三つの選択肢   作:新人作家

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戦争が呆気なく終わった。次回から【学区】編かなぁ。


戦争遊戯④ 脳内会話

 戦争の流れが変わった。

 魔剣攻撃で倒れた敵が復活してはいるが、ヘイズ・ベルベットを始めとした【満たす煤者達(アンドフリームニル)】が全滅した今、彼らを癒す術は回復薬以外方法はない。一人一人がしぶとく技の練度が高い【強靭な勇士(エインへリヤル)】であってもボロボロの状態であるのならばLv.1の冒険者でも倒せる。

 問題は幹部陣である第一級冒険者の存在。

 ()()()()()()()()()()()()、アレン・フローメルは副団長を務めるほどの実力者。レベル差が二つも開いた冒険者(アラン・スミシー)一人に落とされたことに内心で動揺するが、歴戦の強者だけあって簡単には落とせない。

 

 しかし、流れは変わり始めた。

 第二級冒険者以上の実力者を揃える【豊穣の女主人】が登場したことによって、連合軍の戦力と士気は一気に向上する。

 

 そんな中、役目を果たした犬人(エリス)は気絶している恋人(アラン)を発見すると優しく抱き寄せ、そっと唇を重ねた。

 彼に労りと賞賛の言葉は掛けない。戦争はまだ終わっていないからだ。

 

 「リリ、アランは戦えない」

 

 「『・・・了解です。アラン様が抜けるのは正直痛いですが、仕方ありません。エリス様は命様がいる【炎金の四兄弟(ブリンガル)】のところに向かってください』」

 

 「了解。・・・そう言う訳だから、アランをお願い」

 

 「は、はい!」

 

 脱落者を運ぶ役目を担っている【ガネーシャ・ファミリア】にアランを預け、エリスは走った。

 

 

 

 

 「う、うわ~、すごいの見ちゃった・・・!」

 

 「っ、観てはいけませんっ!!」

 

 「尊い・・・!」

 

 鏡の向こうの観戦者は一連の行動をしっかり目に焼きつけた。

 

 

 

 

 アレン・フローメルの敗北を機に、妖精(フィルヴィス)は動く。

 雷と風の砲撃が各地に降り注いだ結果、幹部陣が倒れるのは時間の問題。ならば向かう戦場は決まっている。

 

 「【猛者】オッタル。私と手合わせ願おう」

 

 「お前は【白巫(マイナ─)─」

 

 「違う。私は穢れ堕落した妖精で、アラン・スミシーに従属する一人の騎士。故に二つ名はなく、ただのエインとしてここにいる」

 

 「そうか」

 

 短く答えたオッタルは満身創痍のベル・クラネルを隅に放り投げ、武人としての矜持と女神への忠誠のみを剣に乗せて構える。

 対するエインは自身が堕ちた証と言える邪悪で醜悪な"肉"を展開する。その肉は形を変えて頑強な鎧と鋭利な剣と化し、戦闘の構えを取る。

 

 両者ともに油断も隙も見せない臨戦態勢の姿勢。

 

 「この先言葉は不要」

 

 「であるのならば死合うのみ」

 

 「「──往くぞッッ!!」」

 

 人間最強と怪人最強の激突は、劇場跡地を破壊する!

 

 

 

 

 

 「う、う~ん、・・・知らな、いや知っているエリスだわ」

 

 目が覚めると知らない天井ではなく、知っているエリスだった。ガタンと揺れて動いているからここは馬車か。いやなんで?

 

 と、俺は木製の馬車の上なのに頭が痛くないのは何故かと疑問に思うが、エリスの膝の上だからと気がついた。そしてエリスの顔と星空がしっかり見えるのは薄い胸部装甲のせいだからか──

 

 「・・・アラン?アラン!ラクシュミー様!アランが起きた!」

 

 「これエリス、他にも怪我人がいるのじゃから静かにせんか」

 

 「す、すみません・・・それと今失礼なこと考えなかった?」

 

 エリスの鋭い視線から思わず目をそらし、ラクシュミーの方へ顔を向ける。

 彼女はホッとしたような、そんな安堵の表情を浮かべていた。

 

 「お主、【女神の戦車(ヴァナ・フレイヤ)】と戦ったのは覚えているか?」

 

 「ああ、それはまあ。殴り飛ばした後のことから記憶がないけど」

 

 「私は隠れておったから知らんが、そのまま気絶したらしいのじゃ。その後はエリスに見つけられ、ガネーシャの眷属に天幕まで運ばれ治療を受けたようじゃな」

 

