現代に召喚されたのにマスターがいない   作:影後

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短編です。


すまないさん、であう

グレモリー眷属には二人の騎士がいる。

実力もさることながら、彼等には最高の師がついているのだ。

 

「それがデュランダルか……俺のバルムンクとは違うらしい」

 

「はい……ジークフリート様」

 

今回、普段ローランと命懸けの模擬戦をしているゼノビアはジークフリートとの模擬戦を望んだ。

木場ばかりに目をかけるジークフリートに自身もいると言いたいのだ。本当ならばモードレッドという彼女が尊敬してやまない円卓の騎士が居るのだが……

 

「あ?わりぃな、ランスロモドキに会いたくねぇし……今俺なりに考えてる事あるんだよ」

 

と普段とは違う静かな声で拒否を伝えられた。

悲しいというよりも、不安だ。モードレッドの顔は何処か悲しみがあった。

 

「…ゆくぞ」

 

「はい…ジークフリート様」

 

ジークフリートの戦い方はゼノビアと同じ長剣を用いたものであるが、ソレでも違いはある。

 

「脇が甘いぞ」

 

「くっ…」

 

ゼノビアが振るうデュランダルは簡単に弾かれ、喉元にはバルムンクが突きつけられている。

ジークフリートはこれでも手加減しているのだ。

バルムンクを左腕だけで振るっている。

彼の利き腕は右である上に、腕一つで戦う騎士など普通は居ない。だが、ジークフリートにそれだけのハンデを受けてもゼノビアは勝てないのだ。

 

「……」

 

「……ゼノビア、ユウトは流れを掴めている。数ある打ち合いで剣の流れを感覚で理解しようとしている。お前も近いうちにできるようになる。……すまない、もっといい言葉があったかもしれない」

 

アドバイスなのだろう、ジークフリートは謝罪しながら武器を構える。

 

「やはり、まだまだだな」

 

「くっ!」

 

何度やっても結末は同じだった。

ジークフリートに一撃も与えられず、傷ばかり増えていく。

 

「時間だ、すまないが………」

 

「少し待ってくれないかな」

 

ジークフリートが立ち去ろうとすると濃密な龍の気配が広がる。邪龍よりも遥かに弱い、が、確かに龍だ。だが…ジークフリートの前にはオカルト研究部のメンバーと同い年にしか見えない少年がいるだけだ。

 

「……何のようだ、龍よ」

 

「……邪龍ファフニールを倒した英雄。まさか………生きていたとはな」

 

少年は白い翼を出現させるとジークフリートに迫った。だが…無情にもジークフリートに両翼は斬り落とされ、墜落する。

 

「……龍よ、それぐらいにしておけ。すまない、これから俺には仕事が」

 

ジークフリートが立ち去ろうとすれば今度は高速の拳が迫る。しかし、ジークフリートは避けることもせずその肉体で受ける。

 

「……すまない、何かしたか」

 

「………俺は無力だ」

 

《ヴァーリ、気にするな。この男を殺せるのは全盛期の私でも不可能だ》

 

「………すまない、俺の知り合いだったのか?」

 

「いや…俺が一方的に知っているだけだ。ジークフリート、俺が関わる相手は兵藤一誠、赤龍帝だな」

 

ジークフリートは目の前の少年に邪気が無いのは直ぐに理解できた。

 

「……丁度いい、一緒に来てくれ」

 

「わかった」

 

「………私は何を見せられたのだ」

 

 

 

 

ジークフリートは商店街を歩いていた。

老人を助け、交通事故から子供を助け、何故か起きる目の前の銀行強盗犯を逮捕し、火災から取り残された人々を助ける。

 

「………ジークフリート、お前はこんな日常を送っているのか?!」

 

流石のヴァーリも何も言えない、目の前の男。

ジークフリートはそれらを顔色一つ変えずに行うのだ。

 

「………手の届く範囲の命を助けたい。これでも、昔とは違う。俺は、かつて家族すら蔑ろにし、ただ正義の味方。人々の願望器として生きていた。殺してくれと言われれば殺し、戦えと言われれば戦った。最後はあのように死んだが……満足していた。勝手にな」

 

「………自己満足なのか」

 

「そうなる、俺は英雄たらんとしたが……それは自分の自己満足でしかなかった。だから、彼女の気持ちすら理解できなかったのだろうな」

 

ヴァーリには自身よりも遥かに強い英雄が小さく見えた。

 

「ここだ」

 

ジークフリートが連れてきたのは墓地だった。

 

「ここには邪龍によって死んでいった者達が眠っている」

 

ヴァーリは献花しに来たのか?と思ったが花を買った様子もない。理由はすぐにわかった。

 

「ルーラー、頼む」

 

それは聖女と言っても過言ではない雰囲気を醸し出す女性だった。

 

「えぇ、ジークフリート。すみません、この様な」

 

「いや…良い、俺の罪でもある」

 

ルーラーと呼ばれた女性がヴァーリの前で結界を展開するとドス黒い瘴気があたりを包む。

 

「何故……俺が死なねば」

 

「嫌だ……死にたくない…」

 

「パパ……ママ……」

 

怨念だった。ヴァーリですら吐き気を覚える怨念達が具現化し、魔物とかしていく。

 

「手伝ってもらうぞ」

 

「これが…………」

 

「そうだ、この怨念は何時か溢れ出す。小さい内に倒さねばこの街の新たな厄災となる」

 

「はい、せめて主の下に」

 

ジークフリートはバルムンクを。

ルーラーと呼ばれた女性は旗を構える。

 

《ヴァーリ、やるしかないぞ》

 

「……」

 

だが…ヴァーリには一人の女性の怨霊が映る。

 

「何処……ねぇ…私の……私の子供が……」

 

我が子を探す姿に母親を思い出すヴァーリ。

 

「……安らかに」

苦しませず、その怨霊をヴァーリは一撃で祓った。

 

《ヴァーリ》

 

「……すまない。俺にはこれしか無い

 

邪悪なる竜は失墜する、全てが果つる光と影に

 

世界は今落陽に至る、撃ち落とす!

 

―『幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!』」

 

閃光が怨霊達を飲み込む、後に残るものはない。

 

「主の御業をここに

 

我が旗よ、我が同胞を守りたまえ! 

 

『我が神はここにありて

(リュミノジテ・エテルネッル)!』」

 

聖なる結界が当たりを包む。普段なら毒だと理解するヴァーリすら、それは祝福を与えた。

怨霊達はその光の中で静かに消えていった。

 

「これが……英雄なのか」

 

それは自分の知る限り不可能な事、世界の実力者ですら勝てるか判らない者達。

過去の英雄、その真なる者達なのだ。

 

「……俺は倒せなかった」

 

ヴァーリは呑まれていた、自分の過去に。

 

《気にするな、お前が過去最強の白龍皇である事に変わりない》

 

「アルビオン、ソレでも俺は倒せなかった」

 

ヴァーリは祈りを捧げる聖女と龍殺しを静かに見つめるしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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