『【学区】が帰って来たぞぉぉぉぉぉ!!』
「【学区】?」
本拠地の外から聞こえてきた声に俺は小さく声を溢した。
【フレイヤ・ファミリア】とのいざこざが終了し、その後始末にようやく終わりが見えた頃にやって来た。
戦争の勝者は【ヘスティア・ファミリア】率いる派閥連合。集団でオッタルをボコボコにした後、
んで、戦争に勝ったことで
当然女神フレイヤは都市外追放。彼女の後を追おうとした眷属は彼女の一言でオラリオに留まることに。これには戦力の流出を良しとしないギルド長は、それはもう喜びの笑みを浮かべたとかなんとか。
勝利したことで得た報酬だが、多く貰ったのは納得の【ヘスティア・ファミリア】。で、次いで俺達【ラクシュミー・ファミリア】が多く貰った。三人とも勝利に貢献し、中でも戦況を変えるきっかけとなった【女神の戦車】の討伐が大きかったそうだ。
俺達が一番多く貰うべきだと言われたが、それはすぐ却下した。これはお前らの戦争だったし、オッタル相手だったら勝てなかったし。
報酬の件で人数が少ない零細のコイツらよりも中堅の俺達が、という反感はあったが、第一級を倒してから言えという俺を知る冒険者達の一言で黙った。
奴らも沢山貰ってるはずなのに・・・強欲なところが冒険者というかなんというか。
ギルドからの税金徴収?全員無視したよ。
そしてそれらが一段落したところで宴が行われた。
会場は【豊穣の女主人】を貸し切って行われ、戦争に参加したファミリアがこぞって入店しているため大規模なものになった。
店員には【フレイヤ・ファミリア】の面々が制服着て接客しており、
『お前も盛り上がれ、戦争のMVP!』
『MVPってお前・・・俺はただ、【女神の戦車】を一人で倒しただけだが?』
『『『『スッッッゲェェェェ───ぇあ』』』』
『え?』
『楽しんでいるようで光栄です、お客様この野郎調子に乗るなあの時俺がその気だったら一瞬で終わっていた分かったかこのゴミぐぅあ!?』
『客に殺気振り撒くんじゃないよ、仕事しなッ!!』
『兄様ぁ!?』
震えが止まらねぇ・・・!
エリスもエリスで、敵として戦った【女神の黄金】と談笑?してたし、ベルは制服オッタルを見て気絶してたし、結構楽しかった。
・・・ヘイズは俺を見るなり腕に抱き着いてくるんだよなぁ。で、それを見たアイツが──
『表出ろ痴女豚がァ!』
『ワンちゃん寂しがり屋ですかぁ?一人で行ってくださあばぁ!?』
『客に喧嘩売ってんじゃないよ!!仕事しなッ!!』
とまあ、何日か続いた賑やかな宴は終了し、今は本拠地でダラダラしている。
外から【学区】という単語が聞こえてきたのはその時だった。
「【学区】を知らんのか、アラン団長」
「オラリオに来て日が浅いからなぁ。全く知らね」
「アレン様を倒したのが日の浅い冒険者という事実に驚愕を禁じ得ないのですが・・・」
【ラクシュミー・ファミリア】に新しい仲間ができた。
一人目はニック・リンカ(24)。
戦争前にLv.4になった冒険者であり、影ながら俺達の護衛をしているところを勧誘し、入団してくれた元美神の眷属の男性ヒューマン。盾と剣を扱う前衛職。
二人目はメフィー・クックン(25)。
同じく俺達の護衛をしていた冒険者で、Lv.3のエルフ。魔導士であり平行詠唱を使える優秀な後衛職。フィルヴィス以外に魔法使いが居なかったから非常に嬉しい。
そして三人目はカナ・サキトス(18)。
今は買い物中のラクシュミーとエリスに付き添っているため不在。【満たす煤者達】出身でLv.2、そして回復魔法を得意としており、護衛とかではなくあの【女神の黄金】が薦めたから採用した。エリスと一悶着あったのは言うまでもない。
以上この三名の追加メンバーによる新体制でやっていくことになる。特に不満も不安もないため大丈夫そうだ。近々フィルヴィス主導の安心安全地獄の深層修行に連れていく予定だ。
「「───っ!?」」
「どうかしたか?」
「「いや寒気が・・・」」
【フレイヤ・ファミリア】だけあって妙に鋭いな。
「いやそれよりだな」
「ん?」
「アラン団長は、【学区】についてどのくらい知ってるのですか?」
「全く」
「「・・・」」
なんか呆れられたんだけど。確かギルドのエイナさんとレフィーヤの出身だっけな。学校だったような気がする?
