アニメ最終話で、喜多ちゃんがぼっちちゃんのこと抱きしめながら腹話術してる場面あるじゃん?最後後ろからその二人が描かれてるところを見てさぁ 作:明太子美味しい
――今、私の手にはピンク色のジャージが握られている。
違うんです私は悪く無いんです出来心だったんです本当です信じてください……!
誰に聞かれた訳でもないのに、目をぐるぐるさせながら必死に弁明をする。
これは偶然。そう、たまたまというやつだ。
目の前にジャージが置いてあったら誰だって手に取ってしまう。何もおかしいところはない。それが、偶然にもひとりちゃんのジャージであっただけだ。
つまり、私は悪くない……!
聡明な頭が導き出した答えは、私の正当性を保証する素晴らしいものであった。
それなら私の好きなようにしよう。だって私は悪くない、むしろ正しいのだから。
ゴクリと息を呑み込み、目の前のジャージを掲げる。
そして私は――
スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
おおお……!
こ、これがひとりちゃんがいつも着ているジャージの薫り……!
――防虫剤の匂いしかしなかった。
少しだけ残念に思うが、凹むことはない。
防虫剤の薫りに紛れる彼女自身の良い匂いを、私は毎日のように嗅いでいるのだ。この優越感が心の余裕を生む。
そう、匂いはあまり重要じゃない。
大好きな人の洋服をクンクンするという、あまりにも背徳的な行為に興奮するんだ。
側からみたら異様な光景に見えるかもしれない。
でも大丈夫。
何も恥じることはない。だって私は正しいのだから。
そんなやりたい放題の私に、何処からか悪魔の囁きが聞こえてきた。
もう十分に味わっただろう、もう十分に楽しんだだろう。
――それで満足か?
そうだ。
まだ足りない。
こんな所で終わりたくない……!
進もう、まだ誰も見た事のないその先へ……!
決意を新たに、さぁ行くぞ喜多郁代!
ピンクのジャージをがばっと広げそして――
――袖を通した。
ふわっ。
こ、これは……!
キタキタキタキターーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
凄い、凄いわ……!キターン!
ひとりちゃんに包まれている感じがする!キタキターン!
大好きな人の洋服を着ているという、あまりにも背徳的な行為に興奮が止まらないキタキタキタキターン!!
――拝啓、結束バンドの皆さん。
私は今、ひとりちゃんと交わっています。
ぶるぶると震えながら、私は謎の手紙を読み上げた。
今の私ならどんな曲だって弾ける気がする。
私は最強なんだ……!
そうだ、自撮りをしよう。
イソスタに上げるつもりは無い。
お家でひっそりと楽しむために撮るのだ。邪な思いなんてどこにもない
携帯を取り出してカメラを起動、インカメラモードにしてパシャパシャと写真を――
「――き、喜多さん……?」
……終わったわ。
++++++
「明日はバンドTシャツで働けって、どういうことお姉ちゃん?」
今日のバイトが終わった後、店長が私達に明日の指示をしてきた。
STARRYのバイトは服装自由の筈。伊地知先輩に続き、私も少しだけ疑問に思っていると、すぐに店長が答えてくれた。
「あぁ、明日のセトリは人気バンドばかりで客も随分と入ってくるだろうからな。そいつらに少しでも興味を持ってもらえるなら、お前ら的にも良いんじゃないか?うちは別に、制服が決まっている訳でもないしな」
それと店では店長と呼べ、と最後に言い切って店長は買い出しに行ってしまった。
どうやら、彼女なりに私達の知名度を上げるきっかけを考えてくれたようだ。遠回しな気遣いを見せてくれた店長に微笑ましく思いつつ、心の中で感謝した。
「で、お姉ちゃんはあんな風に言ってるけど、どうしよっか?」
もちろん私は大丈夫です、と答えてひとりちゃんに話を振ると、彼女も震えながら問題無いと言う。
「良いと思う。いっそのこと物販も私達のグッズだけ置いとこう」
「良い訳あるかぁ!」
相変わらず先輩方二人は仲が良い。
これは私達も負けていられない。
――ねぇひとりちゃん。
「は、はい!」
勢いよく近づき、彼女の両手を握りしめた。
ピェッ! と驚く彼女に告げる。
――明日は忙しくなるみたいだけど、頑張りましょうね!
