アニメ最終話で、喜多ちゃんがぼっちちゃんのこと抱きしめながら腹話術してる場面あるじゃん?最後後ろからその二人が描かれてるところを見てさぁ   作:明太子美味しい

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ぼざろアルバムを無限にリピートする毎日。



結束バンド(ガチ)

 

 息を潜めてタイミングを見極める。

 私は獲物を狙う鷹だ。一瞬の隙も見逃さない。

 

 そんな私に、絶好のタイミングが訪れる。彼女がダラリと腕を下ろし始めたのだ。

 

 ……今しかない!

 この機を絶対に逃さない。

 イーグル喜多、イクヨッ!

 

 私は勢い良く彼女に近づき腕を組む。それから目的のブツを取り付けた。

 

 目にも止まらぬ早業……!

 昨日、家で練習したときよりも上手に出来たと思う。

 私は腕の様子を確認してから一つ息を吐いた。

 

「ピェッ! き、喜多さん……!」

 

 ――なぁにひとりちゃん?

 

「こ、これは一体……?」

 

 彼女は未だに、自分が置かれている状況を理解出来ないようだ。

 

 

 あはっ。

 作戦成功ね!

 

 

 考えてきた計画が上手くいったことに、私は満足する。

 我ながら素晴らしいアイディアだった。

 

 ――今日は暫く、この状態で過ごしましょう?

 

「エェッ! で、でもこれじゃあ、その、そう! 動きづらかったりしちゃ――」

 

 

 ――ひとりちゃんは嫌……かな?

 

 

「エェェェェッ! あ、あのあの! うぅぅ……」

 

 至近距離から、期待の眼差しで彼女を見つめる。

 

 

 

「……だ、大丈夫です!」

 

 

 

 やったわ!

 今日はずっと、楽しいが続くのね!

 

 

 にっこりと彼女に笑いかけると、ぎこちないながらも柔らかな笑顔を見せてくれた。

 

 彼女との距離はゼロ。誰にも私と彼女を引き離すことは出来ない。

 

 

 私達の手首は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――結束バンドで固く結ばれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

++++++

 

「それじゃあバンドミーティング、始めるよ〜!」

 

 結束バンドが結成してから定期的に行われるバンドミーティング。

 今日は丁度、それが行われる日だ。

 私達はいつものテーブルに集まって話を聞く。

 

「まず始めに嬉しいご報告! 私達、結束バンドのグッズが少しずつ売れ始めました! はいパチパチ〜」

 

 おぉー!

 本当に嬉しいご報告だわ!

 

 こうやってグッズを買ってくれるようなファンが増えていると聞いて、純粋に嬉しくなる。

 SNS担当大臣の私も頑張った甲斐があった。いや、美容品のことしか呟いていないけれども。

 

 なんて感心していると、ひとりちゃんが意を決した顔で伊地知先輩にあることを尋ねた。

 

「えっと、その。ど、どなたのグッズが人気とか……あります? 例えばそう! わ、私とか……!」

 

 す、凄いことを聞くわね……!

 

 中々に際どいところを質問する彼女は、頬を赤く染めながらにへらと笑っていた。

 

 ……やっぱりすぐ顔に出るわねひとりちゃん。

 

 あれは恐らく、自分のグッズが売れ過ぎて困っちゃうなぁ、みたいなことを考えている顔だ。

 自信満々でぽやぽやな彼女も、ちょっとおバカで可愛らしいと思う。

 

 そう思っていると、伊地知先輩がメモ帳を取り出した。

 察するに、あれには売り上げに関するメモが記されているのだろう。

 

「えっ? あぁ、ぼっちちゃんのグッズは――」

 

 

 伊地知先輩はメモ帳から顔を上げ、菩薩のような表情で語りかける。

 

 

「……人間、数だけが全てじゃないんだよぼっちちゃん。そう、大切なのは気持ち。私達の誰もが持っている、心なんだ……」

 

 

 あっ……。

 

 全てを察してしまう。

 

 無慈悲……!

