真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~ 作:貴司崎
「……世界が終わったのは突然だった。何のこともない日常が続いたある日、東京を中心として日本の全てが【ボルテクス界】に変異してマガツヒが溢る“地獄”へと変わったんだ」
グランギニョル日本支部の隔離室、そこにはグランギニョル社長夫人の朋美とグランギニョル社と契約したデビルバスターチーム【DAT隊】の面々がおり、彼等は一様に暗い表情で椅子に座り込む八坂ヤマトの話を聞いていた。
その青年は相応の力を有している筈なのだが、まるで懺悔でもする様な暗い雰囲気と表情のままで言葉を紡いでおり、そんな彼を隣にいる結梨は心配そうな表情で見ていた。
「何でそうなったのかはあの頃の俺には分からず、今も【魔人王】のヤツが至高天に至る為に起こしたらしいというぐらいしか分からんが、それでも後に【神州受胎】と呼ばれる日本全てのボルテクス界化の影響で人間が多数マガツヒと化し、これまでのGPとかを無視して強力な悪魔が跋扈する様になった」
『ただ【神州受胎】と呼ばれる現象はボルテクス界としても特異なモノであったとされている。範囲が日本全体と広かったからなのかボルテクス界としては“発生点”であった東京以外の地域では空間のマガツヒ濃度、或いはボルテクス界としての“深度”が低かったのだ。故に東京などの一部の地域を除いた場所にはマガツヒに分解される事が無かった人間が生き残っており、ボルテクス界──【ダアト】と呼ばれる様になった後もある程度は文明や社会や組織が維持されていた』
「……それがいい事だったかは別だがな。そんな中で東京に住んでいた嘗ての俺はボルテクス界の渦中で偶然生き残って聖華学園に保護されたんだ」
途中でヤマトの半身であるアオビトも説明に加わり、話は【神州受胎】が起きてから偶然生き残った彼が生き残りの避難民を救出していたその世界における【聖華学園】の事に移っていく。
……受胎化した日本列島の中でも東京は最もボルテクス界としての深度が濃く、故に多くの人間がマガツヒに分解されレベルの高い悪魔が多数ひしめく様な場所となってしまっていたが、そんな中で覚醒していたが故にマガツヒとならなかった者が多かった聖華学園は未だに機能しており生き残った者の避難場所となって機能していた。
「元々学園自体が緊急時用のシェルターとして使える様に作られてた事、退魔生徒会や教員など覚醒したレベルが高い人間が多かった事があって東京でも聖華学園は機能を維持できていたらしい。そんな所に俺はボルテクス界になった時の影響で偶々覚醒出来たお陰で保護されたんだ。まあ家族は全員マガツヒになったが」
『ちなみにあの世界では【神州受胎】が起きる前まではレベルが30もあれば一流、平均レベルは10ぐらいで50以上で超越者扱いされる平均戦力だ。そして東京周辺ではレベル50越えの悪魔が出没する事も珍しくなかった。……聖華学園は教師も生徒会もレベル30前後が上澄みであったから状況は相当に厳しく、近くベテルの協力で生徒と避難民を都内から退避させる計画が動いていた』
当時の東京にいた悪魔などの大勢力は複数居て互いに戦いあっており聖華学園自体を敵視して戦闘を仕掛ける事が少なかった事もあって辛うじて存続出来ていたがそれも限界に近かったのだ。
だが、脱出計画が実行に移されるよりも早く【ダアト】における大勢力の一つ、複数の大悪魔達による連合勢力【混沌の悪魔達】の襲撃によって聖華学園は壊滅して僅かな生き残りが散り散りに逃げる事となったのだ。
「その途中で俺は悪魔の群れに囲まれて窮地に陥ったんだが、そこでまだアオガミ人式だったアオビトと出会い、合一する事でナホビノとなった」
『当時の私はベテルに所属していた神造魔人の数少ない稼働可能な機体であり、辛うじて動かせるレベルまで修復されて偵察として聖華学園へと派遣され、そこで少年と出会い合一した形だな。私は【魔人王】がそういう風に作った神造魔人だったからなのか合一に関してはスムーズに済んだな』
そうしてナホビノとなり力を得たヤマトだったがそれでもレベルは低かったので周囲の悪魔を仲魔にして戦力を蓄えつつマガツヒの影響で強大化した悪魔など戦えない相手からは逃げながら、自分達を保護してくれる可能性があるアオガミからの情報から残っていたベテル本部の場所へと向かったのだ。
