話は変わりますが、評価0とか入れる奴に限って非公開なのなんなん?普通に疑問だわ。別に入れるなとは言わないけど、身元隠すのは卑怯じゃね?
「────二次
一般的なサッカーコートに比べて二回り以上小さな空間。
四方を白い壁に囲まれ、目の前にはホログラムで立体的に移されているゴールとブルーロックマン。
コートの中央には、一人の男が悠然と佇んでいる。
緊張も、何もかもを感じさせない佇まいを見せるその男に、抑揚のない声で始まりを告げた絵心は、モニタールームで様子を伺いながらニヤリと笑っていた。
ホイッスルの音などはなく、唐突に真横から飛んできたボールはピッチに立つ男、水野のやや前辺りに着弾する。
速くも遅くもない、一般的なパスと呼べるそのボールが地面へと接し、反発して少し浮いた所を、水野はボールを一切見ることなく蹴り放つ。
強い逆回転がかけられたそのボールは地面スレスレを浮かび上がっていくようにゴールの左下の隅へと吸い込まれて行った。それを阻止しようと動き出したブルーロックマンがその場へとたどり着いたのは、ボールがネットを揺らした後だった。
【残り 199GOAL】
ゴールの真上に表示された数字。もう何度目かも分からないほど見てきたその文字を見て、水野は間髪入れずに飛び出してくるボールをゴールへと放ちながら、静かに嘆息した。
(飽きた)
◈◈◈◈
一次選考を終えた俺たちチームZだが、絵心から二次選考が始まるまでのトレーニングを言い渡され、地獄のような毎日を続けた。
身体機能強化という名目で俺たちのことを殺しに来ているのではないかと本気で思うほどには身体を虐め抜く内容だった。
そんな長いようで短かった地獄のトレーニングは十日程で突然終わりを告げ、俺達は今二次選考へと足を踏み出した。
正直絵心には殺意しか湧かないが、それよりもようやくサッカーができることに身体が喜びに震えて、試合中ですらないにもかかわらずアドレナリンが大量に分泌されているのが分かる。
そして、未だ見ぬ上の棟のストライカー達を喰らい尽くす。寝不足の目を見開きながら、扉をくぐった。
そこには、見たことの無い選手、つまり上の棟の人間であろうストライカー達がいた。
(チーム……W!?)
『やぁやぁ才能の原石共よ』
「!!?」
遥か上の存在であろう別の棟の奴らは、俺達と同じように疲弊したような様子だった。更には、肩に刻まれたチーム名がV~Zまでしか見当たらない。
他の奴らも俺同様に訝しみながら周りを伺っているところに、会場全体に絵心の声が響き渡る。
前に見た時と変わらない無表情な絵心に喰らいつくようにモニターを見る俺達に、"青い監獄"には五号棟しか存在しないことが告げられる。
自分達を騙していた絵心に対し、一部が激昂しモニターに向かって唾を撒き散らしていたが、俺も衝撃こそ受けたが、納得するのは早かった。
凪や玲王、國神に千切、蜂楽は、最底辺の棟にいるような人材じゃない。もしもあいつらの上に240人ものストライカーがいるのだとすれば、こんなプロジェクトを打ち立てなくとも世界一のストライカーは生み出せた。
俺達の
『先程、"青い監獄"には五号棟のみ存在する、と説明したが五号棟の他にもう一つ"特別棟"が存在する。特別棟は本来建設予定ではなかったが、急遽造らせた文字通り《特別》な棟だ。お前達が過ごしてきた五号棟に比べ、最新鋭のトレーニングフィールドなど更に充実した設備が整っている』
突如語り始めたことが、どういうことなのか分からない。一体、絵心は俺たちに何を言いたいんだ。今から、つまり二次選考で使用する場所のことを言っているのか?
(────いや違う)
忘れていた。絵心のペースに呑まれ、俺は重大なことを忘れていた。
五号棟以外存在しない?
