真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~   作:貴司崎

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G.E.H.E.N.A.侵攻作戦:開戦

「……新しい身体の調子はどうかな乃恵美君」

「まあまあ使える様にはなったわね。私の肉体のベースに使われた神造魔人のデータにあったスキルの幾つかは使用できるわ。……確か“内政型”って言われてるタイプだったかしら。その割にスキルは強力だし戦闘能力が相当高い気もするけど」

 

 その【G.E.H.E.N.A】と呼ばれる組織の拠点にて一度死んでから己の肉体を人ならざるモノに新生させた【西村乃恵美】だったが、新たな肉体を直ぐに使いこなせるとは流石に言えず拠点内の各種施設を使って調整と可動試験を繰り返していた。

 ……調整を行っているのは彼女の後任としてとりあえずG.E.H.E.N.A.のトップに座っている男性研究者であり、彼は人間の精神や魂に纏わる専門家として『どこまで肉体が変異しても人間の精神や魂を維持できるか』を研究している研究者でもあるので、人間の魂を神造魔人に写す実験の主任者でもあったのだ。

 

「ふむ、まあ『神造魔人』とは元々日本神話の中でイザナギが生み出した三貴子が“それ”だと言われているモノだからな。元が神話の中でも最高位の神格である以上は相応に強力なスキルを有する。内政型故に自衛に長けたスキルが主で“戦闘型”程の様々な戦場に対応する為の多様性は無いが」

「そんな神格の力、神造魔人の能力を振るいながらも人としての魂と意志(イマージュ)を変わらず有する存在……所謂【人造魔人】と呼ばれる代物が今の私って事だったかしら。まあ実験段階だから“もどき”とか付けるべきかもしれないけど」

「完成度的には『人造魔人もどき』が確かに妥当ではあるかな。……造られた身体に人の魂を宿した真の意味での“人造人間”、その制作は私の目標でもあったので一先ずの結果を出せて感無量ですよ」

「……ふぅん、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()貴方としては今の私が目標の一つって事かしら?」

 

 現在のG.E.H.E.N.A.トップでありその設立にも関わった組織内最古参のメンバーでもある男だったが、元は嘗ての何処かの世界で神造魔人について研究していた【ベテル】と呼ばれる組織に所属しており、そこで人の魂とそれを収める人工的な肉体の研究を専門にしていた。

 その世界が色々あって滅びた時も最後まで戦おうとしていたが、どうしようもないと判断“してしまった“時点で【エデン】へと降り『世界を救う研究』を始め、同じ目的の研究者を集めて【G.E.H.E.N.A】という勢力を作り上げたのだ。

 ……そんな来歴を持つ男だったが、研究者として神造魔人のデータを元に悪魔の分霊をマシンに投入して作り出される【ヒュージ】や人間の肉体に悪魔の力を宿す【強化人間】と言った技術を編み出しており、その一つの完成形が今の乃恵美【人造魔人】であったのである。

 

「まあそうなりますね。……最も神造魔人の基礎技術に関しては嘗て私が所属していた【ベテル】の天才技術者【新田有希】博士……()()()()()()()()()()()彼女が作り上げた“擬似人修羅”の研究がベースであり、私がやったのはその後追いと彼女が様々な世界でばら撒いた神造魔人技術のリバースエンジニアリング程度ですが」

「その魔人王の作品を転用出来たのは貴方ぐらいではあるけども。……今回はあの合一神との戦闘データがいい様に作用したわね。魔人王謹製の神造魔人由来の合一神、完成された“魔人王製人造人間”と言える存在のデータがあればこそここまで効率的に調整出来た」

「ええ全く……私と違って正真正銘の天才である彼女の作品であるが故に素晴らしいデータが取れました。……数多の世界で合一神化前提の神造魔人を多数ばら撒いた果てに現れた現状唯一の“人間主体の神造魔人複合型合一神”の成功例、テオゴニア辺りにいる並の合一神とは性能が違う」

 

 複数の世界を渡り歩いている【魔人王】は幾つかの世界では研究員として現地組織に潜り込んで神造魔人の技術を供与する様な事をしているのだが、その際に何か目的があるのか制作した“合一神へと至れる神造魔人”をばら撒く事がある。

