僕は無実だァっ!!!   作:ラトソル

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ゴミみたいなサッカー知識で書いてるのでやばい事になってるかもしれませんが批判はやめてぇ……!!


お前がピカチュウに勝てるわけないだろ世界のピカ様舐めんじゃねえぞお前とじゃあ生物としての格が違うんだよ比べることすら烏滸がましいぐらいの差があるんだよ身の程を知れよクソが龍とノミ位の差あるんだよ分かっ

『抜いてみ────』

 

『邪魔』

 

 さてさて、氷織からのパスでスタート。相手側の一点リード、こっちはネッシーが湖にこんにちはしたから四人。人数的不利と、見るからに身体的(フィジカル)不利。

 

 デカブツが三面、小さめ二人。バランスがいいのやら悪いのやら。

 

 右からなんか来た気がするが、どうでもいいので無視する。ぶち殺し確定な三人をどう調理するか。

 

『へぇ、結構やるね君』

 

 来たな、ナチュラルサイコパス。

 左にいた坊主は外側から自陣のゴール前に走ってる。氷織と俺の間辺りに陣取ってシュートコースを無くす気か。いや、氷織へのパスを潰して随時俺へのヘルプに来れるポジショニングをする気か。割と脚速めだな。

 

 重戦車(笑)とマフィアはあまり動いてない。自分達の所まで来ないとでも思ってんのか……完全に舐めてやがる。

 右にいたソバカスは……すまん普通に抜いてたわ。影薄いなお前。もうちょいキャラ濃くした方がいいぞ。

 

 氷織と二子は俺よりやや後ろのライン上、氷織へのパスは必然的に排除、状況に応じて二子へとパスを出してワンツーで抜いていく。

 

 て、思ってんだろうな────甘ェよ。

 

 二子へと視線を向けることなく、ナチュラルサイコパスへと突貫する。パスを出すものだとでも思っていたのか、わざとらしく驚いた様子を見せたあと、謎に歓迎するような、それでいて見下すような笑みでこちらを見る。

 

 分析しろ。ナチュラルサイコはフィジカルこそ俺たちよりも一回りは大きいが、それは海外ならでは。そう捉えれば、むしろ細い方だろう。それに、筋肉の付き方がパワー系ではなく、テクニック系。なら、俺がすることは限られてくる。その中でもできる限りアイツの血管が爆発しそうな手段を取る。

 

 ────よし、決めた。

 

 加速はしない。周りからは遅いと思われるも、遅すぎない程の速度で走る。

 俺が遅いからか、サイコはパスを疑う。ん〜、サイコパスだなぁ。

 抜きはないと判断はしてないだろうが、僅かにでも意識を外に向けた……いや、元から俺達のことは格下だと慢心している。穴を突くのは、容易が過ぎる。

 

 一定の間合いを開けてからのファーストタッチ。予備動作無し(ノールック)で股へとボールを潜らせ、加速する。加速と言っても、六割程の速度。油断して股を抜かれたとしても、サイコはすぐに振り返り俺の体へと腕を伸ばして妨害する。当たり前だ、追いついてもらうために速度を落としているのだから。

 

 二回目。踵蹴り(バックチョップ)で迫るサイコの股下にボールを通す。ここで、一瞬相手の思考は停止する。抜いたにもかかわらず、わざわざ後ろへと戻す、しかも股下を抜くリスクを取る意味が分からないだろう? 生産性のない、全くの非効率、非合理的なプレイの真意を捉えようとしてるんだろう? 

 

 もちろん、こんなプレイに意味なんてものは無い。わざわざ後ろに下げるような真似をしなくても、一回目のまた抜きの時点で抜き去ればいいだけの話。それをしなかったのは、単純に、お前の股にボールを通すことだけが目的だから。

 

 速度を落としていた俺とは違い、相手は俺を止めるために一歩を大きく踏み出している。急には止まれない。俺はすぐに切り返し、サイコの背後……相手からすれば、初期の位置関係へと戻る。そして、こちらへと振り返ろうとした相手の股下へと、三度目のボールを通す。

 

『足開きすぎだろ……誘ってんのか?』

 

『は?』

 

 今度は加速、相手を完全に抜き去る程の速度で駆け抜ける。本当なら後二回くらいやっておきたかったが、まあ粛清対象はこいつだけじゃない。また何回か抜いてやるさ。

 

 テクニックタイプの相手を倒すのは、同じく小手先の技術で倒すに限る。その中でも最も俺がイラッとする行為、それは連続また抜き。

 一度だけなら、相手が上手かった、たまたまだ。そんな反省でもなんでもないものが脳によぎる。しかし、それを2度、3度と繰り返されればどうだろうか。

 

