そこはかつて広大な都市があったとされる古代遺跡。
雑草が整備されていたであろう道路を突き破り、人が生活していた建物からは蔦が伸びていた。
建物の中には城と見紛うほどの豪勢なものもあり、その城まで歩き疲れるほどの庭もある。
そんな都市で一際目を引くのが、半ばからポッキリ折れた“塔”である。その塔が健在ならば現代の物より遥か高く、研究者の見解ではまず再現不可能なのだとか。
その塔は都市の端から端まで届く勢いで倒れており、数百年前の戦争で折られたとされる。
その時にはもう都市としての役割を終えていたので、一般人は生活しておらず被害者は当然いない。
昔の人がなぜここを襲撃したのか不明である。一説には八つ当たりだとされる。
この都市にはあらゆる説がある。
曰く、怪物が誕生する洞窟があったとか。
曰く、そんな怪物と戦う職業があったとか。
曰く、全ての英雄伝説はここから生まれたとか。
曰く、曰く、曰く。
昔っからある説は信憑性があるものもあれば、眉唾物であるものまで存在する。
信憑性があるものは、動物の化石である。人型の化石もあれば、近場の湖で発見された竜型の化石もある。現代ではまず見ない生物なので、ここから───いや、どこかの洞窟で誕生したと考えられている。だってこの都市にそんな洞窟発見されてないし。
眉唾物のものは、“神”がいた。最近発掘された書物の中には神々から力を授かったと記されていた。人々が作った神話によくある話だし、神を信仰する宗教なんてざらにある。神ではなく、占い師的な存在を信仰してたんじゃないか?いわゆるプラシーボ効果的な?これが有力である。
この中に正解があるのか、ないのか。それとも全ての説が本物なのか、それとも偽物なのか。
今になっては不明だが、調査で何か分かるかもしれない。
匙を投げ出した様々な分野の学者に代わり、この俺、
都市の名前は【
史実によればおよそ数万年前に栄え、世界の中心とされた都市国家である。
───意気込んだはいいが、【白い妖精】と呼ばれるお化けが出現する噂を思い出し、今まさに後悔している。
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これは記録にして、誰かの記憶。
一人の青年が体験した物語。創作の定番である転生を果たし、神秘的な女神と出会い、恐ろしいモンスターと戦い、生涯の恋人と愛を深めた人生譚。
物心付いた時から少しずつ、頭がパンクしないように気遣いながら、情報が流れ始めた。
笑って泣いて驚いて。
アクション、ファンタジー、コメディ、ロマンス、サスペンス。色んなジャンルを詰め込んだような物語に、私はいつもハラハラドキドキしていた。
その物語はついに佳境へ。主人公が老齢のお爺さんになり、愛した人
あの息子がこんな大きくなってなぁ~なんて、保護者面している私がいる。
そうして青年もとい、お爺さんは呟いた。
『
【スキル】という三文字。これは一週間に一回呟く言葉であり、現代ではあり得ない超常的な力を実現するもの。
その効果は表示される
今回は何も出てこなかったので、恐らく自身に反映される系のモノ。
お爺さんはそれに満足したのか、薄っすらと開いていた目が静かに閉じた。
そして───息を引き取った。それがこの物語の完結である。
私は泣いた。自宅でかなり泣いた。小学校の卒業式でもこんなに泣いたことはなかった。目が腫れてズキズキと痛むまで泣いた。
泣き止んだ私がとった行動は、
聖地巡礼。調べた限りこの物語はフィクションではない。なぜなら実際に存在するからだ。存在するといっても魔法やスキルではなく、主人公が生きた都市が。
その場所は【
そう言えば卒論に手を付けてなかったから丁度いいな、なんて打算的なことは考えてないよ?本当だよ?
私は取り敢えず必要な物をバッグに詰め込んで、出発日を設定する。女一人の旅は無用心が過ぎるけど、テントじゃなく車中泊だから幾分か安全か。
「・・・まあ、頑張るか」
ちなみに私の名前は
【白い妖精】にルビを付けるなら、きっとマイナデスにする。
神々はいない。魔法もスキルも存在しない。どれもオカルトと呼ばれるものだ。