 その技術や完成品の神造魔人をG.E.H.E.N.A.は回収・研究してデータを取っているのでヤマトと戦った際には即座にその来歴を解析したし、現在トップの男と魔人王が同郷と言う事もあって彼等が作るヒュージには幾つか魔人王製の作品との類似点なども見られたりしているのだ。

 

「しかし、神造魔人をばら撒いて合一神を生み出そうとしているのは何が目的なのかしらね。この前の彼も行動からすれば魔人王の仲間って訳でも無さそうだったから、下手をしなくても敵を作るだけのケースの方が多いと思うけど」

「おそらく我々に近い目的で神造魔人をばら撒いているのだと思いますがね。とにかく目的に対応する合一神の様なモノが生まれれば良し、その為に下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる的な。マンボウの出産みたいなものかと。……彼女がやろうとしている目的の為の複数のプランの内の一つで、その中でも優先度は高くないモノではあると思いますが」

「確かに確実性が薄い行動だものね。……でも神造魔人をばら撒いている理由はそれで間違ってはないと思うけど、その“目的”の方が気になるのよね。良くも悪くも魔人王は“嘗て”を取り戻そうと躍起になって、その為なら世界を滅ぼす事を厭わない狂人だし。私達も人の事は言えないけど」

 

 その様な理由でそれなりに【魔人王】と縁がある彼等であったので彼女個人を調べる事もままあったりする。最も敵視されても面倒なので積極的に接触を図る事はなく、むしろ可能な限り敵対する事を避ける為に直接接触は数える程で慎重に行ってはいるが。

 

「目的に関しては流石に推測の域を出ませんが、おそらくループなどを含めた今の世界の法則全てを完全に破壊してしまう事が目的でしょう。……嘗ての世界での彼女は愛する者と添い遂げんが為にほぼ独力で人造魔人の技術を創り上げる程の意志を持っていて、それを失ったが故に取り戻そうと足掻いていった成れの果てこそが魔人王ですから」

「嘗てを取り戻すのが不可能ならばってタイプの漂流者って事? そう言えば貴方だけは魔人王になった後にも直接接触していたわね。その時に何か情報でも得たのかしら。人の心を読む専門家でもある貴方が」

「その際には危うく殺されかけましたが、知己である事を利用してこっちの研究データを交換条件として支払った代わりに見逃された形ですけどね。……その時、少しだけ聞き出した所『人の魂と意志を有する本来の合一神であれば法理を超越してこの世界を縛る法則から世界そのものを解き放つ“特異点”たり得る可能性がある。……あくまで理論上だけど』と言ってましたからね。推測になりますが自分自身では出来ない事が出来る様な合一神を求めて神造魔人のばら撒きを行ってるフシがありました」

「成る程ね。……神造魔人研究を単純な戦力強化ぐらいにしか思ってない私達とはアプローチが違う? 合一神主体のテオゴニアとも違う方向性なのかしら」

 

 そうして何処までも根っからの研究者である彼等は己の目的の為に神造魔人研究にひと段落ついた後も、更なる結果を出す為に【魔人王】への考察などを含めて様々な方向からアプローチをかけて更なる研究を続行していた。

 ……それは彼等が【G.E.H.E.N.A】と呼ばれる様になってから幾度となく繰り返してきた行動(ルーチン)であり、凡ゆる成功も失敗も犠牲も全て次への糧にしてでも先へ“進み続けなければならないと思っている”彼等は自らに止まる事を許さないままに研究を続けていったのだが……。

 

「……ん? なんだ、警報……?」

「施設周辺に配置しておいた敵性勢力感知用のヤツね。外の映像をモニターに」

 

 その時、突然施設内にある緊急事態用のアラームが鳴り響いたので彼等は即座に実験を中断、それが拠点外に多数設置されている敵対者が接近した際に反応する警報であるので外部に設置されたセンサーの反応や監視カメラの映像をモニターに映し出す。

 

『……ここがヤツらのアジトか!』

『全車停止、装備の確認は済ませたな! 入り口を爆破して突入する!』

『オラァ! マスターキー(物理)を喰らえ!』

 