「私とヤマトが初めて出会ったのもその辺りだよね。当時の私は【一柳結梨】じゃなくて【神造魔人 アマノザコ】だったけど。……あの時はまだ仲魔じゃなくてついていくサポーターみたいな感じだったっけ。ちょっと色々あって“ヤタガラス過激派”から逃げていたから自分の中の力を制御出来なくて戦力にはならなかったし」
「まあアイテム収集や偵察には役立ってくれたさ。……それに家族を失いようやく出来た聖華学園って居場所も無くなった当時の俺にとって、一緒にいてくれた君の明るさには救われていた」
「……えへへ、ありがと」
『そうして探索を進めていた私達は同じく聖華学園から逃げて生き延びていた退魔生徒会の生き残りと出会ったのだ。彼等は余程酷い戦いを得ていたのか数は20人程で多くが負傷していた。その中には【一柳梨璃】と【白井夢結】の姿もあったな。……そんな彼等をどうにか助けられられないかと私達は思って彼等に協力する事になった』
そんな風にちょっとだけ雰囲気が柔らかくなった二人から話を引き継いだアオビト曰く、悪魔の平均レベルが低い地域まで逃げる事は出来たものの回復魔法だけでは治しきれない負傷者も多く、何より水や食料などの不足が祟ってベテル本部がある場所まで赴く事が困難だったので、彼等は近くで活動していた【アプサラス】が率いる少数勢力に助けを求める事となった。
「アプサラスが率いる勢力は神州受胎が起きた後で弱者でもその世界で生きられる様、互いに助け合いながら生活する方法を教えて実践する集団でな。聖華学園側でも穏健派組織として知られていたからどうにか助力、せめて資材を売ってくれればと尋ねたんだ」
「おお、週末世界では割と良心派っすね」
「良識派故に彼等もそこまで余裕は無かったんだがアプサラスの巫女を務める母娘の仲介で条件付きだが資材を分けてくれる事になった。……まあその条件は最近地域を荒らしまわって自分達も被害を受けている【リャナンシー】が率いている勢力の討伐だったけど」
『彼等は一人で生きられない弱者が集まった勢力だったから一定以上の強者を倒すのは難しかったらしく、そこで実力があった私達に自分達の脅威となる勢力の討伐を要求するしてその対価を渡すという形だった。あの当時の日本では穏当な部類の取引ではあったし他に手段もなかったから了承した』
件のリャナンシーは才能がある人間を自らの力で寿命などを対価に覚醒させ、その人間達を率いて才なき弱者から搾取して勢力を広げており、アプサラスの勢力も被害に遭っていたので討伐を願い出たのだと言う。
他に選択肢が無かった事もあり聖華学園の生き残り達はその依頼を引き受け、未だ戦闘可能だった退魔生徒会の生き残りとヤマトが討伐に向かいリャナンシーの勢力を撃ち倒したのだが……。
「その時、退魔生徒会生き残りの代表だったサマナーの“先輩”は『リャナンシーとの戦いは自分達だけでいい』と言ってくれたんだが、当時の手に入れた力に酔っていた俺はそれを固辞して彼等と共に戦う事を選んだんだ。……先輩のその言葉が未だに人と戦った事がない俺を気遣ってのものだと気付いたのは、リャナンシーに力を与えられた人間を倒して彼等もまたこの地獄で生き残る手段を探して実行に移していただけの人達だと気付いた後だったが」
『あの時の彼等のコンディションでは私達がいなければリャナンシーの勢力にやられていた可能性は高い、それに連中が与えられた力に酔ってやり過ぎていたのも事実だ』
「……初めての対人戦の後の反応としては真っ当なものだ。むしろそんな世界で『邪魔なヤツぶっ殺してやったぜヒャッハー!』は精神性にならない分マシな部類だろう」
「この文明が維持された世界でもそういう覚醒者は珍しくないしなぁ。そういう連中がちゃんとした異能者にしばかれるのも」
嘗ての『何かを選択する事は何かを斬り捨てる事である』事を理解していなかった自分の事を自重しながら話すヤマトに対し、初めての対人戦を終えた者は大体そんな感じだし、むしろそういう人として真っ当な後悔が出来る分だけマシな方であると考えたケンジロウとミツヒロがフォローする。
実際、その後退魔生徒会の“先輩”にも今回の依頼で手に入れた資材で生徒を救えた事、アプサラス派の母娘達を助けた事は事実だとをフォローされたヤマトは持ち直し、その後アプサラス勢力の人達から感謝されつつベテルの本部まで進む事となる。
