真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~ 作:貴司崎
「……さてと、とりあえずセプテントリオンとの戦闘に関しては大丈夫なのよね?」
「本当にご迷惑をお掛けしました朋美さん。……大丈夫です、俺自身の選択と責任を持ってセプテントリオンと戦う事を選びます。俺が例え失敗したとしても嘗て『王』を目指していたのは人を守る為だった。だからこそ戦いから逃げる選択はそれに“報いる”選択ではないと思うので」
割と無理して会議を行う時間を作ったのにメンタルケアを邪魔せずに見てくれていた朋美社長夫人に対して、ヤマトはしっかり頭を下げながらセプテントリオン戦への参戦を約束する。
……過去と向き合えたお陰かその顔には憔悴した様な色は既になく、確かな覚悟と責任の下で戦いに向かおうとしている彼を見て結梨も思わず笑顔を浮かべた。
「うん、ヤマトがいるなら結梨達はたかがセプテントリオンなんかには負けないよ。得意の貫通攻撃とマガツヒスキルで殴れば大丈夫でしょ」
「いやその程度で倒せるなら別に良いんだが、話を聞く限りセプテンはどう考えてもギミックボスだろうから俺の性能で戦える相手かどうかが問題だな」
「えー! そこはもうちょっと自信満々で良いと思うんだけど! せっかく昔の良かった時に戻ったのにー!」
自分の大切な人であるヤマトにはもう少しカッコよくいてほしいと思っている結梨は不満を漏らすが、持ち直したとは言え自分の能力を余り評価していないヤマトは慎重な意見を述べる。
「なんでそんな反応なんだよ。自身はついたがそれと戦力評価は関係ないだろうに。……確かに俺はレベル90ぐらいまでのボス悪魔や合一神を自分と仲魔だけで倒せる程度の“性能”はあるが、あくまでレベルを上げてスキルを整えてからバフデバフ掛けつつ弱点突きながらのプレスターンって普通の戦い方しか出来ないからな」
「十分では?」
尚、レベル上げとスキルに関しては仲魔すら成長させて写せ身合体で手軽にスキルの付け替えが出来るナホビノの
過去と向き合って自己嫌悪からの自分の実力の軽視が消えた事もあってその辺りは彼も自覚しているのだが、それはそれとして失敗経験の方が多いので実力を過信する事は出来ない故に“ギミックボス”への警戒を疎かにする様な事はしなかった。
「まあ戦いになるのなら性能の範囲内でどうにかしてみせるが、そもそも“まともな戦いにならない”ギミック持ちが相手だとまずギミックを把握しないとな。例えナホビノでも魔王城の風には飛ばされるしナイトメアなシステムで8回行動してくるボス相手に無策だと死ぬ。
「むー、言ってる事は分かるけど、せっかく頼りにされてて良い感じになって来たのにさぁ」
「仕方ないだろ、耐性を入れ替えた時にうっかり弱点を突かれて連続行動されたら死ぬぐらいには儚い生き物なんだからナホビノは」
ちなみにヤマト的には防具を付けられない辺りナホビホは耐性面で人間程に融通が効かないと思っている。まあスキルを入れ替えられるだけ色々反則くさいが。
「俺の性能なら初見殺しギミックでも早々死なない……と言うか俺が即死するギミックだったら他の人もアウトだろうから、ギミックボス相手に俺が先方になって挑むのが一番良いだろうって事は分かってるよ。そのまま倒せるなら倒すし最低でも敵の情報を抜いてギミックを明らかにするまで粘るぐらいは出来る。……そういう方針で良いですよね?」
「ああ、後は臨機応変にだな。どんなクソギミックで来るかはまだ分からんし」
ヘビクラ隊長としてもナホビノとしての性能と多様な能力を持つ強力な仲魔を揃えたヤマトであれば生半可なギミックなら突破出来ると考えて彼を中心として戦う戦術を選んだが、これまでのパターンからしてセプテントリオンがクソ過ぎるギミックや能力を備えてくるだろうと思ってるので情報収集を重視する予定でいるのだ。
「んー、レベル上げて貫通か確定クリティカルで殴ればいけるんじゃないの? ダアトの時では大体それでボスとか合一神倒してたじゃん」
「貫通も確定クリティカルも確かに色々便利だから愛用してるが、あくまでそれは“戦闘中に使える手札の一つ”としてだからな。それが通じないなら必要に応じて別の手札を切るに決まってるだろ。……後、ユニークスキルや新しい神意を覚えたあたりでナホビノのレベル補正的な力は消えてる*1からな」
