真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~ 作:貴司崎
グランギニョル社が主導になって実行したG.E.H.E.N.A.拠点の制圧作戦はグランギニョル側の奇襲による先制攻撃から始まり、それを慌てて迎え撃とうとしたG.E.H.E.N.A.側が迎撃用のヒュージを多数出して拠点内に侵攻してきたDB達を攻撃、それを“万全の準備”でもって迎え撃つグランギニョル側がやや優勢という形で推移していた。
『『『『キキィィィィッ!!!』』』』
「また出て来たな、先制攻撃で撃ちまくれ!」
「もう
「銃撃は普通に通るって事はなぁ!」
| 銃撃MPダウンⅢ | 銃撃属性スキルの消費MPが30%減少。SH2出典のCOMP機能。 |
| チャンドラーⅢ | 銃撃属性での攻撃時、確率で気絶を付与。SH2出典のCOMP機能 |
| ハメットⅢ | 銃撃属性のクリティカルのダメージが50%上昇。SH2出典のCOMP機能。 |
| フュージレイド | 銃撃属性で敵全体に中ダメージを与え、命中・回避率を低下させる。 SH2出典の銃撃属性スキル。 |
| ブラストアロー | 銃撃属性で敵全体に中ダメージを与える。SH2使用の銃撃属性スキル。 |
| 刹那五月雨撃ち | 銃撃属性で敵複数に2〜4回中ダメージを与える。SH2仕様の銃撃属性スキル。 |
迎撃用の量産型ヒュージは一部のマシン悪魔*1が有する耐性をベースにした上で簡素化・効率化させた『物理耐性・破魔呪殺状態異常無効』という強固な耐性を与えられており、そこにどうしても出来る素材由来の属性弱点を埋める為に【電撃耐性】などのスキルなどを追加されている。
だが、量産の為のコストやリソースの都合で銃撃属性に対しては無耐性となっており、それをこれまでの交戦データと回収した残骸からの解析によって敵の技術レベル含めて割り出していたグランギニョル側は銃撃攻撃を行える自社製品の武装COMP【CHARM】を装備した部隊を中心にして迎撃していた。
『『キイイイイィィィィィッ!!!』』
「抜けて来たなら近接モードに変形させて迎え撃つ!」
「バフとデバフも忘れるなよ」
「置きメディ準備してしておきますね」
| 物理貫通Ⅲ | 物理属性で攻撃時、耐性・無効・吸収を無視。SH2出典のCOMP機能。 |
| モノノフⅢ | 物理属性のクリティカル率が30%上昇。SH2出典のCOMP機能。 |
| 木っ端みじん斬り | 物理属性で敵全体に中ダメージを与える。SH2仕様の物理属性スキル |
| デスバウンド | 物理属性で敵複数に2〜4回中ダメージを与える。SH2仕様の物理属性スキル。 |
また、射撃が行えない距離に近付かれても可変型武装COMPであるCHARMであれば近接モードに変形させて迎え撃つ事が出来て、ヒュージの物理耐性もセットしてある物理貫通機能によって突破出来るのでグランギニョル側の優勢に戦えていた。
変形機能は主にコストや整備性の面で色々と欠点もあるが必要に応じて武装COMPの銃撃と物理攻撃を使い分けられ、更に物理・銃撃両面のCOMP機能を同時に採用出来るなど相応のメリットもあり、何より開発企業であるグランギニョル社直属であれば整備性やコスト面での完全なバックアップが受けられる。
『キィィィィッ!』
「げっ、【テトラカーン*2】持ちまでいるのか。貫通物理と銃撃対策か」
「なら通じる属性を見極めて属性攻撃だ。それ用の魔晶もセットして来ている」
「【万能の技晶*3】持ちは前へ! カーンを張って来るなら万能で殴れば良い!」
「【一気通貫*4】も準備しておけ!」
そうした状況への対策として幾つかのヒュージには物理反射結界の機能などが装備されていたが、それに対しても武装COMPに装備できる属性攻撃スキルを使用可能とする魔晶で対処。更にグランギニョル社直属部隊に決戦用装備として与えられた改造型デモニカスーツ【バトルクロス】のコマンダースキルなどを駆使して優勢に戦いを進めていた。
……グランギニョル社のCHARMやバトルクロス開発にはG.E.H.E.N.A.が操るヒュージと幾度となく交戦した経験があるヘルヴォル、暴走したヒュージとの戦いを続けて来たグラン・エプレの少女達のデータや異なる周回由来の未来技術が使われているので、特に“対ヒュージ戦闘”には絶大な効果を発揮するのである。