 するとそこには拠点の近くに乗り付けた複数の大型車──【DAT移動前哨】を含めた試作機のデータを元に量産された車型マシン悪魔を含めた【グランギニョル社】謹製の輸送・支援用車両から“多数のグランギニョル社所属デビルバスター”を中心としたDB達が降車し、自分達がいる拠点に向かって攻め込んで来る光景が映し出されていた。

 ……それはとある筋(戸田琴陽)からの情報によってG.E.H.E.N.A.の拠点を突き止めたグランギニョル社が、例の『混沌の奇禍事変』の陰で騒動を隠れ蓑にして敵に気付かれぬ様に極秘裏に準備していた強襲部隊であった。

 

『……付近にある反応から魔術的・科学的問わない監視カメラやセンサーが配置されているな。位置情報を割り出すから出来る限り破壊しろ!』

『敵はまだこっちの動きに対応し切れてない。今の内に可能な限り敵拠点にダメージを与えつつ内部構造のの情報を割り出す。ドローンを出せ!』

『反応から内部は異界化に近い状態になってる上に地下もあるな。対異界用の封印術式を……』

 

 加えて彼等グランギニョル社所属のDBは元々欧州圏における秩序側の異能者組織だったヌーベル家所属であり、そこが作り上げた大企業グランギニョル社の私兵であったのでマフィアやら秘密結社やらとの交戦経験もあり、故に対人・対拠点戦闘にも相応に慣れている人材が多かった。

 更に技術者を建仁している者もいる事もあって彼等は複数の支援機材を積んだ移動前哨を完全に使いこなし、その補助もあって手早く周囲の監視網を潰したり拠点の内部構造を把握しながらG.E.H.E.N.A.の拠点へと侵攻しようとしていた。

 

「もうこの拠点がバレたの? 思ってたよりも早すぎるわね」

「ふむ、いつも通りグランギニョル社をターゲットにした以上は反撃される事も考慮してましたが、想定よりも戦力が多い」

 

 そんな光景を見た彼等は驚きつつも拠点内の通信機器を使って敵襲を伝えながら即座に迎撃を指示、それに合わせて拠点内の各種防衛設備が機動して防衛・迎撃用のヒュージ群が出撃させて侵入しようとしているグランギニョル社の部隊へと向かわせる。

 ……同時に彼等は拠点の位置が早期にバレた事に関しては驚きはするものの、所詮はこの世界に後から訪れた身であるので見つけ出す事自体が不可能ではないと理解できるが、襲撃してきた戦力が予想以上に多くかつそれを事前に察知出来なかった事に疑問を覚えた。

 

「確か潜入させたスパイは見つかったけどそれ以外にも監視の手は複数伸ばしてたわよね。先日の大騒ぎで私達も動いたから多少は監視の目を緩めざるを得なかったけれど」

「それでもあれだけの戦力を動かそうとすれば気付けそうなものですが。グランギニョル社側が反撃の手段に出にくい様に色々と工作もしていましたし」

 

 この世界でG.E.H.E.N.A.は“いつも通り”にグランギニョル社をターゲットとして『実験』を行っていたのだが、同時に既に漂流者から自分達の情報が伝わっていると判断していたのでいずれ反撃される事も考慮して幾つかの手を打っていたのだ。

 まず、スパイなどによる情報収集は当然として周回や漂流者などに関する情報操作による行動の制限を与え、更に社長やその娘を狙う素振りを見せるなどして守りに戦力を消費させて攻めに転じる事自体を妨害するなどしており、それによって元より動きが限定されやすい企業の弱みを付く形で行動の制限を与えてもし何かしら動いてもすぐに気付いて逃走や迎撃などの対応を速やかに行える様にしていたのだが……。

 

「企業は確かに力は強いけど動きが読みやすいから何かされても先手を打てる筈だったんですがねぇ。この周回のグランギニョル社も終始守りに入って積極的に仕掛ける気がないと判断したから実験相手に選んだんですが」

「……やっぱりこの世界はこれまでの周回とは違うのかもね。見なさい、ここまでの戦力を用意できた理由がわかったわよ」

『……私達の護衛はこの子達に任せて貴方達は敵拠点の攻略を』

『社長勤めで腕は鈍ったが自衛ぐらいはまだ出来るさ』

『『『了解!』』』

 

