duplex personality Relite & Brite 作:如月ねこ
狭いダクトを駆け抜ける影が一つ。
Reliteは大いに焦っていた。
何せ侵入が発見されもう今も警備員が周辺一帯の封鎖を
始めているのだ。
ナビゲーターに表示されたルートを通っていく。
しかし、
《エラー。脱出経路確保不可能。通気口が全て封鎖されています》
ナビゲーターから無機質な声が鳴った。
一足遅かったようだ。出口は全て見張られている。
隠密前提の任務なので最低限の食糧しか持ってきていないし、
ここに残り続ける事はできない。
こんなことを一瞬で考えたReliteは素早く行動を起こした。
「ナビゲーター、コール、朱莉」
《— — — — — — — —どうしたの? 今潜入中じゃ……もしや》
「予想通り。見つかった。今から向かうからデパート西入り口に向かって。
合流は14:00きっかりとする。以上」
時間が惜しいのでさっさと切る。
目の前の通気口をスライディングの要領で蹴っ飛ばしそのまま外へ飛び出す。
警備兵が驚いた顔をしているが無視して「ラートリー」で峰打ちをし、
気絶させていく。「月夜葉隠」は長すぎてダクトに入れなくなるので、
今日は取り回しのいい「ラートリー」を持ってきている。
驚いて逃げようとする警備員がいないのはさすがと言ったところだろうか。
顔が見えないようにフードをかなり深めに被って、おまけに仮面をつけている
(内側からは外がよく見える)ので身バレの心配はないが身長くらいは
把握されただろう。次からは厚底の靴で身長を詐称するか。
と思っていたところでコールがかかってきた。
《そろそろ着くよ! 準備はいい?》
「いいわよ来なさい」
《は〜い》
朱莉から報告が来た。こんな状況で呑気な物だ。
警備員の攻撃をかわしながら徐々に西入り口側に寄っていく。
ある程度来たところで西入り口へ全力ダッシュする。
少し奥に警備員が六人ほど出てきたが、
「夜の剣舞」
技巧を発動させる。前に一瞬加速してからそのまま上にふわっと上がる。
誰もがその姿に驚く中、いきなり急加速したReliteは緩やかな軌道を
描き警備員に飛び込み、踊るように短剣を持った右手を動かして
警備員達を気絶させて行った。
「おーい」
いつの間にか目の前に朱莉の運転する大型車が止まっていた。
「今行くわよ」
乗り込んだ瞬間急加速して車は発進した。
「ちょっと危ないじゃない!」
「捕まっちゃうよりは良いでしょ?」
後ろからいつ通報されていたのか、警察車両が後ろから追って来ている
「あら、カーチェイスね♪」
曲がりくねった道をノンストップで曲がり、誰も見られていないところで
光学迷彩を起動する。起動に時間がかかる上、エネルギー消費も激しいし、
一歩間違えれば事故につながるこれだが、
上手く使えば唯一無二の武器になる。
目の前を通った光学迷彩で見えない朱梨の大型車に気づかない警察は
突如として消えた大型車を見つけるため周辺を捜索し始めたのだった。
———————————————
「たっだいま〜!」
「あ、お帰り。大丈夫でした?」
朱莉が大声で帰宅を告げリビングに入ると、心配そうな顔をした鴎がいた。
「あれ? 心配してくれたの?」
[珍しいね]
Reliteが疑問をぶつけてみると、
「そんな事ないです。朱莉姐が大丈夫か心配になっただけ」
素っ気ない答えを返された。
いつもの事なので気にせずスルーする。
「これの解析お願いできる?」
「良いけどこれ何ですか?」
「データにあった警備体制には無かった警備ドローンよ」
[通信機能はあるみたい。多分複数あるよ]
「よく見たらクモみたいな形してて気持ち悪いですね」
そう言ってソファーの上にドローンを放り出してしまった。
「で、解析はしてもらえるってことでいいわね? 三色だんg」「やります」
三色団子を報酬に出したら即決された。後で和菓子屋に買いに行かなければ。
鴎は早速ドローンを持って自分の部屋へ行ったようだ。凄い気合の入り用である。
「上手く言いくるめたわね」
「三色団子を引き合いに出せば誰でもできるわよ」
実際そのくらい鴎は無類の三色団子好きなのである。
大抵の事は「三色団子」で済むのだ。たとえ採算が取れようが取れまいが。
「まぁ私たちは鴎を待つのみね」
彼女達は各々の方法で寛ぎながら鴎を待つのだった。
—————————————————
鴎はやる気に満ちていた。かの無礼千万なドローンを
解析し切って、美味しい美味しい三色団子を手にしようと。
……その願いはまだまだ先になりそうだが。
「何なのよこれ……」
見た目は普通の小型警備ドローン! 中身は超難解害悪なシステムの迷路!
