既存の作品でのオリ主のスペック並べてみると、
【身体能力】
よう実>>>>>黒バス>=BL>天使様
【学力】
よう実>>>>>>>>>>>>>>>>>天使様>=BL>黒バス
まあ、どの世界線でも学力はカンストしてるんですけどね
暇つぶしにボールを足で玩ぶ。なんてことは無いリフティング、ドリブル、シュート。ただ決めるだけでは面白味も無いので、ゴールポストに当て続ける。毎回同じ場所に当てるのではなく、角度を変えて、ボールの落下地点をランダムにしそれを予測して先回りし、また別角度からポストに当てる。なんてことは無い。やろうと思えば誰でも出来る遊びだろう。
左もたまには使うが、利き足では無い右で基本蹴り続ける。何故か動く障害物や、いつぞやのブルーノも参戦してきていた。連続殺人鬼に慈悲は無い。顔面スレスレでゴールに突き刺した。ビビれ、犯罪者が。
どれほど経過しただろうか。大して息が切れた訳では無いが、気持ち的にため息を零す。用意していたタオルは、汗ひとつかかなかったことから不要となり、残念そうにくたびれているように見えた。
────嗚呼、まただ。
視線を向けようとは思わない。向けたら負け、というか襲われる。僅かな警戒心と貞操の危機を感じながら視界の隅に映る野獣に意識を向ける。
双葉のようなアホ毛を晒し、そのチャームポイントを全消しするほどに鋭い眼光。まるで獲物を前にした肉食獣が如く、
まじでヤバい。
普段の食堂などでは大してそんな反応を見せないのに、俺がボールを扱っていると決まってあいつは現れる。あれか、汗も滴るいい男ってか? まじでやめて欲しい。お前のフェチは聞いてない。
双葉が居ない時も別のやつが俺の事を見てきやがる。あの褐色サイコが飛びかかってきた時は本当に死を覚悟した。主に俺のケツの。今の俺のオアシスは二子と氷織のみ。一生そばにいて欲しい。
先日謎のチーム分けをされ、問答無用で高身長な肉食獣と組まされ絶望していたところに、追い打ちをかけるように双葉も俺のチームに加わっていた。救いは氷織。二子、なぜ俺を見捨てた。肩が震えていたことを俺は見逃していないぞ。次試合で当たったらボコってやる。
視線が合う度に俺を睨みつけてくる下まつげと、俺の尻を追いかけてくる双葉。なぜこうなってしまったのだろうか。
あと少しで試合が始まってしまう。なぜ急にチーム分けをしてサッカーをさせるのか検討もつかないが、問題はあの双葉がチームメイトということ。下まつげは恒常なので諦めは着いたが、双葉の瞳のギラ付き方は群を抜いている気がする。憂鬱だ。誰か助けて欲しい。
はぁ、とため息を短くこぼす。目をつぶって双葉が視界に入らないようにしつつ、ちょうど足元へと戻ってきたボールを今までよりも強めにポストへと当て、ボールが集められているカゴへと戻した。
「氷織。背中は任せた」
「ん、背中? ……ああ、そういうことね」
なんで一試合目から双葉が来てんだよマジで。氷織という名のセコムがいなかったらマジで試合放棄も吝かではなかった。
「刺されへんように気ィつけや」
「おいやめろ、変な想像させるな。ヒュッてなったぞ」
氷織の言い回しは悪意があるような気がしてならない。双葉の根っこが俺の難攻不落のお城にこんにちわってか? 笑えないぞマジで。お前は肩揺らして笑うな?
