アニメ最終話で、喜多ちゃんがぼっちちゃんのこと抱きしめながら腹話術してる場面あるじゃん?最後後ろからその二人が描かれてるところを見てさぁ 作:明太子美味しい
……当たっている。
ひとりちゃんの、年齢の割に大きなおもちが私の右腕に当たっている。
彼女は気付いていないのだろうか?
それに、先程からひとりちゃんとの距離が異様に近い気がする。あまりの近さに興奮して、なんだか体がぽかぽかしてきた。そんなとき、ひとりちゃんが一度身じろぎをすると――
むにゅっう! パフパフ〜!
キターン!キターン!キターン!キターン!
――奇跡が起こった。
彼女の大きなおもちが、私の腕を挟み込んだのだ。どうやって腕が挟まれたのかは分からない。けれど確かに奇跡は起こったのだ。私は神に一度感謝を捧げ、全神経を右腕に集中させる。
正面に座る伊地知先輩とリョウ先輩が、私達を見ていることが分かった。視線は一様に私の右腕に向かっている。
そんな彼女達の顔には、分かりやすく書いてあった。
――デッッッッッ!!
++++++
来週は秀華高で定期テストが行われる。バンド活動を始めてから勉強の時間は減ったが、それでもあまり心配していない。元から地頭は悪くないし、普段の授業も集中して受けている。だから赤点を取るようなことはないだろう。
私はそんなふうに楽観的なことを考えながら、ひとりちゃんを誘ってSTARRYへと向かった。
――おはようございます!
「あ、喜多ちゃんおはよー」
「郁代、助けて」
先輩達は既にSTARRYに居た。けれど彼女達は普段と違い、いつものテーブルに向かって教科書やノートを広げている。リョウ先輩は何故かげっそりとした顔で椅子の背もたれに体を預けていた。
その様子を見て首を傾げる私に、伊地知先輩は察したように答えてくれた。
「うちの高校、来週からテストなんだー」
どうやら先輩達も来週から定期テストが始まるらしい。伊地知先輩に秀華高もテストだと伝えて、私とひとりちゃんは椅子に座る。
「どこも高校生は大変だねぇ。喜多ちゃんとぼっちちゃんは勉強大丈夫なの?」
私は何も問題ない、いつも通りにやるだけだ。大丈夫ですと答えた私は、ひとりちゃんに話を振る。
――ひとりちゃんは勉強できるのかしら?
「あっ出来ません!」
……いい返事ね!
点数が三点だったり、零点だったりするテストをペラリと広げて彼女は即答する。掛ける言葉が見つからなかった私は、取り敢えず彼女の返事を褒めてお茶を濁した。
それから私は彼女の答案用紙を確認してみる。そこには、解答欄の各所に頑張って解こうとした形跡が残っていた。つまり、問題を頑張って解いた結果がこの点数である、ということだ。
あまりにも痛々しいその事実を察してしまい、涙が出そうになる。彼女に掛ける言葉が本当に見つからない。
……よしっ!
私がひとりちゃんに勉強を教えよう。彼女が困っている姿はあまり見たくないのだ。彼女には出来るだけ笑っていて欲しい。それにこれは、彼女へのアピールチャンスになるかもしれない。ここで賢いアピールをしておけば、私のことを頼りになる女として意識してくれるだろう、そうに違いない。
――勉強は私が教えるわ!
ひとりちゃんに告げると、彼女は表情を明るくさせた。その目には、私への感謝と期待感が混ざったような感情を宿していた。
ふっ、決まったわ。
私は勝利を確信する。勉強はそこそこ出来るため、彼女の質問にもそれなりに答えられるだろう。
私達は早速テーブルに筆記用具や教科書を広げて勉強会を開始した。
――それじゃあひとりちゃん。どの教科が苦手で分からないとか、そういうのあるかしら?