「とりあえず無事に目的地に着けたなら良かったじゃないか。ポストアポカリプス世界で真っ当な勢力と交流出来たんだし」
「まあそうですね、当時の俺もその辺りは良かったと思ってました。……後でそのアプサラス勢力はメシア教過激派の勢力に取り込まれ、アプサラスの巫女をやっていた母親は生贄にされて、娘はその適性に目を付けられて【人工聖母/女神 マリア】に改造されましたが。後でメシア教の残党を倒す時に遭遇して余りの苦痛に殺してくれと呻く彼女を俺が自分の手で終わらせました」
「oh……やっぱメシア教ってクソだな。一応聞いとくけど今もマリアとか仲魔にしてるけど大丈夫なん?」
「倒した悪魔を合体で仲魔とするのはナホビノの基本なので同種の悪魔だろうが別物と割り切ってます。ダアトではとにかく戦力を増やさないとやってられないので慣れました」
そう言うヤマトだったが仲魔にするのはともかく選択の結果で救えた者達を取りこぼすのは彼にとって相当根深いトラウマとなっており、この一件を含めて
それからヤマト達は道中の邪龍を倒したりファストトラベル出来るアイテムを手に入れて資材集めやクエストに奔走したり、話が通じる悪魔から依頼を引き受ける代わりに物資の調達やベテル本部の情報を聞き出すなどして何とかベテル本部へと辿り着いた。
「その時に【ヤタガラス】に【葛葉ライドウ】を名乗る人物に絡まれたり、後の
『簡単に説明するがあの世界の【ヤタガラス】は腐敗が進んでいた上層部を粛声した若手が中心になっている所謂【ヤタガラス過激派】で、そのやり口に否定的な穏健派が集まって作られたのが【ベテル】で両者は対立していた。……だが、神州受胎が起きた事で対立している余裕が無くなったので非戦協定を結んで一応の協力関係になった形となる』
「まあメシア教は神州受胎によって現れた四大天使をトップとして再編成、受胎に巻き込まれた人を保護する名目で取り込んで勢力を一気に拡大してるし、ガイア教も現れた一神教に敵対する大悪魔の同盟組織【混沌の悪魔】の傘下に入って勢力としては強化されたりしたからな。ここは他にもギリシャ・北欧・インド・エジプト系の混沌の悪魔達に加わらなかった大悪魔の傘下になった勢力もあったが。……それに対してヤタガラスやベテルは事態の解決に奔走したが上手くいかず、多くの死者を出して戦力が減った結果として大小様々な勢力が入り乱れる群雄割拠な状況となっていたのが当時のダアトの状況だったんだが」
そうしてダアトの中ではまとも寄りの勢力であるベテルに保護された彼等はタダ飯喰らいを置いておく余裕がない事もあってその一員として働くことになり、特にヤマトはベテルの人手不足もと合一神として力とレベル99まではノンストップで上がる成長性もあって討伐などでそれなりに活躍していた。
だが、ある時聖華学園の生き残りが【妖精の集落】に保護されていると情報を得て退魔生徒会の生き残りと共に迎えに行く事になったのだが……そこで夢結さんが神造魔人実験の事故によって暴走して姿を消すトラブルが起こったのだ。後にこの事件は夢結を手に入れる為にベテルに潜入していた戸田琴陽が【白井咲朱】の指示で彼女を合一神にする為に行った事と分かるが、当時の彼や元生徒達にとっては青天の霹靂とも言える異常自体故に混乱が起きた。
「ですが、彼女が消えた方角が【妖精の集落】がある方向だったので生徒達を迎えに行くついでに彼女の所在を調べるという方針で動く事となり、それからは道中の悪魔を倒したり情報を集めたりしながら急いで【妖精の集落】へと向かったんです。お姉様を見つけ出すと躍起になってる梨璃と共に」
『その途中で何処かの勢力に【夜魔 リリム】の悪魔人間にされた少女達の集団が情報を知っていると掴んだ。彼女達は売春婦みたいな事をしながら自分達の生存に必要なマガツヒを得ていたが、それを悪と断じて粛清しようとするメシア教過激派の勢力に追われていたから連中を倒せば情報を教えると交渉して来たのだ』
「やっぱりメシア教はクソっすね。しかしさっきと同じ様な展開……」
「情報が欲しかったのと彼女達の素性に同情した俺達はメシア教徒と戦う事を選んで、天使含めた教徒を叩き潰して彼女達を救い夢結が居た場所の情報を貰って別れました。……後で彼女達はガイア教の傘下に入ってしまい【地母神 イナンナ】降臨の為の生贄に使われて、俺が辿り着いた時には既にマガツヒとなって消滅してしていましたが。イナンナは倒せても彼女達を救えなかった俺は結局どんな選択肢を選んでも……」