 抜かれた本人はこう思うだろう。『どうしてあの時足を閉じなかったのか』、『下手すぎじゃね? 俺』と。まあ個人差はあるだろうが、少なくとも俺はそう思う。されたことないけど。

 

 まあ、一回の連続また抜きだけで心をへし折れるとは思わないからあと二、三回はやるつもりだが。後ろから迫る様子は無いことを見るに、割と効果はあったらしい。

 

『生意気な小僧が』

 

『止めます』

 

「────"ロック"」

 

 パスは無いと判断したのか、したところで止めに入れると踏んだのか。左にいた坊主、そしてマフィアが俺の前へと立ち塞がる。重戦車(笑)は少し後ろに控えているが、いつでも飛びかかれる位置取り。悪くない。まあ、関係ないが。

 

 後ろの情報をカット。俺よりも前の選手、ゴールのみに意識を集中。目に映る全てが止まっているような感覚。ゲーム中にメニューボタンを押した感じに近いそれは、無数の白い光が俺の足元から伸びていき、ゴールのあらゆる場所へと向かっていく。その中でも一際輝く光をなぞるように右足を振り抜き、シュートを放つ。

 

 放たれたボールはマフィアの顔の横を通り、強めにかけた回転によって、急カーブを描いてゴールの左上へと突き刺さる。ブルーノっぽい誰かが飛び込んでいたが、届くはずもなく、ボールはネットを揺らし、勢いを失いゆっくりとこちらへ向かって転がっていく。

 

 得点を告げるホイッスルが鳴り響くだけの無音の空間が出来上がっていた。え、なんで? 氷織と二子、喜んでくれないの? ちょっと引いた感じでこっちみてるんですけど。

 

「「えぇ……やばぁ」」

 

 聞こえてるっちゅうねん。

 

 涙が込み上げてくるのを我慢して、自陣へと戻ろうと振り返ると、こちらを見つめる視線が二つ。

 別にもう興味も何も無いが、真顔でこちらを見つめるサイコは少し面白い。俺は努めて表情を消して、すれ違い様に小さく呟く。

 

『どうした? 笑顔忘れてんぞ? あの気持ち悪ぃ顔はどこいった?』

 

 ピシッ、という音が聞こえた気がする程に、サイコの方が震え、額に青筋が薄らと浮かび上がる。割と効果あったな、と思いながら歩みを進めながら、俺は思っていたことを思わず口にした。

 

『居たんだ、お前』

 

『……は?』

 

『お前、ソバカスだけで一番空気だぞ』

 

 あ〜、そんなに力強く拳握っちゃって。イラついてんのか? ソバカス増えるぞ? 良かったな、もっと増えればキャラ濃くなるかもな。

 

 面白いものを見るような目、真顔でこちらを見つめる目、そして怒りに燃える目と、味方からは純度100%のドン引きを頂戴しながら、ゲームは続行された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ◈◈◈◈

 

 氷織、二子、そして名前は知らない誰かは、味方ながらに水野のぶっ壊れ加減にドン引きしていた。

 

 有言実行。点を決めるといった水野はその言葉通りにゴールを決めたものの、過程がえげつなかった。

 

 世界を相手に戦っているプロを相手取り、遊んでいるようにさえ見える程の、圧倒的ドリブルセンス。

 速くはない。決して追いつけないスピードでは無いと、客観的に見ていた三人は感じていた。それと同時に、その速度すら抑えているものだと実感する。

 

 抜こうと思えば、いつでも抜ける。そんなドリブルを見せつつ、三回もまた抜きを見せたのは、単なる煽りだろうと分かった。そして聞こえてくるネイティブな英語。聞き取ることは叶わないものの、氷織と二子は確信する。

 

((嗚呼、知らないところで勘違いが加速してる気がする))

 

 それは、感情が抜け落ちたルナを見て察した。それと同時に顔を背けた。間違っても標的にはされたくない、と。

 

「自分の撒いた種は自分で処理してや」

 

「ん? ああ。ボコボコにへし折るつもりだけど。パス出していくからな」

 

「ごめん今のは僕の言葉足らずやったああああ始まってもたァァ!!」

 

 カバソスがロキへとパスを出す。その前に水野が割り込みロキのドリブルが止まった。

 チラリ、とロキは視線を横へ向ける。カバソスのパスコースは塞がれているが、後ろはその限りではない。そこには、無表情でこちらを見つめるルナの姿。

 

