三つの選択肢   作:新人作家

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連休なので更新頻度が上がります!



フィルヴィス・ブートキャンプ

 

 「ちょっと待って!()()怪物の宴(モンスターパーティー)】とかマジィ!?」

 

 「これで何回目!?少しは手加減してよっ!」

 

 「ひぃぃ、スパルタ過ぎませんかね!?」

  

 下層にて。

 俺達は現在、フィルヴィス指導のもと地獄の特訓を行っていた。下層には前の遠征で痛い目にあったから、あの滝の音には心底嫌悪感を抱いた。

 そんな中で行われる特訓は苛烈を極めた。内容は至って単純で、襲い掛かってくるモンスターを倒していくだけだ。技とかを教えるとか、そうゆーんじゃなくて、ただただモンスターとぶつかっていくスタイル。

 何度も繰り返してくるフィルヴィスの【怪物の宴(モンスター・パーティー)】───【怪物進呈(バス・パレード)】か?に、ついに泣き言を漏らした。忌々しい滝の音はもはや気にならなくなった。

 

 食事はリヴェリアさんとフィルヴィス、十八階層に待機していた【異端児(ゼノス)】達が用意してくれた。感謝の言葉をレイさんに述べたら、それはもう喜んだお顔を浮かべて・・・ヒェ。就寝は下層の小部屋(ルーム)でフィルヴィスが見張り、それ以外の魔石やドロップアイテムの換金とかはリヴィラを活用した。日に日にボロボロになっていく俺達に冒険者は引いていた。

 

 戦闘時の立ち回りはこうだ。

 俺は回復魔法を活用しながらレイピアで切り裂く。【刀剣乱舞(スキル)】のおかげで剣術に磨きがかかる。そのため、多くの敵と戦う前衛を担当していた。

 エリスは速度を活かした遊撃。速度を上げる魔法は単純(シンプル)に強い。モンスターは人間同様大量出血で死ぬので、大量出血を狙う感じで喉を刈り取っていた。浮気しようものなら俺も刈り取られるのだろうか。

 レフィーヤは自分の十八番(オハコ)である召喚魔法を行使していた。短文から長文、さらに()()()()()()()()()()()()()()()で蹂躙していた。どの魔法をどんなタイミングで使うか。判断力に関しては、俺やエリスより成長したと思う。

 

 「お前達はこの先、あらゆる危機を乗り越えなければならない。だから学べ。そして必要な経験を積みながらステータスを上げていけ」

 

 フィルヴィスの言いたいことは分かる。主人公(ベル)と今後も付き合っていくのなら、必然的に危険が付きまとう。だから最低でも恋人(エリス)を守れるくらい強くなりたい。

 まあ、エリスのがレベルが高くて強いけど。

 

 「後ろには私が控えているのだ。死ぬ前には助けてやる」

 

 顧問として同行してきたのはリヴェリアさん。・・・いやあのね?安心しろみたいに言うけどさ。つまり死ぬ直前まで助けてくれないってことですやん。今助けてくださいっす。お願いします。

 ・・・そんな願いは届かず、

 

 「ほれ追加だ」

 

 「「「うわぁああああ!?」」」

 

 オラリオに労基ってあったっけ?無いのなら、今からでも入れる保険を紹介してください。

 

 

 ーーーーーーーーーーー

 

 

 「死ぬかと思った・・・」

 

 「もうくたくただよぉ・・・」

 

 「うう、しばらくダンジョンに行きたくないです・・・」

 

 一週間以上に及ぶ【怪物の宴(モンスター・パーティー)】の繰り返しはまさに地獄。時間感覚を忘れるぐらいに渡って開催されたフィルヴィス・ブートキャンプは()()()()()()()()(強化種)の討伐を皮切りに終了し、《昇華の手応えを感じつつ》帰路に着いていた。十八階層(リヴィラ)で一晩寝たけど疲労は消えなかった。体がダルい。

 最後の【怪物の宴(モンスター・パーティー)】で入手した魔石とドロップアイテムは、上層までフィルヴィスが運ぶ手筈になっている。リヴィラでする手もあるけど、適正価格よりも安くなるしなぁ・・・。

 地上から俺達が運ぶのは、彼女をあまり人目につかせたくないからである。フィルヴィスの事情を知る者は確かに居るが、それは限りなく少ない。

 【都市の破壊者(エニュオ)】こと、邪神ディオニュソスは敵に破れて眷属ごと送還されたということになっており、その中には当然団長(フィルヴィス)も含まれている。彼女が生きていたと知られたのなら、絶対に都市中が混乱(パニック)になるだろうし、神々が動き出すのが目に見えている。地上に辿り着く前には俺の中(意味深)に入ってもらおう。

 余談だが溢れて運べなくなった魔石は、彼女が美味しくいただいた。おま、さりげなく強くなってんじゃねッ!