何を言ってるんだ。絵心は最初に俺達に示していた。
頂点を。あの、怪物を。
モニターの中にいる絵心が指を弾く。それと同時に、俺が想定していたのと同じ人物がピッチの中央に佇んでいる映像が映し出された。
『特別棟は、ただ一人────水野悠のためにつくられた設備だ。奴は既にこの先でお前達を待ち構えている。さあ……』
────あの怪物を喰らい尽くせ。
◇◇◇◇
なんで急にゴール数増えてんだよ巫山戯んな。いっつも100だったのに倍にしやがって。
もう何度繰り返したのか分からないブルーノ処刑ゲームは、慣れたもので最初から最後まで作業ゲーと化していた。正直一本目で飽きていたが、労働なんてものは楽しい楽しくないの次元の話では無いからな、多分。
30分近く経過し、ちょうど身体が温まって来たところで200GOALが終了した。若干盛り上がってきたところで強制終了させられ、不完全燃焼もいい所だが、終わったものは仕方ない。汗は特にかいていないし、いつも通りにストレッチして適当に過ごそうと思い、いつもの扉から出ようとすると、真逆の位置にある扉が開いた。
あれ、なんかいつもと違うな……もしや、ついに脱獄出来るのではっ!?
必要な労働量をこなし終えた、ってことかぁ! だから今日はいつもより多かったのかよ〜、先に言えよォ!
そう思ったら、扉の先の光が外からの太陽光に思えてきた。俺はスキップしてしまいそうになる気持ちを抑え、ルンルン気分で扉をくぐった。
【3人1組でチームを作って先へ進め】
…………………………………………………………………………………………………………。
ん?
ん〜〜〜…………。
何言ってんのこいつ?
誰も居ねぇのに作れるわけねぇだろ。
…………寝よ。
っ!!!??
びっくりしたぁ……。ビルから落ちる夢見た……。
全身を震わせて目が覚めると、そこには何人かが集まっていた。いや結構な数だな。しかも俺を離れた場所からチラチラ見てきてる。うわぁ、ビクッ! ってしたところ見られた? それとも寝相? 恥ず……。
両手で顔を抑えたい衝動に駆られていた所を、横から肩を軽く叩かれたことで停止させ、そちらへとまだ少し眠たい目を向けた。
「相手居らんねやったら、僕と組まへん?」
勧誘を受けた。誰この人?
視線を向けた時に少し肩を震わせていたのが見えた。こいつ笑ってたな? 俺がビクッ! ってなったとこ見てたな? まあ俺が寝てたせいだけども。
改めて相手の顔を見る。男……男? 男だよね? 男っていう体で話進めるけど、アンリさんしか女性は見てないから男だよね?
目の前の女の子……失礼。男はそれはそれは可愛い顔をしている。お寧様界隈でこねくり回されそうな顔だ。しかも『僕』属性持ってやがる。破壊力高ぇ。
そんなことは置いておいて。
謎の指令【3人1組】を達成するために声をかけてくれたのだろう。なら、断る意味は無い。いい子そうだし、二つ返事で了承しよう。後、名前は名乗っとかないとな。礼儀として。
「よろしく。水野悠だ」
差し出された手を掴んでそう言うと、相手は少し意外そうに目を見開いてこちらを見てきた。なんぞや。
「僕は氷織羊、よろしゅうな。いや、意外やったからつい」
「意外?」
「もっと高圧的に来ると思てたから」
こいつの中で俺はどんなイメージなんだ? 初対面ですが? 目付き悪くないと思うんですが?
というか、俺はお前らと違って犯罪者予備軍じゃな……はっ!?
コ・イ・ツ! 忘れてたがここにいるヤツら俺以外全員犯罪者予備軍じゃねぇか!! ってことはこいつ……いや名前教えて貰ったのにこいつは失礼か。氷織も犯罪者予備軍……てこと!?
み、見えない……なんて巧妙な。周りにいるヤツら見たいにピリピリしてないのが逆に強者感がある。
いや、しかし罪状はなんだ……? 線は細いしパワー系じゃない。見た目も可愛らしい感じで恐喝とかではなさそう。もしろお姉様方に愛されるような……はっれ?
マ・マ・活!! 氷織ママ活やってんのか!!