「そうなの?」
結梨もアマノザコ時代にはあった気がする補正が無くなっていた事には気付いていたが、それは人間寄りの神造魔人になったからだと思っていた。
「後は幾つかのスキルも効果が変わってる気がする。体感だが【会心専心*2】の効果が落ちてると思う*3」
「よく分かるねー」
「ユニークスキルなんてものが生えたんだから他に変わってる所があるか調べるのは当たり前だろ。マガツヒスキルとかはまだ調べられてないが。……と言うか結梨はちょっと過信し過ぎてないか。なんか勝手に判断して1人で強敵に突っ込んで相打ちになりそうだぞ」
「その言い分は酷くない?」
良くも悪く相手に全幅の信頼を置いている結梨とメンタルケアでマシにはなったがそもそもの自己評価が余り高くないヤマトでは考えが食い違う事もあり、ちょっと危なっかしいから苦言を呈するヤマトとそれを受けてムスッとしている結梨と言う光景になっている。
この辺りは神造魔人である結梨の実年齢が2歳以下で、更にアマノザコ時代の経験もダアトとか言う特殊環境だったので偏ってるのが原因なのだが、ヤマトとしても流石に心配になってしまう様だ。
「アマノザコが仲魔になったのは俺がレベルが上がりきって戦闘マシーンになってたダアト終盤からだから戦闘経験も大分偏ってるのか? ……とりあえず重要な判断をする時には1人で勝手に決めて特攻したりせずに周りの信用できる人間に相談しろよ。俺達とか第三生徒会のメンバーとか自分より頭いい相手に」
「これでも学校のテストではちゃんと合格点取ってるんだけどー」
実の所、転移前の聖華学園で勉強は教えてもらっており、今も基本的に成績優秀な第三生徒会のメンバーから教わってるので意外にも学力は高めな結梨であったが、ヤマトが心配している部分は別にある。
「不安なのは経験と言うか判断力不足なんだが。俺も人の事を言える程に頭が良い訳じゃないが勝手な思い込みで重要な判断を迂闊に決めると取り返しのつかない事になる。脳死で皆殺しルート行った前の俺みたいに」
「むー……でも説得力は凄いから分かった。危ない時は楓とか夢結の指示を事を聞くよ。
その言い分に対して不満げな結梨だったがヤマトが自分の事を想って言っているのは分かっているので渋々といった様子だが納得し、それを見ていた周りの者達は『ヤマトって割と過保護と言うか結梨ちゃんの兄みたいになってるな』と思いつつ微笑ましい者を見る感じで眺めていた。
……しかし、こうして話しておける時間も長くないのでセプテントリオン戦でヤマトが全力で戦えると判断してヘビクラ隊長はこの話は一旦切り上げ、本命の“情報共有と考察”の話に入る事にした。
「とりあえずセプテン戦はどんなギミックがあるか分からんから臨機応変に行くとして、ヤマトが知ってる【ナホビノ】や【創世】、後は【至高天】だったかについての情報を教えてくれるか?」
「予め言っておきますけど、俺自身も【至高天】や本来の【創世】についての情報は又聞きです。嘗てのベテルや各神話体系の主神級悪魔などが言っていた事、後はアマラコンピュータから得られた事をまとめて“こうだろう”とした情報ので全て正しいとも限らないし何処かに抜けや間違いはあると思います。……俺は至高天には辿り着けなかったので」
結局は自分は創世しても上手くいかずに失敗した『王』であると自認しているヤマトは、そもそも辿り着けなかったモノについて話す事に不安であったが、ヘビクラ隊長はそれでも良いと話を続けさせた。
「それで構わん、別にお前からの情報だけで全ての事が分かるとも思ってない。ただテオゴニアと今後戦う可能性がある以上、連中の警句に関する情報共有と考察はしておいた方が良いと言うだけだ。勿論鵜呑みにせず判断材料の一つとして扱うが」
「分かりました。……至高天とは世界の運営を行うことの出来る『神の玉座』であり、玉座についた神はその星を支配下に置き、世界の法則を定める。つまりは己の思うままに世界を作り変える力を得る……らしいと言う話をダアトでは聞きました」
悪魔に纏わる神話や逸話、或いは警句といった情報を調べて考察して対策するのはデビルバスターの基本であり、その辺りは一応理解して納得しているヤマトはダアト時代の情報を思い出そうと米神に指を当てながら目を瞑り嘗て聞いた言葉を呼び起こしていく。
「そして遥か太古から玉座を巡る神々の争いがあって幾度も王座は代替わりしていったとも言ってたな。その玉座に至れるのが神として真の神格を取り戻した