 そう言った乃恵美が指差したモニターには外の移動前哨の一台からグランギニョル社のCEOである筈の【ミシェル・ヌーベル】とその妻である【朋美・ヌーベル】の二人が、普段は自分達の護衛を務めている筈のヌーベル家直属DB、及びヘルヴォルとグラン・エプレのメンバーと共に襲撃部隊に加わってる光景が映し出されていた。

 ……なんの事はない、グランギニョル社がここまでの戦力を気付かれる事なく用意出来たのはヌーベル夫妻が自ら襲撃部隊に加わり、普段はその護衛を務めているヌーベル家直属でそれ故に自分達の一存で動かせるDBを伴って戦力に換算した為であったのだ。流石に自分達が直接戦闘を行うつもりは無いが護衛を学生組に任せる事で直属DBを攻撃戦力に加えているのだ。

 

『しかし、会社の社長自らが前線に出るとか大丈夫なんですか?』

『まあ普通に考えても絶対にダメなやり口なんだが、企業と言うのは巨大な分だけどうしても動きが鈍くて読みやすくなる。特にこういうマフィアとか非合法結社みたいな連中には“対巨大企業用の立ち回り”みたいな事を覚えてる連中も多くてね、普通に動く準備を見せると逃げられるか罠に嵌められるケースが多い。昔の欧州ではよくあった』

『だから要人の護衛で動かせないと思われている戦力を“護衛対象の要人諸共侵攻用戦力にする”事で護衛と攻撃を同時にこなせるのよ。護衛の直属DBは信用出来て私達の一存で即座に動かせる戦力でもあるからね。……まあ巨大企業の主要人物を失うリスクが大きすぎて基本的には完全な悪手なんだけど、多分こうでもしないと奇襲は成功しないでしょ』

 

 自らの直属DBを攻撃戦力に加えた代わりに前線には余り出したくない学生組を護衛に付けたヌーベル夫妻はそう言うが、一応攻撃に使う為に戦力を無くした会社よりも戦力が揃ってる此処の方がまだ安全と言う考えもあり、娘の【楓・J・ヌーベル】に関しても複数の勢力が常駐しているお陰で今の会社より安全な聖華学園に置く事で最低限の備えはしている。

 まあそれでも態々狙われている要人自ら攻略部隊に参加するのは悪手以外の何物でもないのだが、嘗てヌーベル家の特殊部隊のリーダーを勤めていて経営や政略よりも戦術面での知略に優れた朋美が“自分達の安全を最低限確保しつつ奇襲戦力を増員する方法”がこれしかないと判断して、その判断に夫と直属DB達が全幅の信頼を持って賛同したが故に妙手となったのだ。

 

『守りに戦力を割かれて攻撃に使える戦力が減ってる? だったら()()()()()()()()()()()()()じゃない。……それに学校にいる子供を狙うのはダメでしょう』

『まともな手筋ばかり()()()()()()()()どうしようもない気配がしたからな、ならば悪手を打たなければならない時もあるだろう。……それに何より子供達ばかりを前線に立たせる様な大人にはなりたくないしな』

 

 何より子供を守る為なら危険を顧みない真っ当な大人である二人はリスクを感受してでも危険すぎるG.E.H.E.N.A.を潰すために前に出たのだ。まあ最前線には出ずにいざとなれば護衛の学生組と撤退する準備はしているのだが。

 ……そんな光景をモニター越しに見ていたG.E.H.E.N.A.のトップ達はこれまでに無かったパターンの展開に少し驚きながらも、それをお首にも出さずに冷静な態度のまま状況を分析していた。

 

「ヒュージは既に迎撃に出したけど普通に撃破されてるわね。敵の戦力が多い事もあるけどヒュージの特徴や弱点を把握されてるか」

「マシン悪魔はどれだけ機能のバリエーションを増やしても所詮は機械で人工物、どうしても画一的に特徴や弱点が出来てしまうのが欠点ですからね。初見ならともかく分析された後では不利は否めない。……後は今攻め込んでる正面の戦力は囮でしょう」

