六対目は最後まで取って置く ~これでいいのだ!~   作:アルポリス

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 タイトル少し増やしました。


後編

 バカドラの落下で一応の決着がつき、私とアイも地上に降り立った。黒焦げになったバカドラは黒煙を上げて体を痙攣させている。

 

『バカドラ、演技はその辺にして下さいますか、こちらは時間がないのです』

 

追い討ちを掛けるようにバカドラに念波を送る、鬼畜なアイさん。すると、バカドラの体が急激に輝きだした。

 

 焦げた体が再生されていく。数秒の後、所々火傷を残してバカドラは復活した。

 

『テメェェッよくもやってくれたな!!』

『最初に手を出したのはあなたからでしょう』

 

 低い唸り上げるバカドラをサラッと受け流したアイ、事実だからこそ歯噛みして睨みつけるだけに留まる割と素直なバカドラ、懐かしき情景だ。

 

「久しぶりだな」

 

 私がそう感想を述べれば、睨みつけていたバカドラが視線を私に向ける、そしてすぐに明後日の方向に視線を泳がせた。こいつは長い時間私に視線を合わせていたことは今までない。もしかしたら嫌われているのかもしれないと思ったこともあったが、それならわざわざ私に会いに来ないだろうと思い直し、ならば何故視線を合わせないのか未だに理解できていない。

 

『メ、メリーも元気そうで、よ、良かったな……』

 

 先ほどの啖呵を切るような饒舌さは微塵も感じない口調に私は思わず笑ってしまう。

 

『な、なに笑ってやがるっ ぶ、ぶっ飛ばすぞ!!』

 

 どこと無く顔を赤くして叫んだ言葉にアイの雰囲気が鋭くなる。それを私は手で制して止めた。このままではまた戦い出しそうで困る。

 

「笑ってすまなかった。久しぶりにお前と会えて嬉しかったんだ。お前は殆ど私の傍にいないからな」

 

 大会や、大きなバトルなどには必ず駆けつけるこいつは戦いが終わると何時の間にか消えているのだ。それを昔問うとこいつはこう言った。

 

『お、俺にも事情が、あ、あるんだよ!!』

 

 前の時と同じ問いを返され、私は笑みを深くする。あの頃と変わっていない部分を見つけて嬉しい。

 

「そうだな、私はお前たちを縛るつもりはない。私自身も縛られるのは好きではないんだ、それなら、お前たちも自由であって然るべきだ。それでもお前たちは私を助けてくれることを知っているという自負があるからだけどな」

 

 私が思っていること告げれば、あいつは嬉しそうな雰囲気を念波で発していた。

 

『そ、それでこそ、俺のメリーだ』

『バカドラのものでありませんし、主は物ではありません』

 

 どこか誇らしげに念波が送られ、すぐさまアイが念波で返す。そして何時もの喧騒が始まりそうなところを私が止める。ここで、話し込んでいたら何時までたっても進めない。

 

「アイ、ストップだ」

 

 語尾を強めて言えば、アイは不満を残しながらも黙り込む。そんな姿にバカドラは馬鹿にするような念波を浮かべている。本当に仲が悪いな、お前ら。

 

 気にしていたらキリがないので本題に入る。

 

「今日はお前に頼みたいことがあるんだ」

 

『な、なんだ、改まって』

 

「お前の力で私をシオンタウンに連れて行ってもらいたい」

 

 それはお前にしか出来ないことだ、という想いは口に出さなかったが、それを感じ取ったのか、あいつは嬉しさ満開といった状態の念波を無意識だろう、発していた。

 

『し、仕方ねえなぁ、め、メリーがどうしてもって言うなら、や、やってやらなくもないぞ!?』

 

 イラッとする念波が私のすぐ横で発せられている。それを無視して私はお願いする。

 

「お前が頼りなんだ。私は今、危機に立たされている。だからお願いします」

 

『メリーのお願い……あの糞虫ではなく、俺にお願い…へへっ、超嬉しいぜ』

 

 どうやら私の必死さを哀れに思ってくれたのだろう、あいつは機嫌を悪くするどころか、喜んでいる。

 

『構わないぜ、メリーの望みなら、どんな空も、どんな世界だって飛んでやらぁ!』

 