「……さて、今の所は優勢に戦えてるけど敵の防衛戦力がヒュージのみ、しかも小型のタイプしか出て来ていない辺りまだまだ戦力を隠し持ってそうね。この前の学園戦では変身怪人みたいな人間や大型のヒュージも確認された訳だし、奇襲が決まって向こうがまだ混乱してるとかなら良いんだけど。……あなた、内部に侵入してしたDAT隊からの報告は?」
『侵入には既に気付かれた様だけれど、既に内部のマッピングと破壊工作に入っている。こっちの部隊とドローンから得た情報を合わせて研究所内部に展開された異界の構造は既に5割近く把握出来た。そこまで複雑な異界でもないしトラップも異界構造を変容させる程の大規模なモノではなさそうだな』
「まあ多人数が使う研究施設に大規模な殺傷性の高いトラップ満載なんてしたら複雑な工程の作業とか難しくなるから、規模の小さい罠を多数仕掛けつつ防衛用のヒュージでも出した方が効率的だしね。一部の悪魔が使うフィールド効果スキルとかでトラップを後付けしてくる可能性はあるけど」
それらの戦況を見ながら後方から現場指揮を取っているグランギニョル社長夫人の【朋美・ヌーベル】は、技術者でそっちの方が得意なので試作型移動前哨内で情報分析を行っているグランギニョル社長の【ミシェル・ヌーベル】と意見を交わしていた。
このG.E.H.E.N.A.拠点となっている研究所ではあるが大人数で研究作業を行う目的で異界化させて内部空間を格調しつつ、外部からはそれと気付かれない様に普通の建物を装う偽装の術が使われている彼等がよく使う現地作業用の施設なのだが、内部で様々な研究や魔術の行使を行う都合による利便性の問題もあり防衛設備は隠蔽と監視が主体であった。
『ウチもそうだが個人用の工房ならともかく大人数が使う研究施設に設置できる防衛設備には色々と制限がある。大人数かつ大規模で複雑な研究作業を行う場所に大掛かりなトラップなど仕掛けたら誤作動含めて面倒な事になるからな。加えて【四神相応*5】レベルのトラップ対策に【空間転移*6】が使えるスクナヒコナに【御神渡*7】が使えるタケミナカタなども用意してある』
「ウチには眼界持ちも多いから罠対策も出来るしね。G.E.H.E.N.A.がこっち側の技術を熟知している上位互換って事は逆もまた然りって事ね。技術ややり口が被ってる部分もあるから読みやすいわ。……そろそろ後方で支援する私達を狙ってくる可能性があるから注意してね。特に二水ちゃんは周囲の監視を厳に」
「了解です!」【
そして軍事技術や魔術技術を扱う大企業であるグランギニョル社も研究施設に関する知識は相応に持ち合わせており、その経験と複数の移動前哨で持ち込んだ解析機材によって敵拠点の構造を把握していた。
最も後方支援を行っている移動前哨が割と無茶な侵攻作戦の要である事は明らかなので、個人的には不本意だが戦力の都合でヘルヴォルやグラン・エプレ、そして第七生徒会の一部メンバーと言う学生組を連れて来て防衛を任せざるを得なかった部分もあるのだが。
…… ただそれでも優秀な学生組を遊ばせておく余裕がないと言うか、むしろみんな腕が鈍った今の自分よりも強い事は分かっている朋美だったので出来る限り危険が少ないが重要な仕事を行わせていた。
『うおー! 百由さまー! 向こうのセキュリティが強すぎるんじゃが!』
『あーやっぱ技術レベルが違いすぎてハッキングとかは無理ね。電霊とかいるかもしれないし使い捨ての独立パソコンは破壊しといてねぐろっぴ。普通にこっちの無線使って情報支援に徹しましょう』
「……皆さん! 敵拠点から大型のヒュージと思われる悪魔が出て来ました。これまでに見た事がないタイプのモノで、凄いスピードで真っ直ぐこっちに向かって来てます!」
「うーん予想より対応が早いわね。とりあえず移動前哨は後退させて、悪いけど学生組で迎え撃ってくれるかしら。このタイミングだと侵攻部隊を呼び戻すのは間に合わないから」
そう言いつつ朋美は戦力的に学生組を前線に出した方が生存率と勝率が高いとは分かって指示を出すが、内心では少し情けない気分になってるものの援護ぐらいはしようと持ち込んだ高級アイテムを準備していく。
そうして指示を受けるより早く手早く学生組が戦闘態勢に入った所で後方支援を潰す目的でG.E.H.E.N.A.が放った巨大な狼の様な形状をしたヒュージ──高速強襲用特型ヒュージ【マーナガルム】及び高速戦仕様カスタム型の小型ヒュージ十数体が襲いかかって来た。
『キイイイイィィィィィァァァァァァァッ!!!』
