僕は無実だァっ!!!   作:ラトソル

18 / 24
この世界線の原作は悠の内情描写が皆無なので読者からすれば悠は表情の変化が乏しく絡みづらい印象だが潔や凪の師匠的立場になってる謎の最強格と思われてる。後人の心は無いと思われてますね。


失望したぜ、あんたにはよ……(元々それほど信頼してない)

『さあ、青い監獄(ブルーロック)で学んだ全てを賭けて世界へ羽ばたく舞台は整った』

 

 数十名の男が密室に集められ、モニター越しから機械的に口を動かす顔色のおかしい男の言葉に耳を傾ける。

 

 見慣れた顔、見た記憶がある顔、なんか居た感じがする顔、マジで誰だこいつな顔ぶれが集まる熱気漂う気持ち悪い空間にポツリと立たされ、機械的ながらに僅かに感情を昂らせている河童の声が反響し余韻が耳に残る。

 

『己の未来の全てを賭けて、戦うべき『環境』を選べ』

 

 言葉の羅列をつらつらと並べて語る男の声に俺以外の人間の気持ちが張り詰められているのを感じる。

 己の進路に不安を感じるもの、一歩踏み出すことへの快感を待ちわびるもの、苛立ちを見せながら端末を握りしめるもの。そして話の内容が全く理解出来ていないもの。自慢では無いが俺は最後の奴。

 

 俺の事を親の仇のように睨みつけてくるベロ出し男を無視しながら、俺の持つスマホに送られてきた見た目近未来的なサイトを軽く一瞥してから心の中で一言呟く。

 

(……なにこれ?)

 

 時間は少し遡る。

 

 あれはそう。『監獄に来てね♥』という熱烈な激キショ通知が来た後、黒目が黒すぎる河童の瞳孔を小指で突き刺してやろうと意気揚々とした気持ちで家を飛び出すと何故か黒い車が家の前に停められていたために一度扉を閉めて呼吸を整えてからもう一度開くと次は車の前で笑顔で手を振るアンリさんの姿が目に映る。おいやめろ、真昼に殺される。

 

 ペラペラキャッキャウフフとアンリさんが楽しそうに話しかけてきてそれに相槌を打ちながら、たまに揺れる車に連動して動作するたわわなプリンを横目で堪能させて頂きながらたどり着きました諸悪の根源たる収容所。

 

「水野悠だ……!!」

「来たぞ! 寄れ寄れ!!」

 

 車から降りて砂利を踏みしめる音をかき消す程のフラッシュ音とざわめきが出迎える。撮り鉄を思わせる熱気とパパラッチがごときプライバシーの無さに吐き気を催しながらもそちらに視線を向けることなく歩く。

 何? 手配書でも作るの? そういうのは冴だけにしとけよ、あとその弟。

 

「こちらです。皆さんは既にお揃いなので心配しないでくださいねっ」

 

 何が? という言葉を伝える前に扉が僅かな機械音を奏でながら横へとスライドする。薄暗い廊下から突如光源がさしてきて、チカチカと不快な眩しさを感じるがすぐに平常運転に戻り、次いで感じる数多の視線。

 

 見たことあるようなないようなという絶妙なラインで集められた人選。そして大半の顔がやべぇ雰囲気漂うこいつらは間違いなく犯罪者予備軍の集団だった。

 

「あ、師匠(マスター)。遅かったね」

 

「お前死ねよ」

 

「え──」

 

 モコモコ白髪の丸い目を向けてくる凪に僅かばかりの殺気を向ける。あの後真昼に『ゲームしましょうよ、マスター』『ご飯出来ましたよマスター』とか、『マスター、マスター……ふふっ、マスターっ』って散々煽られたからな。

 

「お、潔。まだ生きてたのか」

 

「なんだそれ……」

 

「ねぇ、俺に冷たくない? ねぇ?」

 

「お久しぶりです、水野くん」

 

「二子、相変わらず目見えないな。なんで俺の足踏みつけてんの?」

 