「……ガイア教もクソなのに変わり無かったっすね」
その様に過去の己が行った“選択の末路”を語るたびに目が死んでいくヤマトを見てトモヤ達DAT隊は彼が“自分が選択する事そのものを忌避している”理由を察し始めていた。先の【マリア】の一件含めてこうした事が何度も積み重なった末なのだろうと。
『……そこから【妖精の集落】へと向かった我々は道中出会った“騎士”より妖精の集落への道と生徒達の現状を聞き、重傷を負った生徒を助ける為にマンドラゴラ狩りをしたりしたのだがその途中で白井夢結の居場所を掴み、他の生徒達をベテルへと連れていく必要もあったので私達と梨璃のみで夢結の所に行く事になった。……当時は逃亡して夢結の状況を詳しくは知らなかったからな』
「その結果は以前も話した通り暴走した夢結さんに俺と梨璃さんが殺され、人間を辞めて【至聖女】となった梨璃さんに救われた上で夢結さんを介錯すると言う最悪の結果に終わりました。……どれだけ強くなってもどうしようもなく何もかもが手からこぼれ落ちて行くと知ったのはこの時ですね」
「……ヤマト…………」
力のない笑みを浮かべながら椅子に座り込むヤマトを見て結梨は何か言いたげな表情を浮かべるが、過去話がまだ続いている事から一旦はその言葉を飲み込んだ。
……その後のヤマトは友人でもあった二人を失った反動なのか更なる力を得る為にベテルに敵対する悪魔狩り悪魔合体魔丞狩りを繰り返し、ナホビノの力もあってレベルを上げていき、既に単純な戦闘能力においてはベテル内でも上位と言える領域に至っていた。
「それから暫く経った後、メシア教と混沌の悪魔達が大規模な戦闘を起こして双方痛み分けで集結したと言う話が広まってね。そこでベテルはヤタガラスと一時協力して現在の日本で最も危険な勢力と言える混沌の悪魔をこの機に討伐する作戦を提案した。……まあ、お互いに攻撃せず時期を合わせて混沌の悪魔達を攻撃しようって程度の話だったが、とにかく混沌の悪魔達への攻撃作戦に俺もベテルの一人として加わった。連中を倒せば少しはダアトの状況が良くなるかもと淡い期待を抱きながら」
『道中では情報収集を兼ねて依頼を受けたり、混沌の悪魔幹部が展開した炎の結界をヤタガラス側からの紹介で協力してくれた国津神達の助力で倒したりもした。後は魔王城へと乗り込んで先に入っていたベテル所属メシア教穏健派の大天使やヤタガラスのサマナーと一時協力しながら首魁を討ち取って混沌の悪魔達を滅ぼす所まで行った』
「ただし、その戦いの影響でベテルやヤタガラスも相応の犠牲は出ました。俺がベテルに所属している時に世話になった人達も何人も死にましたし」
そうして混沌の悪魔達はほぼ壊滅状態となり、同時期混沌の悪魔と相打ちになったメシア教過激派も弱くなった大勢力は囲んで棒で叩けと言わんばかりに他のガイア勢力に攻撃を受けて勢力を大きく減じさせていたのでダアトの状況は一時的に落ち着く事となる。
その辺りで魔王達を倒してベテルの中でもトップクラスの実力になっていたヤマトには混沌の悪魔やメシア過激派の残党の中で不穏な動きをしている者達の討伐命令が下される事となり、先の【マリア】や【イナンナ】とは此処で遭遇して討伐されている。
『あの時のベテルで動かせる戦力は我ら含めて僅かだったからな。多くは負傷したか死亡したかそもそも別の仕事に忙殺されていて、単純な武力が必要な雑用は我々に振られる事が多かった。
「そして魔王城攻略から暫く経った辺りで東京の台東区にてダアトとなった日本を元に戻す手段、日本中のマガツヒを集めたカグツチによって世界を元通りに再生させられると言う情報が手に入りました。……今思うと都合良く情報が手に入ったので魔人王辺りが一枚噛んでる気がするけど」
『今思うとベテルにも魔人王の手が伸びていたのかもしれん。嘗てのダアトで我々は【魔人王】に直接遭遇した記録はないので断言出来ないが、創世の情報やテオゴニアのスパイだった琴陽達の情報が都合良く届いた辺り裏で糸を引いていた可能性は高いだろう。アマラコンピューターからの情報を踏まえると当時のベテルのスタッフや協力者に怪しい者がいた気もするが分からんな』
とにかくボルテクス界となった日本を元に戻す方法が分かった以上はベテルも動かざるを得ず、何より同時期に同じ情報をメシア教の生き残りやギリシャ・北欧・インド勢力などのガイア勢力も入手して創世を目的に動いていると言う情報も入って来たので動かせる戦力をカグツチがあるらしい東京に送って創世による世界の再生を狙う事となった。