『我々が行ったカグツチによる創世は精々がボルテクス界の解除、及び日本の建物及び人間のある程度の再生と記憶操作による悪魔やダアト時代の隠蔽程度だったが、惑星規模で法則を操るとかは到底無理であり。推測にしかならんが至高天というものがあるならそれ以上の事が出来る可能性もあるという話だった』
そこから踏まえて当時のベテルはこのダアトでのカグツチを巡る戦いは至高天を巡る戦いの模したモノではないかと推測していたが、ヤマト達は世界を元に戻せるならどうでも良いと言うかそんな余裕が無かったので詳しく調べてはいなかった。
一応、それ以外の『創世』や『合一神』などボス悪魔などから聞いた自分が知っている限りの断片的な情報を話すヤマトだったが、そもそもダアトでこんな情報が何処から出て来たのかも当時の彼には分かっていなかったので大分断片的な情報になっていた。
「日本全土ボルテクス界化よりもスケールがデカそうな話が出てきたな。……とりあえず至高天はlight作品の神座でナホビノは覇道神って感じでok?」
「大体そんな感じですね。創世を成すナホビノなんて己のコトワリで世界を塗り潰そうってヤツばかりなので大凡あってます。……他にもボス悪魔が警句っぽいのを言ってた気もするけど前世の話だからか結構記憶が虫食いなんですよね。細かいセリフとかは抜けが多いと言うか、酷い時期は警句とか無視してぶっ殺してたのが原因と言うか……」
それでみオタクならではの理解を示すDAT隊だったが、過去の自分の行いを思い返してちょっとアレ過ぎたとメンタルがやられているヤマトは頭を抱えていた。
「警句はキチンと覚えておいた方が良いぞ。上から言われてる気分でムカつくのは分かるが敵の行動を読んで自分がどうするのかを選ぶ指標としては役に立つ」
「しょうがないじゃん、警句とか分かんないんだからさぁ! 国語の作者の気持ちを答えろとか昔から変な答えをしちゃうし、自分で考えた解釈が致命的にズレてて失敗する事ばかりなんだからぁ!」
「わぁ、泣いちゃった」
しかし、まだちょっと警句関係のトラウマからの苦手意識が残っていたヤマトが机に突っ伏したので結梨が頭を撫でて慰めたりしていた。
とりあえずヤマトが次に琴陽や咲朱に会った時にはボコボコにして具体的な情報を引き出そうと決めて立ち直った後、そいつらが言った『法の神が定めたルールではなく、終わらぬ新世界でもなく、神なる世界に統べてを導く為に我らは神話を紡ぎ続けている』と言う警句について考察していく。
『法の神と天使が仕えている“唯一神”の別名であり、至高天の座は幾つかの神が移り変わった末に法の神が座ったとダアトにいた大天使が言っていた。つまり“法の神が定めたルール”は至高天によって敷かれている法の神の法則と考えられる』
「“終わらぬ新世界”ってのは至高天の王座の入れ替えか或いは周回してるこの世界の事なのか、そもそも世界がなんでループしてるのかも分からんから断言出来んな。……そしてその二つではなく“神世界”とやらを目指してるらしいがどういう事なんか分からんな」
割と必死な様子で頭を抱えながら、アオビトの助けも借りて嘗てダアトで得た至高天に纏わると思われる情報を引き出していくヤマト。
「王座に付けるナホビノは1人なのに複数合一神が集まってる勢力だから創世狙いではないか? 今の世界がクソだからCivの宇宙勝利的な地球を捨てて別惑星に移住とかコロニー建設とかって意味とも考えたが、統べてを導くとか神話を紡ぐとか言ってるしまだ何かある気もするんだが……」
「愚痴ってる割に結構考察出来てるじゃないかヤマト。ダアトってつくぐらいだからカバラ系の資料でも調べてみるか?」
「至高天に至れなかったナホビノである俺が知ってる範囲の情報で考察してるからどっか間違ってるか勘違いしてる気もするんですよ。……判断材料に見落としがあると後で手痛い失敗をする事が良くあるからさぁ。本当にポエムとかやめて具体的な情報寄越せよなぁ」
重要なのは理解してるから頑張って考察するが、それはそれとしてトラウマのせいで
「情報自体が少ないから考察が的外れになる事は仕方ないから気にするな。重要なのは今後敵対する可能性が高い【白井咲朱】一向の目的をある程度推測していざと言う時に対応しやすいようにする事だ。今の段階でも向こうの目的は白井夢結嬢をナホビノにする事ならば、その後神世界とやらに引き込むのが狙いではないかぐらいは予想出来る」