「侵攻部隊にも多数のヒュージが攻撃を掛けてきてるわね。防衛には罠とかではなくシンプルに戦力を送り込んで迎撃する気かしら。……援軍は望めないから此処は貴女達にお願いするわ。毎ターン回復アイテムは使うから」
「了解しました! ヘルヴォル戦闘準備! 移動前哨の方には行かせない様にしつつ戦いますよ」
「グラン・エプレ出撃! とりあえずバフデバフ掛けつついつもの対ヒュージ用戦術で行くわ! どうせ特型っぽいし面倒なスキルを持ってそうだから注意して!」
「アナライズできました!【マシン悪魔 ヒュージ“マーナガルム” LV75】です! 残りのヒュージはレベル50代、耐性の解析が出来たら報告します!」
そんな耳障りな奇声を上げながら襲い来るヒュージの群れに対し、学生組は各々のCHARMを構えながら後方に下がらせた移動前哨には行かせまいと迎撃の態勢を取りながら怯む事なく戦闘を開始した。
……子供を前線に出したくない真っ当な大人としては余り喜ぶべき事ではないのかもしれないが、この世界のインフレ環境や聖華学園での授業で揉まれた学生組の実力はグランギニョル社からの念入りな支援込みで高レベル悪魔相手でも十分に通用するモノであり、この戦闘でもその実力を遺憾なく発揮して移動前哨を守り抜いたのであった。
──────◇◇◇──────
『『『……キキ……ギイイィ……』』』
「さて、これでもう数十体はヒュージを倒している筈なんだがまだ湧いて来るな。マシン悪魔だからCOMPに仕舞えるだろうからスペース的な問題はないんだろうが」
「トラップや監視装置は【虚空の眼界】で見つけ次第破壊してはいるんだが、肝心の『施設を運営している人間の研究員』は見つからないな。何処か隠し部屋とかにでもいるのか」
一方その頃、拠点内部に侵入したDAT隊は破壊された設備と残骸となった多数のヒュージが散らばる部屋で周囲を警戒しつつ小休止していた。彼等は潜入に気付かれた後は持ち前の圧倒的な戦闘能力によって警備用のヒュージを片端から破壊しながら施設内を調査していたのだ。
この破壊工作のお陰でグランギニョル社本隊側の侵攻作戦が想定よりも順調に進んでおり、更に各々の技術で施設内のマッピングを行い本隊との情報共有と合わせて施設地上部分の構造の8割近くを既に把握する戦果を出していた……が、簡単な実験設備や居住空間は発見出来てもヒュージを出している設備や操作している人間は未だに発見出来ていなかった。
「本体からの報告では施設の2階3階部分は殆ど居住空間か物置だったという話だから恐らく本命は地下だろうな。地上部分はあくまで偽装用及び迎撃用の施設で、地下部分に異界化含めて拡張された本命の施設があるパターンかね」
「この手の秘密基地には良くあるパターンね。私達が趣味とロマンで作ったセーフハウスにも似た様な細工をしている所もあるし」
「隊長と副隊長の意見がビンゴだな。研究所内部の霊脈とこの部屋の設備を少し調べた所によるとメインの研究施設は地下にあるみたいだ。多分そこからヒュージだけ出して操作しつつ迎撃してるらしい」
だが、室内に残っていたパソコンを調べていたミツヒロが地下室がある証拠を掴んだ事で状況は一変、すぐにその情報を共有しつつグランギニョル社本隊と連携してヒュージの出現位置や拠点の間取りなどから地下室への侵入方法を捜索していく。
……それから地上にヒュージを召喚している召喚機構を潰して回ったり、それによって敵戦力が減った事で地上部分をほぼ完全に制圧した後に床に偽装したシャッターによって閉ざされていた地下への侵入口を発見したので床を破壊して乗り込む事となった。
「シャッター程度であれば物理的に粉砕すれば良いが、多分地下の方が本命だろうから準備は万全にしておいた方が良いか。とりあえず俺達DAT隊含めてレベルが高いDBを突入させつつ、退路を確保する為の人員も必要だな」
「地上は表向きの真っ当な研究施設として偽装されてた感じだから、十中八九地下の方は碌でもない事になってるだろうな」
「気が滅入りますが行かざるを得ませんね。……コンクリとか流し込んだらダメかな?」
「気持ちは分かるが地下は異界になってるから大した効果はないな。焼き討ちとかしても効かなそうだし、きっちり直接ぶっ殺して確認しないと逃げられるだろうから乗り込むしかない」
そうして地上部分を制圧した彼等は思った以上にこれまでの戦闘が楽だった事から敵の主戦力は地下にいる可能性も考慮し、まず最強戦力のDAT隊を先行させて情報収集してから本体を突入させて制圧する事にした。
