アニメ最終話で、喜多ちゃんがぼっちちゃんのこと抱きしめながら腹話術してる場面あるじゃん?最後後ろからその二人が描かれてるところを見てさぁ 作:明太子美味しい
ふにょん、ぽにょん。
ひとりちゃんが私の頭を抱き締める。
それから彼女は、小さい子を甘やかす様に優しく私の頭を撫で始めた。
「だ、大丈夫です。私はここに居ますから、ゆっくりと休んでください」
ぎこちなく笑いながらも、彼女は慈しんだ目で私のことを見ていた。それから大丈夫、大丈夫、と伝える様に、彼女は私の頭を撫で続ける。
熱で弱った私の心に、そんな彼女の優しさがゆっくりと染み渡った。
こうして貰っていると、私が小さかった頃のことを思い出す。そのときも熱を出したのだが、お母さんは彼女と同じ様に頭を撫でて励ましてくれた。
彼女の鼓動が耳に伝わる。トクン、トクン、という一定の音にどこか安心する。
あぁ、あぁ……!
これがひとりちゃんの母性、ひとりちゃんの包容力!
あまりの心地良さに、少しずつ私の瞼が落ち始めた。
「――お休みなさい。喜多さん」
うん、お母さん。
「ウェッ!」
……あっ。
一瞬で意識が覚醒する。体からぶわっと汗が吹き出し始めた。
私は今何て言ったの……?
ま、まさか同級生に。それも好いている相手にお、お母さんと言ったの……?
う、嘘よ、何かの間違いよ、そうに違いないわ!
僅かな希望を胸に恐る恐る顔を上げた私の視界に――
「わ、私が喜多さんのお母さん……!」
――真っ赤に染まった顔を両手で押さえて、蕩けた表情をしているひとりちゃんの姿が映った。
++++++
「よし! 今日はこれで終わりにしよっか!」
今日も結束バンドの練習が終わり、楽器の片付けを始める。
ここ最近は自主練を増やしているおかげか、ミスも大幅に減ったし手首もよく動くようになった。こうやって目に見える形で上達すると嬉しくなる。私はちゃんと前に進んでいるんだと実感するから。
これからも頑張って練習しよう。
決意を新たに私は片付けを進める。それから、ギターをケースにしまった私がゆっくりと立ち上がろうとした、その時。
――ふらっ。
あら?
突然の目眩に、咄嗟にしゃがみ込んで堪えた。
それから目を瞑ってじっとしていると、フラつきがだんだんと治ってくる。やがてその目眩が完全に治ったことを確認した私は、ゆっくりと立ち上がった。
疲れていたのだろうか?
幸いにもバンドの方々は私の様子に気付かなかったようで、着々と片付けを進めている。私は先程の目眩のことを気にしないようにして、片付けを進めるのだった。
片付けも終わり、私達はいつものテーブルで寛ぎ始める。ここで一度、バイトや練習の疲れを癒すのが私達の習慣になってしまったかもしれない。
「今日もお疲れ〜」
「疲れた。もう無理」
私達は飲み物を片手に駄弁り始めた。
「今日も疲れたねぇ。バイトも予想以上に忙しかったから、今日は特に疲れたかも〜」
ですねぇ、と私も先輩の発言に同意する。今日はお客さんが多い日だったみたいで、中々に大変だった。
「そういえば喜多ちゃん、ここ最近毎日STARRYに来てるよね? 私はここが家だから毎日居るけど、喜多ちゃんは練習ない日もバイト入れてるじゃない? 大丈夫?」
おぉ。流石は気遣いの塊、伊地知先輩だ。バンドメンバーのケアも欠かさない。
そんな彼女に私は大丈夫ですと答えた。正直疲れはするけれど、一日眠るとすぐ元気になるから問題ない。