「恨みつらみを晴らそうかと」

 

「なんや、ヒーローは遅れてやってくるんかいな水野くん」

 

「誰のこと言ってんの?」

 

「ヒーローインタビュー受けてたやん……て、理解してへんか」

 

「何その悟ったような目」

 

 ああ、真昼にナンパしてたやつも混じってんな。

 顔も見たくないが、相手は俺のことが気になる様子。というかこのフロアにいるヤツら全員俺に対して意識を向けてきてる。正直、知らない奴らの相手はしたくないし興味もないために見知ってるやつらに囲まれてる現状は好機。

 少し大袈裟に声を出し、そしてこいつらだけに目を向けてれば近寄ってくるやつはいない。若干1名、俺の喉を鷲掴みしてきそうな程に殺意迸る元気満々なベロりんちょがいるものの無視だ無視。

 

「ねぇ。ほんとに無視すんの?」

 

「いたんだ、凪」

 

「水野が気づかないわけないじゃん……」

 

 本格的に視線を受ける感覚が鬱陶しく感じ始めた時にモニターが前触れなく作動し、浮かび上がる不健康極まりない河童の顔面。間延びした声に俺に向けられていた視線がモニターへと転換されていく。俺は初めて河童に賛辞を送った。

 良くやった河童、お前ならやれると信じてたぞ不健康。そんな心の中での賞賛は河童に伝わることなく、そしてモニター越しから告げられてきたよくわからん内容によって消え去って行った。

 

 スマホに表示されたSELECTの文字。そして選択画面には五つの国名と国旗。

 眼前のモニターには河童の姿は既になく、1秒ごとに数字が減っていくタイマーの表記と一文の注意書きのみ。

 

 俺はドイツ、俺はイタリア、スペイン、フランスなどなど。近くにいるヤツらと意見交換を行う奴らの声が嫌でも耳に入ってくる。

 

「僕はドイツやなぁ」

 

 隣に立つ氷織が自分の意見を主張してくる。潔は何やら迷っているが、俺はとりあえずこの選択肢の意味から聞かせて頂きたいところではある。

 

 ツヤツヤ長髪のお嬢様風の美人局はイングランドに行くそうだ。そっか、頑張れ。何を頑張るのか知らんけど。

 

「水野は?」

 

 周りの連中の意見を聞きながら、それでも決められない潔が参考として俺に意見を求めてくる。なんの選択なのか、どういう意図での5カ国なのかさっぱりだが、この並びなら一択だろうか。

 

「ドイツ」

 

「っ……やっぱり、居るからか……?」

 

 何かを悟ったように聞いてくるが、生憎こいつが何を言ってるのか分からないために理由だけでも伝えておこうと思った。

 

「行ったことない国だから」

 

「……え? あ、そう……」

 

「「ぶフォッ」」

 

 こいつらほんとなんなの? 怖いんだけど。なにか俺の知らないところで陰謀がはたらかれてる気がする。

 

「マジかっ、水野居んのかよ……!!」

「ハッ! カンケーねぇな! ドイツもコイツもぶっ殺す!!」

 

 激寒なダジャレを叫んでたやつは自信満々な顔で満足気に歩いていた。

 

 入った先では何故か河童による演説によりドイツのトップチームであるバスタード・ミュンヘンの説明とともにノエル・ノアを先頭にそのU-20のメンバーが現れた。うわぁ、ハジメテミター。感想、画面の中の人まんま、以上。

 

 それよりも驚きなのは、ノアだけが顔を把握出来、後ろに並ぶ選手たちの顔は輪郭だけしか捉えられない光源の配置の絶妙さだ。なんだこれ、トリックに気づいたコナン君かよ。どこに技術使ってんだこいつらは。

 

 んで、なんで有名な人もこの監獄に来てんの? サッカーは刑務でしょうが、本格的にさせんなや。一回ぐらい本気でやろうかなとか思ったけどこんな本格的な場面はノーセンキューなんだよ。