「パスを寄越せ」そんな言葉が聞こえてくるほどに、ルナはブチ切れていた。それをロキは感じ取り、苦笑を浮かべながらも視線を切る。それは、その要求を断ることにほかならない。

 

(あんなプレーを魅せられたんだ。滾るに決まってる)

 

 ストライカーとしての性質。油断していたとはいえ、途中から本気を見せたルナを抜き去るドリブル力に、コート上の情報を瞬時に整理し、最適なプレーへと繋げる速度。そして、正確無比なシュートセンスと、限りなくゼロに近い予備動作。そんなものを見せられて……魅せられて、血が騒ぐというものだ。

 

 ボールを僅かに動かし相手を観察。睨み合っているだけに見えるそこには、幾重もの攻防が繰り広げられている。数秒のフェイントの数々、そしてそれに対する水野の反応。それらを総合的に評価し、結論を落とした。

 

(隙がない)

 

 ならば、と。

 深く、深く腰を沈める。それはさながら短距離走選手の走行準備(スタートフォーム)。ロキから見て右サイド。数メートル空いている位置。水野は僅かにゴールのある中央寄りを警戒しているのが見える。

 

『速さで押し切る────』

 

 小細工は必要無い。

 神童と言われたロキの武器は初速から最高速度(トップスピード)へと繋げる爆発的初速と、その速度を維持する持続力。ロキが一度相手を抜いてしまえば、誰も追いつくことは叶わない。

 

 軽く蹴られたボールに向かい、全力の踏み込み。天性の速度は、まさに神速。驚きを顕にするように、水野の双眼が見開かれ、ロキは水野の右側、ラインスレスレを駆け巡り、そして抜き去って────

 

(ボールが消え────)

 

『速いな……うん』

 

『なっ……!!』

 

 そこにあるはずのボールの感触を感じることは叶わず、その速度を表すようにコートを滑りながら急停止する。振り向いた先には、ボールを持った水野が既に氷織へとパスを出して駆け出していた。

 

 唖然とし……そして高揚が全身を駆け巡るロキを他所に、水野達は前線へと走り出す。カバソスが二子のカバーに入る。

 

「貴方たちと1VS1する訳ないでしょ。あの勘違い野郎(バカ)と一緒にしないでください」

 

「聞こえてるよ?」

 

 即座に氷織へとパスを出し、水野へと警戒が向かっていたことから、氷織は空いたスペースへと駆け上がる。

 しかしアダム・ブレイクが珍しく動き出し、氷織の前へと立ち塞がる。といっても、フォローに入りだしたばかりで、まだこちらとの距離は十分にあった。

 

「──うん、そこやね」

 

 ゴール前、こちらを一瞬だけ向けてきた瞳。それだけで自身の役回りを理解する。

 迷うことなく、氷織は正確なキック精度を用いて、ゴール前にいる水野の頭上少し前へとパスを出す。

 

「!!」

 

『撃ち落とすぜっ! ヒョロヒョロがっ!』

 

(こいつ、意外と分かってる)

 

 ゴール前に残るシウバが水野とのポジショニングを争う。ただの重戦車(笑)(筋肉ダルマ)と思っていたが、その技術が割と高いことに驚嘆する。

 

 速度よりも精度を優先したパスは緩やかに弧を描きながら二人の元へと向かっていく。

 

(身長はほぼ同じ……腰を落とせ。重心をズラす。十分な踏み込みをさせないように────簡単な事だ)

 

『チッ!!?』

 

 下へ、下へ。シウバよりも低く、伸し掛るような姿勢を維持させて、相手を仰け反らせ。

 

 上へ、上へ。跳ぶタイミングも、位置も、身体も。全てを相手よりも上へと置いて。

 

 高さはいらない。もとよりそういう勝負ではない。ただ、相手を飛ばせなければそれでいい。

 力はいらない。重心の位置を、呼吸を、タイミングさえ掴めれば、あとは技術だけで事足りる。

 

 跳べない。そんな、ありえない事象にシウバが舌を弾く。見下し、見下ろしていた相手は、自分に反して空中へと舞い踊る。

 直接のゴールは狙えない。その点は水野はシウバを評価する。しかしそれだけ。

 

 ヘディングでトラップ。そのまま着地することなく、脚を振り上げて、シウバの体を利用して身体を反転。ゴールへと視線を向けることなく、右足を振り抜きゴール右下へと叩き落とした。

 

 キーパーは動くことなく、ゴールを告げる電子音が鳴り響き、体勢を崩したシウバは手を付き尻もちを着く。

 

 瞳が揺れた。

 