創世を成した場合は創世を行う“王”のコトワリに従って世界が再構築される事も分かっていたので、ダアトで好き勝手している他の勢力が創世を成せば碌な世界にならないだろうと考えたベテルは他勢力の妨害をしつつまだマシなコトワリを持つ者で創世を行う方針で動く事となった。
「その中でベテルからは創世を成す資格がある者としてメシア教穏健派所属の“大天使の半身たる異能者”と元ヤタガラス穏健派所属の“天津神の半身たるサマナー”が名乗りを上げた。どちらも戦いの中で力を付けてベテルの主戦力と言えるぐらいの実力があった者達で、共に何度も戦場を共にした“戦友”とも言える者達だった」
『それぞれ『一神教の正しき教えの元による秩序により弱き者でも安寧に過ごせる世界』と『八百万の中から一人一人が仕える神を選びそれぞれ住み分けしながら最低限のルールを持って住み分け出来る世界』と言うコトワリを持って創世を行うと宣言した』
「どちらもダアトでの戦いで虐げられ命を落としていく弱者を見て彼等が生きられる世界を創る為に、或いは数多の悪魔達が無制限に人間を使って争い合う世界を見て最低限の不文律を齎し住み分けが出来る世界を創ると言う目的で掲げたコトワリであり、俺自身それぞれのコトワリには共感する部分もあった」
まあ、同じ組織内でそんな事になったので危うくベテルがヤタガラス穏健派とメシア穏健派に分裂しかける事にもなったが、同じく創世を目指す他勢力が残っていた事と“どちらの意見にも賛同しなかった”ヤマトを中心とした中立派が執りなした事で『とりあえず敵勢力を全て倒してベテルで創世を行える段階まで持っていくのが最優先』という話となった。
流石にコトワリを掲げた二人も今の段階で内乱を起こす様な事はしなかったし、もし決着を付ける段になった時もこれ以上余計な被害を出さない様に自分達だけで勝負を付けると示し合わせるぐらいの思慮が彼等にはあった……その時にはベテルでも最強となっていたヤマトに自分達のコトワリに賛同してくれないかと話を持ち掛けると言った裏工作ぐらいはやっていたが。
「その時は俺がどっちかに付くとベテルが割れかねない事もあって保留にしたが、そもそも当時の俺は“どちらのコトワリにも賛同する気が起きない”と内心で思っていたからな。……二人ともダアトで踏み躙られる弱い人間を見て“そんな者達を少しでも減らしたい”と考えて至ったコトワリであり、そこに関しては俺も同じ考えではあった。……だが、そのどちらも“人が悪魔の上に在る世界”としか俺は思えず、悪魔と人が交わる限りどちらであってもまた同じ悲劇が起きるのではないかと考えていて、だからこそ『人と悪魔を切り離す』様な創世を行えないかと思っていたんだ』
『そうしてその辺りの話は一旦保留としたベテルはまず創世を成すためのカグツチがあるとされる東京の調査、及び同じ目的で東京に集まっている敵性勢力に対する対処を方針として動く事となった。我々も東京で事情を知っていそうな上位の悪魔から聞き出したりして創世についての情報を得ながら、それぞれ互いに潰しあいながら東京で動いていた各勢力を相手に戦っていた』
それからヤマトはベテルからの依頼でカグツチのある場所を探しつつ敵性勢力のボス級悪魔を相手に戦闘を続け、それらメシア過激派の大天使・北欧神話勢力の魔神・ギリシャ神話勢力の女神・インド神話勢力の破壊神・ヤタガラス過激派の悪魔召喚師などの強敵を全て倒しながら創世に纏わる詳しい情報を可能な限り得ていった。
……その道中で得られたナホビノやカグツチ、創世に纏わる情報から『人のみの世界を創世する』事は決して不可能ではないとしたヤマトはダアトにおける多くの悲劇の原因である人と悪魔の関わりを無くすコトワリを抱いて創世を目指す事に決めたのだった。
「ヤタガラス過激派の連中が創世で護国の邪魔になる勢力の悪魔を現世から退去させて自分達一強状態の世界を創る事を考えてたので、それなら悪魔全てを現世から退去させる、或いは力を大きく削いで人間が優位になる世界を創れると当時の俺は思ってしまったんだ。……まだこの時には他の2人のコトワリと比べて迷っていたんだが……」