 あまりにも無慈悲……!

 

「いいいいイキってすみません……」

 

 ひとりちゃんはギターが上手で可愛いのだから、グッズ売り上げもそれなりにあると予想していた。

 なのに売れていない。

 周りも見る目が無いなぁなんて思う。

 

「ピチュン」

 

 遂にひとりちゃんからは、自尊心の崩壊する音が聞こえてきた。

 彼女は後で私が慰めよう。それまで我慢していて欲しい。

 

 ――ちなみに、どんなグッズが売れているんですか?

 

 私は、先程から気になっていたことを伊地知先輩に尋ねる。

 すると彼女は、四色の結束バンドをそれぞれ取り出し、私達に渡してきた。

 

「やっぱりバンドTが多いね〜。あ、後はこの結束バンドもそこそこかな? 特にリョウの色はかなり売れてるよ!」

 

 おぉ、流石はリョウ先輩!

 思わず目で追ってしまう程の美貌と、ミステリアスな感じがお客さんに人気なのだろう。

 私も、ひとりちゃんとは別の方向で魅力的だと感じる。

 

 しかし――

 

 各々のカラーにサインを追加しただけのものが売れるなんて……。

 それだけ応援されている、ということなのだろうか。

 

 だとしたら俄然やる気が出る。

 最近の私は絶好調だ。この勢いのまま、どこまでも進んでいきたいと思う。

 

「ふっ。傍でベースを弾いているだけなのに注目を集めてしまうとは……。我ながら自分が恐ろしい」

 

「どっから湧いてくるんだいその自信! もう、本当に調子良いんだから。そういうの今は――」

 

「眠い……」

 

「ちょいちょいちょいッ!」

 

 突然始まった先輩達の仲の良いやり取りを見ながら、手持ち無沙汰な私は結束バンドを弄る。

 

 結んでは離して。結んでは離して。結んで――

 

 

 

 

 

 

 そのとき、私の頭に雷が落ちる。

 あまりの衝撃に、体が少しだけふらついた。

 

 これはもしかしたら……使えるかもしれないわ!

 

 何気ない瞬間に突然の閃き。

 まさに天啓……!

 

 やっぱり私には、ひとりちゃんと関わる才能があるんだわ!

 

 改めて自分のことを理解した私は、早速作戦を練る。

 

 どこを狙おうか。

 タイミングはいつにしようか。

 

 それだけではない。

 成功のためには、何回か練習もしなければいけないだろう。

 

 決行は明日。

 放課後、アルバイトに向かう前にしようか。

 脳内で入念にシミュレーションを行う。

 

 その日のバイトは些か集中力を欠いていて、滅多にしないミスを連発してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

++++++

 

 作戦決行の日がやってきた。

 

 昨日はバイト帰りに寄り道をして、目的のモノをちゃんと手に入れてきた。

 帰ってからもイメージトレーニングを行い、実際にぬいぐるみを使って練習もした。

 

 準備は万端だ。

 今の私に失敗はない。

 

 学校に登校してからも私は、いつものように過ごした。

 ひとりちゃんと会話をして、真面目に授業を受けて、友達と一緒にお昼を食べる。

 

 そうやって私は、放課後に向けて少しずつ集中力を高めていった。

 

 そして遂に最後の授業が終わる。

 私は静かに荷物を背負い込み、ゆっくりと一年二組の教室へと向かった。

 

 教室に入り、ひとりちゃんに声をかける。

 吃りながらもはいっ! と返事をした彼女は、荷物を持って私の隣に並んだ。

 

 

 

 

 

 

 息を潜めてタイミングを見極める。

 私は獲物を狙う鷹だ。一瞬の隙も見逃さない。

 

 そんな私に、絶好のタイミングが訪れる。彼女がダラリと腕を下ろし始めたのだ。

 

 ……今しかない!

 この機を絶対に逃さない。

 イーグル喜多、イクヨッ!

 

 私は勢い良く彼女に近づき腕を組む。

 それから、目的のブツを取り付けた。

 

「ピェッ! き、喜多さん……!」

 

 ――なぁにひとりちゃん?

