現代に召喚されたのにマスターがいない   作:影後

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モードレッドは泣いていた。
自分を知っている存在に驚きつつもそれが面倒臭い性格だったからだ。


英雄達集う

「つまり、ここにはジークフリート、ジャンヌ・ダルク等名のある英雄や聖人が居るのか!イリナ、私達は運が良いぞ!」

 

「うん、判ったから……ゼノヴィアは落ち着いて……ね?」

 

「なぁ…もう、良いだろ。離せよ」

 

モードレッドは静かにその顔を見る。

 

「駄目です、兵藤君を斬り付けただけでなく周りまで破壊するなんてお姉ちゃん許しませんよ!」

 

「いや…だから勘違いで」

 

「なら、ちゃんと謝ったらどうなのですか?」

 

「……はい」

 

モードレッドを叱っているのはジャンヌ・ダルクだ。隣ではジークフリートがすまないとリアスに話している。

 

「もう……嫌よ、お腹痛い」

 

「……ねぇ、イッセー君は大丈夫だったの?お姉さん治療してあげるわよ?」

 

「レッ…レイナーレさん!?」

 

「あら、堅苦しくしなくて良いわよ。言ったでしょ、別に殺すつもりはないわよ。でも……貴方がその気ならベッドルームで」

 

「だめです!いくらお姉様でも!イッセーさんは駄目です!!」

 

「むっ…なら、私とアーシアの」

 

アーシアとイッセーを抱き締めるレイナーレ。

その肉体がイッセーを静かに包み込もうとする矢先、

 

「何してんのよ色ボケ堕天使!」

 

「何って……同じ貴女の下僕なのだもの。仲を深めるのは当たり前よね?」

 

「えっ!いや!あの!!!」

 

リアスにより阻まれる、レイナーレは不服そうにしながらアーシアと仲良く話す。

 

「……」

 

それをジークフリートは静かに見ていた。

かつて戦うことのなかった敵が、今では仲間として共にいる。

 

「(何故、俺はサーヴァントでない)」

 

それはジークフリートの困惑であった。

心臓が動き、生きていると言える。霊体化すらできず、この世界で。

だが、ジークフリートの力はいや、この場にいる英雄達の中で今の世界を謳歌できる者は何人いるだろうか。

生前でも、神すら殺せる力を持った者達。

それを今の世界が許すのだろうか。

ジークフリートは自身の肉体と力を鑑みる。

彼、モードレッド、ヴラドはこの場を地獄に変えられる。それどころかジークはかの邪竜にすらなれる。それを、目の前の悪魔達は知らず何もしてこない。

 

「……クリームヒルト」

 

居るかも判らない最愛の人の名を呼ぶ。

だが、それでもジークフリートは静かに平和を謳歌する。

今だけの、崩れる事が決まっている一瞬の平和を噛み締めながら謳歌するのだ。

彼は、ただの願望器ではない。

ジークフリートは英雄なのだから。

 

だからこそだろう、街を取り巻く悪意に気付いた。気づいてしまった。

 

「……すまない」

 

静かにジークフリートは歩みを速める。

せめて、自分が終わらせる為に。今、平和を謳歌している彼等の為に。

 

「征くのか、ジークフリート」

 

「水臭いよ」

 

「…ヴラド、アストルフォ」

 

「……あの中で気付かぬ者はいまい。あの地はルーラー達に負けせておけば良い。我も、手芸店の邪魔をされるのは懲り懲りなのでな」

 

「僕もだよ、それにさ僕だって英雄なんだよ!ねぇ、ヒポグリフ?」

 

「クァ!」

 

元気に笑うアストルフォとヒポグリフ、ジークフリートには生前そんな友人達が居ただろうか。

居たとしても、最後には消えた。

こうして、今尚対等で居られるのは英雄達だけなのだと。

 

「行くよ、ジークフリート」

 

「あぁ、アストルフォ、ヴラド」

 

「行くぞ英雄達よ」

 

