アニメ最終話で、喜多ちゃんがぼっちちゃんのこと抱きしめながら腹話術してる場面あるじゃん?最後後ろからその二人が描かれてるところを見てさぁ 作:明太子美味しい
うーん、と頷いてから彼女は私に言葉を投げかけた。
「喜多ちゃんってくそめんどくさいね!」
いやあああああああ!
ご、五歳の女の子が言っていい言葉じゃないわ!
私は膝から崩れ落ちた。
ふたりちゃんの――可愛らしくて純粋そうな――見た目からは考えられない言葉の鋭さに恐れ慄く。天使のような彼女が汚れていく、その事実に私は憤りを隠せない。
一体誰だ。誰がふたりちゃんにこんな言葉を教えたんだ。
私は顔を上げて、どこでそんな言葉を覚えたのか彼女に尋ねた。
「おねーちゃんと話してたらおぼえた」
……ひとりちゃん。
彼女とは後で話す必要があるだろう。ふたりちゃんを見つめながらも強く決意した。
それから私は、どうして私のことをめんどくさいと感じたのか訊いてみる。彼女はえっとねー、と一度考えてから答えてくれた。
「喜多ちゃんっておねーちゃんのこと好きなんだよね?」
……?
……!
ど、どうしてひとりちゃんのことが好きだって分かったのかしら!? こう、なんというか。上手く隠しながら話していたと思うのだけれど!
慌てて聞き返した私に、彼女は笑いながら答えてくれた。
「えぇ嘘だぁ。すぐにおねーちゃんが好きって分かったよぉ!」
……そ、そっかぁ。
凹み始めた私のことなんて気にせず、ふたりちゃんはニコニコと笑顔で話を続けた。
「どうして変なことばっかり考えてるの? 好きなら別にやることは一つだけじゃん!」
……私の閃きが変なことかぁ。
五歳児のストレートな発言がグサグサと心に刺さるけれど、今はふたりちゃんの助言を聞くことが優先だ。凹んでいる暇など私にはない。
そして意識を集中させた私は、ふたりちゃんの次の行動で頭が真っ白になった。
なんと彼女は――
「ぎゅーっ!」
――私の頭をぎゅーっと抱きしめたのだ。
++++++
「明日ふたりちゃんが遊びにくるって?」
「は、はい。なんか私が頑張ってるところを見たいとか言ってて……。急にすいません」
バイト終わり、私達がテーブルで話しているとひとりちゃんが話をし始めた。どうやら、明日はふたりちゃんがSTARRYに遊びに来るらしい。
後藤ふたりちゃん。
彼女はひとりちゃんの妹である。顔や髪色はひとりちゃんに似て可愛らしいけれど、似ている見た目に反して性格は姉と正反対。ひとりちゃんがコミュ障ならふたりちゃんはコミュ強と言えるだろう。
恐らく明日の来訪も、彼女の好奇心に従った結果だろう。ひとりちゃんに駄々をこねる姿が容易に想像できて頬が緩んだ。
微笑みながら彼女達の会話を聞いていると、ひとりちゃんが私の方を向いて驚くことを言ってくる。
「――それに、ふたりが喜多ちゃんとも会いたいって言ってました」
あら?
以前お邪魔したときに仲良くなった自覚はあるが、私を名指ししてまで会いたいだなんて。中々嬉しいことを言ってくれる。
そうだ。彼女にムニオンの曲を弾いてあげると約束をしていた。今からにはなってしまうが、ネットで調べて練習しておこう。
「なら、明日は精一杯歓迎しないとね! それじゃあ今日はもう時間も遅いから解散です!」
伊地知先輩の発言をきっかけに、私達は解散した。
++++++
「今日はよろしくおねがいします。後藤ふたりです!」
翌日、宣言通り彼女はやってきた。妹、襲来である。
私と伊地知先輩は、元気に挨拶をした彼女の元へと駆け寄った。
「わぁ喜多ちゃんと虹夏ちゃん!」
久しぶり〜なんて言いながら私達は会話を始める。彼女の純粋さは未だ健在で、可愛らしい幼女のままだった。
再開トークもそこそこに、私は昨日からずっと気になっていたことを尋ねた。
――私に会いたがっていたみたいだけど、どうしたの?
彼女は私の言葉を聞いて、目を輝かせた。
「そう! いつもおねーちゃんと仲良くしてくれてありがとう!」
?
