サイレンススズカは今日も爪を削る   作:にわとり肉

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 小休止。てかこの小説レース描写省略しすぎじゃね


舞い上がるスペ

 スペシャルウィークさんの、整っていた寝相が崩れていた。

 私の寝相は、むしろ人が変わったように綺麗になった。

 時計の針の音、スペシャルウィークさんの幸せそうな寝息が静かに刻まれる。時間は4時半。また予定よりも早く起きてしまった。

 布団を跳ね除けて、ベッドから降りて、ピンク色の寝巻きから、すべすべのお腹を覗かせているスペシャルウィークさんの前に出る。

 嗅ぎ慣れない匂いがする。

 起こさないように、寝巻きを引っ張って戻してあげて、布団をかけ直す。

 そして、“日課”の準備をしようと洗面台に行こうと思った時。

 

 「……お母ちゃん」

 

 一言、心の底から満足そうな声が聞こえた。

 

 私は部屋から逃げ出した。

 

 「はぁ……、はぁっ……」

 

 走っているというのに、部屋での一幕が頭を駆け巡る。

 無心になれない。朝日に染まる川岸のゆらめく風景が綺麗に思えない。

 ひゅーひゅー吹く風が冷たい。

 街灯の影が、つま先を突いている。

 

 『お母ちゃん……』

 

 あれだけで私のことを信頼したんだ。

 私は、あの子が思うような人じゃないのに。

 私が声をかけたのは、私があの子を壊したくなかったから。そんな恐ろしいことに加担したくなかったから。

 全部私のため。

 ……

 

 「……」

 

 呼吸が平静になる。街灯から伸びる影が、いつのまにか私に重なっている。スマホをジャージのポケットから出すと、時刻は五時半ちょうど。

 帰らなきゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 入部した途端一週間後にメイクデビュー! なんて、無茶苦茶なことを言われて、右も左もわからない私が勝つことができるのか、勝てなくて、夢への第一歩で転んでしまったら、とにかく不安でいっぱいだった。

 そんな時、声をかけてくれたのは、他でもないスズカさん。

 私の大好きなお母ちゃんの話を聞いてくれた。

 私にゼッケンを届けに、地下バ道に来てくれた時、

 

 『す、スペちゃん……!』

 

 憧れの人に愛称で呼ばれた。

 私が勝てたのは、間違いなくスズカさんが檄を入れてくれたのが一つの要因。私はそう思っている。

 そして、あの日以降、スズカさんは私の面倒を見てくれるようになった。

 

 「……、す、スペちゃん、もう起きないと」

 「ん゛…… おはようございまふ」

 

 スズカさんの声と匂いで起きて、目を開けると、スズカさんの顔が見える。ちゃんと自分で起きないように、って頑張っても、どうにも朝は自信がない。

 寝癖を整えたり顔を洗ったりした後、食堂にいく。スズカさんは朝ご飯とかも全部済ませているから、一人で行って、美味しいご飯をたくさん取ってくる。

 

 「スペちゃんおはよーー!!!!」

 「おはよう、スペシャルウィークさん」

 「()んんん(おはよ)〜!!」

 

 そして、同じ時間帯に大体来ている、優雅なキングちゃんと、寝癖が飛び跳ねたウララちゃんと一緒に食べる。みんなで食べればもっと美味しい。

 スズカさんとも食べたいな。

 

 「スズカさん!いきましょ!!」

 「ええ、後少し待って」

 

 そして、部屋に戻ってきたら学校の用意をして、いつもだったらバラバラに登校していたけど、スズカさんが気を利かせてくれて、一緒に行こうって。

 嬉しい、嬉しい!羽が生えたみたい!

 普通の廊下もスズカさんとなら花咲き誇る道に見えるってもの!!

 スズカさ____

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おはようスズカ」

 「あ、エアグルーヴ…… おはよう」




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