アニメ最終話で、喜多ちゃんがぼっちちゃんのこと抱きしめながら腹話術してる場面あるじゃん?最後後ろからその二人が描かれてるところを見てさぁ 作:明太子美味しい
「す、すいません。ちょっとお母さんに連絡して来ます」
ひとりちゃんはそう告げて、少し離れた場所に移動した。特にすることも無い私は、ぼんやりとその様子を見つめる。
彼女はポケットから携帯を取り出し、ロックを解除――
ちょっと待って。
今のロック解除、凄い見覚えのある指の動きをしていた気がする。
下、左、上、左上。
自分の携帯でロック画面を開き、ひとりちゃんの指の動きを確かめると、私は確信を得た。
やっぱり、ひとりちゃんの携帯パスワードは『0421』だわ!
『0421』
それは私、喜多郁代の誕生日である。
パスワードを私の誕生日にするなんて。
これ以上私の好感度を上げて、一体どうするつもりなのひとりちゃん……!
彼女の健気なアピールに胸がキュンキュンとする。この興奮のまま彼女を抱きしめたいが、なんとか我慢した。もう練習が終わったとはいえ、未だに機材やコードが散乱している。あまりハメを外してはしゃぎ回る訳にはいかないだろう。
ゆっくりと深呼吸をして、心を落ち着かせようとする私に――
そうだわ!
私もパスワードを変更して、ひとりちゃんから見える位置でロック解除してアピールするわよ!
――ちょっとした悪戯心が芽生えた。
早速、本体設定から4桁のパスワード『0221』を登録する。
ひとりちゃんがどんな反応をするのか、今から楽しみだ。
ちょっとだけ悪い顔をしている私を、伊地知先輩がジト目で見ているのが分かった。先輩には私が何か良からぬことを企んでいるとバレてしまったのかもしれない。彼女は意外と鋭いところがあるのだ。あ、リョウ先輩は無表情だった。
誤魔化す様に先輩達へと微笑んでいると、遂にひとりちゃんが帰ってきた。
時は満ちた。
今日も彼女の可愛らしい反応を見るとしよう。
あ、あら? ロインが来ているわ。
……。
自分で言うのも悲しいが、もう少し上手に出来ないのだろうか。演技は得意だと思っていたが、流石に今のは不自然だった。伊地知先輩の白々しい、とでも言いたげな視線に気付かないフリをする。
けれどひとりちゃんは信じてくれたようだ。なぜなら彼女の顔に、ロインが来るくらいお友達がいるんだぁ、みたいなことが書いてあるから。
彼女の純粋さにほっこりする。伊地知先輩にも見習ってほしい。
それから、ひとりちゃんから見えるように携帯を取り出してロック画面に数字を打ち込む。
0、2、2、1っと。
「――へぁっ!?」
振り向くとそこには、顔を赤く染めた彼女が目をまん丸にして、私のことを凝視していた。
あはっ!
++++++
時刻は土曜日、朝の八時である。
今日は午後から、夕方まで結束バンドの練習が入っている。お昼前には家を出ないといけないけれど、まだまだ集合時間には四時間程の余裕がある。何かしらで時間を潰さなければならないだろう。
私は携帯を取り出し、指紋認証でロックを解除した。それから日課となっているイソスタを開く。特に何かを投稿する訳ではないが、自分の思い出を振り返ったり、友人の投稿を覗いたりする。それだけで案外時間は潰せるものだ。
自分の投稿を振り返っていると、フォロワーの方々からのコメントに幾つか気になるものがあった。
『今日も喜多ちゃん可愛い!』
『なんかピンクの写ってね?』『クレープ美味しそう』
『ピンクのジャージかこれ』
『化粧品はどれ使ってます?』
『あの、匂わせやめてもらっていいですか?』
『恋人さんピンクジャージしか着ないのやばくね?』
そう。時々写真に写り込む、ピンク色のジャージについて言及するコメントが一定数存在していた。
ひとりちゃんはジャージ姿も可愛いんだから!