 本来なら有り得ない。こちらを見下ろすということを成し遂げた日本人。空中戦ならば無類の強さを誇るシウバを打倒して見せた青年は何を思い、どんな表情を見せるのか。

 

 ────"無"。

 

 喜びも、興奮も。どのような感情も感じさせない無色の瞳は、ただただシウバを見下ろす。

 ただ視界に入ってるから見ているだけ。そう捉えることが出来るほどに、その青年はシウバへの興味を全く持っていない様子を見せた。

 

『見下してたやつに見下ろされる気分どうだ? 教えてくれよ、なぁ』

 

 ようやく色を見せた青年の口から発せられたことばは、少年の好奇心のようなそれ。純粋に、気になったから聞いただけ。そんな言葉は、シウバの胸にスっと入り込み、腸が煮えくり返る様な屈辱となって拳をにぎりしめる。

 

 いい回答を得られないと悟った水野はそれ以上一瞥もせずに自陣へと戻り、煽られたと感じたシウバは殺人鬼のような視線を水野に向けた。

 

 もし、そんなシウバの表情を水野が見ていれば、「やっぱり!!」と興奮したように氷織たちの元へと向かい、頭をはたかれていただろう。

 

「何となくしか聞き取られへんかったけど……水野くんは、あれやね。人の心持った方がええよ」

 

「道徳の教科書要ります?」

 

「お前らほんと遠慮無くなってきたよな」

 

「「えん……りょ……??」」

 

「ただひたすらに怖い」

 

 

 リスタート。

 世界選抜からのボールは、水野を避けることはせずに、水野との真っ向勝負を持ち込む。ストライカーとしてのプライドが、矜恃が。決して逃げることを許さない。

 もちろん、水野を避けてパスを出せば容易に勝てるこの試合。

 点を決めれば追加報酬で莫大な金が手元に入り込むが、彼らには既にそんなことは頭になかった。

 

『徹底的に……潰す』

 

 表情を見せないルナが、一人で水野へと走る。シザース、ルーレット、エラシコ。様々なドリブルで応酬するも、絶妙な距離を保つ水野を抜く決定打にはなり得ない。ただし、ルナの狙いはそこではない。

 

 揺さぶり、揺さぶり、揺さぶり……激しくも無音の応酬の最中、水野の足が僅かに開いたことをルナは見逃さない。

 やられたのなら、二倍、三倍返し。ルナは、また抜きをすることに神経を注いだ。

 もちろん、それまでに抜くことが出来れば抜いていたが、少しも隙を晒さない水野を抜き去ることは叶わず。

 

(……なんでこんなあっさり隙を見せた?)

 

『単純すぎて悲しくなる』

 

 足元を一切見ることなく、自身の股下を通り抜けたボールをそのままに、クロスエラシコでルナを抜き去る。

 

 それを待っていましたと言わんばかりに、ロキが水野のマークへと着く。心做しかどこか嬉しそうだ。

 水野はパスコースが既に塞がれていることを確認。ロキを抜くことを決める。

 

(速さでは勝てない。抜いた後もこの距離ならすぐに追いつかれる……なら、抜き続けるだけだ)

 

 一回目。ノーモーションから動き出し、ロキが反応する前に抜き去る。僅かに前に出た瞬間、すぐ様腕を体の前へと塞ぐように突き出してくる。左手で弾き、一度速度を落として距離を取る。

 

 二回目。空中エラシコでロキの頭上を通す。そのまま水野は完璧なトラップで前に踊り出ようとするも、ロキの反応が早く、僅かにボールに触れて水野の動きが止まる。

 

 三回目、四回目、五回目……

 

『ハハハッ!!』

 

「え、怖」

 

 一進一退の攻防の中、ロキは嬉しそうに笑い声を上げて口角を上げ、水野はその突然の豹変に普通に日本語で引いた。

 

 抜いて、崩し、抜いて、崩し。互いに決定打に欠けるプレーが続く。

 

(足が速いのは相性悪いな、こいつ苦手だ……まあ、それ相応の対応をするだけだ)

 

 中央へと切り込み、今度は水野の方からロキを牽制。並走する形を取った。子供が玩具を見つけたような、無邪気な笑みを浮かべるロキは額に僅かな汗を滲ませながら楽しそうに追随する。

 

『調子に乗りすぎだ、小僧』

 

『ちょっ、僕の番ですよ!』

 

(うわ、マフィア)

 

 ロキと挟むように、アダムが向かってくる。

 

(こいつは見た目通り筋肉ダルマ。ネッシーが湖に帰るくらいには威力ある。普通の力勝負じゃ勝てない)

 

