みんなスズカさんの頭の中身好きですねぇ
沖野さんはレースに熱中している様子。下のコースは、レースが終わったのかきんきん喧しい。流石に、リギルの部員選抜。少し懐かしい。
……あの子は、勝ったのだろうか。
ともかくこの人、どうしようか。ストップウォッチとお話してるけど、話しかける?
……
……
……
……
……
「……スズカ?何してんだ?お前も見にきたか?」
「あっ」
変なものを見る顔をした沖野さんが、こっちを見ている。
顔が熱い。尻尾が揺れる。
「あの…… その、そう、入部届けを……」
草むらの隙間から、長い触角のバッタが這い出てきている。何も考えてなさそうだ。私もそうなりたい。
「あぁ、オーケーオーケー」
立ち上がって、黒いズボンについた枯れ葉を落とした沖野さんは、私から顔を離して、またコースを見下ろした。
「お前、このレース見てたか?」
「えっ……」
沖野さんは、こっちを見ないで、
「お前から見て、誰が光ってみえた?」
光ってみえた。
光ってみえた……
そんなの、そんなのわからない。でも、強いて言うなら。
「あの、後ろから追い上げていった子……?」
「やっぱそうか、そうだよな〜」
沖野さん、頷いて笑ってる。なんなんだろう。
そよかぜが吹き抜ける。木々がざわざわ揺れている。
灰色の雲の青空で、小さな鳥が、別の鳥の集団に追いかけられている。
「うーし!じゃ部室行くか!」
「……! はい……」
部室?
「はいせーのっ」
「「「ようこそ!チームスピカへ!!」」」
スピカ、の表札がかけられたプレハブ小屋の扉をくぐった瞬間。私は何やら手厚い歓迎を受けている。
音頭をとったゴールドシップはもとより、青いふわふわでまとめたツインテールの子に、片目を隠してる荒っぽい髪型の子。いつのまに部員が増えている。
リギルとは全然違う、慣れない雰囲気。
「ダイワスカーレット、ウオッカコンビ。お前に声かけた後に入ってくれたんだ」
トレーナーさんが奥の方へ進んで、傍で自慢する様に手を、そのダイワスカーレットとウオッカへ差し出す。誇らしげにしてる二人。
「私!スズカ先輩の走りに憧れてるんです!!!あの他を追随させない走り!!!」
「うぇっ」
ツインテールが揺れて、私に詰め寄ってくる。
「俺もです!!こうズビューンって!!」
「……ぅん」
口の端がピクピクする。引き攣ってないだろうか。
「お前らスズカが困ってるだろ〜が!なぁスズカ!今度一緒にたい焼きの鱗を数えようって約束したの忘れてねえよな!?」
……
……?
とにかく、これがチームスピカ。ということなんだろう。沖野さん笑ってるし。
……なんて愉快なチームなんだろう。既に不安で心が満ち満ちている。
すると、沖野さんはパンと手を叩いて、
「ようし、んじゃあー早速お前らに頼み事があるんだけど……」
私はついていかなかった。知らない。関係ない。
他の三人は嬉々として変装して、ずた袋を持ったゴールドシップを先頭に出ていった。何をしに行くかは想像に難くない。
『このウマ娘を連れてきて欲しいんだが……』
沖野さんがポケットから取り出したのは、あの子の写真。
『スペシャルウィーク。この子をウチに引き入れたらチームスピカ始動だ!』
……
「スズカ、お前は行かなくて良かったのか?」
「あ…… はい」
そういう片棒を担ぐ気はない。
その時、メンコ越しでも聞こえるあの三人の声。
そして、くぐもった呻き声。
自分は関わってないのに変な汗が出る。
「「「えっほ、えっほ、えっほ!」」」
扉が勢いよく開かれた。
来た。
「うっ……!」
三人に担がれたずた袋が下ろされて、この世の終わりみたいな表情で、その子は落ちてきた。
白い三つ編みを側面に巻き付けるようにした、アメジストみたいな瞳の子。
ソワソワしてる。
「ゔぅぁー!!?痴漢の人!!?」
「「「痴漢!?」」」
「いやぁ違う違う違う!勘違い〜!」
一体沖野さんはこの子に何したんだろうか。本当にこのチームは大丈夫なんだろうか。
「さぁ、みんな挨拶だ!」
『ようこそ!チームスピカへ!!!』
『日本一のウマ娘って、なんだ?』
沖野さんはそう言っていた。そして、それは彼女の夢。
答えのない夢。だって、それは他人が決めることだから。だから、もしそうありたいのなら、華々しく活躍するしかない。夢を見せるしかない。
『スズカ、お前はどう思う』
そう答えた。
そうしたら、なんだか入る気になったのか、彼女も入部して、これで最低人数の五人が集まった。
それはまぁ、良かったんじゃないだろうか。満足に走れないのは懲り懲りだから。
ただ、ただ、
「はわぁ〜!同じ部屋なんて運命かも!!」
何故か懐かれるわ、部屋も同じだなんて、聞いてない。
第一話をスズカさん視点で見た感じ。
つまりダイジェストになってるのは……