キターン! と話しかける私に、ひとりちゃんは真っ赤になりながらも力強く頷いてくれた。
どうだ先輩方、私達はとっても仲が良いんですよ!
なんて思いながら胸を張って振り向くと――
「最近の二人はほんとに仲が良いねぇ〜」
「お腹空いた」
欠けらも気にした様子はなかった。
そうですよねー……と肩を落とした私に、ひとりちゃんは優しく寄り添ってくれるのだった。
+++
翌日、いつものように授業を終え、ひとりちゃんの教室に向かう。
後ろのドアから覗くと、溶けかけた表情の彼女が居た。
えぇ! と驚き慌てて教室に入る。何とかしてバイトまでに顔を戻さないと……。
隣席の子に聞くと、放課後に近づくにつれて少しずつ顔のパーツが動き出し、今のような溶けた表情になってしまったと言う。
そ、そんなにバイトが憂鬱なのかしら……。
でも大丈夫、ひとりちゃんは私が支えてあげるわ!
体まで溶け始めた彼女を引き連れ、私達は最寄駅に向かった。
下北沢駅を出て、いよいよSTARRYが近づいて来る。
いつの間にかひとりちゃんの顔は戻っていたが、未だに彼女の雰囲気は暗い。
ひとりちゃんはいつも頑張っているから大丈夫よ!
それに何かあっても私が駆けつけるわ!
精一杯励ますと、少しだけ表情が柔らかくなった。
そんなひとりちゃんの姿に安心していると、彼女が急にキメ顔をして、ドラミングを始めた。
え、えぇ!?
どどどどうしちゃったのひとりちゃん!
私がアタフタしていると、駅の方からリョウ先輩と伊地知先輩がやってきた。
「ぷぷっ。やっぱりぼっちは面白い」
「ぼっちちゃーん? 遊んでないでもう行くよー」
普通に流すお二方に驚くが、彼女のこれは気にしないで大丈夫なものらしい。
私もその流れに乗り、ひとりちゃんを引っ張ってついていくのだった。
+++
STARRYで早速バンドTに着替えた私達は、気合を入れてバイトに繰り出した。
店長さんが言っていた通り、今日のバンドは人気グループばかりみたいだ。チケット販売が始まったばかりだが、既にお客さんが入り始めている。
予想より多いお客さん達を必死に捌いていると、あっという間にライブの時間になった。
ライブが始まったため、お客さんの流れも漸く落ち着いた。おかげでひとりちゃんと会話する余裕も生まれる。
彼女の様子を窺うと、既に真っ白に燃え尽きていた。
ふふっ、さっきは随分と忙しかったものね。
ひとりちゃんも凄い頑張ってたわ。
なんて思っていると、彼女の体がゆらゆらし始めた。
どうしようか迷っていると――
ふわっ。
――私の左肩に僅かな重み。
驚いて横目で確認すると、ひとりちゃんが体を私に預けて立ったまま眠り始めた。
器用なことをするなぁ、なんて感心しながらも、私は嬉しくなった。
無意識の内に私を頼ってくれている。
それだけ、ひとりちゃんが心を許してくれているということだ。
左肩の幸せな重みを堪能しつつ、盛り上がっているステージの方を見る。
お客さんの誰も彼もが、笑顔で楽しそうにしていた。
――いつか私達も、沢山のお客さんを笑顔に出来るバンドになろうね。
ポツリと呟いたその言葉が、ひとりちゃんに聞こえたかは分からない。
けれど、私の腕を掴むひとりちゃんの手に、少しだけ力がこもったような気がした。
いつの間にか起きていたひとりちゃんと共に、ドリンクの受付を続ける。
そんな私達の下に、店長がやってきた。
「喜多ちゃん、仕事もまだ続くし先に休憩入っちゃってよ。今はお客さんも比較的落ち着いてるから」
はい! と答える私に、ひとりちゃんは縋り付くような目で私を見るが、
「――ぼっちちゃんさっき眠ってたの知ってるよ」
店長の一言にピシャリと固まり、ガクガク震えながら謝り始めた。
「そんな訳で、ぼっちちゃんは私が見といてやるから。その間に休憩行ってきな」
はーい!
