現代に召喚されたのにマスターがいない   作:影後

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シグルドは駒王学園をじっと見つめていた。
恩人の姿をみたい、だが敵対していた手前入ることは出来ない。

「………」

もどかしい、そう感じるが自分は何もできないのだ。



シグルドの始まり

「……なぁ、先生。気づいてるか」

 

「……素直じゃありませんね」

 

「アレ、アキレウスさんと、ケイローン先生は」

 

「嬢ちゃん、アレ見てみ」

 

隠れるように、だがじっと自分のいるクラスを見つめるシグルド。

茜はクスリと笑うとアキレウスに言葉を紡ぐ。

 

「アキレウスさん、シグルドさんも捕まえてきてください」

 

「任せな」

 

そう、アキレウスは呟くと誰に見られる事もなく、外に居たシグルドを捕まえる。

そして、シグルドの首を掴みながら教室に戻ってきた。

 

「……やってくれたな」

 

シグルドは怒りの目をアキレウスとケイローンに向けるが、微笑むだけの二人。

そして、もう一つの問題を見る。

茜、自身の恩人よりも見たくもない赤髪の少年が目に映る。

 

(ちぃ……あの、面倒な悪魔君がいやがる。まさか、同じクラスだったとはな)

 

個人的な復讐心で殺したくなるが、シグルドは狂う演技はもう止めた。

今は一人のデビルハンター、

〘シグルド・フリードセル〙なのだから。

 

粘土細工とかいう授業に関係ない工作を見せられ、シグルドとしては今すぐこの学校から転校させるべきかと感じる。

だが、そんな事を言えるほど親をしておらず、友人と楽しそうに話す茜になんとも言えない表情を向ける。

授業参観は異常なく終わり、帰ろうとした矢先。

シグルドは強烈な悪魔の匂いを感じた。

 

「……アキレウス、ケイローン先生、茜を頼む」

 

シグルドは十字架が刻印された自身の45口径であるM1911と聖銀のコンバットナイフを何時でも抜ける体勢にしながら動く。

シグルド自身、隠密もできるのだ。

今の彼は教会の戦士として生きていたい以上の力がある。

綾が攫われてから、シグルドはアキレウスとケイローンに学んだ。

そして、容赦を失い、アサシンとしての力も開花させた。

だが、サプレッサーもなく、民間人が多くいる中で何かするつもりはない。

 

「アレは……ルシファー?それに………レヴィアタンだと?何故、奴等が」

 

シグルドは屋上から偵察していた。

妹分の為でもある、ここで戦闘を始めるのなら勝てなくとも致命傷は与えてやるつもりだった。

 

「何をしているのですか」

 

ソレは殺気、シグルドは顔を見られる訳には行かない。屋上の柵を飛び越えると身体能力を活かし人混みに紛れる。

 

「……おい、シグルド」

 

「アキレウス、ケイローン先生、帰ろう。目をつけられた」

 

「ソレは不味いですね、アキレウス」

 

「わかってるよ」

 

「シグルドさん?」

 

アキレウスの馬車で逃げおおせたのは良いが、嫌な予感がする。

 

「悪い、一度セーフハウスにおろしてくれ」

 

4人はシグルドの持つセーフハウスに入る。そこには大量の銃器が所狭しと飾ってある。

 

「あんたらサーヴァントには効かないが、悪魔共には使えるのはわかってるんでな。頭ぶち抜けば問題ない」

 

シグルドはそう行って装備を整えると自身の辿った道筋を引き返す。

 

(贖罪か……だが……悪魔如きに殺される俺じゃない)

 

「……武器を整えて現れるとは、何者です」

 

「デビルハンター」

 

「……ほぉ、しかし賞金首だけでは?」

 

「そもそも、朝っぱらから魔王が護衛引き連れて来るなんてあり得ねぇんだよ。何考えてやがる」

 

シグルドは白銀のスライドを持ち、十字架が刻まれた拳銃。

オーダーメイドで作らせた〘マリア〙を向ける。

 

「………死にたいのですか?」

 

「………きかせろ、人間に手を出すのか?貴様等は」

 

それはシグルドが放つ言葉、

 

「危害は加えません」

 

シグルドはその目に嘘偽りが無いことを確認する。

 

「……俺を追うな。追えば、貴様の義妹を殺す」

 

「……心しましょう」

 

シグルドは足元に閃光を起こすとその場から煙のように消えた。

 

「デビルハンター、実力は一流。何者ですか」

 

女の悪魔は虚空にそう呟いた。魔力の残滓すら残さず気配すら隠し消えた存在、悪魔を狩る者を自称する存在に警戒をただひたすらに。

そして、魔法陣で消えたのだ。

 

「……(ふぅ)」

 

シグルドは人混みから家に帰っていた。

嫌な予感というか、面倒事が起こるのがほぼ確定した様なものだからだ。

 