「次出会ったら日和った真似をせず確実に潰しておきます。……敵の居場所が分からないのでこっちから攻められないのが嫌ですけどね」
一応ヤマトの発言は少なくともダアト時代では勝てた相手であり、今の戦力でも勝算は十分にあると考えてのモノであったが、メンタルケアの影響なのか自分の実力に自信がある様な言い分になっていた。
「実力に自信を持つのは良いんだが過信し過ぎない様にしろよ。自分で結梨ちゃんに言ってるから分かってるとは思うが迂闊に突っ込んだりとかな」
「分かってます、夢結ちゃんが狙われてから後手に回って対応しか出来ないのは面倒なので向こうから来てくれないかと思ったんですよ。まあナホビノにするのが目的であれば早々無理矢理な事は出来ない筈が」
「前そうしたら暴走したんだったか、だからこそ機会を伺ってるのかねぇ。……うーん、情報が足りなくて後手に回らざるを得ない感。居場所が分かればこっちから潰しに行くんだが」
そもそも彼等はテオゴニアについては接触した琴陽や咲朱からの情報、後はG.E.H.E.N.A.から回収した資料(調査途中)などからの断片的な情報しか持ち合わせていないので考察がやりにくい面がある。
……そう彼等が考えていた所で結梨が何かを思い出した様な表情で手を打った。
「あ、そう言えば聖華学園に通ってる女子中学生のナホビノがなんかそれっぽいポエム言ってたよ。創世とかに関わるかは分かんないけど『王』への助言みたいなの」
「いやなんで聖華学園にナホビノがいるんだよ……と思ったが、前世の縁で普通の高校生だった俺がナホビノになるんだからJCのナホビノがいてもおかしくはないのか?」
自分もそうだとは言えナホビノはかなりの希少種だと思っていたヤマトだったが、実は探せば結構いるんじゃないかと思い始めていた。
「ヤマトによく似た“匂い”がしてたからナホビノで間違いないと思うよ。レベルはヤマトより高かったけどあんまり強くない……と言うか、仲魔がいる気配はしなかったし神意も少なそうだったからナホビノに成り立て、それか力を取り戻したばかりな気がするけど」
「まあ合一神はなったばかりだとレベルが高くてもそこまで強くないからな。フィールドを駆け回って御厳を集めて神意を解放して、ついでに悪魔からカツアゲしながら現世と邪教の世界の反復横跳びを繰り返してようやくスタートラインだし。……それでそのJCナホビノはどんな事を言ってたんだ?」
「えーっとね……『王の資質とはなんだと思う? それは峻厳、均衡、慈悲の三本の柱である』だったかな」
真剣な表情になって語る結梨曰くまず一つ目に『王となるものは、他者に求めに答える受動性を持たねばならぬが、そのためには自己に厳しく在らねばならない』と言う峻厳さを求める話を。
二つ目に『世界には相反する力が存在するが、それを否定してはならない。全てにおいてはバランスが不可欠である。進化を促すために一方の力を伸ばす必要があるが均衡を欠いた世界はすぐに崩壊する』と言う均衡の必要性を。
三つ目に『自ら他者のために能動的を持たねばならぬが、そのためには深き慈悲が必要である』と言う慈悲の必要性をナホビノの少女は語ったいたとの事だ。
「どう言う意味かはよく分かんないけど……」
「……他者の考えに賛同するにしても自分の意思を強く持たずに流されるままでは、その求めに応えた後で自分の思う通りにならなかったら悔いが残り後で碌な事にならない。世界にある何かの要素が気に入らなくても、それを一方的に否定して消し去るだけでは別の力が無闇に増して状況が悪くなる事もある。他者を助けるのは良いんだが他者を思いやる心を忘れて作業的に動くのはメンタル的にキツい……とかかね」
……そう真剣な雰囲気で語った結梨を含めてその場の人間はどう言う意味の言葉か考えていたが、ただ一人嘗て『王』であったヤマトだけは神妙な表情で警句を聴き、過去の自分の行動と当てはめてこれは“創世を成す王に必要とされる事であり戒めでもある”と解釈していた。
「総じて嘗てのダアト後半の俺に色々と突き刺さる警句だな。『王』に必要な資質が峻厳、均衡、慈悲の三つと言うのは不思議と納得出来るし、確かに嘗ての俺には『王』としての資質が致命的に欠けていたと分かる」
「……それでも結梨にとっての