恐らく、氷織は最初はお姉様方に意図せずお金を貢がれていき、回数を重ねる毎に自分からするようになってママ活にハマってしまったのだろう。くっ、これが可愛いの代償かっ!
罪状はわかったものの、根は良さそうなこの子、比較的仲良く出来そうだ。うん、この子と組んだのは正解だったな。
一人内心で頷いていると、氷織から「どないしたん?」と小首を傾げながら心配の声を向けてきた。
魔性属性持ちだと……!? グハッ、
込み上げてきた血流を喉の奥に押さえ込み、「大丈夫だ」と声をかけ、平静を保つ。この子はあれだな、天然だな。計算されているとは思えない。俺、人を見る目はあると自負しておりますから。
「ほな、あと一人どないする?」
あ、そういえばもう一人必要だったっけ。てかなんのための三人一組なんだ? デスゲームでも始まるの? 囚人同士で殺し合いさせるとかまじあいつカッパの異常者だな。革命家なんかせずに家できゅうりの浅漬け食べてろよ。
「すみません。僕もチームに入れて頂いてもいいですか?」
少し辺りを見渡していると、右から声がかけられる。まずい、僕属性が被ってやがる。俺だけ『俺』は不味い。キャラ変する? と思いつつそちらへ顔を向け……激震が走った。
長い髪は黒いマリモのようで、目元を完全に覆っている。視覚機能してる? と聞いてみたくなるようなヘアスタイルを見て、俺はすぐに閃いた。
こ、こいつは……。
「二子一輝です」
天才ハッカーきちゃあああぁぁぁぁ!!!
「どないしたん水野くん!?」
◈◈◈◈
水野くんは、思てた以上のバケモンやった。
僕が2nd ステージに辿り着いたのは中間くらいやった。入るのが遅かったのもあると思うけど、二桁番台やったからおるわけないと思ってたけど、彼は一人座ってた。
肩には【001】の文字。やっぱり、絵心さんが青い監獄の頂点と言ってただけの事はある。けど、なんでまだこんなとこに残ってるんか。それは、すぐにわかった。
水野くんは寝てた。多分、早く終わりすぎて暇やったんやと思う。それもあって、自分から声をかけてない。周りにおる人間は、水野くんの【001】にビビって声かけようとしても実際に行くやつはおらん。そんな感じやった。
(ほんなら、僕が貰うで)
誰も彼に近づかんから、僕は一直線に彼の元へ向かった。でも、寝てる彼を起こすのはちょっと忍びないな、と思っていたら、ピクっ、と身体を震わせて目を少し開いた。
起きた。ほんなら遠慮は要らんなと、周りからの視線を無視して彼の肩を叩く。
こちらをゆっくりと振り向いた彼の目は、少し細められていて、品定めするような目を向けてきた。
威圧的に見えたその表情に、少し身震いしながらも臆せず勧誘する。
意外やったのが、普通に挨拶をしてくれたこと。
ここにおる連中は、上手いやつに限って癖の強い奴が多い。しかも上から目線で高圧的なやつばっかやから、彼もその枠組みに入ってると思ってた。
実際の水野くんは、顔の印象通りの好青年、て感じやった。同い年やったこともあって普通に話せたし、同じチームになった二子くんも年下やったけど気まずい空気にはならんかった。
三人で先に進んで、割り振られた部屋に向かって最初に自己紹介やら得意なことやらを話し合った。
サッカー以外の話もして、水野くんの趣味がゲームやったこともあって僕と話が弾んだ。二子くんとも趣味があっていて、三人でめちゃめちゃ盛り上がった。何故か、二子くんにPC関連のことを興奮気味に重点的に聞いていて、二子くんは若干引いてたけど、問題はなかった。
密かに、僕はこのチームを【オタク同盟】と命名してた。
そっから、結構な時間喋って、ようやくサッカーの話題に入った。とりあえず、各々の特技やらプレイスタイルやらを話していくことにした。
「じゃあ、水野くん」
「その前に、いいか?」
僕と二子くんが話終え、あとは水野くんだけとなったところで、今まで聞き手に徹していた水野くんが軽く右手を挙げて僕らの様子を伺って来た。なんかわからんところでもあったんか?
