インフィニットストラトスー可能性に満ちた閃光ー   作:のらり くらり

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お久しぶりです。
しばらく時間が空いてしまいました、待たれている方はいないと思いますがゆっくりとやらせてもらいます。



past.9

ペーネロペーが部隊の先頭になり、IS部隊はフランスを目指す。天気は晴れ、一年を通して雨が少なく、ヨーロッパで三種の気候が同時に存在しているのはフランスだけだ。

本日もペーネロペーの調子は良い。ミノフスキー・クラフトの駆動音が心地良く、MSとは違った肌で風を感じる。

 

レーン・ エイムはプロの軍人だった。空気を味わいながら愛機の状態や、索敵を同時に行う。最新鋭のペーネロペーを任されたこと、一個の部隊を任されたこと、それが彼の意識を強くさせた。

 

「……そろそろか」

 

国境を越え、作戦エリアに近づいていく。ペーネロペーが伝えるウィンドを一瞥し、レーンは部隊に通達する。

 

「各機、装甲を展開せよ!ポイントに到着と同時に通告、妨害はすぐに出てくると思え」

 

『了解―――』

 

レーンの指示を聞き、それぞれISに変化が訪れる。装甲が増え、パイロットを包み込んだのだ。それは全身装甲(フルスキン)と呼ばれる状態で、フィクションで見られる人型のマシーンであった。

これは束が仕掛けた細工の一つで、テロリストが素顔を晒すわけにはいかない。こうして情報を隠すための手間が必要になったわけである。インストールの要領でカスタムウィングとして扱われるため、バスロットへの負担も軽減できるという寸法だ。

 

オレンジや赤といった装甲を纏うメッサー、頭部は一つ目という特徴的なものである。縦と横に動いたその目は動作確認と索敵を同時に行う。

レーンのペーネロペーは白や紺の装甲に身を包む。特徴的な額のアンテナ、人間と同じく両目が遠くにある目標を見据えている。

 

『陸戦部隊の位置が分かった、もうすぐ合流できる!』

 

フェンサーの報告からペーネロペーがウィンドウでレーンに正確な位置を知らせる。おおよその合流までの時間も算出され、レーンは頭の中で答えを出して頷く。

 

「了解した。ヴァリアントとシーラックに通達、このままデュノア社まで一気に行くぞ…!」

 

バスロットからビームライフルを展開し、ペーネロペーの出力を上げていくレーン。今回は一夏の初陣、一抹の不安はある。しかし、彼は自分が手塩にかけた人材だ。物事の吸収力と対応力は評価している。

単独行動ならまだしも、新兵の彼には味方が付いているのだ。

 

「これで私が堕ちたらお笑い種だな…」

 

『何か心配ごとかしら…?』

 

「……ッ!」

 

不意を突かれたレーンの前方に割り込む機体、陽光を浴びて文字通り輝くマシーンはどこか妖艶だった。相変わらずの姿は本当に目に付く、余程の目立ちたがりか自信の裏付けか……実力を考えれば後者だとレーンはため息を付く。

スコール・ミューゼルの専用機、銘は「ゴールデン・ドーン」―――黄金の夜明けを意味する機体がパイロットたちの目を刺激する。

 

『相変わらず眩しいな…』

 

「うふふ、ありがとう。目が覚めたかしら?」

 

憎たらしい返事をするスコールは幼い子供のようだった。これから始まるのは戦争だというのに彼女からは緊張感が感じられない、こちらが感じない程に隠しているのかどうか、それさえも分からない…。

 

『あの坊やなら大丈夫よ』

 

「……その根拠は?」

 

『女の勘、というところかしら』

 

探りをいれたわけでは無いが、どうにも掴めない女だ。レーンはスコールの纏わりつくような声を振り払い、ポイントへの到着時間と作戦を再び見直した―――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸戦部隊を載せたトラックは市街地を駆け巡る、荷台を隠す垂れ幕から僅かな喧騒が聞こえる。

 

「そろそろだ!準備しておけ!」

 

ドライバーの報告に陸戦部隊のメンバーから笑みが消える。一夏は殺気を肌で感じて震えると、周囲の動きにハッとして準備を始める。

 

「もうすぐレーンたちが来るぜ。坊や、死ぬなよ」

 

「はい…!」

 

立ち上がってメッサーを起動させる準備をしているガウマンからの報告、メンバーは装備の確認を再び行う。激励を受けた一夏は力強く頷いた。

先陣を切るメンバーたちが一夏の肩や頭に手を置いてトラックから飛び出す。その中にハマもいて、不意に彼女と目が合った。ウィンクを一つ零した彼女に微笑み、頷いて応える。

 

先に外に出たメンバーがトラック周辺の安全を確保する。周囲に敵がいないことを確認し、車内にいるメンバーに対して手を仰ぐようなサインを出す。それを見たガウマンが外に出てメッサーを起動させる、装着は一瞬でガウマンはそのまま上昇して後続部隊との合流を待つ。

