六対目は最後まで取って置く ~これでいいのだ!~ 作:アルポリス
迫りくる正体不明の攻撃、弟やその仲間たちが倒れる中、私は己に命ずる。
膝を折るな、立て、立ち続けろ、私の脚。あれに負ければ世界が破壊される。等しくすべてが終焉を迎える。私が最も大切にしているものを壊すことになる。
私は私として愛してくれた家族を守りたいのだ。
絶望の淵で死んで、気づいたら生まれて出会った最愛の家族を私は守りたい。
出張でろくに帰ってこないけど、帰ってきたときはこちらがウザくなるほど構ってくる優しい父。
包み込むような愛で優しく、時に厳しく接してくれた母。
小さい頃は私の後ろをちょこまかと着いてきて、体いっぱいの愛で慕ってくれ、最近は反抗期なのか、多少愛情がわかり難いこともあった、それでも変わらない愛情向ける弟。
小さい頃は何かと私の真似をしたがり、今では計算して私に甘えてくるようになった、強かな末の妹。
私が持つ力を放つ。
何を犠牲にしても守りたい。たとえそれが、家族を悲しませることになろうとも。
金髪の少女が目覚める。
敵が正体不明の攻撃を行った。私の頭上で閃光が走ると稲光と共に衝撃が体にきた。
それでも私は立ち続ける。
力を放つ。
私が必ず、必ず助けてみせる。救ってみせる。
眼鏡の男の子が目を覚ました。
敵が正体不明の攻撃を行った。私の下半身が世界一硬い鉱物に変わる。
力を放つ。
私は所詮この世界の異分子だ、私が消えても恙無く世界は回るだろう。
辮髪の男の子が拳を握り締め立ち上がろうとする。
敵が正体不明の攻撃を行った。鋭い何かが私の片目を抉った。
私は片目で敵を見据え、最後の力を放つ。
もっとも、私がこの場所に降り立った時点で私自身の終わりは迎えていた。今更というものだ。
赤い帽子を被った弟が力強く立ち上がると、私を見て驚愕していた。
だから私は何時も通り、家にいたときと変わらずこう言うのだ。
「どうした、寝坊だぞ」
「姉ちゃん、どうして……」
弟が再起したのが分かったのか、標的を私から弟に変えてきた。
正体不明の攻撃が弟を襲う。私は力を放つ。
攻撃は弟に届く寸前、何か壁のようなもので掻き消された。
「なんで、姉ちゃんがここにいるんだよ!!」
ああ、弟よ、お前は知っているのだな、この場所に生身でいることの意味を。
ああ、すまない。弟よ、私の代わりに家族を守ってほしい。意識を保つのが限界だ。
ああ、でもこれだけは言わなければならない。
「あれは悪意の塊、ならば人の善意があれにとっての弱点。祈りなさい、お前たちで祈りなさい……お前たちで足りなければ…頼りなさい……お前たちの帰りを待つ、愛する家族や友人たちを……」
私の言葉で金髪の少女はようやく気づいたようだ、膝を折り胸の前で腕を組み、祈りの体勢を整え始めた。
そして、その周りを眼鏡と辮髪の男の子が守るように囲う。
いい、チームワークだ。これで、大丈夫。安心して最後を迎えられる。
「いやだ! 姉ちゃん目を開けて、ヒーリングΩ!!ヒーリングΩ!! ライフアップγ!!どうして、傷がふさがらないんだよ!!」
この、馬鹿弟、お前が行かなければ終わらないではないか、これはお前たちの物語だろう!!
「生きろ…世界を救え…私の家族を…守れ」
こんなことしか言えない姉をどうか許さないでほしい。
「姉ちゃんも家族だ!!」
ああ、泣かないでくれ。立派な男だろう、最近のお前がよく言っていたじゃないか。お姉ちゃんは体が動かないんだよ、弟の涙も拭いてやれないんだ。
「お前も家族だ…だから守った…今度はお前の番だ」
願わくは、私を思い出にして強く生きてほしい。決して、枷などにしないでくれ。
「あああ、いやだ、目を開けてよ、姉ちゃん、死なないでよ、姉ちゃん!!」
「危ない!!」
仲間たちの必死の叫びに鉛のようだった私の体が羽のように軽くなる。ぞんざい、私も現金なものだと呆れてしまう。
敵が正体不明の強力な攻撃を弟に向けて繰り出した。
攻撃は弟に覆いかぶさった姉によって防がれた。
姉は姿形もなく消え去った。
私は自身の終わりの刹那、弟の泣き叫ぶ声と、あの場にふさわしくない鈴の音を耳に捕らえて意識を闇に染めた。
遅筆ですが長い目でよろしくお願いします。