アニメ最終話で、喜多ちゃんがぼっちちゃんのこと抱きしめながら腹話術してる場面あるじゃん?最後後ろからその二人が描かれてるところを見てさぁ 作:明太子美味しい
「来てくれてありがとう」
目の前の彼は所在なさげに、片手で後頭部を掻きながらこちらをチラチラと見ていた。
――構わないわ。それで、用事って何かしら?
今日はひとりちゃんとのギター練習があるのだ。あまりここで時間を取られる訳にはいかない。私は早く早くと急かすように彼へと返事をした。
「あー、うん。あの、そのさぁ――」
彼のどこか煮え切らない返事に少しだけ眉を顰めそうになったが我慢する。そちらから呼んだのだから、出来れば早くして欲しい。
そんなことを考えていた私の頭は、彼が次に発する言葉を聞いて真っ白になった。
「――俺、喜多ちゃんのことが好きなんだよね」
……?
ほわぁぁぁぁあ!
こ、これが数多くの青春ドラマで話題になる、校舎裏での告白イベント!?
ま、まさか私が体験する側になるなんて、考えたこともなかったわ……。
彼の告白に驚くと同時に、今自分が置かれている状況を理解した。
それからなるほど、と一人で納得する。今朝、下駄箱に入っていた私宛の手紙は、どうやら告白するためのラブレターだったらしい。
「だから、俺と付き合ってくれませんか?」
おぉー!
最後までやり切った彼に、内心で拍手を送る。
けれど、申し訳ないがそのお誘いを受けることは出来ない。私には好きな人がいるのだ。出来るだけ彼が傷つかないようにと、私は断り文句を考え始めた。
それにしても、彼は凄い勇気を持っているものだと感心する。告白なんて、私が今まで何度も足踏みしたことを実際にやってのけたのだから。正直尊敬する。
「あの、それでどうかな?」
いけない。こんなときに考え込んでしまった。変に期待させるのも申し訳ないから、一先ず断ることを優先しよう。
私は彼の方を向いて告げた。
私は、貴方の告白を受け――
「―― ピョォォォォォッ!」
突如として、彼と私の間に黒い影が降り立った。その衝撃に砂煙が舞う。私達は目を覆い、砂を吸い込まないように顔を背けた。
それから数秒後。
煙が晴れた私達の視界には――
「きっ、喜多さんは! わ、渡さなぁぁぁいいいい!」
――大量の缶バッジや鎖を身に付けて、星形サングラスを光らせているひとりちゃんの姿が映った。
++++++
次第に冬が深まり、寒さに凍える日々を過ごす今日この頃。
私は結束バンドの皆さんと夜ご飯を食べに来ていた。場所は学生らしく、お財布に優しいファミレスである。
「今日は寒かったねぇ」
伊地知先輩はホットココアを飲みながら呟いた。
確かに今日はここ最近で一番寒かった気がする。あまりの寒さに、可愛さを無視した分厚いアウターを着込んでしまった。ひとりちゃんもいつものピンクジャージに加えて、暖かそうなマフラーを首に巻いている。
「もうすぐクリスマスだよ。私達には関係ないけどね!」
なんとも悲しい発言をする伊地知先輩に苦笑いをする。先輩なら恋の一つや二つあってもおかしくないと思っていたが、どうやらそうでもないらしい。
リョウ先輩はどうなのだろうか。気になった私は訊いてみた。
「あんま興味ない。楽器やってる方が楽しい」
おぉ! 流石はリョウ先輩だ。クールなところも中々に素敵である。
「またそんなこと言っちゃって。この前も告られてたくせに!」
まぁ、女の子からだけどね。と付け加えた伊地知先輩の言葉を聞いて驚く。やはりリョウ先輩は大変オモテになられるようだ。同性すらも魅了するそのビジュアル、強い(確信)。
「なんかそういうの増えてきたよねぇ。私の周りでも恋人が出来たとか言う子、何人か居るし」
確かに、クラスの友達も彼氏が出来たとかで喜んでいた。別に羨ましくなんかない。ないったらない。私にはひとりちゃんが居るから!
必死に強がっている私のことなんか気にせず、先輩は話を続けた。
「やっぱりクリスマスが近づいてくると、彼氏彼女の話題が増えるよ」
……?