エメラルダ、ハーラ、ロッドの三人もメッサーを展開して索敵をする。すると間もなくメッサーが接近する存在をパイロットたちに知らせる。ズームしたウィンドに映る特徴的な二機のIS、ペーネロペーとゴールデン・ドーンだ。

 

『状況は?』

 

「今のところ動きはない、通告してやれよ」

 

『分かっている……』

 

合流したレーンは腕を広げ、散開のハンドサインを出す。デュノア社を囲むようにIS部隊が展開し、完全に包囲された状態となる。ビームライフルやシールドを手に、戦闘態勢を取る。

 

『デュノア社に通告する!我々はマフティー、この世界を変えんとする者である!我々はこれより、デュノア社に対して武力行使による粛清を開始する!』

 

『ISによって歪んだ世界、それを世界に撒き散らす貴方がたを許す事はない。歪みと腐敗の無い世界を実現させるための礎となってもらう』

 

レーンの通告に続きスコールが付け加えた事で、マフティーの行動に現実味が増す。

IS部隊が通告は時間をかけて行う、それは陸戦部隊の展開に必要な時間を稼ぐ意味があった。レイモンドとヘンドリックスの後に続いて一夏も作戦通りの位置に付く。スリーマンセルとなってそれぞれに散開し、ゲートの周辺を固める。

 

通告の後は決まってインターバルを置く、投降する意思があるかを見極めるためだ。無抵抗な人間を殺したとなっては世間の評価は一気に損なわれる。これはハサウェイのせめてもの慈悲だ、連邦政府閣僚は命惜しさに必ずと言っていいほど、MS部隊などで抵抗をしていた。

この世界では力を持てる人間が限定される、力なき者は従うか華々しく散るか……二つに一つであるが、世界が変わろうとも人間とはかくも欲が深いものである。

 

 

 

権力に財力、欲に溺れた者はそれを離すまいと足掻き始めるのだ―――。

 

 

 

インターバルと定めた時間を過ぎた、それまでに社員と思われる人間が手を挙げて投降してきている。シベットの班が戦闘区域から出るように誘導し、レーンたちIS部隊が屋上の包囲を完了する。

 

『時間だ。これより社内にいる全ての人間を敵と判断する』

 

『各員、作戦開始』

 

レーンとスコールの合図を機に、ついに戦闘が幕を開ける。陸戦部隊は下から上に向かって制圧を開始する、IS部隊は屋上を始め、下に向かって挟む形で制圧を始める。正面ゲートを突破し、社内へと進入する。それぞれの班に分かれ、一夏は銃声と怒号が響く戦場をがむしゃらに走る。目の前のレイモンドたちの背中を目印に、低い体勢を維持したまま階段を登る。

 

「進め!」

 

「やっちまえぇぇ!」

 

「ウッ!アァァ……」

 

「嫌だ、や、やめ……」

 

後方に広がっている阿鼻叫喚の地獄絵図、想像するほどに血の気が引いていく。一夏は浅くなる呼吸の中、必死に前進する。レイモンドに教えられた事を思い出したが、背中を見失わないことで精一杯だった。

 

「いたぞ!こっちだ!」

 

「クソッ、テロリストどもめ…!」

 

長い廊下の突き当たりから敵が出てくる、握られた銃を向けて迷いなく引き金を引いた。

 

「ッ!?」

 

「うわ…!?」

 

レイモンドが牽制しながら壁の陰に隠れる。同じようにヘンドリックスが壁に隠れるが、呆然と立つ一夏を壁に引き寄せた。すぐにレイモンドの援護に入るヘンドリックスがトリガーを引く。

 

「しっかりしろ!そんなんじゃ、的になって死ぬぞ!」

 

「……す、すいません」

 

荒い息を吐きながら、一夏はアサルトライフルを構える。レイモンドたちと同じように壁の向こうから迫る敵に対し、トリガーを引く。命中したかどうかは分からない、壁から顔を覗かせながら再びトリガーを引く。その時、相手の姿が映る。

一夏はすぐに顔を引っ込めた、訓練の時のターゲットとは違うと肌で感じたからだ。人間、相手も同じ人間なのだと血の気が引く感覚に襲われた。

 

「ッ……!?」

 

その瞬間、一夏は強烈な頭痛に襲われた。思わず頭を押さえて蹲る一夏、彼はこの感覚を知っている。不死鳥のフェネクス―――リタを感じた時と同じだった。彼女がまた来たのか…そう考える一夏だが、今の彼にはリタを探す余裕が無い。

 

 

 

『来ているのか、ヤツらが…!』

 

『クソッ、マフティーめ…!』

 

 

 

一夏は声を耳にした。すぐ近くにいるような、ハッキリとした声だった。周囲を確認する一夏だが、姿は見えない。勘違いかもしれない、だがそれを放置してレイモンドたちに何かあったら……。その思いが一夏を奮い立たせた。

 

「一夏!」

 

「おい、どこに行くんだ!」

 

