「ウム……」
ヴラド三世否、ヴラド・ツェペシュは自身が日本で蘇った時のは、時間的にいえば3年前となる。しかし、彼には不思議と違和感を感じなかった。
王という責務もなく、聖杯もない。ならばとヴラド三世いやヴラドは1個人として生活することにしたのだ。何故か身分証と家を所持し、生前にも等しい程の資産を有していた。
「できたか」
趣味である刺繍から発展させた物を手始めにフリーマーケットを開き売ってみると、ヴラドの商品は主に女性に飛ぶように売れたのだ。
そのままヴラドは刺繍、手芸教室を開き小さな刺繍・手芸用品及び作品の販売店であるドラクレシュティ販売店を開いたのだ。
「あっ、ヴラド先生!」
「先生!」
ドラクレシュティには子供からおば様まで幅広い女性客が訪れる。だが、女性だけでないファンシーな刺繍、手芸品だけでなく男性受けするような品も沢山あるのだ。
「うむ、しかし…この安らぎもこれまでか」
それはヴラドガヴラド三世であった頃から感じる戦いの気配。今、自身を蝕み、自身ら人ならざる物へと既に変わり…それでも生きている。
「懐かしい魔力だな、セイバーいやジークフリートよ」
「お前に真名は教えていなかったと思ったが……ランサーよ」
ヴラドは微笑むと口を開く。
「して、竜殺しの英雄よ。余に、何ようか」
「ランサーいや、あえてヴラドと呼ぼう。俺に、俺達に力を貸して貰いたい」
「良いだろう」
それはヴラドがジークフリートという男を知っているから出た言葉だった。ホムンクルスを助けるためにオノが心臓を差し出した。
彼はそんな英雄を死なせてしまったのだと蘇り感じたのだ。同士として戦い、いつかは殺し合う定めだとしてもあの時、と。
「時は来た」
それは怪物等では無かった。
月光に照らされながらも、それはヴラドという個人を指し示す、犬歯が生えつつも肉体は変わらい。自身の宝具、鮮血の伝承(レジェンド・オブ・ドラキュリア)を受け入れたドラキュラ伯爵ではないドラクル。小竜公としての新たなる彼だった。
「あっ!おじさんも来たんだ!」
「おじさんはよせ、余はヴラド。ただのヴラドだ」
「なら、ヴラドおじ様だね!」
「ふっ…悪くはない」
「アストルフォ、ヴラド、すまない」
「ジークフリート、コレは僕達の……友人を助けるためだよ」
「友よ、お前達と此度こそ最後まで共に戦おう。ドラクルの異名に誓い!」
月下に照らされた古い教会は怪しく輝く。
「……来たか」
それは人間だった。落ちたエクソシスト達、その目は曇り、自身の信仰すら地に落とした。
「死ね!吸血鬼よ!」
それは教会の聖水により清められし武具であった。そのエクソシストは歴戦の勇士なのだろう、しかしブラドはそれを容易く弾く。
「はぁ!」
吸血鬼を受け入れた事で、より強靭となった肉体から突き出される槍は歴戦の勇士の首をその矛先へと奪い取る。あたりに鮮血が舞うが、ヴラドは気にする事をせず再び槍を構えた。
「我が名はヴラド、ヴラド・ツェペシュ。ワラキアの王なり」
その姿は王であり、夜の王〘ドラキュラ〙だった。
「討ち取れぇ!!あれは…あれは吸血鬼ドラキュラだ!」
「吸血鬼の祖に近しい存在だ!確実に仕留めよ!」
それはブラム・ストーカーによる脚色からも物である。しかし、それを受入れ新たな存在になったと言っても嬉しい事はない、怒りだけがヴラドを支配していく。
「…行け、ジークフリート、アストルフォ。おのが友を救うために」
だが…友の前ではその顔は決して見せない。二人が消えたのを確認すると自身を囲む20人ほどのエクソシストに向けて言い放つ。
「懲罰の時だ!慈悲と憤怒は灼熱の杭となって、貴様たちを刺し貫く!そしてこの杭の群れに限度は無く、真実無限であると絶望し――己の血で喉を潤すが良い!」
―――極刑王(カズィクル・ベイ)
その時、空間が闇に沈む。
まるで己の領地と言うように闇が広がる。
そして、エクソシスト達の心臓に向けて地面から杭が生えたのだ。
それは串刺し公の名の通りだった。
地面を杭を伝って流れた赤い血が染める。
既に生きるものはいない、記憶に残ることもない。それは、無意味な死であった。
「フッ…余が一兵となり槍を振るうか。何時ぶりだろうな」
ヴラドは死体達を一瞥すると静かにジークフリート、アストルフォの二人を追った。
「ジークフリート、時間が惜しい!頼むよ!」
「アーシアの魔力は地下か…なれば!」
バルムンクを地面に突き立てるとゴロゴロと足場が崩れていく。そして、崩落した先に空間があった。
ジークフリートとアストルフォが突入をしたときには既に終わっていたと言うのが正しいだろう。
アーシア・アルジェントの肉体は倒れ、その命の息吹は既にない。
「…アーシア」
アストルフォは横たわるシスターを静かに抱き寄せる。そして、その場にいる堕天使と悪魔を睨んだ。
「君達が……僕の友達を殺したのか」
アストルフォから彼らしからぬ怒りが滲み出る。
「えぇ、そうよ。神器のない人間等に用は」
「ごめん、ジークフリート。もう、終わらせるよ。アーシアを……眠らせたい」
アストルフォは目から涙を流している。
それは決意の表れだ。
「わかった、少年ゆくぞ」
「待てよ!何をって!」
ジークフリートは少年とアーシアの遺体を背負うと教会から脱出する。
「待てよ!アストルフォは」
「……少年、見ていろ。アレが……アストルフォの本気だ」
堕天使レイナーレが飛ぶ、そしてアストルフォが叫んだ。
「ヒポグリフ!!君の真の力を見せてみろ!
