「ほれ、更新終わったぞ」
「ど~も」
「どうしたのじゃ。そんな腑抜けた声を出して」
「どっと疲れが来たんよ。ミノタウロスと戦ったから」
俺は敷かれた布団に寝っ転がりながら答える。ご飯食べて風呂入った後はまだ元気があった。でも布団にうつ伏せなった瞬間これだ。これが布団の魔力。恐るべし。
「ふむ。口で簡単に伝えた方がよいか?」
「サンクス」
ラクシュミーは俺の状態を察したのか、要所要所を分かりやすく伝え始める。まあ、魔法もスキルも発現してないからアビリティだけだが。
「ミノタウロスに一太刀入れたから力が伸びておるな。次いで耐久。最後に敏捷かの」
ん?
「敏捷より耐久が上がったのか?」
俺の予想だと、力と敏捷が同じくらい伸びていたかと思ってた。だって全力で逃げたし。
「それほど奴の体が硬かったようじゃな。腕を持ってかれそうになったんじゃろ?私は納得しとるよ」
「あ~」
ラクシュミーの意見に納得した。てか、もう考えるのも面倒だ。眠くて意識がZZZ
「寝たのか?全くこやつは・・・今日はしっかり寝て、明日も頑張るのじゃよ。そして───」
「───生きて帰ってこい」
一番最初の眷属アランを見るラクシュミーの目は、呆れから慈愛の眼差しへと変わる。優しく撫でながら眠った。
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そして後日。
なんでかラクシュミーを抱いて(意味深)寝てた俺は、疲れが綺麗さっぱり消えてすこぶる快調だった。筋肉痛覚悟してたけどそんなこともなく。むしろいつもより元気だった。
俺はダンジョンの出入り口であるバベルへと向かう。最初は道に迷って、恥ずかしながらラクシュミーに付き添ってもらったが、今では慣れたものだ。スイスイ進めちゃう。
「はい、到着と」
辿り着きましたね。途中道行く冒険者と肩などが当たっちゃうと、高確率でバトルイベントが発生するので注意を払いましょう。また、バトルを回避するには大声で「犯されるー!!」と叫べば逃げ出せます。敵はホモ疑惑、自分はその敵から狙われちゃうかも。そんなことにならないよう気を付けましょうね。
「・・・何考えてんだ俺は」
気分が上がってるのだろうか。快眠だっただけで、舞い上がりやがって。俺は俺に呆れた。
今日も今日とてダンジョンで稼ごうとしたら。
「あの~。そこのお兄さん」
「ん?」
後ろから声が掛けられ、条件反射でくるりと振り向く。これで俺じゃなかったら恥ずかしいね(笑)
まあ、自意識が過剰になったわけでなく、声を掛けられたのは本当に俺だったようだが。
目の前に立っていたのは黄緑色の髪と瞳。そして犬耳から察するに種族:犬人族。敏捷重視なのか上下軽装に揃えられており、所々にほつれと汚れが見られるくらい年季が入った服装。年齢は同じくらいかな?綺麗より可愛らしい女の子だ。
「なんですか?」
本当になんですか?客引き?美人局?怖いよぉ。
「えと、あの、パーティを募集とかしてたりとか・・・」
「? え~と?」
「わ、私は別に怪しい者じゃなくてですね!昨日ギルドに立ち寄った時に、偶然聞いちゃいましてね!強い貴方とならもっと稼げると思った次第です、はい!・・・あとイケメンだし」
最後が小声で聞こえなかったが、簡単にまとめるとどうやらお金が欲しいみたいだ。犯罪とか何か悪いことに俺を陥れようとしているのか。それとも俺みたいに貧乏な零細派閥なのか。多分前者はない。緊張しているのか、顔を真っ赤にしている女の子から悪意は感じられない。なら後者?