「ちょっ、ふたりやめ――」
「――おねーちゃん最近、喜多ちゃんのお話ばっかするの。だから仲良しなんだなって! あのおねーちゃんがお友達と仲良しなんて珍しいもん!」
まぁ!
ひとりちゃんは家で私のことを話してるの?
なんて素敵な情報!
ふたりちゃんの内部告発に、ひとりちゃんの顔は真っ赤っかだ。
余程恥ずかしかったらしい。彼女はトイレに行ってきます、と私達に告げて凄い速さで駆け出した。
そんな彼女が心配なのか、伊地知先輩はひとりちゃんについて行った。
私達は構わず会話を続ける。ふたりちゃんが、
「喜多ちゃんはおねーちゃんとどんなふうに仲良くしているの?」
なんて聞いてきたから、私の今までの行動をお話しした。天才的な閃きの数々である。これはふたりちゃんも楽しめるだろう。一緒にそのときの感動を伝えることも忘れない。
私はふたりちゃんに熱弁する。
そんな私の様子に、ふたりちゃんはちょっとだけ変な顔をしていた。
――どうしたのかしら?
当然気になった私は彼女に尋ねる。今はふわふわもちもちの感動を伝える上で重要なところだ。疑問があるなら先に解消しておきたい。
うーん、と頷いてから彼女は私に言葉を投げかけた。
「喜多ちゃんってくそめんどくさいね!」
いやあああああああ!
ご、五歳の女の子が言っていい言葉じゃないわ!
私は膝から崩れ落ちた。
ふたりちゃんの――可愛らしくて純粋そうな――見た目からは考えられない言葉の鋭さに恐れ慄く。天使のような彼女が汚れていく、その事実に私は憤りを隠せない。
一体誰だ。誰がふたりちゃんにこんな言葉を教えたんだ。
私は顔を上げて、どこでそんな言葉を覚えたのか彼女に尋ねた。
「おねーちゃんと話してたらおぼえた」
……ひとりちゃん。
彼女とは後で話す必要があるだろう。ふたりちゃんを見つめながらも強く決意した。
それから私は、どうして私のことをめんどくさいと感じたのか訊いてみる。彼女はえっとねー、と一度考えてから答えてくれた。
「喜多ちゃんっておねーちゃんのこと好きなんだよね?」
……?
……!
ど、どうしてひとりちゃんのことが好きだって分かったのかしら!? こう、なんというか。上手く隠しながら話していたと思うのだけれど!
慌てて聞き返した私に、彼女は笑いながら答えてくれた。
「えぇ嘘だぁ。すぐにおねーちゃんが好きって分かったよぉ!」
……そ、そっかぁ。
凹み始めた私のことなんて気にせず、ふたりちゃんはニコニコと笑顔で話を続けた。
「どうして変なことばっかり考えてるの? 好きなら別にやることは一つだけじゃん!」
……私の閃きが変なことかぁ。
五歳児のストレートな発言がグサグサと心に刺さるけれど、今はふたりちゃんの助言を聞くことが優先だ。凹んでいる暇など私にはない。
そして意識を集中させた私は、ふたりちゃんの次の行動で頭が真っ白になった。
なんと彼女は――
「ぎゅーっ!」
――私の頭をぎゅーっと抱きしめたのだ。
ふお、ふぉぉぉぉ……!
ふわりと漂う甘いミルクのような匂い。
幼いからだろうか、彼女のポカポカと温かい体温。
私の顔を包み込む、子供特有の異常に柔らかいふわふわもちもちな身体。
ひとりちゃんとそっくりな幼い顔とピンク色の綺麗な髪。
あ、まずい。興奮しそう。
抑えろ、抑えろ、抑えろ!
ひとりちゃんっぽくて可愛い女の子なら誰でもいいのか私。流石に節操なさすぎだろう。
私は必死に我慢しながらもふたりちゃんを味わい続ける。
そんな私を見て、彼女は楽しそうに言葉を告げた。
「こうやって、全身で好きって伝えればいいんだよ!」
そう言って彼女は、私の頭を抱きしめる力を強めた。
その瞬間、私の心に伝わってくるふたりちゃんの気持ち。
ふお、ふぉぉぉぉキターン!
凄い。凄いわふたりちゃん!
私を抱きしめる彼女の身体から、喜多ちゃんのこと好きーって感情が伝わってくる!
これは使えるわ!