++++++
スタッフルームに入り、私は一息入れる。
自分で思っていたよりも疲れていたみたいだ。
いただいた休憩時間は三十分。一先ずお茶でも飲んでゆっくりするとしよう。
そのとき、目の前に何かが畳んであることに気が付く。
私は無意識の内にそれを手に取っていた。
――今、私の手にはピンク色のジャージが握られている。
これは偶然。そう、たまたまというやつだ。
つまり、私は悪くない……!
それなら私の好きなようにしよう。だって私は悪くない、むしろ正しいのだから。
ゴクリと息を呑み込み、目の前のジャージを掲げる。
そして私は――
スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!
おおお……!
こ、これがひとりちゃんがいつも着ているジャージの薫り……!
大好きな人の洋服をクンクンするという、あまりにも背徳的な行為に興奮する。
やりたい放題の私に、何処からか悪魔の囁きが聞こえてきた。
――それで満足か?
そうだ。
まだ足りない。
こんな所で終わりたくない……!
進もう、まだ誰も見た事のないその先へ……!
ピンクのジャージをがばっと広げそして――
――袖を通した。
ふわっ。
こ、これは……!
キタキタキタキターーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
凄い、凄いわ……!キターン!
ひとりちゃんに包まれている感じがする!キタキターン!
大好きな人の洋服を着ているという、あまりにも背徳的な行為に興奮が止まらないキタキタキタキターン!!
――拝啓、結束バンドの皆さん。
私は今、ひとりちゃんと交わっています。
ぶるぶると震えながら、私は謎の手紙を読み上げた。
そうだ、自撮りをしよう。
イソスタに上げるつもりは無い。
お家でひっそりと楽しむために撮るのだ。邪な思いなんてどこにもない
携帯を取り出してカメラを起動、インカメラモードにしてパシャパシャと写真を――
「――き、喜多さん……?」
時間が止まった。
どうする、どうすればこの状況を切り抜けられる?
深く深く、どこまでも深く思考する。
けれど、どれだけ考えても答えが見つからない。
――ど、どうしてひとりちゃんがここに……?
「あ、その、店長さんが代わってくれるって。喜多さんもいるからって。それで代わってくれました」
――そ、そっかぁ。
店長の気遣いに涙が出そうになる。悪い意味で。
駄目だ。
どれだけ考えても、この状況を誤魔化す方法が思い付かない。
私は
神様お願いします……!
どうかひとりちゃんに嫌われませんように……。
目を閉じて罪人パネルを被ろうとしている私を見て、ひとりちゃんが急に歩き出した。
どうやら何かを探しているらしい。
恐らく、私を殴り飛ばすバットでも探しているのだろう。
今までの思い出が脳内を駆け巡る。
良い人生であった……。
お父さん。お母さん。
今までありがとうござい――
「――き、喜多さん!」
……?
目を開くと、私の目の前にひとりちゃんの姿。
顔を赤らめた彼女はなんと――
「こ、これでお揃い……ですね」
私の制服のブレザーを着ていた。
キタキタキタキターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!
この記憶を最後に、私は意識を失った。
ぼっち「喜多さんのブレザー、良い匂い……」