三つの選択肢   作:新人作家

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誤字報告ありがとうございます!


テンション上げてけ!ケモ耳だぞオラ!

 

 「ほれ、更新終わったぞ」

 

 「ど~も」

 

 「どうしたのじゃ。そんな腑抜けた声を出して」

 

 「どっと疲れが来たんよ。ミノタウロスと戦ったから」

 

 俺は敷かれた布団に寝っ転がりながら答える。ご飯食べて風呂入った後はまだ元気があった。でも布団にうつ伏せなった瞬間これだ。これが布団の魔力。恐るべし。

 

 「ふむ。口で簡単に伝えた方がよいか?」

 

 「サンクス」

 

 ラクシュミーは俺の状態を察したのか、要所要所を分かりやすく伝え始める。まあ、魔法もスキルも発現してないからアビリティだけだが。

 

 「ミノタウロスに一太刀入れたから力が伸びておるな。次いで耐久。最後に敏捷かの」

 

 ん?

 

 「敏捷より耐久が上がったのか?」

 

 俺の予想だと、力と敏捷が同じくらい伸びていたかと思ってた。だって全力で逃げたし。

 

 「それほど奴の体が硬かったようじゃな。腕を持ってかれそうになったんじゃろ?私は納得しとるよ」

 

 「あ~」

 

 ラクシュミーの意見に納得した。てか、もう考えるのも面倒だ。眠くて意識がZZZ

  

 「寝たのか?全くこやつは・・・今日はしっかり寝て、明日も頑張るのじゃよ。そして───」

 

 「───生きて帰ってこい」

 

 一番最初の眷属アランを見るラクシュミーの目は、呆れから慈愛の眼差しへと変わる。優しく撫でながら眠った。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 そして後日。

 なんでかラクシュミーを抱いて(意味深)寝てた俺は、疲れが綺麗さっぱり消えてすこぶる快調だった。筋肉痛覚悟してたけどそんなこともなく。むしろいつもより元気だった。

 俺はダンジョンの出入り口であるバベルへと向かう。最初は道に迷って、恥ずかしながらラクシュミーに付き添ってもらったが、今では慣れたものだ。スイスイ進めちゃう。

 

 「はい、到着と」

 

 辿り着きましたね。途中道行く冒険者と肩などが当たっちゃうと、高確率でバトルイベントが発生するので注意を払いましょう。また、バトルを回避するには大声で「犯されるー!!」と叫べば逃げ出せます。敵はホモ疑惑、自分はその敵から狙われちゃうかも。そんなことにならないよう気を付けましょうね。

 

 「・・・何考えてんだ俺は」

 

 気分が上がってるのだろうか。快眠だっただけで、舞い上がりやがって。俺は俺に呆れた。

 今日も今日とてダンジョンで稼ごうとしたら。

 

 「あの~。そこのお兄さん」

 

 「ん?」

 

 後ろから声が掛けられ、条件反射でくるりと振り向く。これで俺じゃなかったら恥ずかしいね(笑)

 まあ、自意識が過剰になったわけでなく、声を掛けられたのは本当に俺だったようだが。

 目の前に立っていたのは黄緑色の髪と瞳。そして犬耳から察するに種族:犬人族。敏捷重視なのか上下軽装に揃えられており、所々にほつれと汚れが見られるくらい年季が入った服装。年齢は同じくらいかな?綺麗より可愛らしい女の子だ。

 

 「なんですか?」

 

 本当になんですか?客引き?美人局?怖いよぉ。

 

 「えと、あの、パーティを募集とかしてたりとか・・・」

 

 「? え~と?」

 

 「わ、私は別に怪しい者じゃなくてですね!昨日ギルドに立ち寄った時に、偶然聞いちゃいましてね!強い貴方とならもっと稼げると思った次第です、はい!・・・あとイケメンだし

 

 最後が小声で聞こえなかったが、簡単にまとめるとどうやらお金が欲しいみたいだ。犯罪とか何か悪いことに俺を陥れようとしているのか。それとも俺みたいに貧乏な零細派閥なのか。多分前者はない。緊張しているのか、顔を真っ赤にしている女の子から悪意は感じられない。なら後者?

 それと関係ないが、知らない人と喋ると早口になるよね。分かるよホント。

 

 「まあ、金がいるのも俺も同じだしなぁ」

 

 「! じゃ、じゃあ!」

 

 ソフィさんからパーティ組んだら到達階層進めてもいいと言われている。この先組めるか分からないので、ここで組んどくのも有りだろう。

 

 「取り敢えず三日間だけ組んでみて、それから決めていいですか?」

 

 「はい!それで構いませんよ!」

 

 やったー!!と喜びを露にする女の子。可愛いから、なーんて邪な考えで組んだわけじゃないから。あわよくば、なんて思ってないから。

 

 「あ、そう言えば名前を教えてませんよね!」

 

 「え?・・・ああ、そうですね」

 

 「私はエリス・キャルロ、()()()()()()()()()()()所属の冒険者です!あと敬語じゃなくても大丈夫ですよ!」

 

 先ほどとはうってかわり元気に自己紹介を決める。なるほどなるほど。エリス・キャルロね。そして所属は・・・え?

