真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~ 作:貴司崎
改造型神造魔人“ルサルカ”達を率いてマガツヒによるバックアップを準備した【神造魔人・乃恵美】に対して、ヤマトはDAT隊のケンジロウや呼び寄せた結梨と共に戦い、敵の元となった神造魔人のデータをある程度知っている事もあって有利に戦いを進めていた。
「チッ、正直言って強過ぎるわね。マガツヒと異界ボス化の補助がなければ普通に押し切られて負けそう」
「神造魔人についてはそれなりに詳しい方でな、それなりの時間共に戦ってきた……後はお前達の“弱点”も見えてきたしな」
「へぇ、それは気になるわねっ!!!」
| ビッグバン | 敵全体にレベル依存による特大威力の万能属性攻撃。 真5V仕様、邪龍属のマガツヒでありマガツヒ悪魔が使えるマガツヒスキルの一つ。 |
| ヤブサメショット | 敵全体に小威力の物理属性攻撃。相性を無視して貫通し、必ずクリティカルが発生する。 真5V仕様の物理属性スキル。 |
そう叫ぶと同時に乃恵美は供給されたマガツヒを解放して大爆発を起こして敵陣を攻撃し、続けて確定クリティカルの魔弾を放って機先を奪い自陣の行動回数を増やすプレスターンバトルのテンプレートな動き出しで攻める。
だが、相手が防御力2段階強化かつ自分達が攻撃力1段階弱体化していて、更にヤマト達にはデメテルの【エレウシスの実り*1】によるHP増強と【神奈備ノ守*2】によるダメージカット結界が施されている事もあって極大威力のマガツヒスキルを持ってしても倒しきれない。
「LALAAaaaa!」【ヤブサメショット】
「LAAALA!」【神ノ忌火*3】
「LAAA……」【佐世木ノ葉*4】
「LAAA!」【デカジャ*5】
「まったく結界が邪魔ね!」【月下氷霜*6】
だが続いてルサルカ達が与えられたプログラム通りに澱みなく動き出し、甲型が同じく急所を射抜く魔弾を放ち、乙型がアオガミ型神造魔人としての力の一端である火の加護によって乃恵美の能力低下を相殺して余りある強化を施す攻撃・命中・回避を1段階、防御を2段階上昇させる。
そして丙型が両の手に木の葉を持って舞いながらマガツヒを集め、丁型がヤマト達のデバフを解除した後に再度手番が回ってきた乃恵美が月下の夜の如き極寒の息吹を放って凡ゆる耐性を無為としながら敵陣を凍り付かせる……が、それでも
「……やっぱり“適正を上げてはいない”みたいだな。神造魔人がよく使う系統のスキル*8は適正上げなきゃ燃費と効率が悪いだろ。後はスキルの調整も中途半端だな」
『神造魔人は後付けで適正を上げなければ総じて適正ゼロだからな。まあ後付けでどんな適正でも上げられる設計故になのだが』
「しょうがないでしょ、私が転生してこの子達が出来上がってから時間がなかったんだから。もう少し時間さえあれば適正もスキルも自由に調整出来る技術が確立したんだけど。……と言うか適正云々HPともかくスキル未調整はよく分かったわね。まだ大してスキル使ってない筈だけど」
「俺がどれだけ写せ身合体で神造魔人のスキルを調整して来たと思っている。なんかこう『もうちょっと時間とマッカと写せ身があればもっと良いスキル構成に出来たんだけどなー』的な雰囲気がお前等から出てたからな!」
とある邪教の世界で数時間は余裕で潰せるヤマト達の観察眼()はともかく、実際乃恵美含めた神造魔人ベースのヒュージ試作機が完成したのは学園襲撃のすぐ後の事であり、その後も実験を行っていたのだがグランギニョル社がここまで早く仕掛けてくるのは予想外の事だったので新型ヒュージの各種機能の調整を終わらせるには時間が足りていなかったのである。
……実際の所、彼等【G.E.H.E.N.A】は“落ち目”の組織であるのでまともな戦力が残っておらず、この世界に来てからも現地組織への援助やテロ活動で戦力を使い切っているので試作品を引っ張り出して戦うしかないのが根本的な原因ではあるのだが。
「悪魔を半殺しからの命乞い写せ身カツアゲ……ううっ前世?の記憶で頭がー」【バトルクロス:ピュアリティプロミス*9】【プロモーション*10】
「半殺しからのカツアゲはナホビノの必須技術だから仕方ないんだ。それとして支援は助かる」【
「あら出番ね。みんな元気になーれ! それっ!」【回復プレロマ*12】【回復ギガプレロマ*13】【黄金のリンゴ+4*14】
「んん? 交代かい」【