「移動型教育機関にして海上学術機関特区。通称【学区】。世界各地から子供を募って優秀な人材を育てることを目的とした組織で」
「学問を司る神様達による派閥同盟で成り立ってて、ギルドから援助を受けています。【学区】に入学した学生達は指導を受ける傍らで神の眷属として活動し、モンスターなどの世界各地で起きている問題の解決に尽力しています」
「それがオラリオに来たのか。目的は・・・遠足?それとも旅行かな」
「「・・・」」
「なんだよ」
呆れられたんだけど。(二度目)オラリオはダンジョンがあるから世界の中心として賑わっている。だから日頃の学業や荒事から離れてたまには遠足や修学旅行で来航したのか、と──
いや待て。
「
「正解だ。都市の外とはいえ脅威がそこら中に蔓延っていて、それらを排除するにはステータスの成長が必要不可欠。だからダンジョンは成長の機会が多く得られるから実習先として選ばれているんだ。【学区】はオラリオに遊びで来るほど腑抜けてないぞ」
「そしてそのついでにメレンで巨大船──フリングホルニの
と、刺々しいな。俺、団長なのに・・・。聞けば彼らの派閥だけではなく、色んな派閥にチラホラ出身者がいたらしい。
「じゃあこの賑わいは学生が来るからか?」
「ええ。行楽目的ではないと言いましたが、都市の物品は質がよく珍しい物がたくさんあるから学生によく売れるのです。だから商人はこぞって販売に精を出してますね」
「まあ、生徒側からしたら三年置きにしか来れないから、この機にってのもあると思うがな」
なるほどなぁ。
「
・・・リクルートにインターン。大学生だった俺からしたら嫌な思い出だ。
ギルドからの手紙にリクルートとインターンって書いてあったな、どこにやったっけ。
「・・・オラリオのファミリアが優秀な人材を得るために行うことです」
「ああ、それはギルド長から手紙・・・あった、それについて書いてあるな。要約すると『貴様のファミリアは多大な人気がある。優秀な人材を見つけ次第、できるだけ多くの戦力を確保しろ』だってさ」
「欲にまみれた豚、同胞の恥晒しが」
いきなりどうした、メフィの口が悪くなった!
「まあ、言い分は分からんでもない。このファミリアは異常だからな」
「?」
はて?
「成長速度だ。ベル並みとは言わんが、成長速度が尋常ではない。一介の冒険者に過ぎなかったエリス副団長が今や第二級冒険者になって、フィルヴィス名誉顧問(バレてない)に至っては団ちょ──オッタルさんと互角以上に渡り合っている。彼女達が強くなったのは、あの戦争も相まってアラン・スミシーが何かしたからって都市内外で囁かれているんだ。人によってはベルもあんたの恩恵を受けたんじゃないかって怪しんでいる」
「私達が隠れて護衛していたのは、(必要ないかもしれないけど)貴方を守るためだったのです。まあ、すぐバレて連れ込まれて入団しちゃいましたが」
「どっちも人聞きが悪い。だがなるほど。やけに視線が集まっていたのはそのせいか」
その中には悪意の視線があったが、すぐ消えたのはこの二人がどうにかしてくれたからか。改めて感謝しよう。
「それにしても多大な人気が、まさか成長の秘訣目当てとはな」
残念ながら才能を見抜く慧眼や、成長を促すような育成能力は俺にはない。ベルやエリスが成長補正スキルに目覚めるような強い願望を抱き、幾度も死線を潜り抜けたからに過ぎない。
「中にはあんたの勇姿に惚れたって奴もいるぜ?男だったが」
「寒気がするからやめろ」
成長補正スキルは強者になれると確約された証明されたようなもの。そのスキルに勘づいてなくとも、【ラクシュミー・ファミリア】に入ればレベルがどんどん上がって強くなれると思っている。
【学区】側に強くなりたいと願う生徒がいるのならば、まあ来るだろうな。ここに。
「で?受け入れるのか?」
「こちらとしてはアラン団長に従います」
大抵がLv.1~Lv.2が多いが学があって対人対怪物戦闘を積んだ優秀な人材。正直、そこらにいるオラリオの冒険者よりも、こっちの戦力を確保しておきたい。
でも問題がある。
「・・・根性がある奴が欲しいなぁ」
「「?」」
信じられるか?うちの
アラン
このたび存在を世界に知られたことで影ながら狙われる。二つ名最有力候補は【導きの賢人(ケイローン)】。戦争後は干からびた。
エリス
アランが育てた英雄候補として名を馳せるように。影ながら狙われる。戦争後はツヤツヤになった。
ラクシュミー
アランとエリスの主神で、ステータスを知っているため狙われる。質実剛健の【ゴブニュ・ファミリア】の耳栓のおかげで安眠している。
ニック
新団員。深層被害者。護衛だったが護衛の仕事をすることはなかった。主神の薦めで耳栓買った。
メフィー
新団員。深層被害者。ニックと同期。護衛だったが護衛の仕事をすることなく入団した。耳栓売り切れで眠れなかった。若干気まずい。
カナ
新団員。深層被害者。セイズの推薦で入団した。家事が得意でエリスからハニトラ疑惑をかけ警戒されている。ギリ耳栓買えた。
フィルヴィス
【ラクシュミー・ファミリア】を狙う輩全てにトラウマ植え付けて排除した。夜中はじっくり観察している。
【ラクシュミー・ファミリア】
団長が成長を速める能力持ちだと予想され、アラン筆頭に日夜狙われている。失敗に終わるのはフィルヴィスが見張っているから。話題性でいえばオラリオで今一番人気な派閥。