「分かってる。王としては三流だろうともう過去に王だった事から目を背けはしないさ」
自虐を交えてそう言うヤマトに対して結梨は不満そうにしながら自分の気持ちを伝え、それを受けた彼も今度は俯かずに前を向いて話を続ける。
「それに確かソピアーから似た様な警句を聞かされた気もするな。当時の俺はメンタルがアレだったから殆ど聞き流していたが」
「そもそもポエムじゃなくてもっとはっきり言ってくれれば良いのに。あのおばさん絶対中身は情報アドで優位取りながら足掻く人を面白がって見るヤツだよきっと」
「警句を言ってくれるだけマシな部類ではあるんだろう。……そのナホビノは王の資質について知っていたのだし俺よりも先に進んだ“先達”なのだろうから、何か他に言っていなかったか?」
警句を受け取っても聞き流してしまった自分と違って王の資格を理解しているそのナホビノなら他に何か知っているのではと言う期待を込めた質問だったのだが、少し考え込んだ結梨から言ったのは思わぬ言葉だった。
「うーんとね、他には何をしたらそんなに強くなるんだって聞いたら『愛、かな』って言ってたよ」
「……んん?」
……なんか話の流れからすると可笑しい単語を聞いてヤマトは思わず疑問符を浮かべて変な声を出してしまった。
「あ、これは別の子が言ってたんだっけ。JCナホビノの方は『まずは身も心も染め上げられることから始まるものだゾ』『お前たちは所詮一回以下だろう、ふふふふ』って言ってた。なんか『旦那様の話』って言ってたけど、そういうことすると強くなれるのかな?」
「…………んんんんんんん????」
更に続いて語られた常識的に考えて学校という場で使われるには不適切な単語を聞いて、思わずヤマトはこれまでのシリアスな雰囲気を投げ捨てて疑問符を増やしながら困惑した。
…その後に学園で何があったのか詳しく聞き出すとそのJCナホビノが所属している【勇者部】と言う部活のJC達が、惚れた男への愛情やら性行為の事やらを色ボケしながら公衆の面前で話していると言うなんとも言いがたい状況*4だったので、その場の人間は呆れを交えながらちょっと頭痛を覚えて頭を抱えた。
「近頃のJCは随分と爛れてるなぁ。まあサバトとかパパ活じゃなくて普通に恋愛してるだけな辺りマシかもだが。……或いは聖華学園自体がアレなのかその辺りはどう思う聖華学園OBの副隊長」
「私に聞かれても困るんだけどヤマト。……確かのあそこの女子寮とか百合百合しい関係の女子達が跋扈してたし、年頃の女子だけの会話ならエゲツないシモの話は飛び交うぐらいはあったけど、流石に公衆の場所でそこまでの話をするのは私がいた時にはあんまりなかったと思うわよ」
「複数のJCが1人の漢に向けて全身全霊で愛を語りだすとか聞いてる方は笑い話に出来るかもしれんが、実際に学校でやるのはちょっと倫理観が緩いだろ。二水は大丈夫か……?」
昔通っていた学校の現状にちょっと困惑する副隊長に通ってる妹の教育に悪いんじゃと考えるケンジロウなど、その場の雰囲気はさっきまでの神妙なソレが完全に霧散したなんとも言い難い感じになっていた。
「どっかの自称ダークサマナーがJC達にアルティメットスパダリムーブしまくって脳を焼き過ぎた結果じゃないか? 誰とは言わんが。……あの年頃の少女が脳を焼き尽くされる様な大恋愛とかされればシモの倫理観ぐらい緩むだろ。知らんけど」
「最近の高校生は一体どうなってるんだ。怖」
「ねーねー、愛とか身も心も染まるとかで本当に強くなれるのー? あのナホビノレベル99の壁突破してたみたいだしー」
とりあえず『最近のJC爛れてんなー。戸締りしとこ』みたいな会話で纏めようとしていたDAT隊だが、その辺りの機微をそもそも理解してない結梨(実年齢1歳ちょい)からの答えにくい質問がヤマトに飛んできた。
彼は思わず周りのメンバーに視線を向けたがそっと目を逸らされたので『どこの誰かは知らんがJCハーレム作るのは良いけど子供の論理感の教育はちゃんとやっとけよな』と思いつつ何とか説得を試みる。
「とりあえず愛云々は強くなる為のモチベーションとか心持ちの話だからな、大切な人の為になら頑張れるって感じの。……まあコミュニケーションでステータス上がったり新しいスキルを覚えるとかの事例が無いわけでもないらしいが、それもあくまで“仲良くなった結果として力を得た”のであって“力を得る為に絆を深めた”と言う訳ではないだろう」
