毎日戦隊エブリンガー ~最強ヒーローの力で異世界を守ります~   作:ケ・セラ・セラ

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余話 ヒーローは必ず現れる

「来るぞ! 青い鎧が来るぞ!」

「来るかバーカ!」

「あうっ!」

 

 ディテク王国首都・メットーにほど近い小さな宿場町、そのメインストリート。

 殴られた少年の手から、掲げられていたメダルが飛んで地面に落ちた。

 青い鎧の姿を雑に模したメダルの図柄。地面に落ちたそれは僅かに発光している。

 

「メダルが光ってる・・・青い鎧が来るんだ・・・」

「ただのおもちゃだろ!」

 

 それは最近ディテク王国、特にメットー周辺で流行っているおもちゃ。

 体温で暖めるとかすかに光る塗料を塗った、青い鎧のメダル。

 

「嘘つき、嘘つき、嘘つきコージー! 父無しコージー!」

 

 倒れた少年をいじめっ子たちがはやし立てる。

 子供は残酷だ。自分ではどうしようもないことを、さも悪であるかのように責め立てる。

 コージーと呼ばれた少年には何の非もない。

 彼らはただ、自分たちより弱い者を踏みにじって良い気分になりたいだけ。

 

 誰もが持っている人間の醜い側面。

 それをまだ理性で抑えられない年齢。

 だから彼らのいじめには全く容赦というものがない。

 倫理観が未発達な世界であればなおさら。

 

「嘘つきコージー!」

「弱虫コージー!」

「がっ!」

 

 立ち上がってきた少年に、いじめっ子たちがさらに暴行を加える。

 周囲の大人たちが介入するかどうかと言うタイミングで彼らはそれをやめ、笑いながら逃げていった。

 

「・・・」

「おい、大丈夫かボウズ?」

 

 心配して近づいて来た屋台の男を、少年は無視する。

 そのまま立ち去った少年を、周辺の大人は黙って見送った。

 

 

 

「ただいま」

「おかえり・・・あんたその顔どうしたの!」

「なんでもないよ。転んだだけ」

「でも・・・」

「何でもないって言ってるだろ!」

「・・・」

 

 家の奥に引っ込む息子を、母親は黙って見送る。

 子供にだってプライドはある。

 親に言えないことはあるし、親を心配させたくないという気持ちもある。

 親だってそんな子供に配慮はする。

 だからこの話はここでおしまい。食事の時にも、寝る時にも蒸し返されることはない。

 

 

 

「・・・」

 

 今日は寺子屋の日。

 筆記用具とそろばんを詰めたかばんを手に、鬱々と街路を歩く。

 

(寺子屋なんかなきゃいいのに)

 

 オリジナル冒険者族が広めたと伝わる寺子屋は、庶民の教育機関として非常に大きな比重を占めている。

 読み書き計算ができるものが増えると言うメリットを、当時の為政者が理解したがゆえだ。

 

 もっとも、大体の子供が通うのは週に三日ほど。

 読み書きと九九そろばん以外は簡単な地理と歴史の授業があるくらいで授業の内容が薄いと言う事もあるし、家の手伝いをしていて忙しい子供もいる。

 少年も母親の裁縫の内職の手伝いをしているから、そう自由な時間はない。

 問題はあのいじめっ子たちも同じ寺子屋に通っていることだ。

 

「・・・」

 

 手の中のメダルをぎゅっと握る。

 世界を救った最新最強のヒーローを模したおもちゃ。

 あの戦いの後、青い鎧の名前はメットー中、世界中に響き渡り、星の騎士と握手をした絵姿(実際にはそんなことは起きていないのだが)の木版画は、持っていない家はないと言うくらいに売れた。

 目端の利く商人たちはこぞってこの流れに乗り、彼にあやかった商品が山のように出た。

 (どこぞの王子様が「商標登録できないかなあ」と思わずぼやいたくらいである)

 

 このメダルもその一つ。

 安手の発光塗料を塗った、木製の雑な作りのメダル。

 それでも、貧しい少年にとってそれは宝物だった。

 

「・・・?」

 

 考えながら歩いていたせいで気付くのが遅れた。

 街路に人影がない。

 午前中、メインストリートはそれなりに人通りがあるはずなのに。

 