それはどうしてだろうか。理由の思い付かない私は伊地知先輩に尋ねた。
「あぁ。やっぱり冬休みに向けてワンチャン? みたいなやつだよ。一夏ならぬ一冬の思い出を作りたくて、急にみんな動き出すの」
そういうものなのか。今まで気にしたことがなかったから知らなかったけれど、言われてみると確かにそんな気がしてきた。
私も一冬の思い出、ひとりちゃんと欲しいなぁ。
チラッと隣に座るひとりちゃんの様子を窺う。
彼女は美味しそうに、先程注文したハンバーグプレートを頬張っていた。
ふふっ。そんなに焦らなくてもいいかな。
彼女が幸せそうなら、無理に関係を変える必要もないだろう。勿論ちゅーとかはしたいけれど、慌てて告白するくらいなら今の幸せをもう少し味わっていたい。それにもし振られでもしたら二度と立ち直れない。
「ま、別にうちのバンドは恋愛禁止って訳でも無いし、ちゃんと練習してくれるなら自由ってことで。この話題は虚しいため終了です!」
そんな会話をしながら、私達は夜ご飯を食べて解散した。
+++
翌朝、私はいつものように学校へと向かっていた。この季節になるとお家を出るのが億劫になるけれど、そんな理由でサボる訳にはいかない。私はアウターのポケットに入れたホッカイロを握り締めながら歩みを進めた。
「あっ、喜多さん」
寒さに体を縮こまらせながら歩いていると、ひとりちゃんの声が後ろから聞こえてきた。振り向いてその姿を確認した私は、おはようと挨拶をする。
「お、おはようございます」
寒さのせいか、彼女の顔が少しだけ赤くなっていた。マフラーをしているとはいえ、やはり彼女も寒そうである。
今日も寒いわねぇ、なんて会話をしながら学校へと向かう。隣に並んだ彼女の両手は、手袋も付けずにぷらぷらと揺れていた。
それに気付いた私はギュッと彼女の片手を掴むと、私のポケットにそのまま突っ込んだ。
彼女からは ピッ! なんて鳴き声が聞こえてきたけれど、私は気にしない。
――これであったかいわね。
「アッハイ」
そう話しかけた私に、彼女はか細い声で答えてくれた。それから彼女はこちらを見て、にへらと笑う。
か、可愛い……!
これですよこれ。
この幸せな日常があるから、私は慌てる必要なんか無いって言ったんですよ。
むっふー、と満足げに息を吐いた私は、彼女を引き連れて学校へと向かった。
学校に着いた私達は、靴を履き替えるために下駄箱へと向かう。ここで一旦別れるが、二組の方が玄関から近いためひとりちゃんの方が先に履き替え終えるだろう。
彼女と別れた私は、上履きを取り出すために下駄箱の扉を開く。すると、中に封筒が入っていることに気が付いた。
……なにかしらこれ?
疑問に思った私はその場で封筒を開封する。
『喜多郁代さんへ。放課後、校舎裏の大きな木が生えている場所でお待ちしております』
……?
なにかしらこれ?
先程と全く同じ感想が出てきた。差出人の名前も無いし、これはどういう意図があるのだろうか。何も分からない。今日は放課後にひとりちゃんとギター練習があるのだけれど、どうすればいいだろうか。
その手紙を読みながら考える私は、ひとりちゃんがすぐ側で私を見つめていることに気が付くことはなかった。
++++++
時間は進み、あっという間に放課後である。
授業中や休み時間に手紙について考えてみたが、やはり何も分からなかった。友人に相談しようにも、手紙からどこか真剣な雰囲気を感じたために出来なかった。
分からないものはしょうがない。実際に行って確かめるしか無いだろう。
私はひとりちゃんに、『少しギター練習に遅れます』とロインを送ってから席を立った。
校舎裏へと向かうと、既にそこには男子生徒が待っていた。確か彼は、隣のクラスに在籍している生徒だった筈だ。
「来てくれてありがとう」
目の前の彼は所在なさげに、片手で後頭部を掻きながらこちらをチラチラと見ていた。
――構わないわ。それで、用事って何かしら?
今日はひとりちゃんとのギター練習があるのだ。あまりここで時間を取られる訳にはいかない。私は早く早くと急かすように彼へと返事をした。
「――俺、喜多ちゃんのことが好きなんだよね」
……?
ほわぁぁぁぁあ!
こ、これが数多くの青春ドラマで話題になる、校舎裏での告白イベント!?
ま、まさか私が体験する側になるなんて、考えたこともなかったわ……!
彼の告白に驚くと同時に、今自分が置かれている状況を理解した。
それからなるほど、と一人で納得する。今朝、下駄箱に入っていた私宛の手紙は、どうやら告白するためラブレターだったらしい。
「だから、俺と付き合ってくれませんか?」
おぉー!