「再ビデバフヲ掛ケルゾ」【延長強化*16】【ランダマイザ+3*17】
「タゲ集中でアイツしか狙えんが、これなら当てられる」【龍眼*18】【銃プレロマ*19】【トリガーハッピー*20】【ハメットⅢ*21】【ワンショットキル*22】
なんか前世でアマノザコだった時の記憶の蓋がちょっと開きかけてる結梨だったがそれはともかく後衛からバトルクロスの効果を使ってヤマト達を支援し、それに感謝しつつヤマトは呼び出したイズンのスキルによって味方全体を回復させつつ強化、続けてカーリーを下げて【女神 マリア】を呼び出しつつアラハバキにはデバフを使わせてルサルカ達は2段階弱体化及び乃恵美の防御以外の強化を相殺させる。
そこにケンジロウが魔眼を光らせながら【アステリオンマギカノン】から強烈な銃撃が乃恵美に向けて放たれ、回避能力に特化した改造強化を施されていてもバフデバフを重ね掛けされた事、そしてケンジロウ自身の卓越した銃技もあってその射撃を避ける事は出来なかった上にクリティカルを貰う事になった。
「クリティカルが出たならこれで良いな」【神奈備ノ守】
「私のレベルだと攻撃喰らったら沈みそうだし変わるわ。後よろしくね!」【Change:イズン→マダ】
「更にバフを重ねましょう」【ラスタキャンディ+2*23】【延長強化・大*24】
「デハ次ニ回ソウ」【パス*25】
「最後にもう一撃!」【龍眼】【銃プレロマ】【トリガーハッピー】【ハメットⅢ】【フュージレイド*26】
それによって出来た隙を突いてヤマトは再度防御結界を展開、続けてイズンを下げて【邪神 マダ】を【客人歓待*27】の効果でバフを引き継がせつつ召喚させ、更にマリアにも全体強化を使わせて全能力3段階強化状態とする。
そうして譲られたケンジロウが多重の強化を施した銃撃を狙い過たず乃恵美とルサルカ達に叩き込み、更にはルサルカの乙型と丁型にはクリティカルなダメージを与えるがそれでも研究所そのものを異界として彼女達をそのボスと見立てる機構によって増強された耐久力によって倒すには至らない。
「銃撃をメインで攻めつつ守りを固める事を優先かしら? 随分と消極的ね」
「時間さえ稼げればグランギニョル社の援軍が来るし、そもそもこの戦いは戦略的には殆ど決着が付いてるからな」
「確かに事実だけど言ってくれるわね。でもタダでやられるのも面白くないわ!」【デカジャオン*28】【ヤブサメショット】
実際に戦力が減った状態で奇襲を受けたのが痛かったと乃恵美は認めつつも供給されたマガツヒを解放して重ねが消されたバフと結界を纏めて解除する波動を放ち、続けて急所を撃ち抜く魔弾を敵陣に連射する。
重ねられたバフに対する対抗策であったがマガツヒスキルをそれに使ってしまった事から乃恵美はこのターンで敵を倒す事は無理だとして、ルサルカ達には【メディアラハン】【デクンダ】【佐世木ノ葉】【ラスタキャンディ】を使わせつつ【月下氷霜】で敵のHPを削る。
「負け戦だろうとも最後まで付き合って貰おうかしら!
「持久戦かな、もいっかい支援するよ!」【プロテクト展開*29】
「ナイスだ結璃ちゃん! 面倒なのは挑発状態がまだ残っている所だが」【物理プレロマ*30】【ヤブサメショット+5】
「成る程ォ? じゃア俺が回復しとくかァ!」【メディアラハン+3】
それに対してヤマトは結梨からバトルクロスの機能による支援を受けつつお通しの【ヤブサメショット】で機先を制し、マダはその禍々しい見た目とは裏腹に以外と得意な回復魔法でダメージを癒す。
そしてマリアには再度の【ラスタキャンディ+2】を使わせて味方の全能力を上げつつアラハバキはヨシツネへと交代させ【強化召喚】により攻撃力を1段階上昇、そしてメインアタッカーのケンジロウは再度の【ワンショットキル】にて乃恵美の急所を狙い狙撃する。
「そう何度も急所には当たらないわよ!」
「済まん、どうにか当てたが急所は外した」
「まあ仕方ない、ならコレで行くか」【龍眼】【物理プレロマ】【ヤブサメショット+5】
「ンジャア次譲るゼ!」【パス】
「では守りましょうか」【
だが、咄嗟に身を捻ってクリティカルだけは避けた乃恵美を見てヤマトはもう一度【ヤブサメショット】を放ちつつマダにはパスをさせ、余った行動権でマリアには防御をさせてから最後にヨシツネが同じく【ヤブサメショット+9】を放つ。