あと、相手チームもクセがすごいんよ。
俺の顔見て、非凡非凡って連呼してるやべえ奴と、触覚と褐色の黒ギャル男Ver.。めっちゃニヤニヤしてるのが怖くて仕方がない。
あとは、一応味方チームの下まつげ殺意バシバシが横にスタンバってるが、さっきから無言でこっちを眺めては舌打ちの嵐。生きてて楽しいんかこいつは。一瞬視線を向けて目が合ったから直ぐに逸らしたら殺意ましてやがるし。
何より、背後から突き刺さってくる視線が痛いし痒いし気持ち悪いからやめて欲しい。特に双葉。目ガンギマリだぞ。
「何点先取だっけか」
「五点やね」
「おけまる」
「頼りにしてんで水野くん」
「氷織もな」
軽くやり取りした後に、氷織はポジションへと戻っていく。本当なら一生隣にいて欲しいまであるが、まあしゃーない。横にいる男前からの視線は無視してできるだけ関わらないでいたい。
「おい」
無理でした。
「その余裕そうな面、直ぐに剥がしてやるよ」
どゆこと?
「お前のプレーも、ボールも……何もかも、俺が喰いつくしてやるよ」
「……お前が?」
いや、いやいやいや。急に「美味しく頂きます(意味深)」宣言すんなよ。股間が寒くなるだろうがよ。そういうのは双葉でお腹いっぱいなんだよ。いやあいつにも喰わせねえけど! 俺は! ノーマルなので!!
「その前に、後ろ気にした方がいいぞ」
「あ?」
「俺を喰う前に、お前が喰われるだけの話だ」
見てみろ、お前。双葉の奴、俺だけじゃなくてお前にもアッつい視線向けてやがるぞ。警戒しろ、マジで。こんな閉鎖空間で男同士のヤリトリなんか需要ねぇから! 俺を巻き込むな!
「……舐めやがって」
舐められそうになってんのお前だから!! 物理的に!
氷織! 爆笑してんの見えてっからな! 「ブフォッ」ってやめろ!
あ〜、マジでこの空間から早く出なければ。一応サッカーコートということで広さはあるが、四方八方を囲まれた閉鎖的空間は、そういうことにはもってこいのやっべぇ密室となっている。
五点決めたら出れるんだよね? よし、一点もやらねぇよお前ら、時短だ時短。
試合が始まる。俺へと渡されたパスを、誰に渡すでもなく真っ直ぐに走り出す。
「うっそォッ!?」
笑顔で飛びついてきたガングロギャルを無視して抜き去り、なんかヌルヌルした動きで駆け寄ってくる誇張した関西弁野郎が伸ばしてきた腕を難なく振りほどき、止まることなく進み続ける。
後ろの情報はカットしていい。前方三人。これで全部。後方の二人は俺に追いつく脚力は無いから放置していい。左に氷織、パスを意識させるために一瞬視線を氷織へと向ける。俺の視線に気づいた相手の一人が動きをとめ、パスを警戒しヘルプへ飛び出せる位置をキープした。これであと二人。
長髪サラサラのお嬢様みたいなやつは筋肉の付き方的に脚に自信があるのだろう。だから俺はあえてそのお嬢様がいる方へと走る。少し遠目の位置にいる相手はやはりスピードタイプであり、あの時の坊主と同じく一歩の歩幅が大きいタイプであり、大げさに右へと切り返すと相手は一歩で追いすがろうとする。
「"ロック"」
歩幅が大きい……それ即ち、股下からボールを通す選択肢が強く当てはまる。右に切り返した俺についてこようと、相手が足を開いた瞬間に、右足のアウトサイドで回転をかけながらシュートを股下に放つ。
目を見開いて股に視線を向け、ボールを追うように視線を後ろへと向けた相手の姿を見ながら、シュートを放ったのだからゴールが決まるという当然の結果をゴールネットを揺らす音とホイッスルがコートに響くのを聞き取り、特に喜びの感情をうかべることなくスタスタと自陣へと帰る。
視線が痛い。双葉と殺意まつ毛からの視線が怖い。すんごい見てくるやばい助けて欲しい。俺は救いを求めて反対側にいた氷織へと駆け寄った。
「相変わらずえっぐいことすんなぁ」
「氷織助けてまじであいつらこっちめっちゃ見てくる貞操の危機」
「はいはい。僕にもパスちょーだいな」
ていうかリスタートおっせぇよ!! 早くボール用意しろやブルーノ!! てめえ何サボってんだよぶっ潰すぞッ!!! こっちは貞操かかってんだよ!!!