などという某アニメのフレーズが出てきそうになったが抑える。
このドローンの中身はファイルinファイルinファイル……の様な単純だが
害悪な構造をしているのである。システムファイルの呼び出しにはいちいち
暗号化されていて、迷路を辿っていくしかないのである。
しかもそのファイルの中にはもう通ってきたファイルや初手周辺のファイル
へのショートカットが紛れ込んでおり、堂々巡りにもなりうる物だった。
しかしこんな事三色団子をエサにされた鴎には通用しない。
できる限り最速の手段を取ってゴールのファイルに辿り着く。
鴎がキレた原因はここにあった。
そのファイルの中には実行ファイルと謎の暗号化ファイル、
そして「解読キーはここ!」という名前の文章ファイルが入っていた。
ウイルスチェックを一応入れて大丈夫だと分かるとそのファイルをダブルクリック
して開いてみる。
(何これ!?)
思わず鴎は頭を抱えてしまった。
そこには可愛らしいクマのイラストと一緒に、簡単なクロスワードが入力されていた。
一覧表の事↓
②
英語で公平な→①〇〇〇
幽霊のこと→〇〇③④〇
○
(作者:続きを見る前に解いてみよー!)
うんざりして一応システムファイル(実行ファイルではない)の権限を見ておく。
そこには
“HOST : flos_“
(これは……?)
その時晩ごはんの呼び出しがあったので、鴎は朱莉に聞こうと
それを印刷して持っていくのだった。
—————————
「今日のご飯何ー」
「グラタンだわよ」
「いいわね、でも熱いのはやめてね」
[子供じゃん]
「五月蝿い」
息をするように毒を吐くBriteを横目に鴎は朱莉に先ほどの紙を渡した。
「これ解いてくれません?」
「いいけど、何なのこれ?」
「あのドローンに入ってた文章です」
「ええ……怪し……どう見ても警備ドローンに入ってるものじゃないでしょ」
ここで朱莉の頭である一つの悪い予感が浮かんできた。
「もしかしてこれを作った人は
鴎? ちょっとあのドローン持ってきてくれない?」
「いいですよ……?」
鴎は少し疑問を持った顔で部屋に戻って行った。
少しして、ドローンを持って帰ってきた鴎からドローンを受け取り
眺めてみる。
(やっぱりそうだ)
「普通警備ドローンには捕獲用の催涙ガススプレーとかが入ってるはずじゃない、
でもこれには入ってないのよ。まるで捕まえてくれって言ってるみたいに」
いつの間にかReliteも来ていたようだ、ドローンを覗いている。
「怪しすぎでしょこれ」
「これが入っていたらしいんだけど解いてみるしかないわよね……
今は誰がこれを出したかが問題だし少しの情報も欲しいからね」
[という事で、解いてみよー! ]
久しぶりに聞いたBriteの掛け声でクロスワード解読は始まったのだった。
—————————
解読自体はあっさりと終わった、
答えは
“flos”
だった。
「これは……」
「? 何か心当たりがあるの?」
これは
「あのドローンのシステムファイルのホストの名前と一緒です」
「何か関係があるのかしら」
[とりあえずあの暗号化ファイルを開いて見たらー? ]
「そうしましょう」
暗号化ファイル復号ソフトを起動し、キーを「flos」でインタラクションしてみる。
暗号化が解かれ、隠されていた1個のファイルが出現した。タイトルは
「notitle」
「要するに題名なしって事じゃない」
「開いてみるわよ」
そのファイルをダブルクリックして開く。そこには、
======================
これを見つけた旅団員はこれを焼却処分せよ。
この情報は「散花」第二位“惜別”の名に置いて機密とし、
拒否は認められない。
— 旅団「flos」—
=====================
とあった。
「“散花”に“惜別”に“旅団flos”ねぇ、色々情報出過ぎてわからないわ」
「これ以上の情報は望めそうにないわね」
長年「情報屋」を営んできたRelite一同もこの情報は初耳だった。
「じゃあもう「情報屋の情報屋」に行くしかないわね。元々の鈴木諒の
依頼をチャチャっと終わらせてから明日向かいましょう」
「何処それ?」
訝しげに自分見つけるReliteに対し朱莉は悪戯っ子の笑みで答えた。
「なぁに、唯のオシャレな飲み屋よ」
—————————————————————
「散花」
文字通り散る花を表す造語。旅団「flos」の何かのグループの名のようだ
___________________________________
メロス感を出したかったんだ…