 

「こ、これは一体……?」

 

 ――今日は暫く、この状態で過ごしましょう?

 

「エェッ! で、でもこれじゃあ、その、そう! 動きづらかったりしちゃ――」

 

 ――ひとりちゃんは嫌……かな?

 

「エェェェェッ! あ、あのあの! うぅぅ……」

 

 至近距離から、期待の眼差しで彼女を見つめる。

 

 

「……だ、大丈夫です!」

 

 

 やったわ!

 今日はずっと、楽しいが続くのね!

 

 

 にっこりと彼女に笑いかけると、ぎこちないながらも柔らかな笑顔を見せてくれた。

 

 

 私達の手首は――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結束バンドで固く結ばれていた。

 

 

 

 

 廊下を行き交う生徒が驚きながらも道を譲ってくれる。

 私の友達が、遠くで驚いているのが分かった。

 彼ら、彼女らの視線は一様に私達の手首に向かっている。

 

 ちょっとやり過ぎだったかしら……?

 

 少しだけ不安に思ってしまい、組んだ腕に力がこもる。

 そんな私の不安を和らげるように、反対側からも力が伝わってきた。

 

 驚いて目線を隣に向けると、顔を真っ赤にしながらも私を見つめるひとりちゃんと目が合った。

 

 あっ……。

 

 一瞬だけ私の足が止まる。

 そんな私をリードするように、彼女は私を引き連れて歩き出した。

 

 

 ずるい、ずるいずるいずるい……!

 こんなところで、そんな急にかっこいいひとりちゃんを出すなんて!

 

 

 顔が凄く熱い。多分、私の顔は真っ赤だろう。

 恥ずかしさのあまり、俯いた顔を上げることが出来ない。

 

 

 右腕から直に伝わる彼女の温もり。

 チラリと横を向くと、目の前には彼女の可愛らしい顔。

 彼女はチラチラとこちらを窺いながら、時々にへらと笑う。

 

 

 そんな彼女に胸がぽかぽかする。

 

 

 あぁ……。

 このまま、時間が止まっちゃえばいいのになぁ。

 

 

 

 

 

 

+++

 

 この状態のまま、私達は電車に乗ってSTARRYへとやってきた。

 それなりに注目されてしまったようだが、幸せを噛み締めていたためにほとんど気にならなかった。

 

 お店の扉を開け、私達は一緒に入る。まだ先輩達はいらっしゃらないようだ。

 そのままいつものテーブルへと向かい、席に座って一息ついた。

 

 彼女の様子を窺うと、真っ白に燃え尽きていた。それから首をこくりと揺らし始め、今にも眠ってしまいそうなご様子。

 あれだけ勇気を出して頑張ってくれたのだ。眠くなってしまうのも仕方ないだろう。

 

 このまま彼女が眠ってしまう前に、伝えたいことがある。

 私は、隣の彼女を見詰めながら話しかけた。

 

 

 ねぇひとりちゃん。

 

 

「ヒャイ……」

 

 

 さっきはありがとね――

 

 

 彼女の眠たげな目線が私の姿を捉える。

 

 

 ――とってもかっこよかったわ。

 

 

 彼女は嬉しそうにへにゃりと笑って、私の肩を枕に眠り始めた。

 

 

 

 

 それからアルバイトの時間になったが、店長さんに事情を説明して、彼女はスタッフルームで寝かせたままにしてもらうことになった。

 

 その代わりに、私が二人分働くようにと言われたが何も問題ない。今の私は、ひとりちゃんから貰ったパワーでやる気MAXである。

 

 

 今日も素敵な一日だった。

 彼女の頑張る姿を見て、彼女のかっこいい姿を見て――

 

 

 

 

 もっともっと彼女のことが好きになった。

 

 明日もいい日になるといいなぁ。

 そんな願いを胸に、私はバイトに繰り出したのだった。

 

 

 




 この日使用された結束バンドは、喜多郁代の部屋に大切に保管されている。
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