武者らしく弓矢っぽい感じで放たれた魔弾はプレロマ系スキルの恩恵もあってルサルカ達にそれなりのダメージを与えるが、自身も使い何度も見た攻撃故にか乃恵美はその魔弾を交わしながら【朧月*32】による反撃をヨシツネへと見舞う。
「分かってたけど色々小細工しても戦力差がきっついわねぇ! まあ一体ぐらいは倒しておきましょうか!」【至高の魔弾・改*33】【ヤブサメショット】
「狙いは俺か!まあ強化されて無いしな!」
反撃の一閃を見舞いつつ攻撃を回避した事によって生じた隙を突いて乃恵美はマガツヒを解放、極大威力の魔弾をゼロ距離から叩き込みつつ距離を取って確定急所の魔弾を敵全体に撃ち放つ。
アラハバキと交代したせいでバフが掛かっていないヨシツネであれば倒し切れて、次の手番での行動回数を減らせれば良いなぐらいの考えの一手であり、最悪食いしばり系スキルを使わせるぐらいの目的であったが……狙い通り至高の魔弾・改はヨシツネのHPを後一撃圏内まで削ったものの、その後のヤブサメショットは“貫通効果を持っているにも関わらずマリアに無効化されていた”。
「なっ⁉︎ 反射まで抜く貫通を無効化!? カーン類のスキルは掛かっていない筈なのに!」
「プレスターンバトルでヤブサメショットはとりあえずパス代わりに使いたくなるよな、俺もそうだし」
『出来れば全属性吸収か反射で埋めたかったが、対応する自動効果スキル持ちが希少で無理だった』
「まさか回復役から耐性受け役になるとは思いませんでした」
| 鋼鉄の純潔 | 自身の防御力が2段階上昇しているかつ防御中、相性を無視して貫通する効果を無効化する。 真5V出典【女神 アルテミス】【女神 マリア】が有するユニークスキル。 |
| 物理無効 | 物理属性相性を『無効』にする。真5V仕様の自動効果スキル。 その辺の一般通過オンギョウキを半殺しにしてカツアゲした写せ身を使ってマリアに取得させた。 |
その理由はマリアの特定条件下でのみ貫通効果を無効とするスキルであり、これと物理無効スキルを組み合わせて【ヤブサメショット】を無効化、プレスターンバトルの法則に則って敵側の行動回数を減らしたのである。
ヤマトとしてはこの世界に来てから強敵がどいつもこいつも貫通持ちばかりだったので、マリアのユニークスキルを見た時点で耐性スキルで埋める貫通対策で調整する事を考えていたのでカツアゲした写せ身でスキル構成を一部実験的に変更していたのだ。
「まあ俺はその後のヤブサメショットで一回死んだけどな。流石に耐え切れん」【不屈の闘志*34】
「問題は【セーフティ*35】を持っているかどうかだったが無かったらしいな。立ち回りや動きで無さそうだとは思っていたが」
『貫通攻撃と命中アップスキルがあるなら必要性は薄い』
「くっ、何か罠臭いとは思ってたけどこれでは……!」
最も【ヤブサメショット】無効化出来たのはマリアだけなのでヨシツネは反撃で喰らったダメージ込みで倒されたが【不屈の闘志】があるので復活しており、それを見て乃恵美は歯噛みしながらも残った行動回数にてルサルカ甲型に【メディアラハン】を使わせて回復させ、乙型にはパスをさせつつ丙型は再度の【佐世木ノ葉】でマガツヒを溜め、丁型には【デカジャ】での強化解除を行わせて次のターンを凌げる様にどうにか態勢を整える。
……貫通無効化には多少面食らったが条件がある以上はマガツヒスキルやアイテムで対応可能であり、このターンを凌げばまだ立て直しが効くと判断しての手筋であった。
「思いの外仕込みが上手く嵌まったから此処は攻めるか」
「3度目の支援だよ! このバトルクロスはその為にあるんだから!」
| 弓流し | 自身の行動でプレスターンアイコンの消費が増加した場合、次の味方ターン開始時にアイコンが1個増加する。 真5V出典【軍神 ヨシツネ】のユニークスキル。 このスキルの為にはヨシツネの【セーフティ】を【不屈の闘志】に入れ替えた。 |
| クロックアップ | 味方単体の次の行動時の行動回数が1回増加。 プレスターンバトル時にはアイコンが1つ増えると裁定。 SH2出典のコマンダースキル。 結梨の【ピュアリティプロミス】は本人の要望でプレスターンバトル時の運用に特化した調整が成されている。 |
だが、それに対してヤマトが取った手はヨシツネのユニークスキルと結梨が使うコマンダースキルの併用により自陣の行動回数を増加させると言う荒技、前の手番での行動HPこうして敵の行動回数を減らした上で反撃に転じる為のものだったのである。