 

 そのほかの国を選んだ奴らにも、その国に因んだサッカーチームが割りあてられているそうだ。クリス・プリンス? 知らん、誰それ。

 あ、あん時の坊主居るじゃん。クソ痛な二つ名つけられてるのは爆笑通り越して虚無だ。可哀想に。言うほど速いわけじゃないのにな。

 

 そして初めましてなノエル・ノアだが、何故か先程から俺に視線が向けられて正直居た堪れない。最近視線しか感じてないんだが? 何故か苦労人仲間を見つけたかのように視線を感じる。

 

 河童の説明が加速する事に、周りの連中も興奮してきているように感じる。なに、そんな熱い話してたの? え、リーグ戦? なんで? 

 

 どうやら5つのチームで総当りのリーグ戦を行うようだ。全くもって理解不能だったが、俺はとある結論に辿り着き、河童の生み出したルールの悲惨さに頭を悩ませた。そこまで行ってしまったのか、クソカッパが。

 

 俺の予想は恐らく当たっている。というかこれしか有り得ない。これならばサッカーを刑務としていたのにも納得がいく。

 

 そう……敗北したチームは例外なく処刑なのだ。

 つまりここで八割の人間が死ぬ。oh.なんてことだ。やけにニヤニヤしているゴミカスの思考が透けて見えるぜ! 

 これはエンターテインメント。そんな感じのことをあいつはほざいていた。つまりはプロチームを呼んだのもこの催しを世界に散財する一部の金持ちの娯楽のために華やか且つ鮮烈なものにするために演者。外国人の感性は分からないが参加してもいいと思っている以上河童側の人間。ちっ、非人道的なゴミカスどもがっ! 

 

 つまりだ。

 今まで意味の分からないと思っていたサッカーの刑務はこの日この時のために少しでも抗う俺たちの姿を見るためにスキルアップを強要したということ。さぞかし楽しかっただろう。滑稽に見えただろう。そう考えると怒りで視界が赤く染る。ちっ、相変わらず顔の見えない連中めっ! 刺青だけはくっきり見えるぞクソガキがっ!!! 

 

 遂にここまで来てしまったのだ。

 今まで死亡者を暗示することなく、ただ犯罪者予備軍を更生するだけの組織だと思っていたのに、これだ。

 

 見ろ! 俺たちのドイツチームにだけ追加選手とか行って完全に目がイッテルやつ導入してきやがった! なんか煙とかで演出を無駄に豪華にしやがって! 

 い、潔!? なんで目を輝かせてる!? お前は今どっちの潔だ! 双葉か、厨二病か!? 

 

「うわっ、話に夢中なってて気づかんかったけどまたアホなこと考えてる顔してるやんか」

 

 なんてことだ、デスゲームが始まった……だと!? 日本で許されていいのか! ココニホンだぞ!! 

 

『そして……これは俺自身、想定外の朗報だった』

 

 うわ、なんか語り出した。お前はとりあえず無実の俺に謝れ! 

 

『國神 錬介の復活。ここまでが俺の描いた新英雄大戦のスタート。だが、先日俺の元へと一本の連絡が届いた』

 

 物語風に語るなやクソが。

 

『なんとも独善的な内容だったが、俺の描く化学反応に特大のスパイスを加えられると半ば賭けではあるものの利害の一致から俺はそいつの要求をのみ……そして今、そいつが所属するチームが確定した』

 

 モニターに表示されるのはフランスの国旗とその集合場所であろうルーム。

 その後ろから扉が開かれ、またもや無駄に豪華に煙を立たせながら男が入ってくる。ポケットに手突っ込んでるのかっこいいと思ってんのかねあいつ。

 

『呑まれてくれるなよ、原石共。P・X・Gに追加で参加する────糸師冴だ』

 

 相変わらず死ぬ寸前の魚の目をしているあいつが首を傾げながら眠たげに歩いてた。きゃーかっこいいー。

 

