六対目は最後まで取って置く ~これでいいのだ!~ 作:アルポリス
慌しく旅の用意を整えて家族にお座なりながらも別れを告げれば爺様は苦笑で旅の無事を祈られ、妹には見事な満面の笑みで手を振られ、イラッと来たものの事は一刻も争うのでその想いに蓋をすれば、後は目的地のシオンタウンを目指して街道をひた走る。
私の力には一度訪れた町に一瞬で行ける技もあるのだが、如何せん燃費が悪すぎた。マサラからシオンの距離だと私は着いた瞬間二日は昏睡するだろう。
それでは意味がない。前の世界にいた時は一定の消費で距離は関係なかったのだが、この世界ではどうやら駄目らしい。当然他の力も全体的に燃費が悪くなっている。先ほどまではあまり不便さを感じなかったが今この時ほど恨めしく思った。
「グレン経由は水ポケモンがいないと駄目だし」
『あの者は泳げる状態ではありませんからね』
私の傍に付いて一定間隔で飛んでいたアイから念波を送られる。
そうなのだ、私の手持ちに一体水ポケモンがいるのだが、そのポケモンがある理由で残念ながら泳げない状態なのだ。つまり、なみのりが出来ないというわけで。
「あいつ自身のせいではないから仕方がないといえば仕方がないが……」
ほんと、私の手持ちは曲者ぞろいだと愚痴を言いたくなる。
「せめて、あいつが私の傍にいればどうとでもなるのに」
あいつと呼んだのは私の手持ちの一匹のことだ。手持ちなのに今私は持っていない、可笑しな話だが事実である。これもまたある理由で手元から離れているのだが正直こちらに関しても仕方がない。仲間になる時にそう望まれたからだ。
『主は寛容すぎるのです……あの野郎は一度地獄の業火に投げいれてしまった方がよろしいかと存じます』
そして、アイとは絶望的に仲が悪いときたものだから困ってしまう。何が困るかといえば…
『主、トキワの森に入ってから、上空に不穏な気配があります。一定の距離を保ち我々を監視しているようですが、いかがなさいますか?』
相棒の少し固い念波を受けて私は空を見上げた。生い茂る木々の隙間から青と白のコントラストが時折顔を出す。明らかに知っているその色を見て私は知らず笑みを浮かべていた。傍から見たら凶悪な犯罪者が浮かべるようなものを。
「噂をすれば何とやら、あいつの方から飛び込んでくるとはなんて運が良い」
腰にあるホルダーから女王のボールを取り出そうと手を動かせば、アイから念波が送られる。
『お待ち下さい、ここでは上空の視界も悪く女王には不利でしょう。まして仇敵は空を飛んでいるとなればなおのこと対峙するのは難しい。ここは同じ空を飛べる私が相対するべきかと』
普段はそんなことを言わないくせにあいつだと俄然殺る気になるのだからこちらとしては大変困る。彼らが戦えばどちらかが当分再起不能にされてしまう、それではその先に待つ目的が遂行できなくなる。かといって並みの理由では意志の強いアイの提案を却下することは不可能に近い。
ならば、妥協案を示すしかない。
「いいだろう、ただし私も戦いの場には向かう」
『主、それは!!』
「言うな、お前ほどの奴だ、私の体を蔓のムチで支えながら飛び、なおかつ戦うことも可能だろうが。それが嫌なら提案は却下だ」
数秒の睨みあいと念波のやり取りが続き、呆れたような声でビィと泣いたアイは私の腰辺りに蔓のムチを撒きつけた。
私の妥協案がごり押しで採用された瞬間だった。
準備が整い後は私の掛け声を待つばかりである。木々に覆われた空に手を掲げ、私は宣言する。
「これより、空中戦を行う。総員衝撃に備えよ」
『私と主だけです』
「重力制御装置正常に作動」
『そのようなものはありません』
「出力臨界点突破」
『そこは私次第ですからね』
「起動ポケモン、セレビィMk-Ⅱ発進!!」
『私が後継機なら前継機は両親でしょうか』
「発進しなさい!!」
『ハァ、了解しました。主が時折分からないです…ですが、戦いは本物、気を引き締めませんと……ゴホン、僭越ながら、アイ! セレビィ出るぞ!!』
わりとノリが良い私とアイなのであった。
次回 空中戦! …になるといいな。戦闘描写が…。