そこから始まったのは増えた行動回数を生かした怒涛の連続攻撃であり、まずヤマトが初手で【ヤブサメショット+5】を放って機先を制し続けてマダが【破壊神 アスラおう】に交代しつつ【強化召喚】で攻撃力上昇、更にマリアが【滅却の札*36】を使って敵のバフを解除し、ヨシツネも交代して再びカーリーが召喚されつつ命中・回避が上昇。
「数を撃てば一発ぐらいはクリティカルいけるだろ!」【龍眼】【銃プレロマ】【トリガーハッピー】【ハメットⅢ】【フュージレイド】
「ルサルカは無視してあの女を集中攻撃! どうせそれ以外は倒しても
「悪しき者どもに裁きを……」【貫く闘気*40】
「私はバフ要員ですね」【ラスタキャンディ+2】
「今回は珍しく私が大活躍さね!」【物理のノウハウ】【千発千中*41】【龍眼*42】【物理プレロマ】【地獄突き+4*43】
更にケンジロウが敵全体に銃撃を放ちルサルカの急所をついでに撃ち抜きつつ命中・回避を下げ、ここが攻め時だとこれまでサポートに回っていたヤマトもお得意の謎光剣による斬撃で乃恵美を断ち切りクリティカルを叩き出す。
それによって出来た隙にアスラおうが祈りの所作と共に力を溜めマリアが味方全体を強化し、更にカーリーが物理態勢を無視する強烈な刺突によって乃恵美を貫いた。
「急所を撃ち抜く!」【龍眼】【銃プレロマ】【トリガーハッピー】【ハメットⅢ】【ワンショットキル】
「叢雲!(2回目)」【龍眼】【万能プレロマ】【天剣叢雲+5 】
「裁きの鉄拳を喰らえい!」【集中攻撃*44】【物理プレロマ】【物理ギガプレロマ*45】【マッスルパンチ*46】
そんなプレスターン使いの連続攻撃はまだ続き、今度は一撃必殺の射撃を行ったケンジロウにより急所を射抜かれ、続けてヤマトの巨大な光剣による斬撃とアスラおうの溜めによって強化された鉄拳を急所こそ辛うじて避けたものの避け切れずに喰らってしまう。
「さ、流石にこれ以上は増強した体力でも……!?」
「敵の手番を減らし味方の手番を増やして死ぬまで殴る! これがプレスターンバトルの基本にして奥義よ!」
「次に回すわ」【パス】
「これで終わりさね!」【物理のノウハウ】【千発千中】【龍眼】【物理プレロマ】【地獄突き+4】
そうして度重なる攻撃でズタボロになった乃恵美では回避行動もままならず、最後に怒れる鬼女の鋭い一閃に胸を貫かれて致命的なダメージを負って神造魔人の肉体が修復不可能な程の損壊を受けた事でマガツヒへと分解されながら倒れ伏したのだった。
──────◇◇◇──────
「……よし、これで片付いたな。行動パターンが単純で良かった」
「サマナーが倒された後も動く辺り【デスマーチ*47】でも積んでたのか? まあヒュージとか言うマシン悪魔は自立行動していたから普通の仲魔とは違うのか」
「結梨がいればデバフも意味ないからね」
その後、残ったルサルカは乃恵美が倒された後も引き続き戦闘を行ってきたのだが、戦闘プログラム通りに動いても指示する人間が居なくなったので動き自体は単調になった事、乃恵美が倒されたので単純に数が減ってマガツヒスキルも使えなくなった事もあってヤマト達に一体ずつ倒されて全滅していた。
こうして無事に戦闘に勝利したヤマト達だったが、まだ【魔王 メフィスト】及びヒュージ軍団と戦っている他のDAT隊のメンバーや部屋の外で戦ってるらしいグランギニョル社の社員がいる事もあって戦闘態勢は解かずに状況を確認する事にした。
「隊長達の方はまだ戦闘中だが優勢に戦えているらしいな、メフィストがヒュージを盾にして防戦に徹している様だが徐々に押している」
「ケンジロウさの魔眼で外の状況は分かりますか? 俺のレーダーだと部屋の外にグランギニョル社の人がいるぐらいしか分からないんですが。ヒュージの反応は大分少なくなってると思うんですけど」
「まあそうだな、結界と言っても外部と完全に遮断する訳じゃなさそうだから見えるだろう。……ふむ、どうやら外側の戦闘は終わりかけているみたいだが……」
ケンジロウが悪魔の因子を有した魔眼で部屋の外の様子を確認した所で扉を閉ざしていた結界が破壊され、そこから嗾けられたヒュージを凡そ倒したグランギニョル社の戦闘員達が現れたのだ。
それぞれ
「あっちはケリがつきそうだな。……さて、じゃあこっちもきっちり終わらせるか」
「いつまで狸寝入りしているつもりだ? 意識がある事は気付いているぞ」
「…………あらら、バレてたか。でもそこまで警戒しなくていいよ、もう何も出来ないし直に消滅するから」