「シグルドさん!」

 

「先生、アキレウス、俺はこれから駒王学園を監視しようと思う。面倒事が起こるぞ、茜は頼む」

 

「死ぬ気ですか」

 

「先生、死ぬかよ。妹分と義娘死なせるか!俺はな、」

 

墜ちたりはしない、シグルドはそう決めた。

神も、天使も、堕天使も、悪魔も、何も関係ない。彼はフリードじゃない、シグルドなのだ。

それから、シグルドが家に戻ることは無かった。

拠点を転々しながら逸れ悪魔や逸れ堕天使を殺し、報酬を得て駒王学園を監視する。

 

「……魔王、何を考えている」

 

「ねぇ、お兄ちゃんは誰?」

 

シグルドは背後にいる何かに銃を向ける。

だが、居るのは小さい子供だ。

 

「迷子か?大丈夫……かい?」

 

「ううん、お兄ちゃんは誰?」

 

「俺はシグルド、ただの人間だよ」

 

「シグルド!私はね、ジャック!」

 

シグルドはジャックと少女に似つかわしくない名前の少女にジュースを買ってやった。

 

「ありがとう」

 

「俺にも君ぐらいの妹が……娘が居るんだ」

 

シグルドは25の独身であるが、それで家族がいるのだ。妻も欲しいが、たった一人に愛を捧げたいという気持ちの方が強い。

 

「シグルドね、ジークとジークフリートに似てる!気配とか、何かしてるの」

 

シグルドは理解した、目の前の存在が英霊だと。

アキレウス、ケイローン、アタランテの3人が定期的に会っている者達だ。

自分ではけして倒せない高位の存在なのだが、こうして話していると何ら人と変わらない。

 

「食べるか?」

 

「うん!」

 

クッキーを与えて、頬張る様をみる。

 

「シグルドは何してるの」 

 

「悪魔を見ていた、魔王達が何かを企んでるからな」

 

「悪魔嫌いなの?」

 

「どうだろうな、好きか嫌いかなら……嫌いだ。でも、俺は家族を守るためなら天使も、悪魔も、堕天使も、全てを滅ぼす覚悟がある」

 

「シグルド、大変だね」

 

「そうだな」

 

シグルドはのどかだと感じながら、クッキーを頬張る少女の隣に座る。

 

「ねぇ、シグルドはお母さんの敵なの?」

 

「さぁな、俺の敵は家族を襲う奴等だ。お前もだろ?もし、お前のお母さんが襲われたら」

 

「襲った奴を殺すよ」

 

「だろう?俺もだよ」

 

シグルドはそう言うと歩いてくる気配を感じ、離れる準備をする。

 

「シグルド、行くの?」

 

「あぁ、そうだ。お前の名前は?」

 

「もう、ジャックだよ!一回言ったじゃん!」

 

「冗談だよ、……しかし、なんだよ、ジャックよりジェーンとかの方が良いぜ?」

 

「ジャック!」

 

「じゃあな、ジャック」

 

シグルドは暗殺者の如く、その場から消えた。

ジャックはまるで友人を得たかのように笑っている。

 

「ジャック?どうしたの、そのお菓子」

 

「シグルドに貰った!」

 

「ジークフリートのこと?」

 

「違うよ、シグルドだよ!」

 

「そう、帰りましょう。お家に」

 

「うん!」

 

ジャックは母親に手を引かれ、家族の居る屋敷へとお菓子を食べながら帰って行ったのだった。

 

 

シグルド自身も家に帰る。と言っても、セーフハウスである。

武器を片付け、闇ギルドもとい、バウンティ・ハンターギルドに入るのだ。

ここは数多の賞金組の情報が乗っており、消せば報酬が各勢力から入り、殺せば殺すほど組織も、殺した奴も儲かるシステムだ。

 

「よぉ、シグルド」

 

「ったく、マスター。何かあるか?」

 

マスター、ギルドマスターはシグルドにウォッカを渡しながら話す。

 

「近いうちに学園で三大勢力の平和協定を行うらしい、ソレを禍の団とかいう奴等が襲撃だとよ。……俺等のメンバーめ総動員だ。稼げよ?殺して、殺して殺し尽くせ、そうすれば報酬はガッポガッポだ」

 

「けっ…アンタは旨い酒が飲めそうだな」

 

「……死ぬなよ、お前は家の稼ぎ頭だ。シグルド」

 

「死なねぇよ、家の娘共を大学に生かせるんだ。死物狂いで稼いでやる」

 

「………フッ、代金は要らん。だが……」

 

「安心しろ、天使も悪魔も堕天使も、全部眉間をぶち抜くだけだ」

 

シグルドは十字架が刻印されたリボルバーを静かに構えた。

 

 

 

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