「わ、分からないところが分からないです」
……。
はい。
――だ、大丈夫よひとりちゃん。学年が変わっても先輩って呼ばなくていいからね。
「もう諦めたぁ!」
ぐっ。彼女には申し訳ないけれど、私に出来ることはもう無いだろう。大人しく後輩となったひとりちゃんと、楽しい学園生活を送るしか無いかもしれない。
大丈夫。高校中退したって人は生きていける。それに私達には音楽があるから学校を辞めたって問題ない。最悪私が彼女を養おう。
……ツートン、ツートン。
私は机を叩き始める。
――もうひとりちゃんにはモールス信号で答え教えます!
ほらひとりちゃんも覚えて! と彼女を急かすと、私と一緒に机を叩き始めた。
「もうみんな真面目にやってー!」
+++
私達は一度落ち着いた後、教科書を開いて再び勉強を始めた。時間は有限である。あのまま遊んでいたら、何も勉強せずに今日が終わるところだった。先輩に感謝である。
よし。
練習問題を解き終えた私は一つ息を吐いた。それから、隣で集中するひとりちゃんの方を見る。
……綺麗。
問題に取り組む彼女の顔は真剣で、どこか透明感のある表情をしていた。人と会話してないからだろうか。いつもより凛々しい気がする。
ひとりちゃんの横顔をポーっと眺める私は、さっきから彼女のペンが動かないことに気が付いた。難しい問題に当たってしまったのだろうか。確かにこういう問題は、一度悩み始めると中々進まない。うんうん分かる〜と心の中で呟きながら彼女を見ていると、何故か彼女の向こう側にいる店長と目が合った。
……何故かしら?
先程までは彼女の体が遮る壁となり、店長の姿は見えなかった。それなのに突然見えるようになったのだ。訳が分からない。疑問を解消するために一度ひとりちゃんを確認すると驚く。
なんと彼女は――少しずつ体が透明になり始めていた。
それに伴い、彼女の存在感も小さくなり始める。
ちょ、ちょっと!?
これには流石の私も驚いた。やけに透明感のある横顔だなと思っていたら、体が透明になっていたのだ。中々の衝撃である。
私は恐る恐る彼女に声を掛け、肩を優しく揺すった。
「あっ、き、喜多さん」
途端に彼女の体が実体化する。小さくなっていた存在感も元に戻り、突然目の前に人が現れたような感覚を覚えた。
ビクッ と体を一度震わせてしまったがすぐに持ち直し、私はひとりちゃんに先程はどうしたのか尋ねた。
「えっと、あっ、あまりに問題が分からなくて、気が遠くなっていたと言いますか。そしたら体がふわふわしてきて、なんか魂が飛んできそうでした」
そ、そう。
私はなんとか言葉を絞り出した。先程までの現象はどうやら無意識だったらしい。この話はもうやめよう。謎が深まるだけだ。
――どの問題が分からなかったのかしら?
話を変えるために、私は彼女に勉強の話を振った。
「あっ、数学の、この問題です」
彼女は教科書に記載されている問題を私に見せてくる。確認すると、その問題は先程まで私が解いていた問題だ。少々工夫は必要であるが、この問題なら私も教えられる。
――あ、それなら私も教えられるわ。
私は自分のノートを指差してそう告げると、彼女は嬉しそうな顔をして私の方へと椅子を寄せてきた。
ノートを覗くためだろうか。かなり近くに椅子を置いて座った彼女はこちらを上目遣いで見て一言。
「――お、教えてください」
任せなさい!
++++++
――ここはこの定理を使うのよ。
私は早速ひとりちゃんに問題の解説をする。彼女も真剣な表情で私の話を聞いていた。その様子に調子の良くなった私はさらに詳しく解説していく。
ところが途中、彼女の顔にハテナが浮かんだ。どうやら答えの導出過程で分からない箇所があったようだ。確かに言葉じゃ説明のしづらい箇所だ。どのように解説すればいいだろうか考える。
そんなとき、彼女が私に提案してきた。
「あの、喜多さんのノートを見てもいいですか?」
確かにその方が分かりやすいだろう。私は彼女に、勿論おっけーと答えた。
「あ、ありがとうございます」
彼女がお礼を告げて私のノートを覗き込んだ、その時――
むにゅうっ!