「まー梨璃達と仲良くなったのは単にそうしたかったからだしね。その後に頑張って合体技とかスキルとか覚えたけどその為にもう一度仲良くなった訳じゃないね。……じゃあセッ○スで強くなれるのはどうなの?」
「女の子が公衆の面前でセ○クスとか言うんじゃありません。しかも男の前で(レベル92の手刀)」
「いたーい!」
この子割と考えなしに喋ってるよなと思いつつ結梨へ教育的指導チョップを頭部に叩き込むヤマト、大体変な言葉を学校で覚えて来た妹に注意する兄みたいな感じである。
彼女は保健体育の授業とかは真面目に受けているので性行為自体は知っているものの、情操面がまだ幼過ぎるので“その行為がどういう意味を持つのか”がイマイチ分かっていない面があるのだ。
「うー、勇者部は普通にそういう事を話してたのにー」
「そんな公衆の面前で惚れた男への思いと性事情を話す様な頭が茹だった部活の事は参考にしてはいけません。俺が言える事ではあんまりないがもう少し発言を考えろ。……確かに悪魔業界はMAGの移譲手段としてあるから性行為へのハードルは低いらしいが、別にヤれば良いってものじゃないし公の場ではそういう話はしないのが普通だ。それに性行為をしてレベルが上がるなんてエロゲの世界じゃないんだから」
それなら【魔導書*5】を読みながら悪魔狩りをした方がマシだとヤマトは考えてるし、実際にダアト時代には多数手に入ったソレを使って何十時間と悪魔を狩っていたりする。
「う、魔導書を読んだすぐ後に悪魔を倒しに行かされるのを数十回やらされた記憶ガガガ*6」
「アマノザコ仲魔になった時にはレベル70ちょいだったからな。元のレベルから10レベルも上がると一気にレベルが上がりにくくなるから、そこからは【魔導書】だな」
もっともこの世界では【魔導書】を落としてくれる【アラミタマ】が大量に出て来るなんて事はないので魔導書レベリングは困難を極めるのだが、とりあえず軽々に性行為に走らなければ良しとしてヤマトは説教を続ける。
「別に手段としての性行為を否定するつもりもないが本来そういうのは“恋愛感情を抱いてる好きな人同士”でやるのが普通だ。……そもそも結梨は『親愛』と『友愛』と『恋愛』の区別はついてるか?」
「んー? 梨璃も夢結もヤマトも好きだけど……?」
「まずはその辺りを自覚出来る様になる事からだな。もう少し人生経験を、せめて学園を卒業するぐらい積んでおけ」
人生経験が少ない故にその辺りの機微をイマイチ理解出来ていない結梨に対してヤマトは諭すが、そこには彼女に人間として真っ当な生き方をして欲しいと言う気持ちもあった。
「……まあ俺も人に偉そうに言える程に恋愛経験が豊富と言う訳じゃないんだがな。とりあえず悩んだらそういう相談に乗ってくれる信用できる経験豊富な大人に相談すると良いんじゃないか? そこにいる付き合ってるらしい隊長とか副隊長とか」
「おっと最近は女性の方からそういう話を持ち掛けてもセクハラやコンプラ扱いされるからそっち方面の話は出来るだけ同性にした方が良いぞ。なのでそこのアンヌ副隊長に相談したまえ」
「君達二人がかりでキラーパスしてんじゃないよ」
文句を言うアンヌだったが『ちょっとこの子の情操面が不安なのでお願いします副隊長』『成人男性の俺がJKに性行為の教育するとか犯罪だろ。どっかのJCJKに手を出してる連中と違って俺には常識ってモノがあるんだ』と言われ、芋分の夢結の後輩を気にかける気持ちもあったので溜息を吐きながらも結梨の情操教育に協力する事を承諾したのだった。
「しかし随分と冷静に対応出来てたなヤマト。結梨ちゃんから少女達の爛れた学園生活の話を聞かされた時に脳破壊でもされるかと思ってたが」
「子供が学校でエッチな単語覚えて家で話したみたいな感じなのに脳破壊なんてされる訳ないでしょ。そもそも俺が結梨に抱いている感情は『親愛』ですよ。学園での会話でダアト時代にベテルに所属していた少女を同じ名前が出た事には少し驚きましたがドリフターあるあるの並行同位体でしょうし」
「親愛ね。まあ今はそれで良いんじゃね? あっちもそう言った感情はまだ理解してないだろうし」
そうニヤニヤするヘビクラ隊長から目を背けるヤマトだったが、まあ彼も木石ではないので結梨に向ける感情は基本的に家族へと向けるモノに近いがそれでも全く意識していない訳ではない。