「露骨に社長夫妻を目に見える場所によって置いているものね。後はグランギニョル社の子飼いDBの中でも最強で例の合一神も所属する【DAT隊】とか言う連中の姿が見えないし」

「拠点周囲のセンサーや監視カメラにも反応はないが今攻めてる連中とは別方向から侵入している可能性は高そうだ」

 

 そうして先手を取られて不利になっている事を理解した上で彼等は特に慌てた様子もなく迎撃用戦力を割り振る指示を出していくが、基本的に自分達は研究者であるが故に『切り札は幾つか準備してあるが』不利になった状況を覆すのは難しいとも考えていた。

 

「……まあ、相手が三大勢力とかメシアガイアファントムとかであれば研究データだけ確保してから施設を自爆させて逃走する一択なのですが、現地の勢力が相手であれば迎え撃つ以外の選択肢はありませんね。一応最低限の義理でエデン関係の情報だけは削除しておきますが。自爆機能も破壊しておきましょう」

「私達を倒せる様な“世界を存続させる目的の”相手であれば研究成果が渡っても問題はないしね。……じゃあ今回は私がボスを務めましょうか」

 

 良くも悪くも“世界を救う”為なら手段を選ばないG.E.H.E.N.A.と言う組織は、例え自分達が倒されても目的が達成できるならそれでよしとする考えであり、故に世界を守ろうとする勢力が相手であれば拠点に攻め込まれても逃げずに戦う選択を必ず取る様にしていた。

 ……最も自分達を倒せない程度の相手であれば意味はないので今まで研究してきた“全て”でもって迎え撃つことにもしているので、一切の容赦なく攻め込んできたグランギニョル社のDB達を殲滅するべく動き出すのだったが。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 現在グランギニョル社の手勢とG.E.H.E.N.A.の戦力が激しい攻防を繰り広げている拠点の内部、そこでは警備用のヒュージが多数巡回しながら侵入者を警戒していた。

 更に外部には大型ヒュージを中心として攻め込んできた敵を迎撃するのに十分な戦力を配置しつつ、施設内部には伏兵を警戒した探知能力に特化させた小型のヒュージを中心に巡回させる戦術であり、実際グランギニョル側が内部情報を探る為に送り込んだドローンなどを破壊しながら敵を押し留めるなど戦果を上げている有用な戦術であった。

 

『キィィィィ……』

『ギギギ……』

『キギィィ……』

 

 ヒュージはマシン悪魔故に行動パターンが限定化されておりトップの男が言う様に機械故の画一性と相まって自動操縦では腕利きのDB相手だと対応されやすい欠点があり、一部の高級機を除いて多数の効率的な運用には人間の指揮が必要となる。

 だが、拠点周辺であれば比較的安全な拠点内から研究員達が直接指示を出せるのでその辺りの弱点をある程度カバー出来て、何より今まで作成した数多のヒュージを際限なく運用出来る物量を有する事もあり防衛戦においてG.E.H.E.N.A.の拠点は難攻不落であり、これまでの周回と同じ様に乾坤一擲の手札で攻めてきたグランギニョル側の戦力を徐々に押し返そうとしていた。

 

「……見張りが多いな。ここまでが限界か」

『キギィィ!?』

 

バックアタック先制時に10%程度の確率で背後からの攻撃になり命中率やクリティカル率が上昇する。

 真3出典んkシステムで事前に【ドロンパ】による透明化を行いながらの奇襲をした事で発動。

ミナゴロシの愉悦自身のクリティカル率が大きく上昇する。

 真5仕様の自動効果スキル。

冥界波敵全体に大威力の物理属性ダメージ。

 真5仕様の物理属性スキル。

 

 そんな見張り役の警戒用ヒュージが“何か”に気が付いたら瞬間、何もなかった筈の通路の一角から強烈な斬撃波が放たれて三体程のヒュージを一瞬で解体した。

 直後、斬撃波が放たれた場所から一人の刀を持った男──【ドロンパ*1】を解除したヘビクラ隊長が現れて、侵入者を感知して警報を上げる施設を尻目に懐から5枚の『カード』を取り出した。

 

「ま、拠点内部に入り込めただけで十分ではあるんだがな。【メタモディ*2】」

 

