら。それならば、未来で不幸な目に遭う・死亡してしまうキャラを救えるのではないか。
殺し合いで精神が病むとしても、バタフライなんちゃらで
······あ、でも。
「? どうしたの?」
「あはは、
下界にはまだラクシュミーがいない。
過去に俺は戦闘経験を積んでいない。
彼女達と一緒に戦うのは土台無理な話しだった。おとなしく都市外にでも逃げるか。
ああくそっ、元のレベルだったらなぁ──!!
「それなら大丈夫よ、多分」
「うえっ?」
「確かにラクシュミーはまだ降りてない。でもね。
「······それって」
「
おお、なんかイケる気がしてきた···!
「本当にいいのね?」
「そうですね。でも助けたい人がいる。俺はそのためだけに戦います」
そう、とアストレア様は小さく答えた。
恩恵授かったら情報収集をしたい。
······ところで、俺が裏切るとは思わないのだろうか。潔白が証明されたとしても、こんな不気味な男を眷属と行動させるか?警戒心がないのかな?
「ふふふ、貴方なら大丈夫よ。あの子達の助けになってくれるから」
心読まれてた。分かりやすい性格なんかな、俺は。
「それじゃあ背中を見せて。」
アストレア様は頭を痛めることになる。
ーーーーーーーーーーーー
「──と、言うわけです」
リューは経緯を話した。
それと自分が触れられたのは恐らく父とか兄とか、そんな風に頼れる存在だと思ったからじゃないか、と予想した。
恋?恋したの?ねえねえ?とか囁いてくる仲間は放置した。
「武器が無い状態で突貫したの?」
「ええ。
「いや、あの男は剣士だろう。掌には剣ダコがあって拳は綺麗過ぎだった」
拳で戦う者なら皮が剥がれてゴツくなる。あの男にはそれらしき痕跡がなかった。
「···剣士が、剣を忘れるかな···?」
「ああ。修理に出していた、なら一応の説明になるが···。このご時世に武器は忘れないだろうな、普通は」
う~ん、と頭を悩ませる。
「闇派閥に立ち向かったのはいいものの、剣を持ってないことを忘れて殺されかけた···てこと?」
「とんだマヌケだなと、さきほどまで思っていたが···」
マヌケで片付けられたらどんなに楽か。冷静に考えて、あの男は重要な何かを隠している。それが何かが掴めないでいた。
戦闘衣を見ていたライラが呟いた。
「おいこの戦闘衣に使われている素材、もしかしてゴライアスじゃねぇか?」
「「「「「!?」」」」」
本当に、掴めない。
アラン「現世のような襲撃は無くなくなって、引き籠っていた闇派閥は全部壊滅しました」
アストレア「そう···よかった、本当によかった···」
ディオニュソスとフィルヴィスのこと、それとリューさん以外全滅したことは話しませんでした。リューさんに関しては誤魔化したけど多分バレた。