届く訳もないが、画面の向こう側に精一杯抗議する。
ほんとは私だって、ひとりちゃんとのツーショットを載せたい。けれど、彼女のSNSが苦手な感じを見ると、勝手に写真を載せる訳にはいかないだろう。
結果として、匂わせのような投稿になってしまうのだ。
いつかは彼女に許可を貰って、ジャージだけじゃない、彼女自身の可愛いところを見てもらいたいものだ。
決意を新たに、私はイソスタサーフィンに没頭するのだった。
+++
時刻は午後四時。少しだけお腹が空いてくる時間帯だ。
午後一時過ぎには、ひとりちゃんや先輩達と合流して練習を始めたため、今は体も程よく暖まっていて、演奏にも集中できている。
最近は本当に調子が良い気がする。やはり、毎日のようにひとりちゃんからぱぅわーを補給しているからだろうか。
体の疲れは彼女のふわふわで柔らかい体に溶かされる。
心の疲れは彼女の可愛らしさや素敵な心に癒される。
もうずっと側にいて欲しい。心からそう思った。
それに彼女は、私と目があったときににへらと笑いかけてくることがある。どこでそんな可愛い技を身に付けたのか、小一時間程問い詰めたくなるが我慢した。その技のおかげで、私の心が癒されているのだから。
そんなことを考えていると、曲のラスサビが始まった。私は意識を歌とギターに戻すと、精一杯の力を込めて歌い上げる。
私はその勢いのまま、曲の終わりまで全力で駆け抜けた。
「いや〜。今の曲合わせ、凄い良かったね〜! 予定が合えば次のライブも出来そうなくらいだよ〜!」
「凄い気持ちよく弾けた」
おぉ。先輩達も凄い喜んでいる。頑張って練習してきた甲斐があった。
私は一度、ふぅと息を吐き、タオルを取り出して汗を拭き始めた。やっぱり、集中して練習に取り組むとかなりの体力を持っていかれる。
「それじゃあ少し休憩して、最後に一回通したら自由解散にしよっか!」
伊地知先輩から告げられた言葉に、私は少し考え込む。
練習が終わって機材の片付けを行うと、午後五時ぐらいには終わるだろう。
今日は午後から続けて練習していたため、自主練する体力が残っていない。たとえひとりちゃんぱぅわーを補給しても、半分ぐらいしかこの疲労は取れないだろう。となると、やっぱりこのまま解散して帰宅という流れになるのだろうか。
けれど、せっかくお休みの日にひとりちゃんと会えたのだ。もう少しだけ一緒に過ごしたいとも思ってしまう。
そんなことを考えていたとき――
グゥ〜。
謎の音が私の耳に入る。
その音に反射的に振り向くと、リョウ先輩がお腹を押さえていた。
「……お腹すいた」
それだわ!
++++++
バンド練習が終わった。片付けはこれからだが、反省会は既に終わっている。そのため、今は自由に解散できる状況である。
そんなとき、私はひとりちゃんに告げた。
――夜ご飯、一緒に行かない?
「わ、私ですか!? えと、い、行きます!」
やったわ!
嬉しそうな彼女を見ると、私も嬉しくなる。その勢いで一応先輩方にも尋ねたが、用事があるそうで断られてしまった。
それでも目的であった、ひとりちゃんとの夜ご飯は約束できた。今日はもう少しだけ幸せが続くらしい。
「す、すいません。ちょっとお母さんに連絡して来ます」
ひとりちゃんはそう告げて、少し離れた場所に移動した。特にすることも無い私は、ぼんやりとその様子を見つめる。
彼女はポケットから携帯を取り出し、ロックを解除――
ちょっと待って。
今のロック解除、凄い見覚えのある指の動きをしていた気がする。
下、左、上、左上。
やっぱり、ひとりちゃんの携帯パスワードは『0421』だわ!
『0421』
それは私、喜多郁代の誕生日である。
パスワードを私の誕生日にするなんて。これ以上私の好感度を上げて、一体どうするつもりなのひとりちゃん……!