……罠による分断によって各個撃破される可能性もある作戦ではあったがDAT隊の実力、そして仮に異界の経路が遮断される様なトラップであっても無理矢理突破出来る類のスキル持ち悪魔をグランギニョル社側が用意していた事もあって決行されたのだが……。
「…………しばらく探索していても何も起きないな。ケンジロウ、お前の『眼』では何か見えるか?」
「俺の【虚空の眼界】の範囲内では目立ったトラップなどは見当たらない。……まあ胸糞悪くなる実験設備とかは幾らでもあるんだがな」
「ヒュージやら改造人間やらも出て来んな。……とりあえずこのテンプレートな悪の研究施設みたいな設備をぶっ壊したらなんか出て来るか?」
「少し待て、設備を調べてこの施設の情報を少しでも入手しておきたい。地上部分と比べてもかなり広い様だからな」
地下に入った彼等を待っていたのは地上部分と同じ無機質な研究施設の様な内装、そして地上よりも遥かに多くの研究室へと続いている扉がある廊下に同じく地上部分よりも広くてより高性能な設備だと分かる資材が置いてある研究室であった。
まあその設備には“悍ましい研究成果”が入ったポッドとかどう見ても非人道的な研究データが乗ったパソコンなど、この地下施設こそがG.E.H.E.N.A.の真の研究施設であると類推出来る様な物ばかりではあったのだが、それ故に自分達が侵入してしても“罠の一つも無くヒュージの一体も出ない”と言う状況は余りにも不可解であった。
「うーん、罠臭いと言うか何か狙いがあって誘導されてる気配がプンプンするっていう感じかねぇ。或いは地上で時間を稼ぐ隙に逃げてるのか」
「地上部分では嫌と言う程にヒュージを嗾けて来たのに地下に入ったらコレですもんね。……罠か逃亡かの二択は面倒ですけど、だからと言って何もしない訳にも行かないので出来るだけ急ぎつつ慎重に探るしかないのでは?」
「まあヤマトの言う通り探索していくしかないんだが、バラけて探索するのは危険だからチーム毎に纏まりつつ出来るだけ手早くマッピングするしかないか」
敵が逃亡する可能性も考慮すると急ぎ探索を始めなければならないので、とりあえずDAT隊を含めた複数のグループによって地下施設のマッピングを進めつつトラップである可能性に備えて連絡を密にしながら進んでいく事になった。
……そうして地下一階・二階と探索を進めていく彼等だったが同じ様に無人の研究施設が続くばかりで人っ子一人見つける事が出来ず、先陣を切るDAT隊は異様な静けさを無事身に思いつつも地下三階へと足を踏み入れようとしていた。
「さて、ここまで順調……と言うか何も起こらず探索は成功した訳だが、次の地下三階は入手した地下施設のマップによると大規模な実験用のデカい部屋が占める階層で此処が最後の階層となっているが……罠があるとすれば此処だよなぁ」
「この地下施設のマップも誰もいない研究室のパソコンにこれ見よがしに表示されていたヤツだからな。例えば戦闘可能な階層に残りの戦力を詰め込んでいるとか」
「逃走されてる可能性もあるので空っぽかもしれないけど、とにかく行ってみて確かめるしかないんじゃないかしら。退路の確保と援軍の準備と連絡網をしっかりしていけばどうにかなる……と良いわね」
そして彼等侵攻部隊はDAT隊を先行させつつ続けてグランギニョル社DBの中から選ばれた最精鋭部隊を追従させ、残りの部隊で二階と三階を通路を確保しつつ先に大型実験室以外の部屋を探索していった。
だが、それ以外の部屋も同じく無人であったので退路の確保だけはしっかりとしつつ、彼等はDAT隊を先行させる形で残った大型実験室へと入っていき……DAT隊が室内に入った直後に勢いよく扉に備え付けられていたシャッターが閉じて後続の部隊と分断されてしまったのだ。
「扉が……周辺警戒。ヤマト、壊せ」
「【天剣叢雲*9】! ……駄目ですね、壊れません。そこらの鋼鉄製シャッターぐらいなら粉々に出来る威力だったんですが」
「ただ扉が閉まった訳じゃなくて【四神相応】に近い形で異界の構造を変容させて『遮断』されてるな。そういう効果を持つ結界トラップだったか」
「……正確に言えば内部の実験の影響を外部に漏らさない様にする為の遮断結界なのだけれどね。此処では色々と大規模な実験を行うから安全確保の為よ」
彼等は即座に扉を破壊しようとしたが不可能だと判断して次の行動に移ろうとしたが、そこに部屋の奥から声が掛けられたので即座に戦闘態勢を取りつつそちらを見ると、そこには殺した筈の【西村乃恵美】とG.E.H.E.N.A.の現リーダーの男の二人がいた。
