「エイン、今いいか?」
「・・・ナンダ。テミジカニイエ」
「おい今はそんな時じゃ「黙りな」グエッ!?」
現在、二十七階層の小さなルームに籠城している。通路は一本。モンスターが大量に入り込めば間違いなくこのパーティは崩壊する。
リリルカも俺もそんな危険なことはしない。しないのだが、敢えて籠城を選んだのには理由がある。【ヘスティア・ファミリア】唯一の鍛冶士が己を賭けたからだ。
カツーン、カツーンと鉄を打つ音が響く。そして、鍛治場の熱気か、それともヴェルフの心の熱か、その両方かもしない。背中に熱が伝わってくる。
通路からモンスターが押し寄せ、【タケミカヅチ・ファミリア】の桜花、ここまで来る道中で救出したリヴィラの旗頭ボールスが前衛で盾を張り行く手を阻む。
中衛に俺、エリス、アイシャ、フィルヴィス、命、ダフネの六人で溢れたモンスターを殲滅する。
そして後衛には、リリルカが指揮を取り、千草が矢を放つ。春姫の魔法で一斉に昇華させ、カサンドラの回復魔法で前衛の二人を癒した。
これでも依然足りない。
ダンジョンは狡猾で嫌らしい。フィルヴィスやボールスが参戦しても、その戦力を上回るようにモンスターを排出させる。
余裕などない。でもここで言う必要があると思った。
「生きる価値なんてない、そう思っているか?」
「・・・
一度死んで、そしてモンスターと融合して
こんな自分に生きる価値なんて皆無だ。レフィーヤと出会ったフィルヴィスは、精神を病み掛けるほど苦しんだ。
「そうか。でも敢えて言うぞ。『生きろ』」
アラン・スミシーは、目の前のモンスターを駆逐しながら真っ直ぐ言い放った。それに言葉が詰まる。
「お前がどんな経緯でそうなったか知らないし、どれだけ手を汚したかは知らない。それでも生きろ」
「───」
「穢れていても」
狐人は目を瞑る。
「手が汚れていても」
女戦士は大剣に力を込める。
「後ろめたいことがあっても」
小人は前を見る。
「
「!!」
「そして、お前は俺のモノだ。生きる価値なんてないなら、俺がお前にとっての生きる理由になってやる」
「・・・
「ない」
俺は即答する。
こいつを推し量ることなんて無理だし、何も知らないのに同情なんて出来ない。
でも、
それでも、
「ケッ、ダンジョンでイチャ付きやがって」
「ハッ、常に大人で冷静に、なんて思っていたが、あの坊やと同じとんだお人好しだったね」
それぞれがそれぞれの反応を見せる。アイシャとボールスは悪態?を吐き、桜花は男・・・いや、漢だ!と感心する。残りの女性陣は、
「ちょっ、こんな状況でプロポーズしないでよ・・・」
「お、『お前は俺のモノだ』って・・・」
「おおお『お前にとっての生きる理由になってやる』ですか・・・」
「アラン様は、なんて大胆な御方なんでしょう・・・」
赤面する。まあ、勘違いさせる言い方したアランのせいだ。
「でも意外ですね。アラン様はてっきりエリs───ヒイッ!?」
リリルカは隣のエリスをちらりと見やり、悲鳴を上げた。般若が居るからだ。
「私が甘かったんだ一緒に寝たくらいじゃ意識しないそれなら日頃から胸やお尻を当てていやもうこうなったら押し倒して既成事実を作るしかないよね一度そういう関係になったらアランは責任感じるから目移りしないはず「逃げてアラン様ぁ!!」」
ブツブツと恐ろしいことを口走るエリスは、もう手遅れかもしれない。何かがプッツン切れたから。
アラン様の貞操はもうダメだ。リリルカは両手を合わせてお祈りした。
「完成したぞお前らぁ!!・・・え、何やってんだ?何があったんだ?」
みんなの様子がおかしいことに疑問を浮かべ、なんか一人だけ疎外感を味わったヴェルフであった。
次回で遠征を終了させます。そして、外伝十二巻を始めます。