アニメ最終話で、喜多ちゃんがぼっちちゃんのこと抱きしめながら腹話術してる場面あるじゃん?最後後ろからその二人が描かれてるところを見てさぁ   作:明太子美味しい

12 / 27
お泊まりさせたいなぁ。けど原作みたいにちゃんとした理由がないなぁ。

から生まれたお話。



惜しかったなぁ

 

 ……柔らかい。

 

 微睡の中、私は何かを抱き締めていることに気が付いた。

 あまりの幸せな感触に手が自然と動き出す。

 

 ふわふわとしていて、ほんとに気持ちが良い。抱きしめる私の体がどこまでも沈んでいってしまいそうだ。

 それに、私の顔も柔らかくて温かい何かに包まれている。

 

 これは何だろう? 分からない。

 まぁいっか、気持ちいいし。

 ここが天国か……。

 

 

 

 

 ……ん?

 

 

 

 

 おかしい。

 私のベットに抱き枕は無いし、ぬいぐるみも置いていなかった筈だ。

 

 

 むにゅーっ。

 ポヨヨーン。

 

 

 確かめるために何度も手と顔を動かす。

 

 

 本当に気持ちが良い。ずっと抱いていたいわ……。

 

 

 なんて思いながら、ゆっくりと意識を覚醒させていく。目を開けると、目の前にはピンク色の巨大な山脈が鎮座していた。

 寝起きで碌に働いていない私の頭が、ハテナで支配される。

 

 

 ――何かしらこれ……?

 

 

 私はもう一度頭を近づけ、その山に挟まれた。

 

 

 柔らかい……!

 

 

 その感触に虜になる。

 夢中で頭をぐりぐりする私の耳に――

 

 

 

 

 ――んっ。

 

 

 

 

 艶やかな声が聞こえてきた。以前も聞いたことのある、ちょっとだけ色を感じるその声に、一瞬で意識が覚醒する。

 そして私は気が付く。自分が一体何を抱きしめているのかを……!

 

 

 

 あああっ!

 こ、これはまさか……!

 

 

 

 恐る恐る顔を上げた私の目の前には――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 キターーーーーーーーーーーーーーーン!!

 

 

 

 

 

 

 

 

++++++

 

 今週末は三連休である。なんでも秀華高の創立記念日とのことで、金曜日がお休みになった。

 学生にとってこれは喜ばしいことだ。平日がお休みになると、どこの施設も空いている場合が多い。友人達とのお出かけも捗るだろう。

 

 この三連休は何をしようか。

 私はワクワクとしながら、次の授業の準備を始めた。

 

 

 

 

 

 

「えー! 喜多ちゃんとぼっちちゃん、金曜日休みなのー!?」

 

「そんなことはありえない。私は決して認めない」

 

 時間は進み、場所はSTARRYに移る。

 今はアルバイトも終わり、みんなで一息入れてゆっくりしているところだ。そこで私は、ずっと考えていた三連休の予定について相談した。未だに何も決まっていないため、先輩達に休日の過ごし方を訊いて参考にしたい。

 

 そして伝えた週末の三連休に、先輩達は過剰な反応を示した。

 いいなぁいいなぁと言いながら、椅子に座った伊地知先輩が足をぷらぷらとさせている。リョウ先輩は本気で言っているのか分からないが、真顔で謎の凄みを発していた。

 

「あぁ休みの日の過ごし方だっけ? 私はやっぱり家事をしていることが多いかなぁ。それに、家ならお姉ちゃんとダラっとしたり、ドラムの練習もしたり出来るからね!」

 

 伊地知先輩らしい素敵な回答に頬が緩む。流石は下北沢の大天使だ。格の違いを見せつけられた。

 

 次はリョウ先輩だ。ミステリアスな雰囲気の先輩は、休日に一体どんなことをしているのだろうか。純粋に気になる。

 

「気分による」

 

 ……も、もう少し具体的なことを聞いても?

 

「CDショップでずっと曲聴いたり、本屋行って適当な音楽雑誌見たりしてる。あぁ、古着屋とかも結構行くかも」

 

 なるほど。リョウ先輩は比較的趣味に偏った過ごし方をしているようだ。

 お二方らしいといえばらしい回答に、なんだか安心する。

 

 そして最後に、ひとりちゃんに休日の過ごし方を聞いてみる。

 

「えと、ず、ずっと部屋に引きこもって、ギター弄ってます……。ヘヘッ、陰キャなもんで、つ、つまんない答えですいません」

 

 暗そうな雰囲気を漂わせながら、何故か私に謝ってきた。ひとりちゃんらしい回答で良いなと思うけれど、本人的には悲しいことらしい。

 

「で、でも! 予定は空けてます! 空いてるんじゃなくて、空けてるんです!」

 

 あはっ!