 

 「()()()()()()()()()()()?」

 

 「そうですそうです、【ソーマ・ファミリ・・・あ」

 

 「「・・・」」

 

 お互い無言になる。

 俺は知っている。金のためなら奴らは犯罪を平気で犯すことを。主人公ベルのサポーター、リリルカ・アーデもそこの派閥出身で、金が欲しいために同じ派閥の奴らから殺されかけたくらいだ。だとしたらエリスはどうなのだろうか。ザニスとかカヌゥとかと同じ下衆・・・ないな。これでそうだったらとんだ策略家だ。

 彼らの悪評は広く知れ渡っているので、好んで組む人はいない。それを知ってるエリスは口が滑ったと言わんばかりに俯いている。

 

 「俺はアラン・スミシーだ。最近新興した【ラクシュミー・ファミリア】所属で、同じく敬語とか別にいらないよ」

 

 「え?あの、知ってますよね?その・・・」

 

 ええ、知ってますよお姉さん。原作読みましたからね(ニッコリ)。

 

 「()()()()()()?」

 

 「よ、酔ってない!酔いが解けたから、真面目に働いて抜け出そうとしてるんだよ!」

 

 「なら大丈夫だよ。で?組むの?組ま「組む!」おおう」

 

 まだ途中なんだが。

 それと酔ってると本当に危ないので、冒険者の皆さんお気を付けて。

 

 「ほいじゃあ、改めてよろしく」

 

 「こちらこそよろしく!」

 

 当面は資金集めか。

 頑張っていこー!

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 エリスと組んで思ったことは、ダンジョン探索が効率的になったことだ。獣人の嗅覚と聴覚を最大限利用する索敵は、モンスターの位置を的確に補足した。また、エリス指導のもと、階層を五階層から七階層まで上げられた。キラーアントを倒せるか不安だったが、自慢のレイピアは通じてひとまず安堵した。

 

 「しっかし、本当にスムーズになったよ」

 

 「そうかな?」

 

 「うん。なんか無駄がないっていうか。援護も的確だし」

 

 休憩時間中に思ったことを口に出す。彼女の戦闘スタイルは短剣による速さ重視の剣術。そして、ここぞとばかりに繰り出されるボーガン。探索もそうだが、彼女自身からも無駄が省かれている。

 組んで分かった性格は、(仲間には)元気で時折呑気な姿を振る舞う感じだが、意外と現実主義者な側面を持っており、戦闘の際には油断が一切感じられない。失礼な話だが、調子に乗るタイプだと思ってた。

 

 「一時サポーター組んだ子から()()()()()()()。これ私に向いてるんじゃないか!?ってね」

 

 「待った、()()()()()()()()()()()()()()()学んだの?」

 

 「? そうだけど」

 

 まじかこいつ。こんな奴が【ソーマ・ファミリア】で埋もれていたのかよ。

 実際見たら分かる。見ただけでものにする(努力したのだろうが)こいつは、間違いなく天才だ。【ロキ・ファミリア】にいたら頭角を表していただろう。

 正直もったいないと思うが、気になる点は他にもある。

 

 「そのサポーターってのは同じファミリア?」

 

 「そーだよ。名前はリリ・・・ルカだっけ?だいぶ昔に組んだ子だから忘れちゃった」

 

 エリスはてへっ、てな感じで笑った。可愛いなくそっ。

 そのサポーターってのは、十中八九リリルカ・アーデだな。取り敢えず主人公と近しいネームドキャラとは関わりたくないなぁ。

 てか、忘れるなよ。影響受けたんなら。

 

 ・・・それにしても。

 

 「そんなことよりそろそろ行こ!たくさん稼がなきゃ」

 

 「うっす」

 

 呑気なのか現実的なのか、本当に分からねぇな。

 




エリス・キャルロ  
 16歳。数年前酔いが覚めたことで、現派閥から脱退を決意。以降は真面目に金銭を集める毎日を送る。本当は元気かつ呑気な性格だったが、環境が環境のせいで冷静かつ現実主義者の一面を持つように。適正があるものならすぐ習得できる天才肌。イケメンの主人公と組めて嬉しい。本当なら十階層へと進出できるが、更新には金がいるため現在足止めをくらっている。

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