そう言いながら倒されていた筈の乃恵美は身体から赤いマガツヒの粒子を放出しながら起き上がったのだ……最も、施設の機能によって過剰に供給されているマガツヒによって肉体が辛うじて維持されているだけであり、本人の言う通り既にスキルの一つも使えずマガツヒへと分解されるのを待つ身ではあるが。
それでもヤマトとケンジロウは油断せずそれぞれ光剣と銃を向け、結梨もリキャスト時間が終わったコマンダースキルをいつでも発動出来る様にしつつ後ろに待機しているがそんな状況でも乃恵美は動じる事なく、むしろ既に諦めているかの様な雰囲気で話し続ける。
「もう少し粘れると思ったけどあっさり負けちゃったわね。何が敗因なのかしら?」
「ヤマトの相棒(強調)の結梨のサポートのお陰だね(ドヤァ)」
「まあユニークスキルとコマンダースキルによるサポートが無ければもう少し苦戦していただろうな。後は神造魔人とその仲魔のスキル厳選に費やした時間の差か、ユニークスキルの本格的な実戦導入は初めてでアラも多かったとは言えスキル未調整の面子に負ける程俺達も弱くない。……それと、そもそもお前達は勝つ自体が気がなかっただろうに」
「貴様らは明らかに自分達を終わらせて欲しがっていたからな。……全く、散々外道を為しておいて介錯を他者に委ねるなど傍迷惑も良い所だ」
「まったくもってその通りとしか言いようもない回答だねぇ」
相棒ポジションを取り戻した感があってドヤ顔をしている結梨はともかくとして嫌悪感を隠さずに返答したヤマトとケンジロウに対し、乃恵美は苦笑しつつも“自分達が世界を救う研究に疲れていた事”を暗に認める言葉を発する。
……彼等G.E.H.E.N.A.は最初は真っ当に滅び続ける世界を尚も救おうと足掻いていた者達の“末路”であり、これまでの積み重ねによって自分達が外道に堕ちたと分かっていても諦める事すら出来ない故、すり減った心の何処かでは終わる事を望んでしまっていた“残骸”。
だからこそ
「後はそもそも私達G.E.H.E.N.A.は研究機関、しかも新たな世界を救える可能性を求めてエデンでも主流じゃない、ヒュージとか神造魔人とかの技術を主に研究している所だから主流になる程に強力な技術や戦力がなかったのもあるかな。そんな研究ばかりしてるから私達どんどん人員が離れていって規模も縮小した落ち目の勢力だし。昔は
「無駄話はそんな所で良いか? 使えそうな情報を話すなら楽にトドメを刺してやるが」
「向こうは放っておいても普通に隊長達が勝ちそうだからな」
「塩対応ねー、末期の言葉ぐらいゆっくり話させて貰っても良いのに……あら?」
ちなみに彼等が話に乗っているのは自分達が参加せずともヘビクラ隊長達の戦いは趨勢が決すると判断してこれ以上余計な事を敵がしない様に見張っており、それに対して身体から溢れ出るマガツヒが徐々に多くなる乃恵美はどうせもう何も出来ないのにと思っていた。
……が、唐突にグランギニョル社の戦闘員の中でこちら側に向かって来る者達を見つけて乃恵美は疑問符を浮かべる……ものの、その者達の顔を見てすぐに疑問符は氷解した。
「……直接会うのは随分と久しぶりね一葉ちゃん、恋花ちゃん、千香瑠ちゃん、瑶ちゃん、藍ちゃん。もっともそっちにとっては大して時間は経っていないのかも知れないけど」
「お久しぶりです西村……先生」
「あたし達の名前は全部覚えてるんだね。実験材料の一つにしか過ぎないと思ってたけど。……と言うか以前の騒ぎの時にそこのヤマトさんに倒されたって聞いたけど?」
やって来たのは相澤一葉、飯島恋花、芹沢千香瑠、初鹿野瑶、佐々木藍のチーム【ヘルヴォル】の5人、及び今回の作戦に参加した幾人かの学生組であり、あちらのメフィストとの戦いはDAT隊とグランギニョル社員組で十分なのでいきなり転移した結梨の様子を見にこちらに派遣されたのだ。
……乃恵美は過去周回にて【エレンスゲ女学院】と言う裏でエデンが支援していた組織に所属していたヘルヴォルの“先生”を務めていた事があり、面倒を見て様々な事を教える裏側で彼女達を実験材料に使っており、最後には敵対して過去周回のグランギニョル社を殲滅する主導を担ったと言うヘルヴォルにとっては宿敵とも言える間柄である。
「先日倒された後で神造魔人に転生していたのよ。まあもう一度そこのナホビノに倒されて死にかけてるけどね。それと実験に“協力”してくれた人間を全て記憶しておくのは研究者として当然の義務よ、犠牲にした者を忘却するなど許されない。……それで私に復讐でもしに来たのかしら。まあ貴女達にはその権利があるから死にかけの私の首で良いなら好きにしなさいな」