『この世ならざる幻馬(ヒポグリフ)』!!」
それは幻獣、ヒポグリフの真の姿である。
アストルフォを乗せ、普段の優しい雰囲気はなく。狩人としての真の姿。
アストルフォはヒポグリフに跨るとレイナーレと空中戦を開始する。
「くっ!ただの人間じゃない…あり得ない、ただの人間が幻獣を従えるなど!」
レイナーレが光の槍を放つがヒポグリフは容易く避ける。
「ヒポグリフ、倒すよ。僕達の友達の為にも」
「グァァァ」
唸り声、だがヒポグリフも同じだった。短い時間だが自身をヒポちゃんと呼んでくれた友達、ソレが殺されたのだ。主と同じ、許せない。
「行くよ!ヒポグリフ!!!」
現れては消えるを繰り返すヒポグリフ、それがレイナーレの光の槍を掻い潜り迫る。
「来るな!来るなぁァァァ!!!!」
レイナーレに突撃したヒポグリフ、翼をもぎ取り堕天使の証すら奪うだが……死んでは居なかった。
「アーシア、ごめん」
殺すだけなら簡単だ、だがアストルフォはレイナーレに贖罪を与えることを選んだ。
「……終わったのか」
「うん、堕天使も捕まえたよ。翼もないし、逃げられはしないよ」
アストルフォは側に寝かされたアーシアの遺体を静かに見る。
「どうか、安らぎを」
「……なぁ、二人はアーシアの知り合いなのか」
「そうだ、俺の名はジークフリート」
「僕はアストルフォだよ」
「……ジークフリート、アストルフォ、ごめん。俺が…間に合わなかったから」
少年いや兵藤一誠は横たわるアーシアに涙を流す。
「……いや、俺たちだ。もっと早く駆け付けていれば、あの時、アーシアを護れていれば」
「あら、悲しそうな顔をしているわね」
「なんだと」
普段、怒らないジークフリートはその一言に怒気を含ませ返した。
「友が死んだのだ、泣かない人間はいない」
「助けられるわ、私ならね。ただし、人間ではなく悪魔としてだけれど。レイナーレは生きてるのね、っと神器をアーシアに戻して……」
赤髪の悪魔、リアス・グレモリーはアーシアにチェスの僧侶、ビショップを触れさせるとそれはアーシアの肉体に溶けて消えた。
「んっ……私は」
「アーシ」
「アーシア!!!良かった!良かった!!良かったよ!!!悪魔だけど!アーシアが生き返った!!」
兵藤一誠よりも先にアーシアにアストルフォが飛び付いた。
「ふむ、外で見ていたが深い関係か?」
「ヴラド…そうだな、彼女は俺とアストルフォと共に旅をした仲だ」
「アストルフォ、良かったな」
「うん、」
「さて、後は」
リアス・グレモリーが気絶しているレイナーレに魔力を向ける。
「……やめてください」
「アーシアさん?理解しているの、その堕天使は」
「……判っています。でも、レイナーレ様は私を助けてくれたんです」
「うっ……ここは!リアス・グレモリー?!それに」
「動くな堕天使よ、今お前の命はアーシアが握っている」
ジークフリートは静かにレイナーレの近くによると囁く。
「私を救ってくれたのは打算だったかもしれません。でも、レイナーレ様は孤独になった私に姉のように接してくれました!私は……そんなレイナーレ様を殺したくなど」
「……何なのよ、この茶番」
しかし、それはレイナーレ本人によって遮られる。
「はん、姉?巫山戯んじゃ無いわ。私がアンタを利用したの、私の使える駒としてね!殺るならさっさと殺しなさいよ、リアス・グレモリー。それとも、兵藤一誠かしら?私に殺された復讐でもなんでもなさいよりそれとも肉体かしら?なら、死んだあとで楽しみなさい、興味ないもの」
堕天使だが、その言葉には感情が乗っていた。
「止めなよ、悪役向いてないよ。君」
「何が」
「殺せ殺せって言う割に震えてるよ、左手」
レイナーレはハッとなり自身の左手を見た。
それは確かに震えている、だがと
「ねぇ、なんでアーシアの身体を遺したの?傷一つつけないでさ。儀式なら直ぐに終わらせれば良かったじゃない、それにあの棺アーシアの為だよね。聖書もつけてあった、まるで埋葬するみたいに」
「何が」
「僕は思うんだ、君は自分の目的とアーシアの命を天秤にかけて、目的を取った。でも、アーシアを蔑ろにはしていない。最後まで君が埋葬するつもりだったんだろ?」
「違う、何を根拠に」
「ならば、今この場で少女を穿こう」
ヴラド三世は狂気的な笑を泛べながらアーシアを