 

 江ノ島に行った日のことを思い出す。あの時も彼女は、そんなことを言って店長にアピールしていた。

 

 よし、予定は決まったわ!

 

 ――ひとりちゃん!

 

「ピッ!」

 

 ――今週末、一緒に遊びましょう?

 

「ふぇぇぇぇっ!」

 

「おっ、いいねぇー! 確か二人とも金曜日はシフト入ってないよね? ならバンド練習も無しにするから、思う存分楽しんできなよ!」

 

 おぉ流石は伊地知先輩! 本当にありがとうございます!

 あまりにも素敵な提案に私は感涙し、先輩に感謝の祈りを捧げた。えっ何? と戸惑う先輩に気にしないでくださいと伝え、私はひとりちゃんの方へと振り返る。

 

 ――それで、どうかしら?

 

「あ、あの、い、行きます!」

 

 やったわ!

 

 彼女の返事に気持ちが舞い上がる。

 あまりの喜びに私は、彼女の両手を握りしめてブンブンと振り回すのだった。

 

 

 

 

 

 

+++

 

「で、喜多の友達が好きな人と遊ぶから、どうすれば良いか相談に乗って欲しいと……?」

 

 翌日のお昼休み。

 私は腐れ縁とも言える友人とお弁当を食べながら、今週末の相談をしていた。あ、ちなみにひとりちゃんも誘おうとしたが、友人の存在を感じ取ったようで一瞬で断られてしまった。

 

「その友達の話ってさぁ、喜――」

 

 ――その子は結構困ってるみたいなのよ。

 

 こちらは割と真剣に相談しているのだ。あまり揶揄うようなことはやめてほしい。

 私は話を戻し、好きな人の特徴を友人に伝える。

 

「人見知りで人混みが苦手、インドア系で体力も全然無い、けれど柔らかくて可愛いくてカッコいい、ねぇ……」

 

 それアンタの好きな人じゃねぇか、とでも言いたげな視線から顔を背ける。それから私は渋い顔をして、話の続きを促した。

 

「好きな人がインドア人で、人混みが苦手なら答えは決まってるでしょ」

 

 本当!?

 流石は私の腐れ縁、頼りになる友人だ。期待した目で私は彼女を見つめる。

 

「連れ込め。お泊まりデートだ」

 

 えぇぇぇぇっ!

 

 あまりの驚きに、声を上げて椅子から立ち上がってしまった。私にクラス中の視線が集まる。注目を誤魔化すために、一度咳払いをして何事もなかったように座った。

 それから何故そんな大胆な提案をしてきたのか、彼女に理由を訊く。

 

「家なら外に出て動き回る必要なんか無いし、お泊まりすれば勝手に二人の仲も進むでしょ」

 

 なるほど。たしかにお泊まりすれば、例えイベントが起きなくても二人の仲は進むだろう。ひとりちゃん的にも、外で遊ぶよりも家でゆっくりしたほうが嬉しいかもしれない。

 

 予定は決まった。それなら早速彼女を誘いに行こう。

 相談に乗ってくれた友人にお礼を告げ、私は教室を飛び出した。

 

「……やっぱり喜多の話じゃん」

 

 

 

 

 

 

 ひとりちゃんは階段下の謎スペースに居た。やはり彼女は、暗くてジメジメしたところを好むようだ。よく覚えておこう。

 

 ――ひとりちゃん!

 

「ピッ!」

 

 ――三連休始めの金曜日、私の家でお泊まりしましょ!

 

「ヘェェェェェッ!」

 

 

 

 

 

 

 

+++

 

 待ちに待った金曜日。

 今日は私の人生で一位ニ位を争うくらい素敵な一日となるだろう。既にその確信がある。

 

 彼女のお家が遠いことから、約束の時間はお昼過ぎにしている。十四時過ぎには彼女が私の家にやってくるだろう。

 

 お菓子やジュースは補充済み、遊び道具も既に揃えた。加えてひとりちゃんを迎えるサプライズも用意した。

 完璧だ。いつでも彼女を迎える準備は出来ている。

 

 ―― ピーンポーン

 

 自分の用意周到さに満足していると、玄関のチャイムが聞こえてきた。遂にひとりちゃんがやってきたらしい。

 

 私は急いで光り輝く()()()()()()()を装着し、玄関の鍵を開けて彼女を呼び出した。

 

「き、喜多さん。おはようござ――」

 

 

 

 ―― パンッ! パンパンッ!