「……貴女がまだ生きてこの世界で悪行を成そうとするなら止める為に戦おうと思っていましたが、わざわざ死にかけの相手を甚振る趣味はないです」
「次は絶対にG.E.H.E.N.A.には負けない! だから頑張って強くなろう!……ってやって来たけど現実は私達が殆ど蚊帳の外で勝手にG.E.H.E.N.A.が滅び掛けてるしねー」
「今日の戦いでも戦闘は殆どグランギニョル社の大人とDAT隊が片付けてくれたし」
「思う所やがない訳ではありませんが、少なくとも衝動的に復讐をする気は失せてますね
「みんながやらないなら藍もやらないよ」
乃恵美の態度を見て態々少女達の手を汚す必要もないだろうと自分達でトドメを刺そうとしていたヤマトとケンジロウだったが理性的なヘルヴォルの言動を聞いて様子を見る事にした。
……実の所、彼女達ヘルヴォルとしてもG.E.H.E.N.A.への恨みつらみは多分にあるのだが、この世界のインフレっぷりに触れた事や仲間達と平和な学生生活を送った事、何より恐ろしい敵だと思っていた相手があっさりやられる所を見たドリフターに良くある困惑のお陰でかなり理性的に対応出来ているのであった。
「ふぅん、まあ私の様な外道を殺して魂を汚す必要はないってのは賢い判断ね。ならこのまま私が死ぬ所をいい気味だと思いながら見ていればいいでしょう。安心しなさい、流石に2度目の転生からの復活はないから私は確実にここで消えるわ」
「……なら、最後に一つだけ言っておきたい事があります」
「何かしら? 最後に恨み言ぐらいは聞いてあげるわよ」
「……嘗てのエレンスゲで私達【ヘルヴォル】のチームを作って皆んなと出会わせてくれた事、最後にそれだけは感謝しておきます」
正直言ってG.E.H.E.N.A.がヘルヴォルにして来た事は外道な実験が大半であり、表向き良い先生として指導していた時期も裏で実験を進める為の演技であって、当然その事を知っているヘルヴォルからは恨み言をぶつけられると思っていた乃恵美は思わぬ“感謝の言葉”を前に苦笑を忘れて真顔になっていた。
「……まさか私に感謝の言葉を送るとはね。嘗ての世界で貴女達には相当に酷い事をした筈なのだけれど」
「貴女達G.E.H.E.N.A.への憎悪は当然あります。だからこれはあくまで大切な仲間達と出会わせてくれた事への礼と、何より私達自身の気持ちに踏ん切りを付ける為のモノなので決して貴女の事を想ってとかではないです」
「アンタらへの恨みつらみはあるけど死にかけの相手を前にしたら萎えるわー。G.E.H.E.N.A.ももう潰されたしー」
「藍は復讐よりも学園で皆んなとたのしく遊ぶ方がいいな」
「藍ちゃんもそう言っているので貴女達への憎悪には一区切りつけようかと」
「可愛い藍を愛でる方が大事。……それに憎悪を抱き続けられる様な生活じゃなかったし」
彼女達ヘルヴォルがこの世界に来てからグランギニョル社に保護され、そこの真っ当な大人が子供を戦わせる事は出来るだけ避けたいと言う方針で面倒を見つつ平和な学園生活を送らせた事で憎悪や心の傷が癒えていたが故、自分達の気持ちをある程度割り切る事は出来ていたのでこの様な対応となり……そんな彼女達を見た乃恵美は嘲りではない普通の笑みを浮かべた。
「私達への憎悪にある程度割り切りをつけられたのね。……貴女達の様な実験対象には真っ当な正義感と倫理観を教え込んで、仮にG.E.H.E.N.A.の実態に気付いて離反しても自分達の意思でG.E.H.E.N.A.に戦いを挑む仕組みになっていたのだけど。どうやっても……例え次の世界に逃げても最終的には実験対象のデータが取れる様に」
「うわ、表向きの教師の顔にそんな意味もあったの? 本当に最低ね」
「だからこそ、私達と戦う道を選ばずにデータを取らせなかった貴方達はG.E.H.E.N.A.の目論見を上回ったわ。おめでとう、貴女達ヘルヴォルは間違いなくG.E.H.E.N.A.に勝利したのよ。そのトップだった西村乃恵美ぐらい補償するわ」
「……そう言われても大して嬉しくないんですが」
「でしょうね。……まあ“先生”と言ってくれた貴女達に応えて消える前に少し情報を話してあげるわ」
