アニメ最終話で、喜多ちゃんがぼっちちゃんのこと抱きしめながら腹話術してる場面あるじゃん?最後後ろからその二人が描かれてるところを見てさぁ 作:明太子美味しい
昨日は興奮して中々寝付けなかった。
一度でも彼女がどんな反応をするのか考え始めると、妄想が止まらなくなる。おかげで寝不足だ。夜更かしはお肌に悪いから、次からは寝る前の妄想は控えようと思う。
目をショボショボとさせながら、私は教室へと入る。友人達から挨拶され、私も返事をしながら荷物を机に置いた。
「あれ? 喜多ちゃん今日は早いねー」
その通り。今日の私は、いつもひとりちゃんと合流する時間より更に三十分早いのだ。
これには昨日の妄想も関わってくるのだが、今語るのはやめておこう。
私はキメ顔で、やりたいことがあるからと答えた。その表情に、友人は何となく察したらしい。彼女は途端に椎茸のような目つきをして、ニヤニヤしながら応援の言葉を残して去っていった。
それじゃあ、行きますか。
私は教室を出て、一年二組へと向かった。
私は後ろの扉から二組の教室に、堂々とした足取りで入る。教室にいる生徒達の視線が、私の方に集まった。
朝早い時間であるため、まだ数人しか登校していない。彼らは他クラスである私の登場に戸惑っているご様子。そのうちの一人が私に話しかけてきた。
「あー。後藤さんはまだ来てないよ」
――ありがとう。でも、それを狙ってたのよ。
私は堂々と答えた。そう。今日の私は偉大なる目的のために、いつもより早く登校したのだ。
彼にお礼を告げてから、彼女の机へと向かう。
それから私は、椅子を引いて――
ざわ…ざわざわ……
――当然のように座った。
周囲の戸惑いなど何も気にならない。私は目を瞑って集中力を高めていく。それから、心の中で告げた。
さぁひとりちゃん。私は待っているから、いつでも登校してきなさい。
瞑想すること二十分。登校する生徒が増えてきたようで、次第に騒めきが増し始めた。何故喜多さんが? という戸惑いの声も耳に入ってくるが、私は動じない。
不動の喜多とは私のことだ。目的を達するまで梃子でも動かない所存である。
そんな訳も分からないことを考えていると、遂にその時がやってきた。
「ヒェッ。き、喜多さん……?」
キタキタキタキタ―――!!
――ひとりちゃんおはよ!
「お、おはようございます」
彼女は挨拶を返し、荷物を机に置いた。それから、戸惑いの表情を浮かべて私に尋ねてくる。
「どどどどうして、わ、私の椅子に……?」
私は何も答えない。無言で微笑み、もっと近くに寄って欲しいと手招きをする。
彼女は何も疑うことなく、私に体を近づけてくれた。
――今だ!
私はガバリと手を広げて彼女を捕まえる。ぴぇっ!という声が聞こえたが、決して構うことはない。
それからくるりと彼女の体を回転させ、もう一度抱え込んでから椅子に座った。
その間約一秒。見事な早技だ。
そして彼女に告げる。
――私が椅子よ!
「ヒェェェェ」
彼女は恥ずかしさからか、プルプルと体を震わせている。そんな彼女の頭を一撫でして、私は両腕をお腹に回した。
ぷにゅうっ。
あぁ。
私はこの日のために産まれてきたんだわ……。
++++++
今日はアルバイトもバンド練習もお休み。
そのため、久しぶりにクラスのお友達と出掛けている。
どうも彼女達おすすめのパンケーキ屋さんがあるらしい。美味しいのはもちろんのことで、パンケーキの見た目がとても映えると話題になっているそうだ。
そうと聞いたら行くしかない。例外を除いて、女の子の体は甘いもので出来ているのだ。それに、イソスタグラマーとしても是非ともチェックしておきたい。
友人達に連れられ、私はお店へと辿り着いた。
そこは広くスペースをとっており、清潔感の漂うお洒落なカフェだった。その様子に私の期待が膨らむ。席に着いてから、私は噂のパンケーキを注文した。
料理が届くまで、私達は雑談に花を咲かせる。最近のドラマはあれがおもしろいとか、あのグループの歌が素敵だとか。それから――
好きな人の話だとか。
この話になると、みんなが私の方を見てニコニコしてくる。
ちょっと!? と思わなくもないが、私が恋をしているのは事実なので黙って受け入れている。
何故か私がひとりちゃんのことを好きだとバレているらしい。女子高生の情報力は恐ろしい。今度からは気を付けようと思った。
「私も喜多ちゃんみたいな恋をしてみたいなー。どこかに少女漫画の王子様みたいな人居ないかな?」
「ないない。あんな完璧星人居るわけないから」
友人達の会話を聞いていると、気になる単語が耳に入った。
――二人とも、少女漫画を読んでいるの?
二人は驚いた顔で、読んだことないの!? と詰め寄ってきた。読んだことはないし、残念ながら興味を持ったこともなかった。
けれど彼女達がハマるぐらいだ。少しだけ気にはなる。私はどんなところが良いのか訊いてみた。
「やっぱり、読んでてドキドキしちゃうところかな? 苦しいときに颯爽と助けてくれたり、主人公だけに心を許して会話してくれたりするんだよ」
ふむ。苦しいときに助けてくれて、主人公だけに心を許すと。ん?
