時系列は祭りの前。
「私の装備を新調するついでに、アランも装備を新調しない?」
エリスの恩恵を刻み終え、ラクシュミー見送りのもとホームを出た後にエリスが提案した。なんでも、脱退のために用意していたお金が余り余ってるそうだ。
俺は当然断った。同じ派閥の一員とはいえ、エリスの私財を使うのは気が引けるから。
その旨を説明しても、頑なに首を縦に振らない。
「だって私のアビリティなら、今より深く潜れるんでしょ?私がメインで戦うとしても、今の装備でアランは大丈夫なの?」
そう言われて改めて装備を確認する。スキルで獲得したレイピアと篭手。さらに支給品でギルドから貰った壊れかけの剣と胸当て。
心もとないばかりか、今までよく無事だったな俺は。
「それにさ、アランにはずっと元気でいてほしいんだ。このまま遠慮されて大怪我でもされたら、嫌だよ私・・・」
「エリス・・・分かった、それならお言葉に甘えるよ」
俯くエリスを見て決心を固める。俺には危機感というものが欠如していた。そうだよな。エリスやラクシュミーのことを考えてなかった。
“ダンまち”の世界は過酷で、特に冒険者という職業は群を抜いて危険だ。今のままではいつか必ず死ぬか、仲間を失うだろう。
しっかりしろ、アラン・スミシー!一人の時間が多かった前世とは違うんだぞ!
「本当に?」
「おう!オススメはやっぱり【ヘファイストス・ファミリア】か?」
「! うん!バベルには掘り出し物がたくさんあるからそこに行こう!ピッタリのものがきっと見つかるよ!」
「よし、決まりだな。案内頼むよ」
明るく前を歩くエリスの背を追い掛けた。いい防具があるといいなと思いながら。
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「ほえ~、色々あるんだなぁ・・・」
「でしょう?私は自分の選ぶから、アランも選んでおいてね!金銭的なことは気にしなくていいから!」
お姉さんに任せなさい!と胸を張るエリスに自然と笑みが溢れる。姉弟よりも幼馴染くらいが合ってるのかな?・・・そんなものと縁がなかったけど。
待ち合わせの時間を決めて、別行動となった。俺はまず防具から揃えようと防具のコーナーへと足を運んだ。
「鉄製の鎧」
これは重そうだなぁ。俺の戦闘スタイルと合ってない・・・って、これドワーフ用じゃねぇか。別のものを見ても似たようなものだった。ヴェル吉のがあったけど、ピンとこなかったのでパス。
「盾」
これは普通に有りだ。だが、不意打ちに対応出来なかった場合危ない。頑丈そうな物がそれなりにあるので、一応候補として考えておこう。
「革製の鎧」
先程より軽く、着ている服の上から装備できる。戦闘衣などと組み合わせることで、防御力の底上げが可能・・・これじゃね?
「決まったな」
俺は革製の鎧をメインに探す。俺のサイズと合ってるのはどれだろ。これはデカイ。これは小さい。うーん、中途半端。あれも違う、これも違う。どこだどこだ~と・・・おや?
「これかな?」
俺は箱の中に置いてあった防具に手を伸ばした。実際にサイズを確認してみると、存外悪くなかった。
「これを作成した素晴らしい鍛冶士の名前はなんだろな・・・」
シトリー・ハンナ。近くにいた店員に詳しく聞けば、最近Lv.2になった女性冒険者で、ランクアップ前に鍛えた最後の防具なのだとか。機会があれば会ってみるのもいいだろう。
よしよし、防具は決定だね。次は武器だ。これは支給品の剣を代えよう。レイピアはまだ使えるし、なんなら刃こぼれしてない。不思議だね。
「ここだな」
武器専門コーナーに辿り着いた。遠くでエリスが集中して吟味していた。後で声掛けよ。
性能重視。オークみたいなデカイ敵と戦うのだ。防御は最低限にして、ズバッと斬れるのがいいよね。
防具みたいに合うものを探し、
「・・・これがいいかな」
サーベル状の剣。切れ味も良さそうで耐久面も申し分ない。鍛冶士も案の定シトリー・ハンナ。もはや運命だろ。
全部決まったので、エリスのもとへ向かった。彼女も丁度終わったらしく、一緒に会計へと進んだ。
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十階層。
そこは霧が立ち込めるエリアであり、そのせいか常時視界不良に陥る。加えてオークという大型モンスターも新たに出現し、この階層に来た冒険者は苦労を強いられる。
「アラン前方に二体!」
「了解!一体任せる!」
だがしかし、俺にはエリスという獣人の仲間がいる。彼女の聴覚嗅覚ならば即座に発見できるのだ。例え迷子になってもエリスがいれば安心だ。頼りきりにするのは心苦しいが、慣れるまでの辛抱だ。
「よし、倒した!」
「こっちもだよ!」
先程購入した剣で戦ったが、充分過ぎるほど通じた。防具だって動きを阻害されることなく効果を発揮している。エリスの言う通り、買ってよかった。
彼女も新調しており、年季が入ったボロボロだった服から新品に取っ替え、簡単に胸当てを装備している。武器も中層にも通じる短剣にしているのだとか。以前と同じく敏捷重視の装備。
「じゃあ今日は撤退しようか。目的は様子見だし」
「そうだね。私も充分確かめられたし満足だよ」
俺達は十階層を後にする。オークもシルバーバックもインプも倒した。一日の稼ぎとしてはこれでいい。
「私は換金してくるね」
「ん。ありがとな」
ギルドに入っていったエリスを見送った俺は、近くの椅子に腰掛ける。バベルではギルド職員が忙しそうに動き回っていた。その中にはソフィさんの姿もあったので挨拶をと思ったのだが、そんな空気じゃなかったので断念する。籠があったので祭りが近いのだろう。ならば忙しくて仕方ない。
時刻は夕方。俺達と同じように帰宅する冒険者でいっぱいだ・・・時折女性冒険者から視線が飛んでくるが気のせいだろう。俺がモテるわけない。
「お兄さん、お兄さん。イケメンのお兄さん」
「えあ?」
いきなり声を掛けられたことにより、間抜けな声が出る。待った、イケメンのお兄さんと言ったか?ヤベェ、反応しちまった。
「貴方で合ってますよ、お兄さん」
俺の視線は斜め下。目の前には俺に声を掛けたであろう女の子が。てか、お兄さん連呼すな。
・・・じゃなくて。アニメを見た俺なら分かる。この服装でこの声の主は絶対。
「はじめまして!私は
「ぐはぁっ!?」
「お、お兄さん!?」
俺は吐血する。このままだと原作ががががが。とりあえず仲間と相談して決めたいと答えておいた。
オリ主イケメン。
リリルカはどうしようか?アンケートは二日ぐらい様子を見ます。