数日後
宿場町ホルアドで一泊し、早朝には高速馬車に乗って一行は王国へと戻った。とても、迷宮内で実戦訓練を続行できる雰囲気ではなかったし、勇者の同胞が死んだ以上、国王にも教会にも報告は必要だった
だが教会の者や一部貴族は亡くなったハジメや光輝を魔人族と戦わずに散った弱者と罵った
強力な力を持った勇者一行が迷宮で死ぬこと等あってはならないこと。迷宮から生還できない者が魔人族に勝てるのかと不安が広がっては困るのだ。神の使徒たる勇者一行は無敵でなければならないのだから
もちろん、公の場で発言したのではなく、物陰でこそこそと貴族同士の世間話という感じではあるが。やれ死んだのが無能でよかっただの、神の使徒でありながら役立たずなど死んで当然だの、それはもう好き放題に貶していた
これにはクラスメイトの大多数が怒っていた
自分達が生きているのも、あのベヒモスを抑えて弱らせてくれたのも、その無能と罵ったクラスメイトだったからだ
特に浩介や幸利は怒りのあまり飛びかかりかけたが、勇輝が激しく抗議したことで国王や教会も悪い印象を持たれてはマズイと判断し、ハジメや光輝を罵った人物達の処分を受けたようだが逆に、勇輝は無能にも心を砕く優しい勇者であると噂が広まり、結局、勇輝の株が上がっただけで、ハジメと光輝は勇者の手を煩わせただけの無能であるという評価は覆らなかった
その一方であの時の無数の魔法が嵐の如く吹き荒れており、それが万一自分の魔法だったらと思うと、どうしても話題に出せなかった
それは、自分が人殺しであることを示してしまうから
けどこれは仕方がないことかもしれない
自覚してやるならともかく無我夢中で自分か誰がやったかもわからないあの状況では自分か他人がやったと疑心暗鬼になっても無理はない
実践訓練後のクラスはハジメや光輝を罵った教会や貴族達の為に戦いたくない派と一度死にかけた事でもう戦いたくない派、それでも世界を救おう為に前へ進もうとする勇輝についていく派に別れた
また、今回大迷宮で自分たちが死にかけた原因を作った檜山に対してクラス中が責め立て、それを土下座で謝った檜山
その檜山の謝罪を受け取らず攻めていたクラス中を鎮めたのは他でもない勇輝だった
檜山はこうなることを予想していたので、ひたすら謝罪するに徹した。こういう時、反論することが下策以外のなにものでもないと知っていたからであり、檜山の狙いは勇輝の目の前での土下座することだった
勇輝なら確実に謝罪する自分を許しクラスメイトを執り成してくれると予想していたのである。 その予想は功を奏し、勇輝の許しの言葉で檜山に対する批難は収まった。涙ながらに謝罪する檜山を特段責めるようなことはしなかった。檜山の計算通りである
が、これに対し大きく反対する者が居た
浩介「ふざけるな!俺達が危険な目に合う原因を作りつつ、あいつらが落ちるきっかけを作っておいてお咎めなしだ!?」
幸利「それじゃあ奈落に落ちて行ったアイツらの無念はどうなる!!」
ハジメと仲の良かった浩介と幸利が声を荒げていった
クラスメイト達は普段ここまで声を荒げて怒りを見せたことなかったふたりに動揺していた
勇輝「ま、まってくれ遠藤、清水!確かに檜山のやったことでクラスが危険な目にあった!けどそれを今更責めた所で南雲は帰って来ない!だったら彼の想いを受け取ってこのまま前へ進むべきだ!」
その言葉にクラスの一度は驚愕した
当然このふたりも
浩介「言いやがったな!?てめぇ自分の弟が生存していることを疑わないくせにハジメの事は諦めてやがるな!!」
幸利「大方ハジメのことを内心勇者である自分よりも下って認識してたんだろうな…それ以前にお前は地球に居たときからアイツ事気に食わなかったみたいだしな…」
勇輝「なっ!?何を言っている!?そんなことあるわけないだろ!!」
幸利「どうだか、特にそこのクズは地球に居たときからハジメを目障りに思っていたからな……実はあのときの魔法弾撃ったのはお前なんじゃないか?」
檜山「ふ、ふざけるな!!そんなわけあるか!!」
これには檜山が声を荒げ幸利に掴みかかった
が、それを幸利は
幸利「!」
檜山「ぐふぁ!」
思いっきり殴り飛ばした
勇輝「ひ、檜山!!清水!お前なんのつもりだ!!」
幸利「なんのつもりも何も、誰もこいつを罰しないから俺が罰してやろうとしただけだ」
浩介「ああ、なんだったら俺も罰してやろうか?」
そう言うふたりの目はギラついており本気でいつでも目の前の檜山を仕留めそうとしていることが伺える
勇輝「や、やめるんだふたりとも!!どうした!地球に居た時はこんなふうに暴力を振るやつじゃなかったはずじゃないか!」
浩介/幸利「「俺達のダチとクラスメイトが落ちる原因を作った奴に、怒らないわけねえだろ!!」」
クラス中「「「「!!」」」」
そうして一触即発に成りかけたそこへ
恵里「ふたりとも止めて!」
同じくクラスメイトでメガネを掛けたナチュラルボブであり降霊術師を天職にしている美少女、
浩介「離してくれ恵里!俺達はこいつらが許せねえ!」
幸利「ああ!皆を守るとか言いながら守らねえ自称勇者にも!親友が落ちる原因作ったあのクズのことも許せない!!」
恵里「だから落ち着いて!ふたりの気持ちは良くわかるよ!でもここで怒ったってふたりの立場を悪くするだけ!今は怒りを抑えて!」
浩介「だが」
恵里「……怒りたいのは僕だって一緒だよ」
浩介「!」
恵里「僕だけじゃない……あのふたりだって怒りたい気持ちを抑えてるんだよ……君たちよりも付き合いの長いあのふたりが抑えているんだよ………お願いだから…今は抑えて…」
幸利「……」
そう恵里に言われふたりは落ち着きを取り戻す
そして
浩介「……部屋に行ってる……後俺はもうここの連中のために戦わねえ」
幸利「同じく……」
そう言いふたりはその場を後にした
カズマ「それでアクア、どうなんだ?」
アクア「う〜ん…」
同時刻
クラス達が寮として使うとある一室では…アクアが魔法陣を展開しなにかを行っていた
カズマ「(あのふたりが死んだとはとてもじゃないが信じられない)」
王国へ帰還した後、心身に傷を負った者たちのメンタルケアを自ら勝手でたカズマとアクアは数日かけてクラスメイト達のメンタルをある程度回復させることに成功した
そしてやっとできた時間でアクアがかつて異世界でアークプリーストとしての能力を使いハジメと光輝の魂の行方を追っていた
もし死んでいたら魂はこの世界から居なくなっているが…生きているなら見つけられる
カズマ「(ふたつの魂を宿し、その上勇者以上の力を持ったアイツらがくたばるとは考えられねえ……頼む……生きててくれ)」
そう祈るようにアクアの隣で座る事一時間
アクア「!結果が出たわ!!」
カズマ「!それで、どうなんだアクア!!」
アクア「うん!ふたりとも
魂の融合が進んでるけど生きてるわ!!」
カズマ「!!そうかそうか………は?」