「わ、私も心配です。さっきも少しふらついてたし、わ、私は喜多さんに元気でいて欲しいです!」
……まさかひとりちゃんに見られていたとは。
不覚っ! とは思わなくもないが、少しだけ嬉しくなった。ひとりちゃんが私のことを見ていてくれたのだ。嬉しくない筈がない。
私は興奮のまま、彼女の手を握りしめた。ピャッ という声が聞こえたけれど、気にせずニギニギとする。
「えぇ!? そっか、それならもう今日は解散しましょう!」
先輩の一声により、その日のおしゃべりは終了したのだった。
翌日、私は朝から熱を出して学校を休んだ。
++++++
――体が重い。
朝からずっとベッドに潜っていたから、少しだけ体調は良くなったと思う。けれど未だに熱はあるし、寒気も感じる。この様子では、今日は一日寝たきりかもしれない。
はぁ、とがっかりした様にため息を吐いた私は、もう一度眠ろうと目を瞑った。
それにしても、熱を出すなんて随分と久しぶりな気がする。最近はずっと忙しかったから、ここにきて一気に疲れが出てきてしまったのかもしれない。
ここ一ヶ月は毎日ギター練習とバイトの予定を入れていた。自分では無理をしているつもりは無かったけれど、寝込んでしまったのだからそれは通用しないだろう。
……練習、休んじゃったなぁ。
この様な結果になってしまったが、本当に無理をしていたつもりはない。ほぼ毎日練習していたのは、それが楽しかったからだ。練習を続けると少しずつ上達していくことが分かったし、何よりバンドの皆さんを驚かせることが楽しかった。
目を瞑ってそんなことを考えていた私の耳に――
トン、トン、トン。
――階段を登る足音が聞こえてきた。
……お母さん?
今の時間はお昼過ぎだから、いつもなら家には誰も居ない筈だ。だから、もしかしたらお母さんが仕事を休んでくれたのかもしれないと思った。
少しだけ申し訳なく感じるけれど、同時に嬉しさも覚える。心も身体も弱っていて、先程からずっと寂しかったから。
トン、トン。
足音が私の部屋の前で止まった。それからガチャリ、と扉の開く音が聞こえる。
私はゆっくりと目を開いて入り口の方を見た。
そこには――
「き、喜多さん……」
――顔を真っ青にさせたひとりちゃんが居た。
「喜多さん! だ、大丈夫ですか!?」
ひとりちゃんはアワアワとしながら部屋に入ってくる。それから私のベッドの傍に跪いて私に話しかけ始めた。
その様子に少しだけ嬉しくなったけれど、始めに聞きたいことがある。
――大丈夫よ。それより、ひとりちゃんはどうしてここに……?
「あっ、き、喜多さんのお母さんからロインがきて、寝込んでるって聞いて、それで急いで早退して来ました」
お母さん……。
一体いつ彼女とロイン交換をしたのか、今度問い質さないといけない。
そんなことを黙って考えていた私に、ひとりちゃんは泣きそうな目で話しかけてきた。
「め、迷惑ですよね……。で、でも! 喜多さんが心配で、居ても立っても居られなくて、ごめんな――」
――来てくれてありがとう。とっても嬉しいわ。
謝ろうとしていた彼女の言葉を遮り、私はお礼を告げる。
すると彼女は、表情をパァァァッと明るくさせてにへらと笑った。
あはっ。可愛い。
彼女の可愛さに嬉しくなった私は、会話を続けようとした。けれど、
――ケホッ! ケホッ!
