三つの選択肢   作:新人作家

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二話連続投稿です。


今日からお前はリーダーな!!

 

 追い掛けられ迷い込んだ先は、モンスターが跋扈する暗闇の森林。いくらモンスターが誕生しない階層だからといって長居はよろしくない。上や下の階層から来るモンスターもいるからだ。極力静かに行動した方がいいのだが・・・。

 

 「人として恥ずかしくないんですか!?もう最低です貴方は!!最低のヒューマンですっ!!」

 

 「ごごごごめんなさいぃぃっ!!」

 

 隣でベルと【千の妖精】レフィーヤ・ウィリディスがワイワイ騒いでいた。俺も罵倒されたけど、ベルの方がヘイトを集めていたのですぐ終わった。だから見張りをしつつ外伝の内容を思い出していた。

 

 外伝“ソード・オラトリア”の主人公はアイズ・ヴァレンシュタイン。そして主役ばりに出番がある【千の妖精】レフィーヤ・ウィリディス。敵は怪人と呼ばれる強力な存在に、オラリオ転覆を目論む闇派閥の残党達。そいつらが拠点としている人工迷宮に、闇落ちしたヤバい精霊。

 正直原作よりハードモードだと思う。【勇者】や【剣姫】もそうだが、目の前の【千の妖精】も大概化物だ。

 

 まあ、今はそんなことより・・・

 

 「()()()()

 

 「なんですか!今取り込み中ですのでお静かに!・・・り、リーダー!?」

 

 面白いなこいつ。

 

 「俺とベルより経験あってレベルが高く、何より【ロキ・ファミリア】のメンバーだ。優秀な貴方の指揮下に入り行動したいと思ってね」

 

 「わ、私は別に優秀では・・・でもそうですね!貴方達より経験もレベルも優れている私がリーダーに相応しいですね!いいでしょう!必ず送り届けますよ!」

 

 フフンと胸を張る【千の妖精】に、前世の自分に懐いていた幼い従姉妹を幻視する。元気にしてるかなぁあの子は。

 おや?感傷に浸っている間にさっそく指示を出すようだ。

 

 「まずは!」

 

 どんな指示だろうな。外伝ではどんな指示だったけ?

 

 「魔石灯を貸してください。暗くて進めません」

 

 「・・・はい」

 

 「・・・」

 

 間違ってないんだけど、少々残念な気持ちになった。

 

 ーーーーーーーーーー

 

 リーダーの指示で戦闘することなくスムーズに進んだ。後衛なのに行動力は探索者のそれに、俺もベルも感嘆する。

 リーダーは大樹に登り──

 

 「灯りを消してください!」

 

 上から何かを見つけたのか、魔石灯を持つベルに消灯するように指示を出した。

 発見したのは恐らく、

 

 「誰なんですか、あの人達は?」

 

 「・・・簡単に言ってしまうと、私達と敵対している組織です」

 

 この時期に敵対している組織は闇派閥。彼らについて知っていれば特徴的な服装から容易に特定できる。

 闇派閥の後にコッソリと忍びより、

 

 地面が割れた。

 

 「「うわぁぁぁぁ!!」」

 

 「意外と深い──!?」

  

 何とか着地できたが、足が焼けるように熱い。暗闇に目が慣れ始めて気付く。剣や防具、冒険者達の亡骸を。

 

 「まさかこれ溶解液ですか・・・!?」

 

 「リーダー。それだけじゃない」

 

 「・・・上」

 

 「え?」

 

 天井に根を張る極彩色のモンスターが、獲物である俺達を物色していた。

 

 「リーダー!新種について知っているのなら情報を!」

 

 「個体によって特徴は様々です!しかし、共通して魔力に反応します!」

 

 もちろん知っているが、新種について知らないはずのお前が知っているのかを、【ロキ・ファミリア】であるこの人に疑問を抱かせたくない。ならば全力で無知を装おう。

 

 「どうも!三人で互いを守りながら陽動しよう!」

 

 「っ!!なんで貴方が指示を「ベル!」無視ですか!」

 

 「は、はい!」

 

 「敵の武器はあの鞭だ!しかも単調で離れていれば避けられるし、視線の先に飛んでくる!」

 

 「(わ、私より先に気付いた!?)」

 

 「ほ、本当だ!これなら避けられる!」

 

 「リーダー!」

 

 「は、はい!」

 

 「詠唱を頼む!【癒光の羽衣】」

 

 俺とベルに回復魔法を付与して動き回る。回避に徹していればまず避けられるし、リーダーの詠唱に感付かれることはない。

 【全力投擲】を考えたが、彼女の砲撃で味方の援軍がやって来る。地上にも敵が居るのに、派手さが少ない俺のは駄目だ。

 俺の回復魔法は溶解液にも効果あったみたいで、皮膚が爛れたり治ったりを繰り返していた。ランクアップを果たした今の俺なら、精神力(マインド)に余裕が生まれる。

 

 「っ!!不味い!」

 

 リーダーの莫大な魔力に気付いた新種が俺達を無視して襲うが、

 

 「【ファイアボルト】!!」

 

 ベルの速攻魔法が刺さる。

 

 「作戦変更!リーダーの並行詠唱で敵を誘導!ベルは攻撃を逸らしてくれ!」

 

 「分かりました!アランさんは!?」

 

 「ぶっちゃけお前らの連携に合わせられん!適当に武器を投げてみる!」

 

 それにコクリと頷いた。いきなり囮にされたリーダーは、納得してない表情を浮かべるが、それが妥当だと分かっているようなので渋々納得した。

 ベルもリーダーも【剣姫】(憧憬)から指導を受けており、あの人ならどうするかを想定して動ける。()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ベルの拾い物である大戦斧が折れ、投擲する武器も無くなった。それでも、

 

 「「防ぎきった!」」

 

 「【アルクス・レイ】!!」

 

 天井に向かって一筋の閃光が走る。リーダー自慢の砲撃魔法をガードする新種だったが、

 

 「二十秒チャージ・・・【ファイアボルト】!!」

 

 【英雄願望】を発動させた(鈴の音を鳴らし終えた)ベルの魔法が組合わさり、魔石ごと消滅させた。

 

 脱出後に闇派閥と新種がこちらに襲撃するが、リューさんが現れ事なきを得た。平行詠唱を完璧なまでに組み合わせた戦闘はまさに圧巻の一言だった。

 

 「さて改めて治療をっ!? ば、バンダナあげる!」

 

 「え?」

 

 「同胞の人。まずは隠した方がいいのでは?」

 

 「~~~~!!」

 

 傷は治せても服までは直せない。俺は視線を逸らしバンダナをあげた。ごめんなさい。

 

ーーーーーーーーーー

 

 あの騒動から帰還後のこと。

 

 「お主がアラン・スミシーか?」

 

 「はい、そうですが」

 

 「手前は【ヘファイストス・ファミリア】団長、椿・コルブランドだ。お主のことはヴェル吉から聞いたが、

 

 ───何やら()()()()()を持っているようだな?」

 

 彼女の鋭い目が俺に刺さった。

 




回復魔法もそうだけど、色んな場面で役立つバンダナも最強。
 【千の妖精】→リーダー呼びに変更。

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