『東京での戦いがひと段落した辺りでベテルのメシア教穏健派が敵対勢力の悪魔をナホビノにさせない為に無辜の民を抹殺していた事が分かり、更にヤタガラス穏健派も過激派と裏で手を結んで神造魔人作成の為に非道な実験をしていた事が分かった』
「人間としての2人は信用していたしそのコトワリにも賛同出来る部分はあったが、半身である悪魔がそんな事をしているならダアトで見てきた悪魔やそれに仕える人間達の様に信じる事は出来ない……そう考えた俺は『人のみの世界を創世する』事を選んで彼等と戦う事に決めたんだ」
当時のヤマトは元が悪魔の存在を知らない一般人だった上でダアトで強大な悪魔が率いる勢力によって踏み躙られる人間を身過ぎており、入手した裏側の情報もあってベテルの“天津神”や“大天使”すらも同じ様に人間を虐げるモノにしか思えず、最早自分が創世を成して悪魔を現世から完全に排除するしかないと考えたのだ。
……そうして己のコトワリを定めた彼はカグツチに繋がる場所でそれぞれの半身と合一してナホビノとなった2人と戦い、苦戦はしたものの最終的にはダアトの最前線を誰よりも走り続けてナホビノとして様々な強敵と戦い続けてきたヤマトの実力が上回って勝利者となり創世を成す権利を得たのである。
「まあ、当時の俺は散々戦い続けて御霊マラソンまでしてレベル99まで上がってたし、そもそも合一神になってレベルが上がって強力なスキルを覚えても“人としての知恵”を失ったのなら今まで散々倒してきたそこらにいるボス悪魔と大して変わりはないしな。……世界を在り方を決めるのに結局やってる事がバトルロイヤルなら、結局はコトワリ云々関係なくて強いヤツが勝つだけなんだよなぁ」
『……そして我らはカグツチを使って“人のみの世界を創世する”コトワリを持って世界を創り直したのだが、本来の【至高天】ならともかくカグツチを使う場合はボルテクス界の解除と元の世界の再生と死者の可能な限りの蘇生、現世と魔界を隔絶と人間の認識操作で悪魔やダアトの事を忘却させての現世からの悪魔の退去という形になったが』
この時にヤマトはダアト時代の記憶を消して只の人間として現世に残り、アオビトは仲魔以外のナホビノだった時の力を大体使える状態で現世に干渉出来ない位相に待機して世界を見守る事になった。
……彼が記憶を捨てたのはダアト時代のトラウマやアオビトの同情もあるのだが、カグツチで『人のみの世界の創世』を実行した以上は実行した本人もその影響をモロに受ける必要があったというのも大きく、創世を成すには彼自身も記憶や仲魔を捨てた方が安定するからでもあったのだが……。
「まあ結局なんか出てきた【聖杯】のせいで世界は滅ぶんですけどね。悪魔が居なくなって異能者全般が弱体化、俺も記憶を手放した状態では何も出来ずに敗北した訳だ。創世を成す時にやろうと思えば俺だけ記憶を残す事も出来たのにしなかった以上は“責任から逃げた”だけに過ぎない。……本当に俺は何を選択しても最後には上手くいかなくなる」
『少年……』
「……成る程、それがお前が選択と責任を忌避する理由か。選択した結果として状況が悉く悪い方向に向かったから、もう重要な案件をどうするか選んだり責任を負う事に嫌気がさしてると。滅んだ過去周回のトラウマだからややこしいが、要は失敗体験を重ねた人間には良くあるパターンだな」
自らの過去を告白し終えて思い詰めた表情で俯くヤマトに対し、ヘビクラ隊長が真剣な表情でヤマトの目を見ながら“敢えて多少の挑発を混ぜつつ”話しかけたのだが……余程にストレスを溜め込んでいたのかヤマトはこれまでの鬱な雰囲気とは一変して苛立ちを隠せない表情となって喋り出した。
「……そうですよ。どれだけ強くなって何を選んでも結局は守りたかったモノを取り零すし、どんな選択をしても最終的に上手くいかないのが俺ですよ。しかも無駄に力“だけ”はあるから選択した時に周りに与える影響が大きいから責任も増えるし! ……ナホビノになって最初はただ理不尽に虐げられない様になって周りの人を助けられれば良いってだけだったのに、気が付いたら世界を創世して救わなきゃいけなくなってるし! 周りの悪魔や勢力の上の方は信用出来ないクセに無茶振りばっかりしてくるし、それで俺1人で頑張ってもどんどん人が死んでいった! 俺よりも真面目に創世した後の世界を考えていた2人を倒すハメになったし、そうして創った世界はあっさりと滅ぼされた! 俺なんかが『王』になったのが間違いだったんだ! そもそも『王』になる条件が地獄の環境でのバトルロイヤルとか馬鹿じゃないのか! こんなの俺みたいにただ強いヤツが勝ち残るに決まってるじゃないか! ちゃんと選挙とかで決めろよ! ……この世界は俺なんかよりも普通に強いヤツがゴロゴロしてるんだから俺が『王』になる必要なんてないだろ。俺が重要な選択をしたら悪い事にしかならないんだよ……」