それを見て分断からの各個撃破を狙う罠だと判断した彼等は現れた敵を警戒しつつ他に罠がないか周囲を探るが、乃恵美達は何故か戦意を出さずに話しかけて来た。
「私達G.E.H.E.N.A.の拠点へようこそ世界を守る戦士達。敗残兵じゃない今を戦っている者であれば歓迎するわよ」
「お前は確か西村乃恵美だったか? あの時確実に殺したと思ったんだが……いや、よく似てるだけの神造魔人だな。姿だけコピーでもしたのか?」
「流石に同類相手だとアナライズで看破されるか。……最も私の身体が生前の『西村乃恵美』の外観を模した神造魔人なのは事実だけど、中身はあの時死んだ西村乃恵美の魂と意識を転写したモノだからね。まあ死んで神造魔人に転生したとでも思っておけば良いわ」
「転生したら神造魔人でしたとか人の事は言えないけど笑えないな。下手すると何度でも復活するじゃないか」
「仕様上の都合で2度目の転生はないから。……さて、せっかくだから少し話でもどうかしら? 世界を変えうるナホビノ、そしてこの世界を守る者の話を聞いてみたいと思っているのだけど」
分断し次第仕掛けてくると読んでいたDAT隊だったのだが相手が
「良いだろう、暫くつまらない
「それは別の機会にしましょうか。表にヒュージを放って足止めしているけどそこまで長く続かないだろうしね」
「(やっぱりグランギニョル側にも戦力を向けてたか)……なら足止めが狙いか? お前達以外の研究員が一人も見当たらない辺り他を逃して殿でもする気か」
「逃げる気がある研究員達はもうとっくに逃げていて、私達以外の残ってる研究員はこの大部屋の先で未だに戦闘データを収集しているわ。……私達が残っているのは確かめたいからよ。この世界の人間であれば世界を救えるのかを」
そうして乃恵美はG.E.H.E.N.A.が次こそは世界を救う為に研究を始めた事、どれだけ繰り返して研究を続けても世界を救う事など不可能だと分かってしまった事、徐々に研究が非人道的なモノと成り果ててそれでも積み重ねてしまった犠牲を無にしない為に進み続けてしまった事、そして今必要この世界の者が世界を救えるかどうかを自分達程度は容易く倒せるかどうかで見極めようとしている事を簡潔に話し終えた。
……そんな話を部屋内のトラップの有無などを確認しながら話半分に聞いていたDAT隊は総じて白けた様な表情になっていた。
「さて、話は聞いたがどうコメントするのが正解なんでしょうか。とりあえず世界を救うとか宣ってるのに非人道的な実験をするとか論外でしょとか?」
「そもそも目的と手段が入れ替わっている。“世界を救う”ってのは目的じゃなくて手段だろうに。創作でも何のために世界を救うのかが重要だぞ」
「そこを履き違えて“世界を救うなら何しても良い”ってなったらダメなのよ。だから救うべき者が見えなくなってそれらを踏み付けにする事になるのよ」
「悪役に悲しい過去と言うのはお約束の設定だが、聞いた限りトチ狂って暴走してるだけだから設定的につまらないヤツだな。同情ポイントが少ないから話を広げにくい」
「見極めるとかするぐらいならさっさと自殺でもして周りに迷惑を掛けるのは辞めるべきだと思うっす」
「総じて『うるせぇ死ね』でコメントは十分だな。
「うーん見事にセメントな反応。まあこんな“つまらない設定”を聞かされたら普通はそう思うわよねぇ。……ただ、三大勢力含めて世界を繰り返し続けてる連中は“永遠に次があるからこその惰性”で大なり小なりクソな手段を続けてる連中だから」
挑発も兼ねて容赦ないコメントを言ってみるDAT隊だったが、生前であればともかく神造魔人と化した今の乃恵美は情動が人間のそれと比べてややズレていて、何より元から自分達を卑下し続けてきた内心が表に出やすくなっている事もあって皮肉げな笑みを浮かべて答えてみせた。
「最初はどれだけ崇高な理由を持っていても幾度も繰り返せば劣化する、“次こそは上手くやる”が“失敗しても次がある”に、そして“次があるんだから今は捨てても良い”にどんどん堕落していく。加えて繰り返せば『力』と『経験』だけは手に入るから増長して今を見下し、繰り返されてきた『作業』が絶対正しいと盲信する様になる。そしてまともな人間だって『永遠』の繰り返しには耐えられず必ず摩耗して惰性のままに存在するだけになるか、積み重ねて来た罪を背負わされて自分では止まれなくなっていく。……そんな成れの果てが私達だから、まあ『うるせぇ死ね』って反応が当然だよねぇ」
「傍迷惑の権化みたいな連中だな。自分語りが鬱陶しいしもうさっさとやっちまうか」