 

 

 

 イェ〜イ! ウェルカ〜ム!

 

 

 

 そう。私が用意したサプライズとは、以前彼女のお家にお邪魔したときに体験した、あのお出迎えを再現することだ。初めて見たときから楽しそうで良いなと思っていたのだ。だから、折角のチャンスということでやってみた。

 彼女は微動だにしない。どうやら驚きのあまり固まってしまったご様子。

 

 あはっ! サプライズ大成功ね!

 

 私が一人で盛り上がっていると、彼女は沈んだ表情でボソボソと語り始めた。

 

「どどどどうして!? わ、私がやったときはスベってたのに、どうして喜多さんがやるとこんなにも様になっているのか。こ、これが真の陽キャ? 所詮ミジンコみたいで碌に人と会話できないコミュ障陰キャには出来ないってことなのか? 私みたいな人間はいつだって陽キャの眩しさから目を逸らして、日陰に追いやら――」

 

 ちょ、ちょっと!?

 

 物凄い勢いで凹み始めた彼女に、私は慌てて駆け寄り必死に慰めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……危なかった。あのまま放置していたら数時間は無駄にしていただろう。彼女が戻ってきてくれて本当に良かった。

 

 何とか元に戻ったひとりちゃんを連れて、私の部屋へと向かう。途中、何か気になることでもあったのか、私に話しかけてきた。

 

「あ、あの、ご家族は今どちらに……?」

 

 ――お仕事で居ないから、今は私達二人っきりよ!

 

 今はまだお昼過ぎであるため、両親はお仕事に出かけている。私達にとっては非常に都合が良い。

 

「わ、私と喜多さんの二人っきり……!」

 

 彼女はそんなことを呟き、にへらと笑い始めた。

 

 もうっ! ひとりちゃんはなんて可愛らしいの!

 

 彼女はすぐ顔に出るから、喜んでいることが丸分かりである。あまりの可愛さに今すぐ抱きしめたくなったけれど、一先ず部屋に案内することの方が優先だろう。私は彼女を引き連れて自分の部屋に入った。

 

 それから彼女に少し待っているように伝え、私は急いで飲み物やお菓子を取りに行く。ここで部屋を出て行く時、わざと扉を少しだけ開けておく。それからすぐにお茶菓子を用意して、音を立てないよう慎重に部屋へと戻る。そして私は、ドアの隙間からひとりちゃんの様子を窺った。

 

 どうやら彼女は手持ち無沙汰なようで、立ったままソワソワとしている。けれど突然部屋を見渡してから、彼女は私のベッドの方へと歩き出した。

 

 

 ――ま、まさか……?

 

 

 私はごくりと唾を飲み込む。そして私は、これから起こることを一秒たりとも見逃さないように目を見開いて覗き込んだ。

 

 ひとりちゃんはベッドの脇に立ち、何かを迷う仕草をする。けれどすぐに顔を引き締め、私のベッドを見つめた。

 それから彼女は――

 

 

 あはっ!

 

 

 ――ゆっくりと私のベッドに寝転がり始めた。

 

 

 キタキタキタキターーーーー!!

 

 やった、やったわ!

 人のベッドに寝転がるなんて、よっぽど好きな人でないと出来ない筈よ! ひとりちゃんは私のことが好きなのねそうよねそうに違いないわ!

 やったー!

 

 あまりの興奮に脳内で無限に語りだす。今すぐ扉を開けて彼女に駆け寄りたくなったが、ギリギリで踏み止まる。私のベッドに寝転がるひとりちゃんを観る滅多なんて、滅多にない筈だ。もう少しだけ楽しみたい。

 

 私は興奮しながらも観察を続ける。

 ひとりちゃんはいつの間にか私のシーツに包まり、うつ伏せで寝転んでいた。それから何かを味わうように深呼吸をしている。彼女の顔は真っ赤で、目はギンギンに開いていた。

 

 

 ――ま、まさか……!