これまでに見せた事もない様な激情と共に溜め込んでいた不満や鬱憤を吐き出していくヤマト、前世での“選択の結果”を思い出すにつれて自己嫌悪を共に誰にも話せないままに溜め込んでしまっていたモノが一気に噴き出た形である。
……それを見て『とりあえず不満を吐き出させる事は上手く行った』と内心思うヘビクラ隊長は激情を露わにするヤマトから目を逸らさずに言葉を続ける。
「おーおー吐き出せ吐き出せ。自分一人で抱え込んで悩むよりは思った事をなんでも良いから喚き散らす方が幾らかスッキリするしな。……まあ、俺としてはお前がこのまま戦う事から逃げても別に構わないが。力があるからと言ってそれを振るわなければいけない義務はない訳だしねぇ。嫌ならやらなければ良い逃げれば良いというのは別に悪い事ではない。そもそも【ダアト】なんて世界の事は既にお前達の記憶の中にしかないからそれに関してどうこう言う資格は俺にはないし、後から『こうしておけば良かった』と言うのとその場で選択肢を選ぶ事は当価値じゃないのdsからお前が過去に成した事に関しては何も言えんしな」
「……隊長、それは……」
「……だがヤマト、過去に行った事への責任から目を逸らすのはやめとけ。人が過去に行った事実は決して消えないし往々にして過去の事が今の自分の足を引っ張ってくるからな。目を逸らしたままだとそこで転んで大怪我する。残念ながら人は『過去』からは逃げられない、そういう風に世の中は出来てる。……それに責任から目を背けて一番キツいのは自分自身だからな。特にお前みたいな自己肯定感が薄くて責任感が強いタイプは」
そう言いながらいつになく真剣な表情でヤマトを見るヘビクラ隊長は過去の失敗を引きずり、更にはそれから目を逸らしてきた事実自体に罪悪感を抱いている彼にとって過去から逃げるよりも背負わせる方がマシであると考えていた。
……そもそも本気で逃げたいのであればヤマトはとっくにテオゴニアにでも降っているか一人で逃げているだろうし、もう一度ナホビノになった時に態々DAT隊なんて所に入ってもう一度戦う選択肢を選んでいないのだから。
「……でも、俺のせいでもう無くなった世界にどうすれば報いる事が出来るかなんて分からないんです」
「それがお前のせいかは知らんが第一に『報いる』と言う行為自体が基本的には自己満足、犯した過去の失敗に対して自分を『納得』させる為の行為だ。報いるべき対象が失われているのなら尚更な。……とりあえず過去の失敗に『責任』を感じているならそれを背負いながら今現在で真っ当に働いてみろ。まだ高卒社会人一年目のお前がすぐに納得いく答えを見つけられる訳ないんだから、5年10年と真面目に働きながら自分が納得出来る答えを探すしかないぞ」
そもそも記憶の中にしかない世界を滅ぼした責任なんてややこしい問題をサクッと解決できる手段はないし、ヤマト自身が詳細に戻って来た記憶に思い悩まされてるのが原因だから本人が責任が取れてると納得する必要がある面倒な感じなので、どうしてもカウンセリング1回でどうにかなる簡単な問題じゃないとヘビクラ隊長は考えていた。
……それでも過去のトラウマに悩まされるヤマトは未だにどうすれば良いか分からず前に進み出せないでいたが、ずっとそれを見ていた結梨は意を決した様な表情をしながらいきなり彼を抱きしめた。
「へ? ちょ結梨!?」
「大切な人が辛い時にはこうしてあげると良いんだって梨璃から教わったの。それに選んだ事が全部悪い事になったなんて事はないよ。だってあのダアトで“アンタ”は“アタシ”を守ってくれてた。ガキに襲われた時も暴走しかけた時もヤタガラスのライドウに狙われた時も命を掛けて戦ってくれた。……あの頃の
それは唯一“仲間”としてナホビノと共に歩んでいた【アマノザコ】の後悔から来る言葉であり、その意思を受け継いだ結梨がいる事そのものが彼が行ってきた“選択”によって救われた者もいると言う何よりの証明となった事でその目には僅かに涙が滲んだ。
