「ジークくん!」
「ジーク!何やってる!」
二人の前で翼を千切られ、激しくもがくジーク。
だが、それでもジークはお返しとばかりにファヴニールの左翼を焼いた。
いくら邪竜でも翼を焼かれては高くに飛べない、
ジークは倒す事よりも逃さない事を選んだ。
「ぐぁ………」
術が解け、ボロボロとなったジーク。オルタは宝具でファヴニールを狙うが高度により届かない。
「私が使ってた時よりも……!」
「ジーク君!ジーク君目を!目を覚まして!」
血を失い過ぎたのか、意識すらないジーク。
「俺が倒すべき相手、よもやお前が呼び出せるとはな」
それは伝説の大英雄、邪竜を殺し財宝を手にした一人の男。
邪竜は理解している、その男こそ自分が殺すべき相手だと。
「不味い」
ジークフリートの登場と同時に邪竜は街を火の海に変えた。人々が叫び、苦しみ、泣いている。
魔術により駒王学園は無事だ…しかし、周囲は地獄とかしていた。
「くくっ…クハハハフハハハ!!やれ!邪竜、世界を滅ぼせ!」
「お前等!全員逃げろ!!!」
シャルルマーニュが叫んだ。
だからこそだ、彼らは動けた、だが高笑いをあげたコカビエルは駄目だった。
邪竜は目の前の餌に釘付けだった。
憎い相手を殺すために、丁度よい鳥がいた。
コカビエルの高笑いも無意味だ、邪竜にとって自身を手に掛けた存在、そしてそれを生み出した世界が敵なのだから。
「よせ!邪竜やめろぉぉ!!!」
巨大な牙と共にコカビエルの肉体が離れ離れになる。子供である彼等はただその惨劇を理解したくなかった。
「不味い、ルーラー。彼等を連れてここから離れてくれ。邪竜は俺がなんとかする」
「………わかりました、セイバー。皆さん、速く避難してください!」
「そんな、私達も」
話し始めたリアス達に巨大な火球が迫った。防ぐこともままならず、受けるだけかとも思えた。
「ちっ…さっさと失せるぞ、ガキ共!」
「モードレッド卿!」
「モードレッドの言うとおりだよ、邪竜はジークフリートに任せるんだ。それとも言わないとわからないのか!周りに何処かのバカが呼び出したホムンクルスとゾンビが蔓延ってる!知り合いや友人を殺したいのか!」
普段、優しそうなアストルフォが叫んだ。
これに誰もが言葉を出せない。
「シャルルマーニュ、僕とローランで数を減らす。ヴラドも戦ってたけど、数がどうしても多いんだ」
「なら、私のセイクリッドギアで」
「話してる場合か!さっさと行け!!!」
叫んだのはジークフリートだ、邪竜の攻撃をその身に受けながら跳躍し胴体を斬りつける。しかし、校庭に吹き飛ばされた。
「ジークフリート!」
「早く行け!戦いの邪魔だ!」
ジークフリートらしからぬ気迫、それを受けて英雄達は駒王学園から離れた。
「もう……手加減をする必要はない」
邪竜も感じた、目の前の存在の雰囲気が変わった事に。
「俺は……自分の存在を否定できない、お前のような存在が今再びこの世に現れているのだろう。ならば……俺の役割はお前たちを倒すことにある!」
邪竜が吼える、それて同時にジークフリートが駆け出した。
「はぁ!」
振り降ろされた爪をバルムンクで弾く、激しい火花が飛び散り当たりを燃やす。
「まだ終わらん」
邪竜自身、生前を越えた力を有しているはずだった。目の前の存在など容易く葬れるはずだった。
だが、終わらない。止まらない。
ジークフリートは既に身体の感覚が麻痺していた。
生前倒した相手だが、正直どうやって勝ったかすら記憶にない。
我武者羅に、精一杯に戦い倒した。
だが、負けられない。
辺りを見れば判るだろう、邪竜により無垢な民が死んでいる。
人々が泣いている、英雄が、ジークフリートが、それを無視できるはずがないのだ。
「ぐぁぁぁ!!!」
邪竜の尾に薙ぎ払われ、激しく吹き飛ぶ。
「ごぶっ」
大量の血を吐くが、ジークフリートをそれを拭う。見るのは一つ、目の前の、邪竜それだけだ。
邪竜を倒す事、それは一つの使命なのだから。
だから死んでも構わない……そのはずだった。
「何をしているの」
幻覚のはずだった、朦朧とする意識の中確かにその女性はジークフリートを支えている。
「…鳥を見ていた」
その女性を不安にさせたくなかった。
その女性を守りたかった、だがジークフリートは出来なかった。
「ねぇ、ジークフリート。貴方は私を愛しているの?」
「愛している」
愛しているとも、心から。
君のために生きたかった、君と過ごしたかった。
だから……
「もし、この世界に君が居るのなら……俺は今度こそ君に伝えよう」
「待っているわ……愛しい……ジークフリート」
邪竜の攻撃が熾烈になる、だが、それでもジークフリートは止まらない。
止まれない、止まれば死ぬ。約束も守れず、無意味になる。
「俺は………生きる。クリーム……ヒルトォォォォ」
駆け出すジークフリート、邪竜は好機とばかりにブレスを放つがジークフリートはその中を走り切る。
肉体が爛れようが、死ぬわけには行かない。
確かな意志が、ジークフリートの魂を、肉体を突き動かす。
「邪悪なる竜は失墜する、全てが果つる光と影に
世界は今落陽に至る、撃ち落とす!」
飛び上がるジークフリート、邪竜の顔までその肉体を駆け上ると彼の宝具を振り下ろした。
『幻想大剣・天魔失墜』バルムンク
邪竜の肉体が滅び、その血が再び降り注ぐ。
だが、彼がソレを呪われた肉体と思うことはない。ジークフリートは迷わない。
「……クリームヒルト、君がいる。それだけで……俺は今。戦えた」
ジークフリートはバルムンクを地面に突き立てると、その場に力尽きたかのごとく座り込んだ。