決死の中層探索から【ロキ・ファミリア】によって保護された俺達は、彼らの晩御飯?宴会?に参加していた。それが中盤に差し掛かり、金髪美女に問われた内容に耳を疑った。
「・・・は?」
この人は何を言った?
「はいはい!あたしも聞きたーい!」
「そうね。Lv.1の貴方がどうやってゴライアスを倒したのか聞きたいわね」
元気のいい少女と落ち着きのある女性も知りたがっているようだ。褐色肌で細い体と同じく褐色肌ではあるが一部ご立派な物をお持ちの女性。うむ。ヒリュテ姉妹ですね、分かります。
てことは、隣に居る金髪美女は【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインか。やっべ、ドキドキする。
「その話、僕も聞きたいね。差し支えなければ教えてくれないか?」
前方からトコトコ歩いて来たのは団長にして【勇者】フィン・ディムナ。隣のティオネが好意を寄せている男性。ちなみにアラフォー。
気になっているのは【勇者】だけでなく、ベル達含め周りの団員もこちらに視線が向いている。俺はその視線に気まずくなる。
正直、記憶が曖昧で全然覚えてない。土壇場で獲得した【全力投擲】を使用したのは覚えてるんだけど・・・それのせい?
今は誤魔化すか。
「・・・ちなみに、ゴライアスの魔石はどこにありますか?」
「それなら僕達が持っているよ。魔石とドロップアイテムは後で君に返すから安心してくれ」
よかった。置き去りにしてこの人達ならともかく、リヴィラの連中にでも盗られでもしたら腹が立ってた。何もしてない奴らが横取りするのはムカつくよなぁ?
それはそれとして。
「
「「「「「!?」」」」」
「・・・それはなぜ?」
俺の言葉に全員が目を見開いて驚愕の表情を浮かべているのは、階層主の魔石の価値を知っているからだろう。俺達のパーティで一番驚いているのは案の定、リリルカ。
「滞在費と治療費です。少ないかもしれませんが貰ってください」
「いいのかい?それらに関しては僕達は気にしないよ?」
「いいんです。ドロップアイテムがあるんですよね?俺はそれを貰えれば結構ですから」
ドロップアイテムはシトリーの土産にしよう。どうせまたゴライアスと戦うことになるし。
「・・・分かった。それならお言葉に甘えるとしよう」
「ありがとうございます」
【勇者】は俺の意見を聞き入れてくれた。やっぱりタダで施されるのは違うよね。
「いいのアラン?せっかく倒したのに」
「そうですよアラン様。階層主の魔石ならかなりの額で取引されます。全額と言わず何割か貰っておけば」
「いいんだよ。何も返さないのは俺が嫌だから」
それにどうやってゴライアスを倒したのか、もう聞かれるこたはあるまい!ハッハッハ!
「あの」
「?」
「ゴライアスを、どうやって倒したんですか?」
カハッ。
振り出しに戻った。
「・・・エリス」
「ん?」
「発見当時の俺と周りの状態は?」
「えーと、右腕が曲がり曲がってたあげく、血塗れのズタボロ状態。それに比べて他はビックリするくらい軽症だった。周りはゴライアスの魔石とドロップアイテムが落ちてたくらいかな。他のモンスターはいなかったよ」
右腕そんなグロいことになってたの?軽症だったのは魔法のお陰か。他のモンスターがいなかったのはゴライアスの攻撃に巻き込まれて潰されたから。誕生しなかったのは、ダンジョンが修復を優先したからだな。
俺は包帯とかで固定された右腕を優しく触る。なんだろ、傷が疼く。俺は中二になったのか?
それにしても・・・。
「(ひぃー視線が痛いよぉ~!)」
「(アランなら大丈夫だよ。何とか切り抜けて!)」
無責任な。
「俺がゴライアスをどうやって倒したかを、貴方達は知りたいんですよね?」
コクリ。
「倒した方法は・・・」
「倒した方法は・・・?」
ゴクリ。
溜めて溜めて溜めて溜めて────
「───超頑張った!!」
・・・
「「「「「「はぁ~~~~!?」」」」」」
「あれだけ溜めてそれかよ!」「無駄に緊張したじゃねぇか!?」「もっとこう、具体的な理由があると思ったわ!」「これだからイケメンは」「羨ましい!」「カッコいい!」
ワー、ワーと騒ぐ【ロキ・ファミリア】の面々。隣の【剣姫】はポカーンとしている。俺達の仲間は・・・呆れているのか?