「ああごめんなさい、確かに鬱陶しい話だったわね。でも私達は逃げも隠れもしないからもう少し話をしてくれないかしら。……世界滅亡の“噂”が聞こえて来ても戦い続けて来たDAT隊、そして創世の資格を持つナホビノ、貴方達は何故世界を守る為に戦うのかしら?」
G.E.H.E.N.A.側は現地での活動やグランギニョル社の調略目的で独自に情報を集めており、その中でDAT隊の情報を知り世界が滅びに向かっているにも関わらず戦う理由が知りたかった為にそんな質問をしたのだが、それに対してDAT隊は少し困った様な雰囲気になって返答した。
「ええ……? 今戦ってる理由はスポンサーから依頼を受けたからでそこまで高尚な理由はないんだがな。後は防衛チームムーブが出来るしお前達みたいなクズを殴ればスッキリするから尚よしぐらいか」
「世界滅亡の噂が流れて時期は確かDAT隊を結成してから少し後の事だったから『防衛チームムーブするのに引き篭もりとか解釈違いだろJK』みたいなノリで動いてただけよね。私達って総じて刹那主義と言うかその場の勢いでDBやってるから」
「それに世界滅亡の噂に対して俺達が何もしてなかった訳でもないからな。文明崩壊とかに備えてこっそりシェルター異界を作って物資を集めたりはしてたし。ただその間も防衛チームムーブDBは続けてシェルターに引きこもってパパ活したりしてなかっただけで」
「そもそも災害対策に防災グッズやシェルターを用意するのはまあ分かるっすけど、だからって『災害が起きるまで仕事休んでシェルターに籠るぜ!』ってのはおかしいと思うんすよねー。世界滅亡なんて何が起こるか分からないからむしろDB活動続けて情報を集めた方が良いと思うんすけど」
「DB自体高給取りなフリーターみたいなもんだし、シェルター準備と仕事を並行出来る腕があるヤツは少ないからな。最もあの時はそういう方向に誘導しようとしている空気があったが。……まあいつしか流れが変わってインフレ環境でアレなヤツを殴ろうって事になったから俺達もDBに集中しつつ、用意していた異界はセーフハウス代わりとして防衛チーム基地風に改装して遊ぶ用になってるがな」
ヤマトを除く彼等DAT隊のメンバーは“ウルトラマンの防衛チームムーブしながらDBをやる”と言う見方によってはふざけた事をしてるので基本的にはノリと勢いで行動するタイプであり、そうやってその場の流れで活動を続けて今に至るだけの連中である。
……まあ、防衛チームムーブする事自体が『世界を守る為の戦い』になり、更に任務中は真面目に戦う防衛隊員ムーブをする無駄な拘りに加えて本人達が実力や状況を見る能力などがDBとしては有能過ぎるので側から見れば『世界を守る為に戦う正義の使徒』に見えなくもないのだが。
「まあ一応世界を守る為に戦ってはいるかもな。ウルトラシリーズを始めとする特撮が潰えるのは何としても避けないといけないし。……この世界の他のDB達も総じて守りたい何かがあって、それを守る為に戦ってたら結果的に世界は救われてるって感じになっているのさ」
「世界が救われてるのは単なる結果か、本来ならそれが正しい在り方なのかもしれないけど『永遠』が続くと目的と手段が入れ替わるのよねぇ。滅びを幾度となく見た上で“世界が救える方法”なんてモノを見つければそれが目的になるのよ。……そこはどう思うかしら? 創世の資格を持ったナホビノさんは」
「……世界が滅びかけてる所に『創世すれば世界を元に戻せる』とか言われればそれ自体が目的になるのは分からんでもない、俺も
前世でのトラウマから創世とか新世界とか基本的に大嫌いなヤマトは苦々しく顔を顰めながら返答し、更に何故かその様子に少し困惑する周囲を無視しながら今まで溜め込んで来たモノを吐き出すかの様に言い募る。
「日本全土ボルテクス界になってからはナホビノになった俺以外だとマガツヒに影響でまともに活動できないから殆ど一人で日本横断旅だったし、その度に古いPRG主人公張りに色々とクエストを受けるハメになって人の命が掛かる選択肢を俺一人の責任で選ばされるし、数少ない仲間は死んだり戦闘不能になったり裏切ったり殺し合ったりで、幾らナホビノとか言うチート能力を貰ってもやってられないぐらいの苦行だったからな。そして日本を元に戻す為に『人のみの世界を創世する』コトワリで創世してもそこには俺が求めていた人の尊い日常は残ってなかった。……俺が行った創世は謂わば地球人類全てを無意識下で洗脳して悪魔が発生し得ない様に精神操作する様なモノだったからな。一見求めていた平穏な日常が戻ってきた様に見えて、実際には自分のことコトワリで歪められた人形しかいないと分かってしまうのは控えめに言って地獄だった。最終的には悪魔じゃない【聖杯】に世界が滅ぼされるしな」