◇◇◇◇◇
俺たちは、考えが甘かったのだと再認識された。
モニタールームで何度と繰り返してみた、世界選抜戦。
最後のチーム……つまり、水野が属する、ブルーロック側唯一の勝利チーム。
震えた、恐怖した、歓喜した。
俺たちが弄ばれることしか出来なかった世界選抜を手玉に取る、圧倒的プレー。当然のように行う神がかったシュート、ドリブル、ディフェンス。
あんな奴が同世代にいることに恐怖した。そして歓喜した。俺も、そのステージにあがりたいと。そんなやつと、サッカーができることに喜び、滾った。
ああ、そうだ。俺は水野のことを何も知らなかった。
映像を見ただけで全てを知ったつもりでいたんだ。
……今なら、俺がどれだけ楽観的な考えだったのか、死ぬほど理解できる。
「……クッ、ソがッッ」
ゴールネットを揺らし、無情にも響く電子ホイッスル。映し出されたモニターの数字がまたひとつ、加算されていく。
凛が、歯を食いしばり殺意の籠った視線を向ける。その凛には、疲れた様子はなく、汗ひとつ見えていない……それは俺も同じか。
汗をかくのは相手チームだけ。俺たちは文字通り、何一つさせて貰えていない。
──俺たち、チームAの三点目の得点は、やはり水野のゴールで決まった。
「────ははっ」
ああ、面白い。なんだあいつは。ここまで差があるのか。
パスが回ってこない……当然か、その必要が無いから。むしろボールを奪われるリスクの方が大きいのだろう。
何も出来ない。自分を主張する機会さえ与えられない。極論、寝ていてもこの試合は勝つ。そう、勝てるんだ。
「……ふざけんな」
自分に苛立ちが覚えた。俺は何も出来てない。必要じゃない。だから俺はひたすらに水野を見て、見て、見て。そして出した結論は、『理解不能』。
チームBの誰一人として水野を止められない、眼中にすらない。水野がボールを持った瞬間、ゴールが確定するような理不尽な錯覚を覚えるほどに、あの怪物は俺たちの常識の外側に位置していた。
分からない。何が凄くて、何をしてるのか。どんなテクニックを使ってるのか、なんでコート上の情報を把握出来てるのか、どうして視線を向けずにパスを受け取れるのか。
人間、理解ができない存在を前にすると、恐怖というか、怯えというか。形容し難い気持ち悪さに身体が震えるのだと学んだ。
今の俺に……いや、水野以外のストライカーに、何が出来る?
既にここは水野の独壇場だ。凛でさえ、踏み込むことの出来ない舞台が出来上がってる。水野が一人踊り、舞い、魅せられるのを俺たちは指をくわえて眺めているだけ。
俺はこの一回のチャンスで俺というストライカーをアピールしなければならない。それが日本代表と試合をするメンバーに選ばれる条件。このまま何も出来なければ、選ばれる確率は格段に下がる。
俺に何が出来る。水野をもっと観察……いや、無理だ。あれは無理だ。あの埒外のバケモノをこの短時間で読み取ることなんて不可能だ。無理なものに縋るな。
探せ、探せ。ヒントを探せ。他に何かないのか。なんでもいい、誰でもいい。いや、このコート上には既に水野以外に目立ってる選手が居ない。誰もが水野に呑み込まれてる。ダメだ、見つからない、鍵が、光が何も無い。強すぎる光に全てが意味をなさない。
「……いや、待て」
ぐちゃぐちゃになった思考に、淡い光が差し込んできたようにかんじ、ハッと頭をあげる。そこに移るのは、疲れた様子も見せずなんということのないように立つ水野……の、隣。
「ナイスパス。眼の使い方上手くなってるな」
「アイコンタクト以外で周り見いひんキミに言われてもなあ……」
水野や二子と同じチームだった……氷織。
そうだ、氷織だ。あいつだけが水野の動きについていけていた。正確なパスも出せたし、何より、氷織のことを相手は止められてない。
水野という圧倒的なまでの光に照らされて存在感を薄めていた、超重要ファクター。
試合が再開される。見ろ、見ろ。水野に着いていける唯一の存在である氷織に着眼点を向けろ。氷織は水野を見てる。けど、意識してる程度だ。水野に合わせてるようには見えない。
あいつと俺の何が違う、何をしてる、何を考えてる。
あと二点だ。この一点で鍵を掴み取れ。じゃないと俺は何も残すことなく試合が終わる。
瞬きさえ無駄だと、氷織のプレーに集中した俺は瞬きという行為を放棄する。
読み取れ、俺のゴールまで導く指標。度肝を抜け、ここにいる全員の思考を越えろ!