 同じように並走してきたアダムは水野の近くまでやってくると、何をするのか察したロキが不満げな顔を浮かべながら水野から距離をとる。

 ブルーロックの変態的なピチピチのボディスーツがアダムの筋肉量を如実に表し、膨れ上がった筋肉は水野へ向けて放たれる。

 

 ただの接触。それだけで並の選手は吹き飛び、地面へと熱いキスをすることだろう。

 

 アダムが感じたのは、異常なまでの手応えのなさ。触れたはず、いや、実際に触れているだろうにもかかわらず、当たった手応えが全くなかった。

 

「ま、受け流すに決まってるわな」

 

 力の行き場を失ったアダムは僅かに揺らぐも、すぐに体勢を整える。しかし、その僅かな時間は、決定打となってゴールを揺らすこととなる。

 

『させないよ』

 

 離れていた距離を一呼吸のうちに消し、右足を構える水野の元へとロキが現れる。今まで水野が打ってきたのは右足のシュート。当然、ロキは右利きであることを理解し、右足の前へと躍り出る。

 

 スライディングは不要。そんなことをすれば水野はすぐに対応してフェイントを挟むはずだからだ。

 

 止めた。完全に。そう確信したロキは、次に水野が行動を起こす前にボールをカットするべく足を伸ばして。

 

『……は』

 

 振りかざした右足は前に、踏み込むために使われる。左へと軽く押されたボールはそのまま水野の左脚によるシュートが放たれ、今まで以上の速度のシュートのキレを見せる。

 

 当然、ブルーロックマンは反応することは出来ず。最早、故障しているのではないか。そう思えるほどに微動だにしないキーパーを置き去りにして、シュートは深深とゴールに突き刺さった。

 

『両……利き……』

 

『いや、ただの左利き』

 

『は……』

 

青い監獄(ここ)、暇だから右足使ってた。それだけ』

 

 理不尽。ただひたすらに強すぎる。ロキは率直にそう思った。

 今まで、ロキは世界を見てきた。ドリブルが上手いやつ、フィジカルが強いやつ、様々だ。それを捩じ伏せて、ロキは今ここに立っているほどの実力を示してきた。

 

 でも、水野悠(こいつ)は違う。そのどれにも当てはまらない。そのどれにも、当てはまる。なんと形容していいのか分からない。全てにおいて圧倒的すぎる。速さはロキが2回りほど分がある……それ以外の全てが、圧倒的だった。

 

 その上で、感じた。

 水野悠は、ノエル・ノアを越えうる……いや、既に超えているのかもしれない、と。

 

『筋肉しか能のないゴリラが、俺も吹き飛ばせないんじゃただの能無しだろ、雑魚』

 

 そして、すれ違い様にアダムへと吐き捨てた彼は、やはり最高に、エゴイストなのだと実感し……喜びが全身を支配した。

 

 

 

 

 ◇◇◇◇

 

「────うそ」

 

 辺り一面をモニターで囲まれた一室。その全ては、今現在まで行われていた試合をあらゆる角度から映し出されていた。

 

 今しがたボールがネットを揺らし、試合終了の笛が鳴り響く。

 コートに立つ選手達は、まるきり対極的だった。

 

 ブルーロック側は、ほとんどが汗まみれで、緊張からか膝から崩れ落ちて深く息を吸っている。

 世界選抜側は、汗こそ流しているもののそれは僅か。肩を揺らしている様子は見せず、体力が有り余っているように見える。

 

 電子板に表示される点数は、二度ほど同じものを見たことがあった。……もっとも、今回の結果は、それらとは真逆のものだったのだが。

 

 胸に携えた紙の資料を力なく落とし、落としたことに気づかないままにアンリは呆然と呟き、目の前の数字が信じられないもののように思えていた。

 

 そして、諸悪の根源である河童……絵心は、クツクツと心底可笑しそうに笑い、ズレた眼鏡を指で抑えて正した。

 

「さぁ、エゴイスト共──あの怪物に喰らいつけるか?」

 

 ブルーロック側、唯一汗ひとつ見せず悠然と佇み、静かに世界選抜の方へと体を向けて、特に感情的に顕にしないままに告げた。

 

 

『半端者が────俺の前に立つな』

 

 

 世界選抜 VS ブルーロックス

 

 1対5

 

 ──────ブルーロックス、圧勝。

 

 

 

 

 




半端者(マフィアやらストリートファイターやらサイコやらソバカスやら、サッカー1本じゃないにしては上手い方だと思うけどそれはそれとして俺はサッカー続けてきてんだよ!!!中学からだけど!!)
という意訳
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