その説明を聞いてはたと気が付く。
その王子様、もしかしてひとりちゃん……!?
なるほど。それなら確かに少女漫画も面白いだろう。もしひとりちゃんが居なかったら、私もハマっていたかもしれない。
「あとねー。技みたいなのがあって、それにときめいちゃうんだ。壁ドンとか顎クイとか。あ、あとは――あすなろ抱きとか!」
……?
あすなろ抱きとは何だろうか、友人に尋ねてみる。
「ドラマで一回やってから凄い勢いで有名になってね? それから漫画でもいっぱい出るようになったんだー。私もイケメンにこんなことされたい!」
これこれ! と彼女が携帯画面を見せてくれる。
そこには、男の人が女の人を後ろから抱きしめている画像が表示されていた。
――その画像を見た瞬間、私の頭に衝撃が走った。
定期的に起こるこの現象。それは決まって、私が幸せになる天才的な閃きをするときに発生する。
これは使える。私は確信した。
決行は明日の朝。彼女が登校するより先に準備していよう。いやそれとも――
夢中で作戦を練る私の前に、美味しそうなパンケーキが届いた。ひとまず甘いスイーツを食べて、明日に備えることにしよう。
噂通りの映えるパンケーキを前に、私は写真を一枚撮ってから食べ始めるのだった。
++++++
昨日は興奮して中々寝付けなかった。
一度でも彼女がどんな反応をするのか考え始めると、妄想が止まらなくなる。おかげで寝不足だ。夜更かしはお肌に悪いから、次からは寝る前の妄想は控えようと思う。
目をしょぼしょぼさせながら、私は一年二組の教室へと向かった。
そして後ろの扉から堂々とした足取りで入る。教室にいる生徒達の視線が私の方に集まったが、気にせず彼女の机へと向かう。
それから私は、彼女の椅子を引いて――
ざわ…ざわざわ……
――当然のように座った。
周囲の戸惑いなど何も気にならない。私は目を瞑って集中力を高めていく。
そして遂に、その時はやってきた。
「ヒェッ。き、喜多さん……?」
キタキタキタキタ―――!!
――ひとりちゃんおはよ!
「お、おはようございます」
彼女は挨拶を返し、荷物を机に置いた。それから、戸惑いの表情を浮かべて私に尋ねてくる。
「どどどどうして、わ、私の椅子に……?」
私は何も答えない。無言で微笑み、もっと近くに寄って欲しいと手招きをする。
彼女は何も疑うことなく、私に体を近づけてくれた。
――今だ!
私はガバリと手を広げて彼女を捕まえる。ぴぇっ!という声が聞こえたが、決して構うことはない。
それからくるりと彼女の体を回転させ、もう一度抱え込んでから椅子に座った。
その間約一秒。見事な早技だ。
そして彼女に告げる。
――私が椅子よ!
「ヒェェェェ」
彼女は恥ずかしさからか、プルプルと体を震わせている。そんな彼女の頭を一撫でして、私は両腕をお腹に回した。
ぷにゅうっ。
沈んでいく。
私の腕が深く、どこまでも深く沈んでいく。
ひとりちゃんの体は、どこを触っても柔らかいわ……。
私はしみじみと思った。
膝に乗った彼女のお尻と太もも。それはむちっとした色気を匂わせながらも、ふわふわで柔らかい感触を伝えてくれる。
目の前にはサラサラでピンク色の綺麗な髪。ふわりと良い匂いが漂ってくる。
そして正面に回した両腕には彼女のお腹。なんだこの柔らかさ。全く、ひとりちゃんはけしからん!
私は更に力を込めて彼女を抱きしめた。彼女の体はとても暖かい。湯たんぽみたいだ。
ほのぼのとして癒されていると、腕の上に僅かな重みを感じた。
――何かしらこれ?
少しだけ腕を持ち上げる。
むにゅ、プルプル。
とても柔らかい、けれど少しだけハリも感じる。水風船みたいだわ。
「んっ」
突然聞こえてきた艶を感じるその声に、私は全てを理解してしまった。
これは! 私自身の体で感じたことのないこの感触は……!
あまりの感動に体を震わせる。それから私は、空を見上げて一筋の涙を流した。
あぁ。
私はこの日のために産まれてきたんだわ……!
+++
はっ!
どうやら意識を飛ばしていたらしい。慌てて時間を確認すると、ホームルームまであと十分程だった。
まだまだ楽しめることに私は嬉しくなった。ひとりちゃんは相変わらず、顔を真っ赤に染めて煙を出している。
そうだ。昨日あすなろ抱きについて調べてから、やりたいことがあったのだ。
私は彼女の肩を抱くように腕の位置を変え、顎を彼女の肩に乗せた。
それから精一杯かっこいい声を作って耳元で囁く。
――私じゃダメかしら?
シュボッ!
その瞬間、彼女は音を立てて空気中に霧散した。膝に乗っていた重みが消えて無くなり、私の腕が空を切る。
どうやらやり過ぎてしまったらしい。彼女は限界を超えてしまい、人の形を保てなくなってしまったようだ。
……もう少し味わっていたかったわ。
残念に思いながら辺りを見渡すと、ジトっとした目で私のことを見つめる生徒達。
あはっ!
時間が経てばひとりちゃんは元に戻るからー!
私はそんな言葉を残して急いで一年二組から脱出した。
いつの間にかぼっちは人間に戻っていたが、その瞬間を見た者はいない。