 

 

 興奮を必死に堪える私の耳に、ひとりちゃんの呟きが聞こえてきた。

 

「……喜多さん、本当に良い匂い。これが真の陽キャの匂いかぁ」

 

 キタキタキタキターーーーー!!

 

 やっぱり私の枕を味わっていたのね!

 分かる! 分かるわ!

 私もひとりちゃんのジャージを味わったもの!

 

 彼女の行動に親近感を覚える。体が勝手に動き出し、好きな人の匂いを味わってしまうのだ。だから私達はなにも悪くない。そうに違いない!

 

 私は思考を打ち切り、扉を見つめる。

 もう十分観察しただろう。もう十分我慢しただろう。

 

 ……なら、もう良いわよね? ここで決めても良いわよね!

 

 私は扉を開けて中へと入る。それからお茶菓子を机に置き、ゆっくりとベッドに近づいた。

 

 ――ひとりちゃぁぁん。

 

 自分で思うよりもねっとりとした声が出てしまった。でも構わない。私達は相思相愛なのだ。この程度、何も問題ではない。

 

 ……?

 

 けれど彼女からの返事はない。疑問に思った私は改めてよく観察してみる。すると、彼女が気持ちよさそうに寝ていることに気が付いた。

 

 そんな彼女の様子に肩の力が抜けた。折角の告白チャンスを逃してしまったのだ。全くひとりちゃんは……と私は苦笑いを浮かべる。

 そんなとき、邪な思いが私の心に浮かんできた。

 

 ――何か私にご褒美があっても良いわよね?

 

 私は優しくシーツを捲る。それからゆっくりと寝転び、彼女を優しく抱きしめた。

 

 相変わらず彼女は柔らかい。ふわふわとしていて、幸せな感触を伝えてくれる。

 

 ひとりちゃんを抱きしめているうちに、なんだか私まで眠くなってきた。今日はお泊まりだし、このまま寝ても良いかもしれない。

 

 ――大好きよ。

 

 私は一言彼女に呟き、眠りについた。

 

 

 

 

 

 

 

 

++++++

 

 ……柔らかい。

 

 微睡の中、私は何かを抱き締めていることに気が付いた。

 

 おかしい。

 私のベットに抱き枕は無いし、ぬいぐるみも置いていなかった筈だ。

 

 

 むにゅーっ。

 ポヨヨーン。

 

 

 本当に気持ちが良い。ずっと抱いていたいわ……。

 

 なんて思いながら、ゆっくりと意識を覚醒させていく。目を開けると、目の前にはピンク色の巨大な山脈が鎮座していた。

 寝起きで碌に働いていない私の頭が、ハテナで支配される。

 

 

 ――何かしらこれ……?

 

 

 私はもう一度頭を近づけ、その山に挟まれた。

 谷間に夢中で頭をぐりぐりする私の耳に――

 

 

 ――んっ。

 

 

 艶やかな声が聞こえてきた。以前も聞いたことのある、ちょっとだけ色を感じるその声に、一瞬で意識が覚醒する。

 

 

 

 こ、これはまさか……!

 

 

 

 恐る恐る顔を上げた私の目の前には――

 

 

 

 

 

「き、喜多さん……」

 

 

 

 

 

 ――顔を赤く染め、潤んだ瞳でこちらを見つめるひとりちゃんが居た。

 

 

 

 

 彼女は私の腕を振り解かない。それどころか、もっと欲しいと言わんばかりに彼女の方から腕を回してきた。

 

 もう私は止まらない。他の事なんて考えられない。

 

 ――大丈夫。責任、とるから。

 

 私はひとりちゃんに一言告げて馬乗りになった。それから彼女の腕をベッドに押さえつける。彼女は抵抗しない。トロンとした瞳で私のことを見つめるだけ。

 

 私はゆっくりと顔を彼女に近づけた。お互い目は閉じない。

 

 あと少し。私達の唇がふれ――

 

 

 

「――郁代? 今日泊まるお友達は……」

 

 

 

 あっ、お母さん。

 

 

 

「お、おほほほほ、これは失礼しました。ごゆっくり娘とお楽しみください♪」

 

 

 ――ちょっ!

 

 

 私はお母さんに弁明するため、大急ぎで部屋を飛び出したのだった。

 

 

 

 

 

 

「……惜しかったなぁ」

 

 

 




 この日の夕食で彼女達は、喜多家の母親にそれはもう揶揄われた。結果としてお互い妙に意識してしまい、これ以上の進展はなかった。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。