そう言いながらも乃恵美の身体から出るマガツヒの赤い粒子は増え続けており、その肉体は徐々に輪郭を失っていっているのだが、それに反して彼女の表情は先程までとは違い穏やかなものだった。
「まず今回は色々と条件が揃ってるからこの後のセプテントリオン襲来が終わった後、所謂“三大脅威”とか呼ばれてるバカとクズとゴミ……世界移動者達の大勢力が本格的に攻めて来て戦争状態になるだろうから気をつけなさい。私達が所属してたエデン含めてこの連中はどいつもこいつも碌でもないヤツらばっかりだけど主戦力の実力だけは本物だから、少なくとも研究機関でしかないG.E.H.E.N.A.程度とは比べ物にならない化け物の集まりよ」
「セプテントリオンとかいうクソイベの後にクソイベを重ねるんじゃねぇよって言いたいな」
「それと私達が消えてこの研究所異界が解除されたら外法な実験場は消滅する様にしてるけど、今までの研究データが集めた情報室や真っ当なアイテム類が収まった倉庫は残るから回収して好きに使って良いわよ。単に面倒な所は後腐れなく処理する機能なんだけどG.E.H.E.N.A.に勝利した報酬って事ね」
「その辺りはグランギニョル社に任せる」
最も、ただでさえG.E.H.E.N.A.の情報戦には手間取ったグランギニョル社なので回収した情報やアイテムはキチンと精査した上で運用するだろうが……そう考えていたヤマトだったがそこで乃恵美の視線が自分に向いた事に気付いた。
「ああそうそう、そっちのナホビノは魔人王謹製の神造魔人由来だったわね。だったら魔人王には気を付けた方が良いわよ……向こうに習合って形で吸収されるから」
「どういう意味だ」
「魔人王製の神造魔人はスキル運用能力強化とか含めた拡張性に特化してる改造が施されてるけど、その中には同型の神造魔人の写せ身を取り込んでその力を自分のものにする機能があるのは知ってるかしら。……実はこの辺りの改造の根幹部分のブラックボックスには“魔人王自身の肉体のデータ”が使われてるのよね」
「……まさか」
「そう、魔人王製の神造魔人、及びそれに由来する合一神を倒した魔人王は自身のデータから出来たブラックボックスを介した習合──【思念融合】を行ってその力を取り込む事が出来る。合一神ならざる自分が特異点になり得るナホビノの力を得る為、様々な世界に神造魔人をばら撒いて目的の力を得たナホビノが生じる事を願い、最終的には自らが出来上がった合一神ごとその力を取り込む……ってのが狙いだと私達は推測していたわ」
ヤマト自身破損したアオガミ型神造魔人から写せ身を吸収しそのスキルの全てを獲得したする事が出来たので、大元の【魔人王】が同じ事が出来るという話には真実味があると思わされた。
「まあやたらめったらに神造魔人をばら撒いてるから成功すれば御の字のサブプランだとは思うけどね。もっともこうして貴方が今ここにいるなら成功したって事かもしれないけど。……同じ様な立場から言わせると結構迷走してる感じもするんだけどねぇ」
「……魔人王が考えている事は俺には分からんが、どの道因縁がある相手なのだからこっちに来るなら返り討ちにするだけだ」
「まあそれに関してはご自由に、私は神造魔人研究で得た推論をちょっと話したかっただけだし。……何にせよ魔人王も私達含めた三大勢力──エデン、テオゴニア、テヴァローガとか、後はこれらと敵対してる漂流者とかでも繰り返し続けてる連中は大なり小なり何処か“歪んでるから”警戒しておいた方が良いわよ。記憶消去や情報洗浄も限度があるから例え味方ヅラしてても現地民にとってはアレな行動を取る事も十分あるからね」
「貴様が言っても微妙な気分にしかならんな」
「でしょうねぇ」
自分が外道である事は十分に理解している乃恵美は苦笑しようとするものの、既に顔面の数割りがマガツヒに分解されている事に気がついて最後に嘗て生徒として面倒を見ていたヘルヴォルの少女達に言葉を残す事にした。
「流石にそろそろマガツヒが尽きるから限界ね。……この姿をよく覚えておきなさい、どんな理由があれ外道に堕ちた者は何一つ目標を達成出来ずに惨めに死ぬもの、世界とはそうあらなければいけないのだから。……そんな真っ当な世界を救いたかったのにいつからこうなってしまったのかしらね…………」
そう言いながら少し寂しげな表情でマガツヒに分解されて消え去った乃恵美を見てヘルヴォルの少女達は複雑な表情を浮かべていたが、同時にDAT隊とグランギニョル社員がメフィストを撃破してこの場での戦いが実質的に終了した事を受けてヤマトとケンジロウが動き出す。