ふらふらとした足取りで来た道を戻り始める一夏、レイモンドとヘンドリックスがそれを咎める。一夏は立ち止まり、足に力を入れて銃を構えた。そして、レーンの指導を思い出す―――。

しっかりと腕を伸ばし、照準がズレないように力を入れて踏ん張る。レーンの喝を耳にした気がして、一夏は訓練での経験を想起する。しばらく構え、待っていた時だった…。

 

銃弾の音が止んだ。そこから聞こえる足音は後方、つまり一夏のいる方向からだ。突き当たりから姿を現したのは人、敵だった。

 

「……ッ!?」

 

「いたか…グアッ!?」

 

相手はこちらに気付いた。一夏たちの存在に気付き、戦闘態勢に入るところであった。しかし、彼らは瞬く間に銃弾を受けた。それよりも速く一夏がトリガーを引いていた。反撃の無いことを確認した一夏は素早く動いた。

踵を返し、ヘンドリックスの前に出てレイモンドの援護に入る。敵が姿を消した事で弾幕が止んだ、一夏はアサルトライフルを背中に回して横に出た。腰の小銃を取り出して腹這いとなり、相手の出てくると思われる場所に狙いを定めた。

 

「……ッ」

 

姿を現した敵に引き金を引く一夏、敵は伏せている一夏への対応が遅れて餌食となる。匍匐の特性は姿勢を低くする事で敵からの発見を下げられるということ、被弾する面積が少なくなる事で生存率を向上させる事にある。死角となった一夏の銃撃に動きが止まり、レイモンドとヘンドリックスがとどめを刺した。

 

事切れた敵を見送り、レイモンドとヘンドリックスは銃を下ろした。レイモンドは立ち上がった一夏にひと言物申すつもりだったが、一夏は小銃を構えて振り返った。彼の視線の先で敵が動いていた、一夏によって撃たれた腕から血を流しながら銃を力強く握っている。

 

「この、テロリストどもめ……」

 

痛みを堪えながら、敵は震える手で銃を向けた。だが、乾いた銃声が鳴ると事切れた。一夏がトリガーを引いて敵の命を奪ったのだ。これ以上の反撃は無い、一夏はそう悟って小銃を腰のホルスターに納めた。

油断していたのは自分だったのか、レイモンドは一夏を諌めることをやめた。そのまま一夏を問い詰めていたら、自分がここで死んでいた可能性もあったのだ。レイモンドはため息を吐き、周囲の確認をして前進を思いつく。

 

「ここにいたか、テロリスト!」

 

彼方からの音が轟音に変貌し、暴風を伴ってレイモンドたちを襲った。それは生身の人間では起こせない、ISであるからだ。ラファール・リバイブ―――デュノア社特性の第二世代のISだ。レイモンドとヘンドリックスは戦慄する、IS一機の戦力が通常兵器の比では無いと知っているからだ。

 

「レイ…!」

 

撤退を考えたヘンドリックスがレイモンドを呼ぶ、ヘンドリックスは壁に隠れながらレイモンドが逃げられるように援護に移る。しかし、一夏だけは違った……。

 

アサルトライフルを構え、敵のラファールに向かって走り出したのだ。これにはレイモンドたちも呆気に取られて動けず、一夏の死を予感した。

トリガーを引きながらレイモンドの横を走り抜けた一夏。ここでやらなければやられる、極限まで追い込まれた彼は考えるよりも先に動いていた。

 

「バカめ…!」

 

敵のパイロットは一夏の行動を嘲笑う。自信の表れか油断か、それが無意味だと吐き捨てたのだ。諸共討ち果たす、敵はガルムを展開して狙いを定めた。距離と口径や威力を考えるとガルムで一度に倒せると踏んでいた。

一夏が尚もライフルを連射するも、敵は憐れみを含んだ視線を向けた。味がなくなったガムのように、興味を失った敵は一夏をロックして引き金に指をかけた。

 

その瞬間、敵のラファールがアラートを鳴らした。一夏をロックしたはずが、自分が狙われていると漸く気づいたのだ。視線を移した瞬間にダメージを受けたラファール、緑の閃光に包まれて体勢を崩す。大きなISだった、こんな大きな的に気づかなかったとは、敵が悔いるよりも早くそれはラファールをビームサーベルで切り裂いた。エネルギーが無くなったラファールのパイロットが投げ出された、自身を撃墜したISを見上げた彼女は震えるしか出来なかった。

 

レイモンドがとどめを刺し、事態は事なきを得た。見慣れたISの登場で窮地を救われ、レイモンドたちは安堵する。

 

「大丈夫かい?一夏くん」

 

「ハサウェイさん……」

 

全身装甲であるISのフェイスが粒子となり、パイロットであるハサウェイ・ノアが顔を覗かせた。ハサウェイと分かって、前に飛び出した一夏は力が抜けてその場に腰を下ろした。

ハサウェイからの情報でターゲットは上の階層にいるらしい。態勢を立て直し、三人はハサウェイという戦力を伴った再び走り出した―――。

 

 

 




過去回の第9回でした。

次で一度、終わりにしたいとは思っています。
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