ゆっくりと深呼吸をして、心を落ち着かせようとする私に――
そうだわ!
私もパスワードを変更して、ひとりちゃんから見える位置でロック解除してアピールするわよ!
――ちょっとした悪戯心が芽生えた。
早速、本体設定から4桁のパスワード『0221』を登録する。
ひとりちゃんがどんな反応をするのか楽しみにしていると、遂にひとりちゃんが帰ってきた。
時は満ちた。
今日も彼女の可愛らしい反応を見るとしよう。
あ、あら? ロインが来ているわ。
私は、ひとりちゃんから見えるように携帯を取り出してロック画面に数字を打ち込む。
0、2、2、1っと。
「――へぁっ!?」
振り向くとそこには、顔を赤く染めた彼女が目をまん丸にして、私のことを凝視していた。
あはっ!
彼女の可愛らしさに、ニヤついてしまいそうになったが必死で堪える。
――どうしたの?
白々しくも気付かないふりをする私、喜多郁代。
「い、今のって。その、わ、私? え、嘘、えぇ?」
物凄い勢いで彼女の目が動いている。もしや、この状況が理解できないくらい戸惑っているのだろうか?
そんな様子の彼女も可愛らしい。絶賛ときめき中の私は、あぁと理解したように呟いてから、畳み掛けるように更に一言。
――携帯のパスワード、大切な人の誕生日にしているの。
「ピャァァァ」
キターン! と放ったこの言葉は、ひとりちゃんの胸にヒットしたようだ。
先程よりも顔を真っ赤に染めている。今、彼女の頭の中では、
大切な人 = 誕生日 = 自分
ということを理解したのだろう。えへえへと顔を蕩かしている。
その様子に満足した私は、胸を張って伊地知先輩へと振り向いた。私はやり切りましたよと、何も悪いことはしていませんよと目線で告げる。
そんな私に、先輩は苦笑いで答えてくれた。先輩的にも健全であると判断されたみたいで嬉しくなる。
そのとき、ひとりちゃんが私の腕を掴んで話しかけてきた。
「あ、あの!」
どうしたの?
「じ、実は私も……」
徐に携帯の画面を私に見せるひとりちゃん。あまりにも健気なアピールに、お腹の奥が熱くなった。
それから彼女は、えへっと笑いながらパスワードを打ち込んだ。その数字はやはり『0421』。
「わ、私も喜多さんのこと、す、凄い大切ですから!」
あはっ!
実際にそう言われると凄い嬉しくなる。私達はもしや、相思相愛なのではなかろうか。
もう我慢できないと言わんばかりに、私は勢いよく彼女を抱きしめた。相変わらずのふわふわモチモチに感動する私は、一度体を離してから至近距離で彼女を見つめる。
ひとりちゃんは目をウルウルとさせている。それから、頬を染めて私に熱っぽい視線を送ってくれた。
……これはいける。今日ここで決める。
強く決意した私は、その勢いのままに伊地知先輩に尋ねた。
――STARRY、今日はいつまで空いていますか? 三時間ほど休憩したいんですけど……。
「ははっ。は?」
氷のような彼女の冷たい眼差しに、ぶるりと震え上がった。
私の痛恨のミスにより、一瞬で私達の興奮は冷めてしまうのだった。
+++
一緒にひとりちゃんと夜ご飯を食べていると、リョウ先輩からロインがきた。なんだろうと思い、届いたメッセージを確認する。
送られてきたものは画像一枚だけ。
その画像には、ひとりちゃんを抱きしめて至近距離から見つめ合う私達が写っていた。
先輩ありがとうございます〜〜〜!
私は三回保存ボタンを押してから携帯を閉じると、正面のひとりちゃんがにへらと笑っていた。
どうしたのと尋ねる私に、彼女は携帯のホーム画面を見せてくれた。
そこには――
先程私が保存したものと同じ、お互いを抱きしめて、至近距離から見つめ合う私達の画像が設定されていた。
ぼっち「お友達とのツーショット。私も遂にリア充かぁ!」
喜多「あ、好き」