見て、見て、見て、見て……そして。
「────あ」
俺は、ゴールの方程式が生まれようとしている予兆を感じ取った。
◈◈◈◈
「氷織と二子はスタイルが似てるな」
「いや、僕の方が細っちいで」
「髪型も違いますしね」
「いやそのスタイルじゃなくてプレイスタイルね」
試合相手が見つからず、自然と練習時間が増えていた、そんな彼ら3人での練習での一幕。
「二人とも、『眼』が良い。それは武器になる、けど使い方が惜しい」
今までも、何度もアドバイスを水野から受けてきた二人は水野の言葉を噛み締めるように聞きの姿勢に入る。
「中心視野の割合がちょい多いな。周辺視野を9割9分にするくらいの意識にして欲しい」
「周辺視野って、あれか」
「ぼやけた外側の部分、ですね。まあそれが理想なんでしょうけど」
「ムズいわなあ」
「でも、それが出来たら常に最適解を叩き出せる。相手の綻び、理想のプレーを求める選手の行動を予想出来れば、パスカットは楽勝だ」
そう言いながら、水野は指で自分の目を指しながら言葉を続ける。
「二つの目だけじゃ賄いきれない情報もある。常に更新し続けろ。誰が何をしてるのか、何をしようとしてるのか。穴は、危険な場所は、味方が求めるコースは、自分が気持ちのいいシュートが打てる地点は何処か」
そして、足元にあるボールを指さす。
「ボールに意識を奪われるな。コート上で1番存在感のあるものはボールだ。他者が持ってる時は意識を向けつつ周りを見て、自分が持つ時はボールは無視しろ。足元に目を向けるな、平行よりも上を向け。ボールなんか、勝手についてくる」
壁に当たっていたボールがちょうど水野の後ろへと転がってくる。それを見ることも無く、足を軽くあげてボールをすくい上げ、両手で抱えると人差し指の上で回転させた。
「俯瞰しろ。自分を含めて、コート上にいる全ての人間を操る第三者になれ。試合を動かしているのは自分だと自覚しろ。お前の理想のプレーを実現するには何が必要なのか、どう動けばいいのか、誰を利用すればいいのか、考え続けろ。お前らには、その『頭』がある」
「なるほど……」
「水野くんは、そんな膨大な作業をしながらプレーしていたんですか……」
考え込み、そして納得の色を見せる二人は今後の方針を定め、その難易度の高い作業を何食わぬ顔で行っていた水野に感心を見せると、水野はキョトンと二人を見つめ、首を振る。
「いや、俺はまた別のやり方だけどな」
「へぇ、どんなことやってんの?」
「頭の中で試合を進める」
「ほー……ん?」
「まず、最初に全員の選手のある程度の実力とか癖とか予想して、パラメータを作るだろ?」
「「ん?」」
「んで、そいつらが動くであろうルートとかを頭で組み上げて、リアルタイムで試合を頭で進める。視点は上からな」
「「ん?」」
「まあ細かいミスとか、不規則な動きは随時更新して、現実と脳内での試合を近づける」
「「……」」
「あとはまあ色々やってるけど……ん? どした?」
「「キッショ……」」
「どストレートだな、おい」
◇◇◇◇
(いやあ、おもろいわ、この眼の使い方)
一点に囚われることなく、首を振って視界に入る全ての情報を取り入れる。周辺視野を利用し、氷織はコート状況の全てを把握しながら最善手を模索し続けていた。
(まだ慣れへんからめっちゃ疲れる……情報過多で頭爆発しそうにリアルで感じたのこれ使い出してからやな)
情報を更新し続ける。俯瞰するだけではなく、自分のプレーも全うする。
水野からパスが渡る。それを受けとり、極力ボールに意識をさかれることなく、さらに情報修正と最適化を施す。
体よりも頭が疲れている感覚が新鮮で、こんなサッカーは過去にはなかったと、柄にもなくはしゃいでいる自分に苦笑する。
(サッカーなんか、僕にとっては鎖でしか無かったんやけどな。サッカーが楽しいなんて気分、何時ぶりや)
親からの期待と重圧。何処か諦め、親から逃げ、サッカーを辞めるために来たブルーロック。