「だ、大丈夫ですか!?」
やっぱりまだ熱があるみたいだ。頭が少しだけボーっとする。
フラフラとする意識の中、私は精一杯彼女に伝えた。
――寂しかったの。だから、来てくれて本当に嬉しかった。
その言葉を聞いたひとりちゃんは私の手を握ってくれた。彼女の優しさにじんわりと私の心が温まる。
「き、今日はずっと、ここに居ますから」
……あぁ、好きだなぁ。
彼女への好きで溢れ始める。
彼女と、ひとりちゃんともっと触れ合いたいと思った。そんな私は、彼女と繋がれた手を少しだけ強く引っ張った。
「ピャッ!」
ベッドに倒れ込んでくる彼女を私は抱きしめる。その体勢のまま、熱が移ってしまったらごめんなさい、と彼女に告げた。
「い、いや、それは大丈夫なんですけど……これは?」
戸惑いの表情を見せる彼女に、私はポツリと呟く。
――寂しいの。
それを聞いた彼女は、顔を赤く染めて何かを堪えるように胸を押さえた。
ひとりちゃんが私の頭を抱き締める。
それから彼女は、小さい子を甘やかす様に優しく私の頭を撫で始めた。
「だ、大丈夫です。私はここに居ますから、ゆっくりと休んでください」
ぎこちなく笑いながらも、彼女は慈しんだ目で私のことを見ていた。それから大丈夫、大丈夫、と伝える様に、彼女は私の頭を撫で続ける。
熱で弱った私の心に、そんな彼女の優しさがゆっくりと染み渡った。
こうして貰っていると、私が小さかった頃のことを思い出す。そのときも熱を出したのだが、お母さんは彼女と同じ様に頭を撫でて励ましてくれた。
彼女の鼓動が耳に伝わる。トクン、トクン、という一定の音にどこか安心する。
あぁ、あぁ……!
これがひとりちゃんの母性、ひとりちゃんの包容力!
あまりの心地良さに、少しずつ私の瞼が落ち始めた。
「――お休みなさい。喜多さん」
うん、お母さん。
「ウェッ!」
……あっ。
一瞬で意識が覚醒する。体からぶわっと汗が吹き出し始めた。
私は今何て言ったの……?
ま、まさか同級生に。それも好いている相手にお、お母さんと言ったの……?
う、嘘よ、何かの間違いよ、そうに違いないわ!
僅かな希望を胸に恐る恐る顔を上げた私の視界に――
「わ、私が喜多さんのお母さん……!」
――真っ赤に染まった顔を両手で押さえて、蕩けた表情をしているひとりちゃんの姿が映った。
んん?
予想外の反応に戸惑う。必死に頭を回転させようとするが、熱でうまく頭が回らない。
ポーっとしていた私に何を思ったのか、ひとりちゃんは私の頭をもう一度おもちに抱え込んだ。
「だ、大丈夫、大丈夫ですよぉフヘヘ。ずっとここに居ますから。わ、私が喜多さんを守りますからぁフヘヘ」
そう言って彼女は再び私の頭を撫で始める。その様子はどこか嬉しそうで、全然私のことを引いた様子はなかった。
よく分からないけれど何故か上手くいったみたいだ。フラフラとしながらもホッと一息。
一安心した私は、遠慮なく彼女のおもちに顔をぐりぐりと押し付け始めた。
そんな私の行為を気にもせず、彼女はさらに私を強く抱きしめて頭を撫でる。それからボソボソと耳元で囁き始めた。
「喜多さんはいつも頑張ってて偉いです。可愛くて優しくて、いつも私は助かってます。だから、頼りないかもしれないですけど、もっと私のことを頼ってもいいんですよぉ」
ゾワゾワッ!
んんんまぁまぁまぁ!
ひとりちゃんはどこでそんな技覚えたの!
熱でフラフラとしていた頭が、今度はポヤポヤとし始める。
耳元で吐息混じりに囁かれるこれは、まさに後藤ひとり公式ASMR!
……あぁ、脳が蕩けていく。
彼女の母性に癒されて、ASMRに脳が溶かされる。彼女の存在は、万病に効くのかもしれない。
だって、私の中の喜多郁代がとっても元気になってきたのだから。
「フヘ 、喜多さん可愛い。あぁ私を頼ってくれているのが分かる〜フヘヘ」
未だに彼女はにへらとして私を抱きしめている。
何故か彼女は嬉しそうだし、私も物凄く幸せだ。これなら熱で倒れるのも悪くないかもしれない。
興奮と熱で頭のおかしくなった私は、そんなことを思いながらゆっくりと眠りについた。
ぼっち「しっかり者の喜多さんがこんなにも甘えてくれるなんて!」
喜多「彼女は私の母になってくれるかもしれなかった女性だ」