彼女の大きなおもちが私の腕に押し付けられた。
キターーーーーーーーーーーーン!!
な、なんなのこの感触!
とっても気持ちが良いわ!
んんんんっ柔らかーい!
興奮を抑えるのに必死でこの後の解説は碌にできなかった。けれど幸いなことに、ひとりちゃんはノートを見て自力で解決したようだ。
「あっ、ありがとうございました」
彼女はそう言ってから私にノートを返す。
こちらこそありがとう。私は幸せでした。
勿論そんなことは言えないため、心の中でお礼を告げる。
むにー。
……?
ひとりちゃんが何故か離れない。それどころか、教科書やノートをこちらに引き寄せてお勉強を再開した。
思考が停止する。首を傾げている私を見て、ひとりちゃんが告げた。
「し、質問もしやすいですし、ここここのままやっても良いですか!」
キタキタキタキターーーーーーーーーーーー!!
……当たっている。
ひとりちゃんの、年齢の割に大きなおもちが私の右腕に当たっている。
彼女は気付いていないのだろうか?
それに、先程からひとりちゃんとの距離が異様に近い気がする。あまりの近さに興奮して、なんだか体がぽかぽかしてきた。そんなとき、ひとりちゃんが一度身じろぎをすると――
むにゅっう! パフパフ〜!
キターン!キターン!キターン!キターン!
――奇跡が起こった。
彼女の大きなおもちが、私の腕を挟み込んだのだ。どうやって腕が挟まれたのかは分からない。けれど確かに奇跡は起こったのだ。私は神に一度感謝を捧げ、全神経を右腕に集中させる。
正面に座る伊地知先輩とリョウ先輩が、私達を見ていることが分かった。視線は一様に私の右腕に向かっている。
そんな彼女達の顔には、分かりやすく書いてあった。
――デッッッッッ!!
その様子に少しだけ優越感。
ひとりちゃんのおもち、私の腕を挟んでるんですよぉ。
渾身のドヤ顔を先輩達に向ける。
「いや顔真っ赤じゃん」
シラーっとした目で伊地知先輩がボソッと呟いた。リョウ先輩は目をお金のマークにしていたが、気の所為だと思いたい。
先輩達の反応に努めて気付かないフリをして、幸せな感触を味わい続ける私に――
私から腕を動かしたらどうなるのかしら?
――邪な思いが浮かんだ。
一度思いついてしまった私はもう我慢できない。
私はお腹を空かせた虎だ。目の前に餌を置かれた虎はすぐに食い付いてしまうのだ。
顔を明後日の方向に向けながら、私は大袈裟に腕を左右に動かした。
もっちり。
ポヨンポヨンっ!
んんんっ気持ちいいわ!
恐らく、私の鼻の下は伸びているだろう。正面の先輩方がシラッとした目で私のことを見ているから。
けれどひとりちゃんは嫌がらない。拒絶の声を上げないのだ。
ならば大丈夫、問題ない。
これは同意の下に行われているのだから。
健全ですよ健全! 健全健全健全っ!
調子に乗った私は腕をぐりぐりと彼女の体に押し付けた。
あぁ、本当に幸せだわ……。
しみじみと噛み締めながら腕を動かす私の耳に――
「――んっ」
驚いてひとりちゃんの方を見る。
彼女は顔を真っ赤に染めて、両手で口を押さえていた。
……あら?
なんだか痴漢されて我慢している女の子の反応とそっくりだわ。
疑問に思った私は彼女の顔を覗き込むと――
「ピャアアアアッ!」
――彼女は一瞬で透明になり、どこかへと消えてしまった。
照れたひとりちゃんも本当に可愛い……イッッ!
彼女の可愛さを噛み締めている私の頭に、突然の痛み。
「ぼっちちゃんを揶揄うのもいい加減にしなさい!」
そこそこの強さで叩かれた私の意識は、ゆっくりと暗転していくのだった。
ぼっち「あっ、近づきすぎちゃったどうしよういつ離れればいいんだろうあっ喜多さんなんかいい匂いこのままでいいかも」