私は一人が好き。何をするにも、他人と歩調を合わせるのが苦手だから。走ることが好きなのは、走っている瞬間は、誰にも干渉されない一人だけの時間だからだと思う。
私は一人が好き。誰にも迷惑をかけないから。嫌われるのはいや。怖いから。だから、当たり障りがないように、目立つような行動は極力しない。休み時間はメンコの中にワイヤレスイヤホンを入れて、外の音を遮断する。うるさいから。
私は一人が好き。
だから____
「あ、っあの」
「……あ、ごめんねー!!」
「……!…………!」
頼むから、私の席を取らないでください。
眩しい笑顔で席を立ったその子は、私の後ろの席の子の方へ寄って、またぺちゃくちゃ喋り出した。
羨ましくはない。
椅子に座ると、人が座っていた匂いが鼻について、少し嫌な感じがする。自分のテリトリーが侵される感覚。本当に、…… そんなことを考える自分が捻くれてしまっているのは重々承知している。
机にスマホを置いて、机にかかったスクールバッグから取り出すのはワイヤレスイヤホン。価格にして2万円で、重低音モデル。メンコの中に忍ばせておけるから愛用している。騒々しい世界から隔絶されて、かける音楽は、もっぱらゲームのBGMやアニメの劇伴。そして、背中を丸くしてumatterの通知を確認して時間を潰す。
私――サイレンススズカは、そうやって授業と授業の合間の過ごす。
三女神像が見守る中央玄関前広場。そこの、木陰になった雨晒しのベンチ。私のお気に入りの場所。お昼休みになると、購買によってから必ずここに避難する。大抵は皆カフェテリアに行っているから、広場は木の葉が擦れる心地よい音しかない。その音を聞きながら、私はコッペパンにかぶりつく。
そして、木漏れ日の星空のような煌めきを見上げながら、私の心は思慮の海に浮かぶ。最近考え込んでしまうのは、特に“チーム”のこと。
一言で言うなら、やめたい。
あのチームが悪いわけじゃない。むしろ、良すぎるぐらいなんだろう、学園最強を謳っているし、設備面だとかでも不満はない。全面的に悪いのは私だとわかっている。なんでやめたいのかと言ったら、“自由に走りたいから”。そんな、人にとってはくだらないであろうことだから。
そう。だからこそ、私は“やめたい”と言い出せない。
チームの皆はどう思うんだろう。タイキは、エアグルーヴは、オハナさんは……。
皆、多分笑って送り出してくれるんだろう。しかし、私は捻くれているから、その笑顔の裏をどうしても想像してしまう。
いや、単に伝えるのが面倒くさいだけなのかもしれない。私は報連相が苦手だから。
何が自分の本心なのかわからない。いや、全て本心なのだとしたら。すると私は相当な酷いやつなんじゃないだろうか。
「はむ」
そんなことを考えていても、コッペパンは変わらず美味しい。
とんだ薄情者なのかもしれない、私は。
表情も死んでいるんだろう。
放課後。
「スズカ!」
「あっ……、フジキセキ、何か用?」
「うん、君の部屋って相方が空いていたろう?そこに、今度転入してくる子が入寮することになったんだ。それを今伝えとこうと思って」
「あえっ」