夜の闇、普段は何気ない日常のはずたが今は違った。斬撃音が所構わず響き渡り、数多の死体が街中に転がっている。

ホムンクルスだけでなく、ゾンビまでもが。

ここはすでに地獄とかしていた。

 

「貴様…何を呼び出した!」

 

「へへ……アンタを倒すためだよ、過去の遺物さん!!!」

 

フリードと呼ばれた神父は既に息も絶え絶えだ。

 

「おっさんもいる、アレもいる。いくらアンタら英雄が居ても………この街も世界も終わりだ」

 

「く」

 

それは閃光だった。フリードは剣から激しい閃光を放つとその場から消えた。

 

「……急がなければ」

 

それは、物語の架橋へと入っていた。

ジークフリート達は現れるホムンクルスとゾンビ達を倒しながら確かに進んでいる。

 

「裏切り者が!」

 

「まずい!ジャック!逃げて!!」

 

「駄目!お母さん!!」

 

それは必然である、レイナーレは上級並の力を持ってはいるが英雄達だけでなくオカ研のメンバーと共に何度も堕天使陣営や化物達と戦闘していた。だから、中級堕天使の攻撃すら、避けることは出来なかった。

 

「お母さん!!お母さん!!!」

 

「ごめんなさい……ジャック」

 

そして、レイナーレはジャックという英霊をまるで自分の子供のように可愛がっていた。

出会って数日でありながらレイナーレはジャックに母親を求められ、母親を行っていた。

だからこそを、ジャックを押しのけ光槍をその身体に受けたのだ。

 

「レイナーレ、無事か」

 

「…ジークフリート、ちょっとね!苦しいかしら」

 

完全な不意打ちだった、胴体から大量の血が溢れ、止まらない。

 

「……赦さない……許さない…」

 

その時、ジャックの周りから霧が生まれる。

 

「何だ……何が」

 

「お母さんを傷付けた……お前なんか………死んじゃえ」

 

その堕天使は何が起きたのか理解できなかった。首だけが浮かび肉体がまるでブロックのように粉々になっていく。

 

「嫌だ…嫌だ!!!」

 

そして、残った頭さえブロック肉のように崩れ落ちた。

 

「お兄ちゃん、渡した殺すね。お母さんを傷付けた彼奴を」

 

「まて、ジャック。そばに…そばに居てやってくれ」

 

息も絶え絶えのレイナーレは静かにジャックを見つめる。それは演技等ではない、母親の自愛の目だ。

 

「…お母さん」

 

「ジャック……私の…………娘」

 

レイナーレはジャックの頭を静かに撫でる。

 

「お母さん、」

 

「眠りましょ、何時ものように」

 

「うん、お母さん」

 

レイナーレは壁によりかかるように座り込むと、隣にジャックが座る。

 

「私は大丈夫、ジークフリート。他の子たちをお願い……」

 

「わかった」

_____________

 

それは圧倒的であった。

コカビエルの呼び出した魔獣ケルベロス、そして配下たち。無限に現れるゾンビに英雄達も対処ができない。

 

「はぁ!」

 

モードレッドの宝具がすべてを焼く。

 

「さすが、アーサー王の息子だ。くくっ…クハハハ実に良いぞ、人間!!」

 

「ちぃ…(せめて民草が居なけりゃ)」

 

モードレッドは常に宝具を開放できる訳でない、民草を守るために最小限で戦っているのだ。

それこそ、コカビエル程度ならモードレッドは容易く葬れる。

天使よりも恐ろしい存在と戦い続けてきたのだから。

 

「エクスカリバーが紛い物なのは実に良い事だったあの男の覚醒にも繋がった。しかし……それでも俺を殺すことはできん」

 

コカビエルは魔法陣を展開する。

 

「コカビエルテメェ!何する気だ!」

 

「ほぉ、赤龍帝なら理解できるかとも思ったが………」

 

それは濃密な魔力だった、生きるもの全てに恐怖を抱かせ見るものすべてを地獄に送ってきた存在。

 

「くくっ……目覚めたな。目覚めてしまった、こいつはなぁ……俺でも、扱えん。教えてやる、これはな、今生きている紛い物と同じ存在でありながら別な存在。世界を憎み、世界をも滅ぼせる力を持った伝説だ。くくっ………クハハハフハハハ」