 その魔法と同時に5枚のカード──DAT隊メンバーであるアンヌ副隊長・ミツヒロ・トモヤ・ケンジロウ・ヤマトのCARD状態が解除されて、完全戦闘装備の彼等がその場に現れると同時にヘビクラ隊長自身も隠密行動をする必要がなくなったのでCOMPから仲魔を召喚する。

 ……この透明化の魔法を使えるヘビクラ隊長が見つかりにくい様に単騎で敵拠点に侵入、内部に入り込んだタイミングでCARD化された隊員達を呼び出して敵拠点内部に戦力を送り込む戦術はDAT隊が結成されてからヤクザとかの拠点強襲に良く使っていた手であり、今回はグランギニョル社の戦力を囮にする形で実行したのだ。

 

「この侵入法を使うのは久しぶりっすねー」

「周囲の監視カメラとセンサーは可能な限り破壊しておく」

「表の主力部隊も苦戦しているみたいね。ミツヒロ内部構造の解析は?」

「半径50メートル圏内なら後30秒待ってくれ」

「周囲のマッピングは完了、今の所、敵影は確認出来ません」

 

 カード状態から解除されたばかりだと言うのに彼等DAT隊は慣れた様子で武装を展開しながらの周囲の警戒、持ち前の『眼』による監視装置や術式の発見と破壊、符による探知術式や【みはらしのたま*3】を併用しての周辺構造解析、神造魔人の機能を活かしての地形把握などを慣れた様子で澱みなく行っていく。

 

「優先事項はヒュージの指揮を行ってる人間の撃破、それとヒュージを出してる設備とかの破壊。とりあえず内部を壊して嫌がらせをするぞ」

「軽く構造を解析したが此処はあくまで研究施設であって軍事施設じゃない。異界化の度合いもそこまでではないからヒュージが警戒している以外で面倒なギミックは少なそうだ」

「少なくとも魔王城辺りと比べれば異界としてはタチの悪いモノではなさそう。ただ徘徊してるヒュージの数は多いけれど」

「見た限り此処ら一帯にもう罠は無さそうだ。監視装置も全て破壊した」

「こういう潜入工作とか俺は初めてなんですけどどうすればいいんでしょうか。拠点への突入って歩き回ってボスを見つけたら倒すぐらいしかしてこなかったんですけど」

「基本的にそれで大丈夫っすよ。出来るだけ暴れ回れば外の本隊の援護にもなるっすから。そもそもこの手の異能者系組織は幹部やボス倒せば後はどうにでもなるんで」

 

 それぞれの技術をもって施設内の構造を把握していくDAT隊は準備を終えると同時に動き出し、割り出されたヒュージの動きや異界内のMAGの流れなどから重要施設があると思われる場所を割り出してそこへ向けて侵攻する。

 

「まあやる事は普通の異界攻略と大して変わらん、怪しげな設備やボスを見つけてぶっ倒せば良い。……スポンサー(政府や防衛軍)からの無茶振りな指示を受け入れつつ、それ以上のハッピーエンドに持っていくのは防衛チームの“お約束”だからな」

「成る程、まあ今回は実は怪獣を倒してはダメとか宇宙人との些細な誤解的な展開でもないので楽な方とも言えますかね」

「ぶん殴っても良心が痛まないスペースビーストみたいな連中を相手にするのは楽でいいわね」

「それ鬱展開になるやつ。やってる事はビーストヒューマン作るノスフェルみたいな相手だけどさ」

「そもそも今のスポンサーのグランギニョル社はこっちの意見をちゃんと聞いてくれて装備とかも奮発してくれる割と善良な組織で、トップ自らが前線に立つ事も厭わない真っ当な連中だからその手の確執系イベントは起きそうにないが」

「流石にリアルで確執系イベントは洒落にならんからスポンサーはちゃんと選んだぞ。これでもその辺りは隊長として気を使ってるんだが」

 

 今はDAT隊(身内)だけの行動なので普段よりもネタ台詞が多いが侵攻速度は敵拠点の中を進んでいるとは思えない速度であり、途中の監視装置や少数の偵察用ヒュージを即座に破壊しながら施設内の構造を把握しつつ、その情報を特注の通信機器を用いて適時グランギニョル社側に発信していく」