……自分の選択が“何も残せなかった訳ではない”と言う事を身を持って理解したヤマトは暫く結梨の胸の中で瞑目していたが、やがてゆっくりとその身体を離しながら先程よりも少し吹っ切れた様な雰囲気になってヘビクラ隊長に向き直った。
「……ご迷惑をお掛けしました。もう大丈夫……とは言えませんが、少なくとも俺自身の意思でセプテントリオンとかと戦う“選択”は出来ます」
「まあ新人の迷惑を受けるのも隊長の仕事だからな。しかし結梨ちゃんを連れて来てやっぱり正解だったな。俺みたいなおじさんの説教よりも美少女に抱きしめられて慰められる方がやる気が出るのが男って生き物だし」
「否定はしませんけど言い方ぁ。……もう嘗て『王』だった事実と責任からは目を背けません。どう報いれば良いのかはまだ分かりませんが、少なくとも過去の事で責任を問われる事があるなら受け止めるし、もし嘗てのダアトに関する事でこの世界に悪影響が出るなら俺自身の『王』てしての責任で処理します。……魔人王も白井咲朱もこの世界に害を成すなら俺が俺自身の選択で戦って倒します」
「ふぅん? とりあえず一歩前進かな。今後も様子見は必要そうだが」
この手のメンタルに関する問題が一朝一夕でちょっと慰められた程度で解決するなんて都合のいい事は起きないので今後も見ていく必要はあるが、少なくとも過去の失敗に悩まされて続けてメンタルを病む事に歯止めは掛かっただろうとヘビクラは判断していた。
「メンタル面がもう大丈夫とは言いませんが戦う事に関しては問題ないですよ。俺の精神面は戦闘における俺の性能及び戦闘技術には何一つ影響を及ぼさないので。……『王』として責任を果たすより適当なボス悪魔と戦って倒す方が遥かに楽ですし。そもそも『王』として三流以下な俺が出来る事は敵を排除する事だけですからね……って、なんで後ろから抱きつくんだ結梨」
「昔の一番怖かった時の顔に戻ってたから、それはダメー」
「やれやれ、まあ大分マシにはなったかね」
少なくとも結梨の側にいるヤマトには自己嫌悪で思い悩む先程までの雰囲気はなかったので、この調子で行けば今後もやっていけるだろうと思いつつ2人の掛け合いをニヤニヤしながら見るヘビクラ隊長であった。
あとがき・各種設定解説
ヤマト:一先ずのメンタルケア
・選択した結果が大体悪い方向に向かったので自己肯定感がめっちゃ薄くなった人であり、そのトラウマのせいで選択や責任に対して及び腰になって過去からも目を背けて来た。
・嘗てのダアトでは魔人王謹製違法改造ナホビノとしての性能と訓練や経験無しでも戦闘時にはメンタル面の悪影響を受けずに性能を十全に使える才能を合わせて、胸糞悪い相手や友人と殺し合うバトルロイヤルを勝ち残ったので創世を成すことが出来た。
・その為に自分が『王』になれたのは単に敵を倒すのが上手かったからだと思っているので、創世で失敗した事もあって王としての自己評価は低くバトルロイヤルで王を決めるとか俺みたいな無駄に戦う事だけが上手いヤツが勝ち残るに決まってるだろとか思っている。
・ただし人のみの世界を創世した事でテオゴニアなどの活動を妨害していた側面もあり、仮に他の2人のコトワリに賛同したとしても結局はセプテントリオンやテオゴニアに滅ぼされていた模様。
結梨:メンタルケア担当
・【アマノザコ】の転生者兼神造魔人でありながら素直で率直な物言いをするのは、嘗て天邪鬼な性格で素直に気持ちを伝えられなかった後悔から善性な面が強く出たカタチで転生したからと言う一面もある。
・それに加えて生まれてからまだ1〜2年程度しか経っておらず周りの人間が第三生徒会のリリィ達と言う善人ばかりだったので素直で良い子になったが、人生経験の不足もあって思ったことを率直に言ってしまい失言になる事も多い模様。
・彼女の言う『一番怖かった時』とは『王』としてある意味での最盛期、ダアト時代の最後の方でメンタルに大分キテた所為で機械的に淡々と敵を滅ぼしていった戦闘面においてヤマトが最も強かった時の状態。
ヘビクラ隊長:結梨を連れて来たのは計算通り
・ヤマトんkメンタルケアには過去のダアト時代の事知ってる人間もいるだろと結梨を連れて来て、思ったより良い感じの展開になったからヨシってしていた人。
読了ありがとうございました。
ナホトラマンの『王』としての在り方は極N皆殺し系塩試合生産マシーン、少なくとも本人はそう思っているので王としての自己評価は三流以下でバトルロイヤルで勝ち残った者が王になるとか絶対上手くいかないと考えてる。