「どうしました?」
二子くんがそう投げかけると、水野くんは軽く腕を組む。
「ずっと思ってたんだけど……なんでサッカーしてんの? 俺ら」
「「え?」」
「え?」
突然彼が意味のわからないことを言い出し、僕と二子くんの呆けた声が被り、水野くんも僕らのリアクションに戸惑っている。
なんとも言えない空気が流れ、数秒膠着し、二子くんが言葉を絞り出す。
「えっと……それはどういう……?」
「だって、ここ監獄だろ?」
「「……ん?」」
「囚人にサッカーやらして何がしたいのあの河童。見世物にでもしてんの?」
「「んんん??」」
ますます意味がわからなくなってきたが、水野くんは至って真剣に疑問を投げかけてきた。それに対して、僕は二子くんに顔を合わせる。目線だけで会話をした。
『氷織くん。これは……』
『とりあえず、僕に任せとき。なんやおもろい空気になってきたで』
『お願いします』
そこからは、二子くんには聞き手になってもらい、僕が水野くんに色々と質問をしていった。怪しまれないように言葉を選んで尋ねていくと、おもろいことがわかった。
この子、勘違いしとる。それも盛大に。しかも周りにバレてない。
聞けば、『犯罪者予備軍』、『自称革命家の河童』などと聞き覚えのない言葉がつらつら。『自称革命家の河童』辺りで二子くんは吹き出してた。
ようやくすると、ここは『監獄』で、僕らは『犯罪者予備軍』として収監された。水野くんは身に覚えが全くないから、無実を証明するために動いているが、やらされる労働がサッカーばかりで疑問が絶えない、と。
それを聞いて、僕と二子くんの心は一致した。
おもろっっっ。
もう一度、二子くんと視線を合わせる。
『これは僕らだけの秘密にしよ』
『ですね。あと、彼にはこのままで』
『当たり前やろ、こんなおもろい話逃されへんで』
そこからは、上手い具合に話を肯定し、他の人にはそう言う話をしてはいけないことを伝えた。理由は適当に、僕ら以外は攻撃的なやつが多いからとかいうよく分からん理由にしたが、水野くんは納得してくれた。チョロい。
そして、脱獄を目指そうと、三人で誓い合った(願ってるのは一人だけ)。
なお、参考までに僕らの罪状を聞いたところ、水野くんは僕がママ活で、二子くんが天才ハッカーだと聞いて静かに僕の腹筋が崩壊した。
その後、僕と二子くんで対戦相手を探し、結構すんなりとマッチアップが決まった。やっぱり、水野くんがいることを隠してたのが正解だったようやった。
水野くんは、得意なことは特にないらしい。その代わり、キーパー以外やったら大体できると言っていた。
この子、もしかして自分の実力すら勘違いしてたりするんやろか、と思ったが、流石にそこまで重症では無いだろうと思う。つまり、パスもシュートもなんでもござれ、ということなのだろう。
とりあえず、僕らは水野くんを主軸にしてサポートし、狙える時は狙っていくというスタンスで試合に臨んだ。
試合直前、相手は水野くんを見て怖気付いていた。が、すぐに噛み付くような視線を彼に向ける。生で彼のプレーを見たことがないから、彼を叩き落とそうとしてるんやろな。伊達に一次選考を生き抜いたことはある。けど、そんな態度も開始のホイッスルが鳴った直後に正される。
僕ら先制から始まった試合は、水野くんのシュートで幕を上げた。試合開始僅か一秒。緩んだ相手の位置取りを見て、水野くんは初手からシュートを放った。
凄まじいスピードで美しい弧を描くボールは、そのままゴールの右角へと吸い込まれた。形だけブルーロックマンが飛び込んで止めようとしていたが、そんなものは意味を成さなかった。
ゴールの合図となる笛の音と表示される点数を見て、相手は全く動くことができなかった。それに対して、水野くんは澄ました表情で数歩下がり、相手チームへ視線を向けた。
それだけで、相手が諦める要因には十分だった。
あとは水野くんにビビってパスを回し続ける彼らからボールを奪う簡単な仕事。その後水野くんが二点、水野くんのアシストにより僕と二子くんがそれぞれ一点ずつ決めてその試合はあっけなく終わった。
呆然と膝を着いて俯く彼らを見ることなく、水野くんはコートから出ていこうとする。それが更に彼らを締め上げていく。多分、彼らは「俺達は水野にとって眼中に無い存在なんだ」と認識したと思う。多分実際は試合終わったからはよ部屋戻りたいだけやと思う。相手チームから一人奪うこの試合のシステムも理解してないんちゃうかなあの子。
青森のメッシこと西岡を仲間にして、水野くんの背を追うと、予想通り「なんでそいつ居るの?」ていう顔してた。ほんまおもろい。
3rdステージは、相手選びに難航した。水野くんが同じチームってことが知れ渡ってたし、もしかしたら『青森のメッシ』のせいかもしれん。ていうか『青森のメッシ』って名誉かもしれんけど若干恥ずいな。誰がつけたん?