 無言でカメラに中指立ててきた。なんで分かるんだよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

 ドイツの指導者(マスター)ストライカーであるノエル・ノアから『ゴールまで進め』という一言を受け、突然の事ながら始まったレースに青い監獄勢は意識を切り替える。

 

 バスタード・ミュンヘン下部組織のメンバーと青い監獄が入り交じった中、飛び出したのはカイザー、ネス、國神、少し遅れて潔だった。

 

「潔はやっ!?」

「ドイツ勢に喰らいついてる!?」

 

 ドイツのU-20達も潔世一という存在を耳にはしていたがまさか自分たちに比類する身体能力を持つとは思わず瞠目する。

 

(くっそ、國神速ぇ! 基礎能力が跳ね上がってんのか。ドイツメンバーもやばい、ギリ一桁番手に残れてはいるけど正直五分五分!)

 

 その後ろを氷織、何人かのドイツメンバーを挟んで残りの青い監獄達が追走する。

 

(水野はとっくに先頭だろ!? バケモンかよあいつ、坂道で速度上がる人外が!)

 

 ラダースプリント、ステップジャンプを超えた時には既に水野の姿は捉えることは出来ず、既にゴールしているのではないかと潔は疲労から来るものではなく冷や汗を流す。

 

 最後の関門であるポールドリブル&シュートへとたどり着き少しした後に潔の元へと通知が届き、1位がカイザーという選手であることが告げられた。

 

(1位が水野じゃない!? どんだけのバケモンだよ、カイザーは!)

 

 驚愕と共にあと僅かとなったゴールへと突っ走り、最後のシュートを100点の的へと向けて放つ。横から明らかな敵意を向けて放たれたシュートを加味して強めの回転をかけて的のギリギリへと着弾させた。

 

「誰か知んねぇけど、見えてんだよ三下」

 

『ほう……』

 

 妨害を目的としたシュートは潔のボールへ当たることなく飛んでいく。邪魔をされたことに僅かないらだちを見せる潔はその根源へと向けて睨みをきかせた瞳を向けるも向けられた主であるカイザーは玩具を見つけた子供のように笑みを浮かべる。

 

『正直驚いたぞ世一。少しお前の評価を改めないといけないな』

 

「何言ってるかわかんねぇよ。日本語で話せや噛ませ」

 

 にやにやが止まらない目の前の男に不気味さとマゾっけを感じた潔は関わることを避けるべく数歩下がる。

 

「潔くん速ない? 僕めっちゃ走ったんやけど」

 

 少し遅れてゴールした氷織が汗を服で拭いながら駆け寄ってくる。そしてキョロキョロと周りを見ながら誰かを探すように、ん〜、と声を漏らす。

 

「あれ、水野くんは? とっくに着いてるもんや思ってたんやけど」

 

「そういえば……」

 

 続々と揃うドイツメンバー、そして最後方の集団として青い監獄勢達がゴールし水野以外の全員の顔を確認する。しかしこの場にノアと水野の二人が居ないという事実がどうも引っかかった。

 

(あいつに限って最下位なんてことないだろうし……まさか、あのヘラヘラ男に妨害……いや、そんなの水野なら避けられるか)

 

「どうなってんだ……」

 

 

 

 所変わってステップジャンプの入り口。

 ノアはショートカットしその横から扉を開き歩いてきていた。

 それは、未だ動く気配のない最強を出迎えるために。

 

『どーした、水野悠』

 

 全員既にゴールし、ノア自身トップで走り抜けるものと思っていた存在が足踏みしている理由を尋ねるために自ら出向いた。

 どうせ俺の言葉を理解出来るんだろうと翻訳機能付きのイヤホンを渡すことなく母国語で話す。

 

 ぼーっと前を見つめ立ち止まっていた水野はノアが突然現れたことに対し特にリアクションすることなく、一呼吸置いてから目を瞑り、首を振った。

 

『……高いとこ苦手なんで』

 

『Oh……』

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。