 ふわりと浮かび上がった、あいつは私の傍に近寄ると頭を垂れるかのように首を下げた。首と胴体部分の間に私が乗り込むと風が巻き起こる。あいつはドラゴンでありながら羽ばたきを行わない。平行に保たれた翼が風を纏うのだ。それは宛ら戦闘機のようだ。

 

『言っておくが、俺の背中に乗せるのはメリーだけだ。鈍間な糞虫はせいぜい、俺たちを見失わないように着いてくるんだな!』

『結構、私は常に主と共にあります。蛆虫如きのスピードに着いてこられないほど愚鈍ではありません』

『はっ! 言うじゃねぇか、ならテメェが着いて来られるか試してやろうじゃねぇの』

 

 おい、ちょっと待てという言葉が口から出されることはなかった。あいつは低空を飛びながら茂る木々が閑散とした場所まで来ると進行方向の角度を上に向けて急激な加速を試みた。当然、私に対するGが掛かるはずなのだが、それを感じない。薄い膜のようなものが私を包み込んでいたことから、あいつが何らかの技で守ってくれているのだろう。それをされて尚、言葉が出せないのだから相当のGが掛かっていると思われる。

 

 一気に上空まで上り詰めれば、あとは水平に高度を保ち、目的地に突き進む。ふと、アイの姿を確認すれば少し後ろを懸命に着いてくる。やはり、直線状の飛行に入ったこいつとの競争は分が悪いようだ。直情型のこいつらしいと言えばこいつらしい持ち味。この速度で体当たりをかまされたら私の手持ちはすべて再起不能にされるだろう、当てられるかどうかは別にしてだが。

 

 トキワの森から徒歩で役二日程、普通の飛行でも数時間は要するシオンタウンまでの距離を時間にして三十分で私たちは降り立ったのだ。

 

 息も絶え絶えで着いてきたアイを視線に捉え、あいつは鼻で笑った。

 

『まあ、結果は分かりきっていたことだ。が、その程度で息が上がるなんてよぅ、テメェ、随分と怠けてやがったんじゃねぇか?』

 

 独特の呼吸法ですぐに息を整えるとアイは悔しげな念波を送る。

 

『言ってくれますね、これだから体力だけの馬鹿は嫌いなのです。自身が成長した証だと思わないのですね』

 

『なっ! テメェ、頭は大丈夫か? 俺を褒めるなんて明日は雪が降るんじゃねぇだろうなぁ、嫌だぞぉ、雪は』

『私は事実を言ったまで。例え、蛆虫が相手であろうとも認めるところは認める器量を持ち合わせているつもりです』

『その表情を止めやがれ、俺はテメェに哀れみを受けられたくねぇ』

 

 あいつは軽く舌打ちして視線を私に戻した。恥ずかしいのだろう。しかし、表情は苦虫を潰したようなものであったが。

 

 表情を改め、こいつは酷く緊張した雰囲気を醸し出していた。

 

『め、メリーよぅ、お前が願うなら俺は何時だって駆けつけてやる。そ、そんでよ、お前が真の意味で、お、俺をほ、欲してくれる…ようになったら、お、お前の……あ、あ、あ、いぼ』

 

 あいつは言葉を詰まらせながら、たどたどしい念波を送ってくる。残念ながらその内容の意味がよく分からない私は頭の中で疑問符を乱舞させていた。

 

『だあああああ、言えねぇ!!』

 

 言いながら、ふわりと浮かび上がったあいつ。

 

『俺はまた、修行の旅に出る!! けど、さっき言ったのは本当だぁ! メリーの念波を感じれば何時でも来るからな!! それまで糞虫!! その場所をお前に預けてやらぁああ!』

 

 捨て台詞のように吐き捨てて、あいつは飛び去っていった。本当に意味が分からない。もう、バカドラで良いような気がしてきた。

 

『ホント、バカドラをからかうのは面白い。思春期の少年ですか……ぷぷっ』

 

 

 

 

 横で笑いを堪えてビィ、ビィと煩いこいつも含めて馬鹿ばっかである。

 

 それよりも三日も待たせた、あのお方にどう釈明をすればよいのか頭が痛い課題だ。

 

 

 

 

 ぶっちゃけ会いたくないぞ!!




 ありがとうございます。


 
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