 

「さて、じゃあ未来で起きそうな鬱展開を物理的にぶっ壊しにいくか。ほらみんな大好きだろ、チートなオリ主とかが原作の鬱展開ぶち壊す的なやつ。俺は娯楽として見るか自分でやるならそのぐらい単純な方が好きなんだよなぁ」

「現実が設定過多だから娯楽ぐらいは頭空っぽで見れるヤツの方がいいわよね」

「現実がチート能力で殴れば解決するぐらいに楽なら俺も大好きだぞ。そんな事にはならないが」

「チート能力筆頭のナホビノですがサマナースレとか見てると自分がポケモンで伝説パか厨パ使って俺TUEEEしてる気分になります」

「サマナーの先輩としていい事を教えてやろう。伝説パだろうが厨パだろうがマイナーポケパだろうがリアルでは“勝てばよかろう”なんだよ。……と言うかお前の場合は多分ソフトの世代からして違うヤツだと思うぞ」

 

 ちなみにそんなムダ話をしているのも敵の行動から伏兵による隠密奇襲が的読まれていると判断し、逆に敢えて目立って撹乱しながらグランギニョル社側に送られる戦力を減らしておく戦術である。

 こうして“今後の事”を考えてこれ以上余計な事をさせない為にもG.E.H.E.N.A.を潰そうとするグランギニョル社とDAT隊、それに対して世界の救済を望むが故に相手がそれに相応しい実力を持つのか試す意味を込めて全力で迎え撃つG.E.H.E.N.A.の戦いが始まったのだった。

*1
味方一体を透明状態にする。P1出典の覚醒魔法であり非戦闘時に使えば隠密行動が可能。

*2
味方単体のMIRROR・CARD状態を治療する。デビサマ出典の回復魔法。

*3
パーティー周辺のマップを表示する。真if出典のアイテム。




あとがき・各種設定解説

G.E.H.E.N.A.:ある意味では倒される事を望んでいる
・実は技術ツリーが魔人王と近いので神造魔人技術にも明るく、グラン・エプレが嘗ていた世界の様に変な化学反応起こしたり魔人王側も手の内が幾らか知られているので余り敵対しない様にしてる。
・世界を救う事が目的で研究を行ってる集団ではあるが古参メンバーは“永遠”に耐えきれず半ば狂っており、今の世界を守る者に倒されるならそれで良いと思ってもいるので今回は逃げずに迎え撃つ選択肢を取っている。
・その上で『自分達を倒せない様なら期待できない』とか言う理由で全力で殺しに来るクソ面倒なムーブをして来るが、倒せれば彼等の研究成果が手に入る様にデータ消去や自爆はしない……まあ非人道的なヤツが多いので取り扱いに困るが。

グランギニョル社:乾坤一擲の攻勢
・どう考えてもこっちの動きが読まれてるのでゲヘナ側に奇襲を仕掛けるには普通の方法では無理だと判断、そこで社長夫妻やDAT隊含めて信用出来て実力があってすぐに動かせる戦力をどうにか用立てて侵攻部隊を作り上げて作戦を実行した。
・ちなみに一番大変だったのは会社の事業に可能な限り影響を齎さない為の事前準備で、信用出来る身内だけで準備しないといけない事もあって社長夫妻含めて暫くデスマーチだった模様。

DAT隊:透明化+カード化による敵拠点侵入作戦
・ヘビクラ隊長は特殊な魔法を使った隠密などの小技とかも得意ってしており、そこに各々の隊員達の索敵系スキルなどを組み合わせての敵拠点への侵入工作みたいな戦い方も出来る。
・他にも防衛チームムーブや企業付きみたいな表向きの情報を隠れ蓑にして隊員達の情報を隠蔽する裏工作も行っており、これらの情報収集・情報操作と特殊な魔法による小技を合わせて『闇の仕草的な謎の人物ムーブ』をするのが趣味。


読了ありがとうございました。
ナホトラマンは大体ボルテクス界限定でマンボウレベルの発生確率な超レアキャラ。魔人王自身も理論上出来る形で作ったけど本当に誕生やら新生やらするとは思ってなかったので内心かなり驚いている模様。
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