 

 一週間経過したからアレがある。

 

 三択から選んだのは、【吸収(ドレイン)】という魔法だ。これは読んで字のごとく、相手の体力・魔力・精神力という体内に存在するエネルギーを吸収して自身に還元するという破格の魔法。デメリットが自分だけにしか使えないことと、相手に触れる必要があることだが、それを差し引いても中々使える。

 体力や精神力(マインド)を回復しながら戦えることに、エリスもレフィーヤも羨ましがっていた。

 まあしかし、あの自然回復を速めるのが【精癒】なら、【吸収(ドレイン)】は薬を使ったような即効性がある。ある意味チートだな。

 

 モンスターに使ったら、突撃の勢いが無くなってへにゃへにゃになった。

 馬鹿みたいに精神力(マインド)を消費する【癒光の羽衣】と相性が抜群。修行中は継続的に使用できた。

 

 「私はアランの中に戻る。用があれば召喚しろ。またな、レフィーヤ。失礼します、リヴェリア様」

 

 「またご指導よろしくお願いします!」

 

 「ああ。レフィーヤを見てくれて感謝する」

 

 「ああ、お疲れ様───て重たぁっ!?」

 

 「アラン大丈夫!?」

 

 バッグを俺に手渡したのと、フィルヴィスが消えるほぼほぼ同時だった。どんだけ入ってるんだよ、腕が持ってかれそうになったぞ・・・。

 

 地上に通じる螺旋状の長い階段を、一歩一歩ゆっくり上がっていく。なんでこんな長いんだよ、エレベーターを設置しろよツライしキツイから。

 そんなことを切実に思いつつ、あることに気づいた。

 

 「? なんか騒がしくないか?」

 

 「あ、本当だ。───えと、炎?魅了?それに・・・()()()()?」

 

 エリスは獣人特有の聴力で、聞き取れたことを反芻する。フレイヤと聞いて、嫌な予感しかしない。

 

 「フレイヤ・・・て、ええ!?あの女神フレイヤですか!?」

 

 「民衆が騒いでいるということは、派閥総出で何かを仕出かしたのか?何にせよ急ぐぞ。私達のファミリアも、無関係ではなさそうだからな」

 

 俺達はリヴェリアさんと共に走り出す。

 フレイヤは何をやらかした?まさか、ベルを手に入れるためにオラリオ中に魅了をしたとか?いやでも、いくらフレイヤでもそんな無茶苦茶なことができるはずが───

 

 「アラン、エリス!それにお主らも帰ってきたか!留守の間に色々あったんじゃぞ!まったく、あのアバズレ糞女神(フレイヤ)め・・・!」

 

 「久しぶりだなラクシュミー!早速なんだけど、どういう状況なんだ?」

 

 バベル前で待っていたラクシュミーに、再会を喜ぶより今の状況を問い詰めた。地上の情報が全く届かない下層に居たのだ。俺達四人には、聞きたいことがたくさんあった。

 

 ラクシュミー曰く、フレイヤが街中で【ヘスティア・ファミリア】を襲撃し、ベル・クラネルを強奪したとのこと。しかし、公式の【戦争遊戯(ウォー・ゲーム)】じゃなく非公式の強奪ときた。許させることじゃない。

 

 「なるほど。それを良しとする方法が───」

 

 「()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ヘスティアの眷属ではなく、元からフレイヤの眷属だったことにしたのじゃよ」

 

 「えげつねぇ」

 

 「魅了された人達はどうなってるんですか?」

 

 「ヘスティアの権能で解放されて、ほとんどの冒険者はフレイヤの本拠地(ホーム)を襲撃している」

 

 俺達が居ない間に目まぐるしく変化してんな、おい。でもまー、これで【フレイヤ・ファミリア】の天下はこれで見納めか。フレイヤの反感を買ってオッタル達にメッされなくて済む。良かった良かった。

 

 リヴェリアさんとレフィーヤは、フレイヤの本拠地(ホーム)に向けて走り出した。自分の仲間達も戦闘に加わっているからだ。

 

 「あ、ラクシュミーも魅了されたのか?」

 

 「うむ。しかも、魅了された時にフレイヤの奴が私のもとへ訪ねて来おってな?あの糞女がなんて言ったと思う?」

 

 『アラン・スミシーはどこ?』

 

 「アランを警戒しとったわ!隠しきれておらんあやつの必死さは傑作じゃたわ!」

 

 アッハハハ!と豪快に笑った。してやられたことに腹を立ててつつ、フレイヤを馬鹿にする。我が主神ながら、すげぇ器用な女神だ。

 ・・・わざわざ俺を探してたの?警戒する価値は無いと思うけどなぁ。

 

 「まさに盛者必衰。ゼウスヘラ同様に、フレイヤも例外ではなかったか・・・」

 

 笑い疲れて落ち着いたラクシュミーは、騒ぎの中心を見ながら呟いた。

 【フレイヤ・ファミリア】がいかに強大な存在といえど、オラリオのほとんどを敵に回したのだ。積み上げてきた権威は当然失墜し、彼ら彼女らの居場所はもはや無くなったと言える。

 俺達は崩壊していく派閥の最後を見ないまま、久方ぶりのの本拠地(ホーム)に帰ることにした。

 

 その翌日に流れたニュースに驚くことになる。

 

 『【ヘスティア・ファミリア】VS【フレイヤ・ファミリア】による【戦争遊戯】が決定!開催日時や勝負内容はおいおい決定する模様』

 

 ・・・マジっすか?

 




18巻に突入します!
題名の元ネタはビリーズブートキャンプ。
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