 

それは二天龍すら霞む存在、生きておらず倒されたはずの存在。

 

「あり得ない、まさか………ファヴニール」

 

それはこの場でジークだから立てた。同じ存在であるからこそ、理解できる。

ジャンヌ・ダルクも、オルタも、モードレッドも、フランも、立てていない。

 

「狂ってるわ、サーヴァントとしてではなくアレは私達と同じく生きている」

 

「…ジャンヌごめん!」

 

「ジーク君!」

 

聖杯の管理者となったジークだが、その本質は善の邪竜。人であり、人でない存在。

 

「転身開始、彼方への巡礼を。我が身は『天の杯』を抱えて飛ぶ、邪竜なり……万物融解!『灼熱竜息・万地融解(アカフィローガ・アルグリーズ)』!!」

 

ジークの肉体が邪竜ファヴニールへと変貌する。

しかし、違うのはジークの変貌したファヴニールからは暖かさが伝わってくる。

 

「!!!!」

 

邪竜の咆哮が大気を震わせる。学校を囲む結界が破壊され、街にも被害が出ている。

 

「ふふっ…これで始まる、新たな戦争が。新たな戦いが!」

 

「(俺がさせない)」

 

「ジーク君!」

 

ジークは邪竜の首筋に噛み付き、肉をえぐる。しかし、お返しとばかりに腹部を爪で切り裂かれる。

 

「さて、俺は貴様等を殺すか」

 

「コカビエル……必ず倒す」

 

「ほぉ、できるのか貴様等に。英雄達の力無くし、弱者である貴様等に」

 

聖剣モドキは既に無い。だが、ゼノヴィアは静かに虚空に手を伸ばす。

 

「私は……まだ戦える」

 

それは聖剣デュランダル。

 

「え?それ、ローランのじゃん!!」

 

「まさか………貴様」

 

「そうだ……私は本来ならデュランダルの使い手。まだ扱え」

 

「あれ?呼ばれてみれば俺の剣が2つある。って、アストルフォ!ここどこ?」

 

「はぁ?!」

 

ゼノヴィアの後ろでは何故か上半身裸体の男がゼノヴィアの剣と同じものを携えている。

しかも何故かネクタイをしている。

だからこそ理解できるが、大半の思いは同じだ。

 

「なんでいるのさ、ローラン?!」

 

「いやぁ…なんかSNSしてたらここで面白そうなのしてんじやん!だからさー来てみたんだよ!そしたら伸びてたカール大…シャルルマーニュとブラダマンテと出会ってさ!」

 

「まって!本当に何でいるのさ!」

 

「アストルフォか?頼む、ローランを止めてくれ。なんか……はっちゃけてないか?本当に」

 

「まぁまぁって!カール大帝!モードレッド卿ですよ!円卓の騎士の!!」

 

「うん、わかった!もういい!兎に角だ!コイツラぶっ倒そうぜ!」

 

「あぁ!」「はい!」

 

「シャルルマーニュ十二勇士の集合だ!」

 

「12人いないけどな!」 

 

「ちぃ…手伝えよ、シャルルマーニュ十二勇士とやら」

 

「はい!モードレッド卿!!」

 

「なら、僕達も手伝います」

 

「俺もです」

 

「私もよ、でも……なんで過去の英雄ばかり来るのよ」

 

「リアス、やりましょう」

 

「頑張ります」

 

シャルルマーニュを中心にローラン、ブラダマンテ、アストルフォ、モードレッド、イッセー、リアス、悠斗、朱乃、小猫、ゼノヴィア、が並ぶ。

 

「邪竜は私と聖女サマと、ジークに任せない。その代わり、堕天使はぶっ殺しなさいよ!」

 

「うん、シャルルマーニュ!任せるよ!」

 

「あぁ、行くぞ。お前たち!」

 

「「おう!」」

 

英雄と悪魔対堕天使、その結末はまだ遠い。

 

 

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