三つの選択肢   作:新人作家

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このままだとエタリそうなのでサクサク行きます!題名書き忘れたので追加です!


なんだかんだ言って長生きがしたいっす

 

 「仲間が【疾風】に殺されたんだよっ!!」

 

 リヴィラの街が喧騒に包まれる。血気盛んな冒険者の街だから当然といえば当然なのだが、いつもの日常とは違っていた。

 殺しがあった。これはリヴィラを中心とする冒険者にとっては見過ごせないものだ。上級冒険者を殺害するほどの殺人鬼が彷徨いているのはたまったもんじゃないから。

 

 「本当に【疾風】だったのか?確か復讐後にどこかでくたばったって噂だったが・・・」

 

 「俺は本当に見たんだ!あのエルフが俺達の仲間を殺したところをな!」

 

 旗頭のボールスが質問し、猫人の男が詳しい事情を話しつつその質問に答えた。更には【疾風】を殺しに行こうと提案する。目的地は下層である。

 端から見ていたベルは、信じられないと言うような表情を浮かべ、俺はあの猫人を見やる。最近まで戦っていた()()()()と既視感があるからだ。

 

 「アラン様はどう思いますか?」

 

 遠征パーティが集まる天幕で、リリルカが俺に尋ねる。

 あの後、【疾風】討伐をするか迷っていたボールスだが、多額の懸賞金が懸けられていると知って討伐が決定した。

 今は俺達だけで情報を精査している。推測の域しかでないが。

 

 「怪しいね」

 

 「怪しい、ですか?」

 

 「どういう意味だい?」

 

 「()()()()()()

 

 俺はアイシャに間髪入れずに答える。あの猫人は仲間を殺されたから敵討ちに行こうと言っているんじゃなくて、俺達冒険者を一つの場所に誘導しているように感じられる。

 

 「それに、【疾風】だと特定出来るか?俺やベルが知るあの人は頭と顔を隠している。状況から察するに殺人は夜間に行われたんだよな?だから、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 「「「「!!」」」」

 

 まあ、正面から見たら別だけどねと、俺は付け加えた。それに、五~六年経過すれば服装くらい変えるだろ。生きていることがバレないように。

 

 「じゃ、じゃああの人達は・・・」

 

 「これは予想だが、あの冒険者達は恐らく───」

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「しゃあ!行くぞてめぇらぁぁぁぁ!!」

 

 「「「「おおおおおおお!!」」」」

 

 ボールスの指揮で【疾風】討伐隊は下層へ向けて進軍した。ベルはボールスと同じ前線に居る。俺やエリス、リリルカ達は後衛寄りの中衛。【ロキ・ファミリア】より劣るものの、大規模な人数での進軍となっている。

 

 「【豊穣の畑番(フィールド・キーパー)】!回復頼む!」

 

 「了解!」

 

 俺は負傷した冒険者に回復魔法を大人数に使用する。怪我がみるみる治る様に、初めての者は驚きを見せた。

 ちなみに【豊穣の畑番】は、俺の二つ名である。あのダイダロス通りでの勇姿を見ていた神々がそう名付けた。少しこそばゆいが、痛々しくないので良しとしている。

 

 「あ、あの・・・」

 

 「ん?」

 

 「夢を信じてくれて、ありがとうございます・・・」

 

 進軍中、カサンドラが礼を言う。原作だとこの人は予知夢が見える。その内容は百発百中なのだが、(ベル以外)誰も信じない。親友であるダフネさえ信じないのは、謎の運命力が働いているのだろうか?

 

 「もちろん信じるさ。だから安心しなよ。どうにかして運命を変えるから」

 

 「!」

 

 青ざめていたカサンドラの顔が晴れる。ベル以外の人間が信じるとは思っていなかったからだろう。俺は微笑んだ。

 本当は俺はベルと一緒に行動する予定だった。主人公を補佐すれば、原作を良い方向へと変えられるだろうと考えたから。しかし、夢の内容を聞いて即座に辞めた。だってさ、

 

 「腹を貫かれて死ぬって言うんだもん・・・」 

 

 俺の戦闘衣はあのゴライアスの素材を使われてんだよ?それを貫くって何やねん。そんなモンスター、下層に居るんか?深層から流れて来たのか?

 一応、ベルには篭手を貸した。ゴライアスマフラーなる物を渡されていたけど、何故か心細いと思ってしまった。その篭手は彼の()()に装着された。

 

 一向は下層へ到着し、そして────

 

 「うわっ!?」

 

 「なんだ、地震か!?」

 

 どこかで爆発音が響き、下層全域が揺れた。

 俺達は猫人を監視しつつ行動していたのだが、いつの間にか見失った。地震が起きたのはその直後である。

 これだけでは当然終わらない。

 

 『アアアアアァァァァァ』

 

 ダンジョンが哭いた、のか・・・?

 俺達がそれに呆気に取られていると、

 

 「これは、何かの冗談かい・・・?」

 

 誕生する時期を無視して絶望が誕生した。ここは二十五階層。二十七階層へ向かったベルを救出するため俺達に立ち塞がったその名は────

 

 「アンフィス・バエナ・・・!?」

 

 それぞれ違う能力を有する二つの頭を持つ竜種。階層無視して滝の激流を泳ぐ怪物。 

 

 

 

 

 俺達は今日、主人公抜きで冒険をする。

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 「アラン様!?」

 

 「アラン!?」

 

 俺はカサンドラとリリルカを庇った春姫を突き飛ばした。目の前には蒼い炎を溜めるアンフィス・バエナが居る。回避しようにも精神力(マインド)が枯渇気味でもう動けない。こちらに向かおうとエリスが向かおうとするが、彼女の脚には小型のモンスターに咬まれた傷がある。そのせいで上手く走れないらしい。

 精神力枯渇で治せなくて良かった。治していたら躊躇わずこちらに来ていたから。一緒に死ぬことはない。ラクシュミーによろしく言っておいて。ああ、声が届かないか。

 いやー、ベル抜きで我ながら善戦したと思うよ、ホント。階層主をここまで相手取るパーティは中堅派閥でもいないだろ。このパーティは個々の能力が尖っているからね。まあ、善戦出来たのは、やる時はやる人達が多いからだろうけど。

 あ、そう言えばスキルの選択日は今日だよな。最後に選んでおくか。消えない炎が迫ってるし。

  

 「スキル・・・は?」

  

 選択画面に俺は間抜けな声を出す。

 

 【三択からどうぞ】

 ・三つの中から一つ獲得

 ・選んだモノの貯蓄と引出し

 ・一週間後に再選択

 ・貯蓄

 

 これがスキルの詳細だ。今回も例の如く武器とか魔法とかスキルとかが出るかと思ったのだが・・・。

 

 「・・・③を選ぶ」

 

 どうやら俺は思い違いをしていたらしい。モノは、『物』という字が全てではない。だからもうちょっと長生きできそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「────“盾となれ、破邪の盃”」

 




これがやりたかったんです!!許してくれメンス。

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