「既に創世を行なっていたナホビノだったのね。……なら今度こそ今の世界で望んだ通りの創世を行うとかはしないのかしら。世界の滅びを覆す為ならばやむを得ないと思うけど」
「俺が創世を行おうとしたのは元の世界に戻すのが理由だしな。なら普通に人の営みがあるこの世界で創世を成す理由はないよ。……それに正直言って一人で創世を求めて戦う苦行はもうやりたくないからな。だから自分でなんとかしなくても勝手に世界が救われて、俺は単なる『一般通過ナホビノA』ぐらいでいられるこの世界は好ましい。……そもそもこの世界で創世とかしようとしても普通に阻止されるだろうし、そこまで手段を選ばないといけないならいっそ滅びた方が良いだろ」
実の所、ヤマトはナホビノになってから時間が経って力を取り戻していくにつれて前の世界の記憶も大体取り戻していたのだがそれ故に前世でもトラウマも得てしまっており、一応は今世とは別人のものだと意識的に区別していても引き摺られてしまう部分はあったのでこうして思わず本音が出てしまったのだ。
……まあ、その本音の大半が愚痴な上にかなり物騒なモノも混ざってる辺り『創世』に対するトラウマは根深い様だが。
「ヤマトも大分ストレス溜まってたんすね。俺も転生者っすから前世の記憶って意外と面倒なのは分かるっすよ」
「ドリフターは良くも悪くも滅びた世界から来てるからトラウマ持ちが多いらしいしね。ヤマトは特殊な立ち位置だけどトラウマの根深さは割と重い方だったみたい」
「まあ、こうして“ロバの耳”に愚痴を垂れ流せば少しはスッキリするだろ。……この部屋にはどうも『本音を話しやすくする空気』みたいなのがあったみたいだから隊員のストレス発散に利用させてもらった。そっちの男の仕込みか?」
「え? 隊長それ初耳「よく気が付いたな。魔術の類いは一切使っていないんだが」
「これでも謎の人物ムーブをする為に心理学も少し齧っていてな。詳しい理屈までは分からんがここまでの“状況”が
ヘビクラ隊長にいい様に動かされた様な気もしないでもないヤマトだったが、愚痴を吐き出してる間もしっかり敵の情報をアナライズして既に耐性まで看破していたので直ぐにその情報を提示した。
\カカカッ/
| 神造魔人 | ヒュージ“西村乃恵美”/ツクヨミ改 | LV92 | 氷結吸収 破魔・火炎・封技無効 物理・電撃・状態異常耐性*10 |
\カカカッ/
| 悪魔人間? | ■■■■■ | LV42 | 破魔無効? |
「俺のアナライズだと種族が神造魔人と表示されましたけど同じ神造魔人故にか耐性まで抜けました。それと俺が知ってる【ツクヨミ】は全体貫通氷結攻撃とか分身とかして来ましたね。……ただあっちの男の方はアナライズ対策でもしてるのか名前が見えませんでしたが」
「別に私はアナライズ対策をしている訳ではないよ。ただ長い時を研究に費やす為に自分自身へ精神調整を行い過ぎた結果“自らの名前を失ってしまった”だけさ。……さて、じゃあそろそろ契約を果たすとしようか『メフィスト・フェレス』」
「後、流石に私達だけじゃ戦力が足りないから少し追加で。……召喚、ルサルカ」
そういった名無しの男は徐に【黒い契約書*11】を取り出して破り捨てると同時にその身が闇の様なオーラに包まれて真紅の衣装を着た悪魔【魔王 メフィスト】へと変身する。
そして乃恵美が手に持ったCHARMを翳すと“まるでCHARMを持った少女の様に見える”外見の人型ヒュージを四体召喚し、更に部屋の入って来た入り口とは違う扉が開いて何体かの量産型ヒュージが現れたのだ。
\カカカッ/
| 魔王 | メフィスト | LV82 | 呪殺吸収 物理無効 状態異常耐性 破魔弱点*12 |
\カカカッ/
| 神造魔人 | ヒュージ“ルサルカ”/アオガミ甲型改 | LV72 | 電撃無効 物理・衝撃・破魔・呪殺・状態異常耐性*13 |
\カカカッ/
| 神造魔人 | ヒュージ“ルサルカ”/アオガミ乙型改 | LV72 | 電撃無効 物理・衝撃・破魔・呪殺・状態異常耐性*14 |
\カカカッ/
| 神造魔人 | ヒュージ“ルサルカ”/アオガミ丙型改 | LV72 | 電撃無効 物理・衝撃・破魔・呪殺・状態異常耐性*15 |
\カカカッ/