もはやサッカーをするのに理由なんてなくて、楽しむなんて気持ち、失っていたと思っていたのに。
(……こんなん、辞めれるわけないやん)
楽しさを知ってしまった。親からの避難所としか思っていなかったブルーロックで、生き残る理由を見つけてしまった。鎖に繋がれた腐ったゴミ箱から、拾い上げてくれた光が居た。
ああ、彼のせいだ。彼によって、自分は今までとは真反対の自分にまで変えられてしまった。もう戻れない、戻ることなんてできやしない。彼のせいだと、自分を正当化して、氷織は進み続ける。
水野のように、完全にボールを見ないプレーはまだ出来ない。どうしても少し意識をさいてしまうし、気づけば視野が狭まっている。
難しい、楽しい、心地いい。
簡単なゲームは、氷織にはあわず、ハードな初見殺しのような、クリアできるかも分からないギリギリの難易度が性にあっている。
「……ふはっ」
本当に楽しい。ここに来てから……彼にあってから、大嫌いだったサッカーが楽しくて仕方がない。彼とするサッカーが、これほど楽しいと感じてしまうとは思わなかった。
氷織の不完全なゲーム掌握。しかし、氷織が描く理想のプレーのルートには、必ず彼が居てくれた。
待っている、彼がパスを待っている。今まで両親に向けられてきた『期待』と似通った『期待』なのに、嫌な感じが全くしない。
(ああ、応えないと)
パスを出す。弧を描いたそのパスは、密集地から難なく抜け出した水野へと吸い込まれる。必要じゃないのに、顔を氷織へと向けた水野は、軽く頷きを見せてすぐに前を向く。
(あ〜……気持ちいいなぁ)
どうして、彼とするサッカーはこんなにも心地がいいのだろうと、氷織はふわふわとした心持ちで考える。
ラスト一点。四点目は氷織が決め、それ以外は全て水野が決めた。相手チームからは一点も奪われることなく、試合は最終局面へ。
汗を流し、ギラついた目で水野を追う相手を、氷織は面白そうに流しみる。予想通り、誰も水野を止めることなんて出来なくて、数の暴力とでも言うように水野の進路を塞ぐ。
(予想通り、やな)
右サイドで足を止めた水野を見て、氷織は水野へと視線を向け続けて前へと走る。ぽっかりと空いたスペースは氷織が思い描いたシナリオ通り。水野と同じ道筋を見ていると信じ、終着点が自分であることを疑わない。
(水野くんやったら一人でも決めれるけど、今の場面はフリーの僕が決めるのがベター。これが最適解で、水野くんも分かってるはず)
さあ、来い。そう瞳で訴える氷織へと水野は視線を向け、視界が交差した直後に水野は右足を振り上げる。早すぎるパス選択に相手は動くことは出来ず、パスの軌跡を眺める。
「最高やで、水野くん」
口角が歪む。嬉しさが駆け巡る。彼から必要とされてることが何より嬉しい。
期待されている。見てくれている。普段の馬鹿みたいな彼からは想像つかない頼もしさに「これがギャップ萌えか」と馬鹿みたいな思考に陥る。
「──何勝手してるんや、氷織ィ」
「っ、まじか」
自身へと向かうパスを待ち構える最中、不意に耳へと流れ込んだ聞きなれた声にビクリと肩が震える。
「烏……!!」
「見やん間にこんな非凡なってるなんてなあ……でも、詰めが甘いわ」
やられた、と想定を覆されたことに驚きを隠せないままに、気配を消しきった烏が意識外から氷織へと追いつく。眼の使い方を教わったとは言え、技術面に関しては水野からの指導があれど一日二日で急成長するものではなく、純粋な技量では烏に勝てないことを理解していた氷織は舌打ちをこぼす。
ダメだ、この状況を覆す一手が浮かび上がらない。最後の最後にしくじってしまったことに、氷織の顔が歪む。この一本を取られたところで勝ちが揺らぐことは無いものの、氷織からすれば自分の描いた勝ち筋を覆され、否定された。何より、水野からの期待を踏みにじってしまうことに、苦虫を噛み潰したような表情をうかべる。
なにかないかと、じき迫るボールへと視線を向け……違和感を感じとった。
(高い……僕も烏も届かん……僕じゃ、無い……?)