「! アラン」
「んー?」
「ラクシュミー様が居るんだけど・・・」
獣人のエリスの聴覚が主神の気配を捉えたようだ。てか、お前の感覚優れすぎじゃね?
「じゃあ我らが主神をお迎えに行きましょうかね」
「え、軽くない?」
予定通り。俺は立ち上がりエリス案内のもと主神と思わしき神物がいる場所へ。
「アランにエリス、お主ら大丈夫じゃったか?」
「まあね」
「驚かないんじゃな。つまらん」
「まあね」
ラクシュミーだけでなく、ベルの主神ヘスティアと俺達に【
「ハッハッハ。ゴライアスが居なくて助かったね!」
「ええ、そうですね」
【ヘルメス・ファミリア】の主神ヘルメスと、【
ーーーーーーーーーー
「・・・君はいったい何者なんだい?」
「知るか。ダンジョンで言うイレギュラーじゃないか?」
俺は軽薄そうな羽根つき帽子の男の首に剣を向ける。彼の隣の居た【万能者】はどう動くか迷ってるようだ。
ーーーーーーーーーー
宴会が終了し、休んでいたテントに戻る。中層でのこと、右腕のこと、全てラクシュミーに話した。
「更新しよう」
「うん。俺もお願いしようと思ってた」
数秒何かを考えたラクシュミーは恩恵の更新を提案する。俺は服を脱ぎ捨て背中を見せた。
「・・・ランクアップ出来るんじゃが、どうする?」
「お願いするよ」
この後は冒険者によるリンチに遭うし、漆黒のゴライアスとも戦わなくちゃいけない。正直もったいないと思うが、アビリティの数値は気にしないさ。
「最終値は平均Bじゃ。その中でも飛び抜けているのが、敏捷と力じゃな」
「おお随分伸びたな!まあ、逃げ回って、硬い脚を削いで、全力で投擲したから当たり前と言えば当たり前かぁ・・・」
「発展アビリティは、【剣士】【耐異常】【狩人】【幸運】の四つじゃ」
「四つもか。それに・・・【幸運】?」
これってベルと同じだよな?何でこれが発現したんだろ。
「効果は知らぬ。アランは大概じゃな」
「・・・【幸運】にします」
無論、選ばない手はないか。
アラン・スミシー(16)Lv.2
力:I0
耐久:I0
器用:I0
敏捷:I0
魔力:I0
“発展アビリティ”
幸運I
“魔法”
“スキル”
【
【
【
冒険者になっておよそ三ヶ月か。成長補正もないのにこれは速すぎじゃね?
「さて。更新終わったから寝るぞ。右腕は速攻で癒すのじゃ」
「わ、分かったよ・・・」
俺は言われるがまま、魔法を発動させる。右腕がどんどん癒えていく感覚がある。待つこと数分。完全に治ったと判断して、固定されている包帯を剥ぎ取った。
「アラン、終わった?」
「終わったよ」
ひょっこり顔を出したのはエリス。更新が終わるのを外で待っていたらしい。ちなみにエリスの更新を先に終えていた。
「ちょうど良かった。エリスは左側に来るのじゃ」
「ひ、左側?」
「えへへ。お邪魔しまーす」
「私は右側じゃな」
「み、右側?」
待て待て。布団ならまだあるだろ!やめ、一緒のに入るな入るな。
「・・・女の子になっちゃう」
「「オセロか」」
余談だが、これを目撃したヘスティアが僕もベル君と!と意気込み突入したとか。
幸運にしたのはレア度が高いモノの排出率を上げるため。幸運しか思い付かなかったのは内緒だ。
ランクアップしたお陰で魔法の効果が高まり、回復速度などが上昇した。
一緒に寝た理由は、顔には出さないが自分の眷属が心配だったから。それが着いてきた理由でもある。
覗きとか、ヘルメスとの絡みとか、外伝とかは次回かな。