最後までやり切った彼に、内心で拍手を送る。
けれど、申し訳ないがそのお誘いを受けることは出来ない。私には好きな人がいるのだ。出来るだけ彼が傷つかないようにと、私は断り文句を考え始めた。
それにしても、彼は凄い勇気を持っているものだと感心する。告白なんて、私が今まで何度も足踏みしたことを実際にやってのけたのだから。正直尊敬する。
「あの、それでどうかな?」
いけない。こんなときに考え込んでしまった。変に期待させるのも申し訳ないから、一先ず断ることを優先しよう。
私は彼の方を向いて告げた。
私は、貴方の告白を受け――
「―― ピョォォォォォッ!」
突如として、彼と私の間に黒い影が降り立った。その衝撃に砂煙が舞う。私達は目を覆い、砂を吸い込まないように顔を背けた。
それから数秒後。
煙が晴れた私達の視界には――
「きっ、喜多さんは! わ、渡さなぁぁぁいいいい!」
――大量の缶バッジや鎖を身に付けて、星形サングラスを光らせているひとりちゃんの姿が映った。
えぇっ!?
突然の登場に私は動揺する。
どうしてひとりちゃんがここに? それ以前にどうやってここに私が居ると分かったの?
沢山の疑問が頭の中に浮かんだが、一旦それは置いておく。今はこの状況をなんとかする方が優先だろう。
ひとりちゃんどうし――
「――だ、駄目です! 喜多さんは駄目なんです! 喜多さんはほんとに陽キャで明るくて、可愛くて、優しくて、いっ、いい匂いもします! だ、だから、貴方が喜多さんのことを好きになる気持ちも分かります」
話しかけようとした私の声を遮って、彼女は声を張り上げる。その声には少しだけ涙が混じっていて、彼女が無理をしていることが分かった。
けれど彼女は、正面の彼を懸命に睨みつけている。アワアワと体を震わしながらも睨みつけている。
それから彼女は言葉を続けた。
「けど、けど! わ、私から喜多さんを取らないでください……! ぜ、絶対、絶対喜多さんは――」
「――喜多さんは渡しません!」
あ、あはっ。
少しだけ涙が出てきた。
こんなにも強い想いをぶつけられたのは初めてだ。
それになにより、ひとりちゃんが私のために勇気を出して頑張ってくれている。その事実に胸がキュンとして、お腹の奥が熱くなった。
「ど、どこかへ行ってくださいいい」パンッ! パンッ!
彼女はいつの間にか取り出していたクラッカーを発砲して、彼を一生懸命威嚇している。
――ありがとうひとりちゃん。
私は今尚威嚇を続ける彼女を、後ろから優しく抱きしめた。
そして正面の彼へと告げる。
ごめんなさい。私はあなたの告白を受けることが出来ません。
「そ、そっかぁ……。い、いや、こっちこそ突然悪かったよ。だ、だから気にしないでくれ」
彼は涙声でそう告げて、この場を去っていった。
校舎裏には私とひとりちゃんの二人きり。寒空の下、私達は段差に座ってお互いに身を寄せ合っていた。
――さっきは凄かったわね。
「あっ、あれは、その。き、喜多さんを取られちゃうんじゃないかと必死で……」
……そっか。
私を取られたくなかったんだ。
……。
体をもじもじと恥ずかしそうにしている彼女に、私は告げた。
――ねぇひとりちゃん。
「は、はい」
私、ひとりちゃんのことがす――
そのとき、びゅん! と強い風が一瞬だけ吹いた。
「……? 今、なんて言いましたか?」
――ふふっ。なんでもないわ。
そう答えて私は立ち上がる。それから彼女に手を差し出した。もう随分と時間が経っている。はやく荷物を取りに行かないと、練習の時間が無くなってしまうだろう。
未だに首を傾げている彼女に、内心で告げる。
私は最後まで言い切ったわよひとりちゃん。
だから、次は貴女の番。いつまでも待っているわ。
私は彼女の手を引いて、荷物を取りに教室へと向かうのだった。
喜多「この缶バッジは?」
ぼっち「あっ、もしかしたら会話のネタになるかと」
喜多「この鎖は?」
ぼっち「よ、予備のギターストラップです」
喜多「このサングラスとクラッカーは?」
ぼっち「あっ、お友達との会話を盛り上げられるかと思って……」
喜多「……もう余計なものを持ってくるのは辞めましょう」
ぼっち「ヴッヴゥゥゥ」涙ジョバー