それと関係ないが、知らない人と喋ると早口になるよね。分かるよホント。
「まあ、金がいるのも俺も同じだしなぁ」
「! じゃ、じゃあ!」
ソフィさんからパーティ組んだら到達階層進めてもいいと言われている。この先組めるか分からないので、ここで組んどくのも有りだろう。
「取り敢えず三日間だけ組んでみて、それから決めていいですか?」
「はい!それで構いませんよ!」
やったー!!と喜びを露にする女の子。可愛いから、なーんて邪な考えで組んだわけじゃないから。あわよくば、なんて思ってないから。
「あ、そう言えば名前を教えてませんよね!」
「え?・・・ああ、そうですね」
「私はエリス・キャルロ、
先ほどとはうってかわり元気に自己紹介を決める。なるほどなるほど。エリス・キャルロね。そして所属は・・・え?
「
「そうですそうです、【ソーマ・ファミリ・・・あ」
「「・・・」」
お互い無言になる。
俺は知っている。金のためなら奴らは犯罪を平気で犯すことを。主人公ベルのサポーター、リリルカ・アーデもそこの派閥出身で、金が欲しいために同じ派閥の奴らから殺されかけたくらいだ。だとしたらエリスはどうなのだろうか。ザニスとかカヌゥとかと同じ下衆・・・ないな。これでそうだったらとんだ策略家だ。
彼らの悪評は広く知れ渡っているので、好んで組む人はいない。それを知ってるエリスは口が滑ったと言わんばかりに俯いている。
「俺はアラン・スミシーだ。最近新興した【ラクシュミー・ファミリア】所属で、同じく敬語とか別にいらないよ」
「え?あの、知ってますよね?その・・・」
ええ、知ってますよお姉さん。原作読みましたからね(ニッコリ)。
「
「よ、酔ってない!酔いが解けたから、真面目に働いて抜け出そうとしてるんだよ!」
「なら大丈夫だよ。で?組むの?組ま「組む!」おおう」
まだ途中なんだが。
それと酔ってると本当に危ないので、冒険者の皆さんお気を付けて。
「ほいじゃあ、改めてよろしく」
「こちらこそよろしく!」
当面は資金集めか。
頑張っていこー!
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エリスと組んで思ったことは、ダンジョン探索が効率的になったことだ。獣人の嗅覚と聴覚を最大限利用する索敵は、モンスターの位置を的確に補足した。また、エリス指導のもと、階層を五階層から七階層まで上げられた。キラーアントを倒せるか不安だったが、自慢のレイピアは通じてひとまず安堵した。
「しっかし、本当にスムーズになったよ」
「そうかな?」
「うん。なんか無駄がないっていうか。援護も的確だし」
休憩時間中に思ったことを口に出す。彼女の戦闘スタイルは短剣による速さ重視の剣術。そして、ここぞとばかりに繰り出されるボーガン。探索もそうだが、彼女自身からも無駄が省かれている。
組んで分かった性格は、(仲間には)元気で時折呑気な姿を振る舞う感じだが、意外と現実主義者な側面を持っており、戦闘の際には油断が一切感じられない。失礼な話だが、調子に乗るタイプだと思ってた。
「一時サポーター組んだ子から
「待った、
「? そうだけど」
まじかこいつ。こんな奴が【ソーマ・ファミリア】で埋もれていたのかよ。
実際見たら分かる。見ただけでものにする(努力したのだろうが)こいつは、間違いなく天才だ。【ロキ・ファミリア】にいたら頭角を表していただろう。
正直もったいないと思うが、気になる点は他にもある。
「そのサポーターってのは同じファミリア?」
「そーだよ。名前はリリ・・・ルカだっけ?だいぶ昔に組んだ子だから忘れちゃった」
エリスはてへっ、てな感じで笑った。可愛いなくそっ。
そのサポーターってのは、十中八九リリルカ・アーデだな。取り敢えず主人公と近しいネームドキャラとは関わりたくないなぁ。
てか、忘れるなよ。影響受けたんなら。
・・・それにしても。
「そんなことよりそろそろ行こ!たくさん稼がなきゃ」
「うっす」
呑気なのか現実的なのか、本当に分からねぇな。
エリス・キャルロ
16歳。数年前酔いが覚めたことで、現派閥から脱退を決意。以降は真面目に金銭を集める毎日を送る。本当は元気かつ呑気な性格だったが、環境が環境のせいで冷静かつ現実主義者の一面を持つように。適正があるものならすぐ習得できる天才肌。イケメンの主人公と組めて嬉しい。本当なら十階層へと進出できるが、更新には金がいるため現在足止めをくらっている。