 「なるほど」

 

 今の今まで寝てたってことは、それほど負傷とスキルの反動が大きかったてことか。

 槍で刺されまくってたしなぁ、共有したのがLv.7上位のステータスだもんなぁ。反動なしなんて都合のいい展開なんかないか。

 

 「エリス、怪我は大丈夫か?」

 

 「うん。打撲と掠り傷の軽傷で済んだからね」

 

 「そっかぁ」

 

 下手な冒険者より強くて厄介な治癒士団体を相手にその程度で済んだのか。

 

 「その後【炎金の四兄弟】と戦って、どうにか一人倒したよ!」

 

 「そっかぁ。──────・・・え?」

 

 倒したの!?Lv.5を!?すっげぇ!!

 

 「この戦いで、皆成長したようじゃな。我々神が提供するステータスではなく、精神(こころ)が強くなった。初めて会った日と比べたら、見間違うくらい変わりおったわ」

 

 「「そうかな」」

 

 「うむうむ」 

 

 まあ、あの日から変わった気もしなくもない。沢山死線を潜り抜けたからかな?

 

 まあ、それならそれでいいか──あ。

 

 「フィルヴィスは?アイツはどこだ?・・・後戦争に勝ったのは、どっちだ?」

 

 俺達は第一級冒険者を倒したんだ。こっちの最強(フィルヴィス)が動いてもおかしくない。

 

 (私はここだ)

   

 「ひょわ!?」

 

 「「!?」」

 

 頭に響いたフィルヴィスの声に変な声を出した。見ないと思ったら俺の中にいたのか。確かに俺の中にフィルヴィスを感じる。言い方がちょっとやらしいな。

 

 て、そんなのどうでもよくて。フィルヴィスの戦争中の行動を聞いてみた。

 

 (お前が【女神の戦車】を下した後、私は【猛者】のもとへ向かった。他の戦場へは新たな援軍が向かっていたし、エリスもいたからな)

 

 新たな援軍と言うのは、恐らく【豊穣の女主人】の面々だろう。フレイヤはシルでシルはフレイヤ。同僚であり友人でもあるあの人達は、きっと無関係を貫けない。戦うに決まっている。

 

 それにしても。

 

 (【猛者】・・・都市最強と戦ったのか?)

 

 (ああ。さっきも言ったが、残る敵は【猛者】だけ。そして、Lv.7を倒せるのはあのメンバーなら私だけだ)

 

 自惚れで物を言う奴ではない。俺やエリス以外でも、彼女を最強だと思っている奴は多い。

 

 「(結果は?)」

  

 (・・・)

 

 「(・・・結果は?)」

 

 珍しいなコイツが言い淀むの。

 

 (・・・負けてないし・・・勝ってもいない)

 

 「(なんじゃそりゃ)」

 

 (攻めきれなかったのだ!攻撃、敏捷、持久力!怪人の身である私はL()v().()8()()、Lv.7でしかない奴よりも上回っているはずなのに!奴は悉くを防御した!技術による防御力!あの見た目で繊細だぞ!!故に勝敗は決まっていない!(引き分け!)素晴らしいぞ私ッッ!!)

 

 うるせぇ。倒せなかったことが余程悔しかったらしい。

 

 そしてフィルヴィス曰く、歯痒い思いをしていた頃に、ミア母、リューさん、【白妖の魔杖】(え?)、そしてベル。援軍が登場したことで囲んでボコボコにしたらしい。

 

 まあ、獣化したオッタルにフィルヴィス以外ボコボコにされたらしいが。結構辛勝じゃねぇか。

 

 (でもあのままやっていたら私が勝ってたな)

 

 うわぁ!いきなり落ち着くな!

 

 そんなこんなで事実とも負け惜しみとも取れるフィルヴィスの言葉を聞いて会話は終わる。

 

 (ふぁみちきください、だったか?)

 

 「こいつ直接脳内に・・・!」 

 

 「「!?」」   

 

 最後の最後でネタをぶっ込みやがった!

 

 




いつかの
 
 「フィルヴィス」

 「はい、ディオニュソス様」

 「脳内で会話することがあれば、だ」

 「(の、脳内で、会話・・・?)はい」

 「ファミチキください、と言うのだ」
  
 「ふぁ、ふぁみちきください!?ふぁみちきとはなんですか、そもそも脳内で会話とはいったい!」

 「(こういうことだ)」

 「こいつ直接脳内に・・・!──あ」

 「うむ、上出来だ」
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