| 神造魔人 | ヒュージ“ルサルカ”/アオガミ丁型改 | LV72 | 電撃無効 物理・衝撃・破魔・呪殺・状態異常耐性*16 |
「私はメフィストと契約して不老となっていましてね。その契約を破棄する事で一時的にですが【魔王 メフィスト】としての力を得る事が出来る……様に自己改造を施しています。まあ一戦終えたら契約で私は死にますが些細な問題でしょう」
「このルサルカは神造魔人の技術を流用した最新型ヒュージよ。最も耐性面とかまだ改良の余地はある試作品だけど数合わせぐらいにはなるでしょ。……さあ、私達が積み重ねてきた研究よりも貴方達この世界の人間の方が世界を救う可能性が高いと証明して頂戴」
「自殺がしたいなら他人に迷惑を掛けずに一人でやってくれないかね。それか自殺対策センターにでも連絡しとけ。……はぁ、
終わろうにも自力では終われなくなっている“嘗て世界を救おうとしていた者達の残骸”を前にした隊長は、思わず辟易しながらも今回の作戦の為に対ヒュージ様としてグランギニョル社から支給された刀型CHARM【ムラマサ・ブレード】を構えて戦闘態勢に入る。
「世界を救う高尚な目的は結構だが手段が気に入らないので潰しますね。……適当にDBやってる俺達に雑に潰されて無意味に果てるのがお前達にはお似合いだ」
「それならそれで構わないわ。私達のやって来た事が全て無意味になるならそれはそれで納得出来るもの」
「……とことん救えないな。さっさと潰すぞ」
『『『『キイイイイィィィィィッ!!!』』』』
そうしてG.E.H.E.N.A.と呼ばれる終わり損ねた残骸達に対してDAT隊は各々仲魔を呼び出し武器を構えながらいつも通り戦闘態勢の入り、部屋に入って来たヒュージ達の奇声を皮切りに戦闘へと突入したのだった。
あとがき・各種設定解説
グランギニョル社:メタ装備完備
・アサリ原作リスペクトでCHARM(武装COMP)はヒュージ(マシン悪魔)に有用な様に設定しており、奇襲が決まった事もあって地上部分での戦いは終始有利に進んだ。
・ただし、無理な奇襲戦術及び移動前哨含めて装備品をかなり無理して用意したのでここで負ければただでさえ弱体化している会社が傾き兼ねず、勝ったとしても結構キツイ模様。
DAT隊:スペックが高い連中がエンジョイする為に集まったチーム
・世界が滅ぶ噂が出始めてもDBとして活動を続けていたのは事実だが、それはそれとして世界が滅びた時用の準備を進めてもいた辺りネタ集団に見えても状況を見る能力と実力が非常に高い集団。
・尚、有能ムーブをしているが戦う動機は『防衛チームムーブをしつつDBとして良い感じに活動すれば良いか』ぐらいの軽いものであり、だからこそ滅びの噂が聞こえて来ても『それならそれで、死んだらまあ仕方なかったって事で』と割り切って冷静な対応が出来た感じ。
ヤマト:創世アンチ過激派
・前の世界では色々と一人で戦った挙句に裏切りやら戦友殺したりとかした果ての世界が碌でもないモノになったので実の所かなりトラウマになっており、記憶を継承してこの事を知った事で客観視出来ていたからこそこの程度で済んでいる感じ。
・トラウマによって嫌悪感を抱いているのは“一人で世界を救う為に戦う事”や“世界を一人の思う通りにする事”なので、多くの人間が世界を守る為に戦っている今の世界には好感を抱いており、自分もその中の一人のままでいたいと思っている。
G.E.H.E.N.A.:終われなかった残骸
・拠点自体は防衛用と言うよりは自分達の存在がバレない様にする秘匿性重視の設計であり、万が一責められた場合は地上部分でヒュージと簡易的なトラップで時間を稼ぎつつ地下部分の研究データを破棄して逃げ出す仕様だった。
・彼等自身が研究が本職な事と前回の学園攻撃などで戦闘要員が損耗していた事もあり防衛戦力はヒュージ頼りで、更にはこの世界の者が自分達を倒せるかどうかを試すと言う考えもあって全力逃走や自爆などのエゲツない手段を取らなかった事もあってグランギニョル側に圧倒された。
・最も最大の敗因は意識的か無意識的かは定かではないが『終わり』を望んでいる者が多い事であり、そうでない者は全員逃げ出した上で残っている連中も試しと言いつつも倒される事をどこかで望んでいるから自爆じみた戦術になっている。
読了ありがとうございました。
チート転生させてあげるからメガテン主人公やってね!ってのは正直罰ゲームだと思う。それでトラウマ抱えてるのがナホトラマン。前世フィルター無しだと創世とナホビノ絶対殺すマンになってた。