……それ以上に色々と危ういので心配する気持ちの方が大きかったりするが。
「……まあ酷い目に遭っていたあの世界と比べて愛する者と幸せ?に暮らしてるなら別に良いでしょ。別に彼女とかではなく少し話す程度の相手でしたから脳破壊とかする訳ないですし、むしろ祝福してるぐらいです」
「彼女でもないJCの性事情を聞いて勝手に脳破壊されるなんて常識的に考えて単なる変人だよな。誰とは言わないが」
「この世界では話を聞いただけの他人ですから敢えて何かしようとは思いませんし」
そんな聖華学園の性事情のせいでグダグダな雰囲気になった所で室内に備えられていたタイマーから音が鳴った。主に社長夫人な朋美のスケジュールの問題でこの部屋を会議に使える時間は限られているので予めアラームをセットしてあったのだ。
「あら時間ね、悪いけど話し合いはここまでよ。……これからセプテントリオン対策の業務調整の続きが始まるお……」
「いや本当に貴重な時間を浪費させてしまってすみません。セプテントリオン戦では馬車馬の如く働きますんで」
「期待してるわ。それとこの後のG.E.H.E.N.A.から回収した写せ身と写せ身合体装置の実験もお願いね」
「分かりました、クルーゼさんの所が忙し過ぎて予約が取れないので写せ身合体が出来るのはありがたいですし、使える様なら可能な限り万全の準備をしてセプテントリオン戦に望めます」
「どうもペルソナ関係の技術もいるらしいから私も手伝うわ。結梨ちゃんの事は夢結達に押し付け……もとい任せましょう」
そうして仕事に戻る為にさっさと部屋から出て行った朋美に続いてDAT隊のメンバーも速やかに出て行き、結梨をグランギニョル社に来ていた第三生徒会に預けた後で“嘗ての力を取り戻す”べくヤマトは写せ身合体へと赴いたのだった。
──────◇◇◇──────
「……写せ身合体の装置が普通に使えてよかったです。最近はクルーゼさんも忙しくて中々予約が取れないのでスキルと耐性の付け替えだけでも手軽に出来る様になったのは非常にありがたい。……昔はいつでも邪教の館に入れたんだが」
「今は亡き(者にした)実家で覚えた私の拙い“カメンヒジリ”系の技術で使える代物で良かったよ。グランギニョル研究員のサポートありきだけどね」
| 合一神 | 八坂ヤマト/アオビト | LV92 | 物理・火炎・氷結・電撃・衝撃・呪殺無効*7 |
| ユニークスキル:【マガツヒの還元】 |
| 写せ身スキル:【朧一閃+9】【物理ギガプレロマ】【会心専心】【獣眼】【物理無効】【呪殺無効】【大活脈】【ハイリストア】 |
| 使用可能アオガミ系スキル枠:【ヤブサメショット+9】【佐世木ノ葉+5】【神奈備ノ守+5】【奈落のマスク】【物理プレロマ】【龍眼】【不屈の闘志】【セーフティ】 |
| 備考:嘗てのダアト時代最終盤に近い物理クリティカルプレスターン稼ぎ特化型スキルセット。実は確定クリティカルとチェンジでプレスを稼ぎつつアイテムや補助を使うサポート型で攻撃性能はオマケ。ゲヘナ戦で倒した甲乙丙丁のアオガミスキルも使用可能で必要に応じて実戦で使えるスキルへと入れ替え予定。 |
尚、セプテン戦で氷結・衝撃・物理対策推奨と掲示板にあったのでイナンナからパチった写せ身で無効相性を増やし、破魔相性はこのレベルの敵だと人間に通す為に大体貫通付きで来るだろうとの予想と奈落のマスクで即死と状態異常は対策出来るとして入手した写せ身の幾つかを使ってスキルを調整した模様。
……昔を思い出すからか無意識のうちに避けていたスキル達だったがメンタルケアもあって今後の戦いに向けて強力な力を求めた結果であり、更にG.E.H.E.N.A.が有していた写せ身も使って可能な限り仲魔のスキルも調整した*8。
「G.E.H.E.N.A.の連中結構良い写せ身を溜め込んでたから使わせてもらったぜ。……とりあえずレベル以外は最盛期に近い戦力に出来たと思うけど、セプテントリオン戦が強ければどうにかなる簡単な話なら良いんですけどねー」
「まあ無理だろうな、二度戦ったがどちらもタチ悪い能力ばかりだったし。能力を設定したヤツがいるなら相当に性格悪いだろうなって言えるぐらい」
「ですよねー。俺程度の単独戦力だけで解決出来るなら簡単なんですけど」
一応、ヤマトも嘗ての魔王城を巡る戦いなどで大規模な戦力同士がぶつかり合う戦いは経験しており、その中では個人戦力がどれだけでも一人が出来る事は少ないと知っているので慎重な反応になっていた。