もちろん、西岡くんには水野くんの真相は教えてない。これは僕らだけの秘密やから。
数日かけて、ようやく対戦相手を見つけることができた。知らん相手しかおらんから、別棟の奴らなんやろう。
試合が成立するまでに四人で練習をしてたが、そこでも水野くんのバケモンぶりを感じた。
ドリブル、パス、シュート、ディフェンス、オフ・ザ・ボール。
「逆に何が出来へんの?」と声を上げたいほどにはバケモンやった。
水野くんからボールを奪えたことないし、意味わからんくらいの隙間にパス通すし、シュートレンジ長いし、マッチアップしたら抜かれへんし、気づいたらどっかいってるし。なんやこいつ。
味方やったら頼もしすぎるが、相手からしたらたまったもんやない。心底勧誘して良かったと思う。
しかもめっちゃ丁寧に教えてくれるし、それが分かりやすいし、僕のこと口説いてんの? ってくらい。お陰様で僕らの技術は短期間ながらに上がった気がする。実際上がってるやろ。
そして最後の試合が始まったが、内容は特に言うことは無い。
強いて言うなら、相変わらず水野くんが暴れてたくらい。僕と二子くんと西岡くんが一点ずつ決めて、水野くんが残り二点決めて呆気なく僕らは勝ち進んだ。
途中、というか二点目くらいから相手の目に光は無かったし、息も信じられないくらい上がってた。
水野くんのプレッシャーでも感じたんか、まあ勝つ気のない奴らやったからこの結果はなんも不思議に思わん。
正直、誰も選ぶ気が起こらんかった。
「なんか、あっさり終わりましたね」
「んー、せやね」
うちのチームは誰も汗をかいていない。試合時間が短すぎたのもあるし、試合運びがスムーズだったのもあるだろう。
僕ら、相手も含めて、全員が水野くんに支配されてた。王の道を開けるように、パスコースが開いてた。水野くんは、空間の把握能力と支配力がずば抜けてる。異常なまでに。
彼とするサッカーは気持ちがいい。理想的なパスが飛んでくるから、いつも以上に調子が良いし、僕が居て欲しいところに彼はいてくれる。心の底からサッカーが楽しいと感じられたのは、何時ぶりだろうか。
「あのさぁ」
奪う相手を考えているところで、水野くんが声を上げる。転がっているボールを右足で踏み、倒れ伏す相手チームを見下ろす。
声を投げかけられた相手はビクッと肩を揺らし、恐る恐るという様子で水野くんを見上げる。
水野くんは、恐ろしいまでに無表情で彼らを見下ろす。
(……なんや嫌な予感がするなぁ)
「お前ら、なんでサッカーやってんの?」
「「ブファッッ!!」」
『なんでお前らみたいな雑魚がサッカーやってんの? 早く辞めろよ』。そんな副音声があの子らの耳に流れたと思う。というか、多分西岡くんもそう聞こえてると思う。若干顔が青い。
でも、内情を知ってる僕らは彼が言いたいことが分かる。
水野くんの言葉でトドメを刺され、パクパクとしか口を動かさない彼らには申し訳ないと思いながら、僕と二子くんは後ろを向いて爆笑した。
氷織、二子が後方支援理解者面することが確定。