あの水野がミスをするはずがないと思いながら、明らかに自分へ向けられたものでは無いパスに首をかしげ、唖然とボールが向かうであろう位置へと視線を向ける。
「……は?」
そこに居たのは、同じチームになっていた潔世一。彼はギラつかせた目でボールを収めると、トラップすることなく直接シュートを放った。狙いすませた位置取りにより放たれた正確なシュートは真っ直ぐにゴールの角へと向かい、ブルーロックマンの飛び込み虚しく、ゴールネットを深く揺らした。
「潔、くん……?」
ゴールを決めたその男に、呆然と見つめる。潔自身、今のプレーに驚きを隠さず、自分が行ったことを手や足を見ながら言語化しようとしていた。
何かを掴み、喜びを浮かべガッツポーズを取る潔と、何も出来ずにフラストレーションが溜まるばかりの機嫌が悪い凛。
振り返る。何故か荒くなっている息を整える暇なく、氷織は水野がいた右サイドへと視線を向ける。
当の本人は、潔の様子を見て、何処か面白そうに微笑を浮かべると特に何をするでもなく、扉へと向かった。
「……ぁ、ぇ」
視線を向けられなかった。今までのように駆け寄ってこなかった。体にどデカい虚空が出来上がったような感覚を氷織は感じ取る。
「僕じゃなくて……潔くんを、選んだ……?」
それは、最適解だったのだろう。冷静な頭の氷織であれば、烏に付かれていた自分よりも潔に出した方が理想的だったことに氷織は気づけただろう。
しかし、今の氷織は違う。脳が正常に作用しておらず、アドレナリンの栓が外れたようなそれは、氷織のテンションをバグらせた。
結果。
「────────は? 」
一時的に、やっべぇメンヘラが爆誕し、水野の背筋が凍りついた。
お、双葉いい位置取ってんじゃん。
流石に氷織と俺だけの試合みたいになっちゃったし、氷織もまだ眼に慣れてないなぁ。なんかヌメヌメした殺し屋みたいなやつが氷織に迫ってる。おら、受けとれぇい!
試合終了のホイッスルが鳴り、双葉へと視線を向けると、ギラギラしてた目はどこかへ行って、なんか子供みたいにクリンクリンな瞳が嬉しそうにガッツポーズしていた。うわ、初めて見たかもしれない。
二・重・人・格!!
な──ーるほど、試合中は『もう一人の僕!』が暴れ散らかしてしまうのか……今の双葉は初めて見たかもしれん。つまり今の奴は安全、近寄ってよし! オモロ!!
よしっ、まつ毛からの視線は変わらないし、さっさとかーえろっと。
ゾワゾワッッッッッッッッッッ
今世紀最大の悪寒を感じた気がした。気の所為? あれ、氷織どこ行った?
SAOの設定出来てしまって書くか迷う……あ、Fate二次書いてみたので、良かったら見てください