「とりあえずこれでG.E.H.E.N.A.側の戦力は壊滅したのか。とりあえず確認はしないといけないですかね」
「そうだな、あの女の言う通りなら異界も崩れるだろうそれを含めて調査と後始末は必要か。……君達も色々思う所はあるだろうが、その辺りはこの戦いを終えて家に帰ってから仲間達と一緒にじっくりと話し合って考えるといい」
「わ、分かりました」
そうしてG.E.H.E.N.A.拠点での最後となる戦いが終わった後、DAT隊とグランギニョル社員は速やかに残りの施設内の調査を行っていき、ケンジロウの言葉に従ったヘルヴォルを含む学生組はもその手伝いを行った。
……その結果、施設に残っていたG.E.H.E.N.A.の研究員は乃恵美とメフィストが死んだ時点で自害していた事が分かり、施設内の生存者はゼロである事と乃恵美が最後に残した通り研究データや資材が確認出来た。
「大体DAT隊からの報告にあった証言通りだったが……この施設の後始末もやらねばならんか」
「ああ〜! 仕事をブッチして来たからこれ終わったら残業地獄なのに〜!」
「おのれG.E.H.E.N.A.! 最後まで面倒くさい!」
それを受けてグランギニョル社は色々と時間もない(会社を放置しているので)事もあってそれらを回収しつつ施設の制圧を完了させ、愚痴りながらも各種の後始末を早急に終えた事でG.E.H.E.N.A.研究施設への侵攻はグランギニョル社とDAT隊側の勝利と終わりG.E.H.E.N.A.と言う組織は完全に消滅する事となったのだった。
……最もこの後に起こりえる事柄の前ではG.E.H.E.N.A.の消滅程度は前哨戦にもならない瑣末事として特に話題にもならずに埋もれていく程度の事であったのだが……。
あとがき・各種設定解説
ヤマト:アイコンを稼いでクリティカルで殴ればいい
・ユニークスキルと言うなんか生えて来た新要素を活かすために写せ身合体で仲魔のスキルを入れ替えたが、実戦導入してから間もないので運用含めてもう少し調整が必要だなと思っている。
・今更創世云々はやる気はないが過去の因縁である魔人王とかと決着をつけたり、この世界で出会ったDAT隊やリリィの少女達を守る為であれば戦うのも躊躇ないし、どうしても必要になったら本人的にトラウマな創世関連も行うかもしれない。
・ただし今の自分だとその段階になったら“絶対の法による秩序の維持”でも“八百万による革新的な多様性の在り方”でも“真に人間のみの世界”でもない“今を生きる人間にとって厳しすぎる”コトワリをこの世への嫌気とトラウマから示しそうなので出来ればやりたくないと思っている。
結梨:相棒ポジションは死守出来たと思っている
・バトルクロス【ピュアリティプロミス】は同名のアサリソシャゲ衣装の結梨ちゃん版をイメージした装備で、ヤマトとプレスターンバトルしている状態でもコマンダースキルが使える様に調整がされた品(システム的にはプレイヤーがコマンダースキルを使える感じ)
・改造型デモニカであるバトルクロスは女性用だとグランギニョル開発陣が考えた複数のデザインが用意されており、計画段階で破棄されたソシャゲ季節もの衣装みたいなのもあるとか……男性用デザイン?そこに由緒正しきバケツヘルムがあるじゃろ?
グランギニョル社:この後放置した業務と後始末でデスマーチ
・バトルクロスへどのデザインでも昨日は変わらないので一応男性用のもバケツヘルム以外にも無難なデザインが複数あるが、女性用と比べると明らかに手抜きとか言われてる模様(機能面での差異はない)
G.E.H.E.N.A.:滅びた
・メフィスト側は深層スキル発動条件を満たさない様にDAT隊が誰も落ちない様に立ち回って時間を稼ぎ、結界を破ったグランギニョル社員が来た時点で彼らにヒュージを任せてヘビクラ隊長達が総がかりでメフィストをボコして倒した模様。
・乃恵美が言った通りエデンの中でも技術者勢力としては結構なものだったのだが、世界を救うと言う願いを捨てられず歪んだ事で迷走しており落ち目な勢力になっていたのでインフレ現行周回のグランギニョル社に敗北した。
・勢力としては完全に滅びたが逃げ出した人員もいたが研究データと共に何処かに回収されたり、或いはのたれ死んだりした感じでもう出てくる事はない。
読了ありがとうございました。
これにてゲヘナ戦へ決着。次は本家様の進行を見つつ幕間かセプテン編になると思います。それでは良いお年を。