私は興奮のまま立ち上がり、ふたりちゃんを抱き上げてクルクルと回り始めた。
「わぁ! おもしろーい!」
私にぎゅっとしがみ付く彼女はニコニコとしている。嬉しくなった私は彼女を肩車の体勢に変えて、そのままSTARRYの中を小走りで動き始めた。
「喜多ちゃん凄い凄い!」
彼女のおかげで新たな大好きアピールを学ぶことが出来た。一時は五歳児に興奮してしまうかと思ったが、それも鋼の理性によってなんとか我慢出来ている。
素晴らしい収穫だ。恥を忍んでふたりちゃんを頼った甲斐があったというものだろう。
だからふたりちゃんには思う存分楽しんで欲しい。彼女の助言はとっても為になったのだから、その感謝を少しでも伝えたい。
そんな風にふたりちゃんと遊んでいる私の視界に――
「わ、私より喜多さんと仲良くなってる……!?」
――顔を真っ青にしたひとりちゃんの姿が映った。
「と、トイレに行っている間に一体何が? わ、私と喜多さんの結束力はたったの五分くらいで五歳児に抜かされてしまうものだったのか……。嘘だそんな筈はない。本当か? 本当にそうか? ふたりの元気さと喜多さんの陽キャオーラがシナジーを起こして――」
「――あははっ! おねーちゃんまためんどくさくなってるー!」
自分の世界に入ったひとりちゃんを見て笑うふたりちゃん。無邪気であるが故に言葉のナイフが鋭い。グサグサとひとりちゃんに刺さっている。
ふたりちゃん、恐ろしい子……!
そんな馬鹿なことを考えていた私の頭を叩き、ふたりちゃんは話し始めた。
「喜多ちゃん、今だよ!」
あ、あら?
「やることは一つでしょ!」
まままマサカァ!
「早く早く!」
ぐっ、容赦ないわね。
でもそうね。好きならちゃんとアピールしないとだめよね!
先程から急かすふたりちゃんに、私は遂に覚悟を決めた。
やってやる、大好きアピールをやってやるわよ!
目標は、天井を見上げて立ち尽くし未だ一人の世界に入っているひとりちゃん。
一歩、二歩と彼女の方へと足を踏み出していく。これから行うことを意識して少しだけ体が火照りだした。けれど決して歩みを止めることはしない。私だってこの気持ちを彼女に伝えたいのだから。
そして遂にひとりちゃんの目の前に到着した。
私は両腕をガバリと広げる。それから目の前の彼女に覆い被さるようにゆっくりと抱きついた。
――もっちりふにょん。
キタキタキタキターーーーーーン!
これよこれ! 私が本当に味わいたかったものはこれなのよ!
んんん気持ちがいいわ!
ひとりちゃんはピャッ! と声を上げたが、構わずむぎゅーっと抱きしめる。すると彼女は顔を真っ赤に染めてプルプルと震え出した。
そんな彼女を見て、私の中の大好きが溢れ出す。
好き。好き。好き。
幸せな感触を味わうとともに、私は全身で大好きを表現した。少しでも多く彼女に伝わるように、抱きしめる力を強くする。
この想いがひとりちゃんに伝わって欲しい。
そんなことを思っていた私の頭上で、ふたりちゃんが嬉しそうに声を上げた。
「おねーちゃんと喜多ちゃんが仲良しで嬉しい! 私、喜多ちゃんみたいなおねーちゃんが欲しかったの!」
やった! やったわ!
ふたりちゃんが義姉さん発言をしてくれたわ!
一瞬で心が舞い上がった。好きな人の妹を味方に付けたのだ。もう勝ちと言ってもいいだろう。
ありがとうふたりちゃん。
貴女のおかげで今日はとっても幸せな一日だったわ。
そんなことを考えながら頭上のふたりちゃんを見上げる。彼女は私の顔を覗き込んで間近からにっこりと笑った。
あはっ!
どうやら彼女の望んだ展開だったようだ。
私も笑顔で応えて彼女と通じ合う。
そんな私達にひとりちゃんは不満を感じたらしい。
「――わ、私も!」
そんな声をあげてにっちゃりとした、どこかぎこちない笑顔で私達を見つめ始めた。
そのぎこちない変な顔に、私とふたりちゃんは声をあげて笑うのだった。
喜多「ふたりちゃんいい匂いで危なかったわー」
ふたり「ひゃっ。なんか寒気がする!」