僕も2期まで心が持たない…ウッ…
「はあ~…やっぱり私の人選ミスだったのかな~」
「そんなことはない。たまたま予定が立て込んでるだけ」
「もうライブの一週間前だよ!なのに1回も合わせに来ないなんて」
「アイツはきっと大物になる」
そうやってニヤニヤしつつ私の横で気だるげにベースをチューニングしてるのは幼馴染の山田リョウ。
中性的でどこか浮世離れした雰囲気があり、今日も表情は読めない。
ミディアムボブで斜めにした前髪から覗く顔立ちは、黙っていればクールな美人なんだけど、、、
「そもそも勢いに負けて加入させちゃったけど、どれくらいギター弾ける子なんだろう?」
「別に下手でもいい。呼んだらいつでも来てくれてご飯奢ってくれてついでにお金貸してくれる人なら誰でもウェルカム」
「ナチュラルに要求が多すぎるよ!?」
この通りクズバンドマンのお手本のような性格なのである。
そうじゃなくてもリョウは基本的に一人が好きだし、自分の欲望に正直で他人にあまり行動を合わせないのだ。良く言うとマイペース。悪く言うと…なんなんだろうね?
こんなのと友達付き合いができるのは私くらいのものだし、実際同じ下北沢高校に通っていて私以外に親しい友達はいないみたいで。
それがちょっとだけ嬉しかったりするのはここだけの秘密だ。
最近ロックバンドを結成したばかりの私たちは一週間後のライブにむけて『STARRY』のスタジオを借りて練習していた。
バンド名は、リョウ命名で結束バンド… うん、やっぱりダサすぎる。
ダジャレもいいとこだし3人しかいないのに全然結束してないし!
ここSTARRYは私のお姉ちゃんが経営しているライブハウスなだけあって、ほかのお客さんよりちょっとだけ安くで借りることができる。
私もバイトとして手伝っており、そこからスタジオ代を払うことにしている。
まあそれでも高校生にとってはなかなか痛い出費なのだ。
そんな懐事情にもかかわらず、サポートギターとして加入した子は応募以来1度も練習に来ていなかった。
高校は確か…秀華高校だったかな?
ちょっと話した感じだと陽キャそのものといった振る舞いで、アイドルのようなルックスと時折眩しくて目が開けられないような光を放っていた女の子だった。
「明るくていい子そうなんだけどな~」
「性格のいい人間がバンドに向いているとは限らない。私が良い例」
「自分で言ってて悲しくならんのかね…」
リョウがいつもの変人アピールを嬉しそうにするので適当に流す。
「とは言っても毎度毎度リズム隊だけじゃ練習にならない。」
「リョウの言うとおりだねー、今日はほどほどにして早めに帰ろっか」
「うん。このまま2人でスタジオ代払ってたら私は草を食べて生きていかなきゃいけなくなる」
意味不明なボケを無視しつつ、私もドラムセットの準備を始めた。
ほんとは無理にでも連れてくるべきなんだろうけど、こっちもよく知らないまま加入させた手前強くは言えないんだよね~。
「ところで虹夏、早く終わるなら最近できたカフェが」
「この前おごったばかりだから嫌」
「ま、まだ何も言ってない…」
全く、こいつは隙あらばすぐたかろうとするんだから。
ま、まあほかに一緒に行く子もいないみたいだし?
リョウがどうしてもっていうなら考えてやらないこともないんだけどね!
_______________________________________________________________________
そんなこんなで嫌な予感がしていながらも迎えたライブ当日。
結局3人がそろうことは1度もなく、結束バンドは予想できたであろう最悪の状況になってしまった。
『どうしよう!昨日の夜から連絡つかないし、ロインのグループも抜けちゃってる!』
『ふむ。スラップで独壇場か…』
『切り替え早すぎるし!もし事故とかにあってたらどうするの!』
『大丈夫、そんな気がしてたから毎日お線香あげといた』
『先見の明がありすぎるよ…私、ちょっと探してくるから遅れる!』
ギターの子が突然音信不通になってしまったのだ。
何か言おうとしたリョウの電話を切り私はSTARRYを飛び出した。
今はお昼過ぎ。ライブは夜からなのでまだ探す時間はある。
トラブルがあったのか、やる気をなくしたのか。
いずれにせよこの辺りをうろついてることは十中八九ありえないけど、わずかな望みにかけて手当たり次第に探し回った。
「ダメだ、見つかんない…」
小一時間ほど駆け回ったがそれもそのはずだ。連絡がついていたとはいえ、今日までリハーサルの1つもできていないのだから。
私があの子だったらどんな顔して会いに行けばいいのかわからない。
「ぶっつけ本番でもよかったんだけどな…」
思わず言葉が口に出る。
今日のライブはインストバンドとして前座に出演するので、ぶっちゃけそこまでのクオリティは求められていない。
オリジナル曲でもないし、メンバーだって急造だし。
まだ私たちのバンドと言えるようなものは何も準備できていないのだから。
それでも。
今日は初めてお姉ちゃんのお店で演奏する日だったんだ。
私の夢を応援してくれるお姉ちゃんの前で、今できる精一杯を披露したかったんだ。
そんなことを考えていたら視界が少しにじんで見えづらくなってきた。
何に対して悲しくなっているのか自分でもわからない。
リョウと2人での演奏でもそれなりの形にはなるだろう。
その場に座り込んで気持ちを落ち着かせた私は、探すのを諦めてSTARRYへと歩き出した。
ぼーっとした頭で戻る途中、公園のブランコにだれか座っているのが目についた。
(同い年くらい…高校生かな?)
遠目から見ても目立つピンクの髪に、異常に背中を丸くした猫背。
私がその女の子から目を離せなかったのは、その子を中心にあふれているどす黒い悲壮感のせいではない。
女の子は背中に、頭1個分飛び出るくらいの楽器ケースのようなものを背負っていた。
気付いた時には、私の足はその子に向かって駆け出していた。
のんびり更新していきます〜
評価・感想書いてくれたら泣いて喜びます