 歩みが早くなる。やがて小走りに、そして全力疾走に。

 予感が的中する。

 遠く聞こえる悲鳴。寺子屋の周辺に群がる大人たち。それらをかき分けると、「それ」があった。

 

「いやああああ!」

「ママ!ママァァァ!」

 

 泣き叫ぶ子供達の声。その中にはいじめっ子たちの姿もある。

 

「ガキどもを助けたきゃ金貨もってこい! 一人金貨十枚だ! それと馬だ!」

 

 寺子屋の窓から顔を出しているのはガラの悪い男。

 泣き叫ぶ子供の喉にダガーを突きつけている。

 金貨十枚は日本円で言えばおおよそ十万円。

 現代日本の基準で言えばなんという事はない額だが、日銭を稼いでその日暮らしをしている人々には、全財産をはたいてようやく払えるかどうか。

 

「それとこのガキは金貨千枚だ! 大きな商家の息子だってのはわかってんだからな!」

 

 本来はこの子供が彼らのターゲットだったのだろう。

 あるいは誘拐して逃げるつもりが、護衛なり寺子屋の教師なりの抵抗でしくじったのかも知れない。

 泣きわめいているのはいじめっ子たちのリーダーだった。

 

「ガイノン氏からの返事はまだか!」

「既に人は走らせたんですが・・・!」

 

 警邏が小声でそんな会話。

 子供達を人質に取られていることもあるし、何か間違えて町の有力者の子供が害されたらと思うと、彼らは動く事が出来ない。

 だから、彼が動いた。

 

「え?」

「おい、ちょっと待て!」

「あん?」

 

 すたすたすた、と人の輪から無造作に歩み出す少年。

 犯人も、警邏も、野次馬たちも、あっけにとられて一瞬反応できない。

 人質に取られた子供すら、泣くのをやめて彼を見ていた。

 

「来るぞ」

「何がだよ」

 

 自分を正面から見据える少年に、誘拐犯のリーダーは思わず返事をしてしまっていた。

 

「青い鎧が、来る」

「・・・はっ」

 

 一瞬間を置いて鼻で笑う誘拐犯。

 

「知らねえのか? 青い鎧ってのはな、メットーのまわりにしか現れねえんだ。メットーから十日も離れたこんなちんけな宿場町には来ないんだよ!」

「来る」

「来ねえよ!」

 

 少年が右手を突き出した。

 その手の先にあるのはあのメダル。

 ずっと握られていたそれは、光を放っている。

 

「来る。だってメダルが光っているから」

「・・・」

 

 あっけにとられて、そして男が爆笑した。

 

「ひゃ! ひゃははははははは! ただのおもちゃじゃねえか! あれだろ、手で暖めると光るって奴! そんなもんメットーにいきゃ一山いくらで買えるぜ!

 何かと思えば・・・は、ははははは・・・は?」

 

 男の馬鹿笑いが途切れた。

 周囲を取り囲んでいた警邏も、野次馬も、子供達も呆然と、ぽかんと口を開けて空を見上げる。

 彼らの知らないはずのフレーズ。

 聞いたこともない、しかし確かに知っているそれ。

 

 「それ」がゆっくりと降りてきた。

 風よりも早く、炎より熱く。

 空のように青く、太陽のように赤く。

 

 「それ」が少年の傍らに舞い降りて肩に手を置く。

 

「すまない。少し遅れてしまった」

 

 少年が首を振る。輝くような笑顔。

 

「ううん。来てくれるって、わかってた」

「そうか」

 

 笑みを含ませて「それ」は頷いた。

 

 ファンファーレが鳴った。

 少なくとも彼らは確かにそれを聞いた。

 

 奏でるものなどいなくとも。

 そこがたとえ荒野のただ中であっても。

 ヒーローは、ファンファーレと共に現れるのだ。

 

 




久々の(ほぼ半年ぶりの)エブリンガーであります。

なおあの後十万字ほどのを一本書いてみたのですが、どうもしっくり来ませんで。
新しく一から書き始めた奴がこれになります。よろしければどうぞご笑覧下さい。


異世界に転移したらスキルが「ロボットアニメ」でした ~スパロボ厨が剣と魔法の世界で無双します~ イヤボーンもあるよ!
https://syosetu.org/novel/350048/
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