……そんなヤマトを見て何か考える様な素振りをしていたヘビクラ隊長だったが、徐に口を開いた。
「ふむ、相変わらず戦力面での自己評価が低い……と言うか自分の実力で失敗体験を積んだ方が圧倒的に多いのかね。結梨ちゃんのお陰で大分マシになったが、そもそも自分の力にそこまで価値を見出してないのか」
「俺が強い事は分かってますよ。そうでなければダアトで勝利者にはなれなかったですし、強さのおかげで救えた事もあったのは彼女のお陰で思い出せました。……ただ、俺にとって自分の強さと言うのは“戦闘を優位に運べる手札”以上の価値はないモノなので」
「うーん、自己評価面での低さは早々に治らないか。要観察かね」
この辺りのヤマトの自己評価の低さは過去の失敗体験が重すぎる事が原因であり、力に溺れないと言う面では良い事でもあるのだが自分自身屁の評価と言うのは早々に変わるモノではなかった。
警句への苦手意識もどちらかと言うと『その情報を聞いて解釈して判断する自分』への不信から来てるので、どうしても戦闘以外で自分自身が選択する事を信じきれていなかった。
「とりあえず戦闘においては自己評価が低かろうが問題はないです。戦闘において俺が何を思ってもその過程と結果には影響はないので。……その戦闘に入る理由含めて戦闘前や後に問題になる事は否定できないですけど、それでも責任から逃げる事はもうしません」
「その辺り自覚があるならまだマシか。……ただ、自分の悪い所から目を背けずに責任を取るのは必要な事だが、それと自分が全部悪いって思う事とは別だからな。ダアトとやらでの出来事はお前が全部悪いって訳じゃないからな」
「それは……」
それでもカウンセリングの影響で過去の選択から目を背けない事、そこから生まれた責任は背負う事はできる様になったので一歩前進と言えるだろうとヘビクラは判断してちょっとしたアドバイスを送る。
割と自罰的で抱え込み過ぎる傾向にあるヤマトが責任を負い過ぎて潰れる可能性を考えての言葉であり、実際にダアトでの彼は他者を踏み躙ってでも進んだが、そんな事をするに当たって相手側に全く悪い所が無いのなら賛同して味方になっていたのだから。
「とにかく思い詰め過ぎて闇堕ちだとカウンセリングの意味がなくなるからな」
「分かりました、何かするにも事前に誰かに相談しようと思います。改めて思うとダアト時代の俺は色々と狂ってたと言うかおかしくなってたので同じ轍は踏みたくないですし。……他が狂ってなかったとは言いませんが」
そもそも当時の彼でもマトモな勢力がいればそこに助力いたので、そうしなかったという事は何処かしら他の連中にもおかしかった所があったと言う事ではあったのだ。
……まあ、最終的には刃向かう連中を皆殺しにするという今思えばトチ狂った選択をしてたのでヤマト自身も相当におかしくなっていたと今の転生あ得た彼はそう思っているが。
「……さて、とりあえず何が起きるか分からんし早めに準備を済ませて準備が出来たら待機な。予定時間が必ず正しいとも限らんし」
『了解』
そうして余り時間もない事もあり一旦話を切り上げたヘビクラ隊長は来るべきセプテントリオン戦への準備を指示し、それを終えたDAT隊は次の戦いに備えてコンディションを整えるための短い休暇を取る事にしたのだった。
……しかし、まだこの時のヤマトは“『王』としての責任をもって挑まねばならない戦い”が迫っている事は知るよしもないのだった。
あとがき・各種設定解説
ヤマト:少しだけ自分を肯定出来た
・今回の意見で結梨とは仲良くなったと言うか無意識に作ってた壁がなくなった形だが、好意の方向性は親愛方面で家族や妹に接する感じになっておりなんか無謀な行動をしそうで心配。
・例の勇者部に関しては聞いた情報だけなので『学校の公の場で性事情を話して一人の男を関係を持つ複数の女学生が在籍してるヤベー部活』と言う印象。
・失敗体験が多いので自己評価、特に自分自身の実力に関する評価が低いと言うか、単なる戦闘能力では自分は大した事が成せないと思い込んでいる。
・ウルトラマン好きなのも自分と違ってみんなと共に戦って勝利して大切なものを守れるからと言う、自虐気味な憧れという面もある。
結梨:この後に第三生徒会に色々聞きに行った模様
・ヤマトへの感情は友愛や家族愛よりと言うか本人の情緒が幼いので恋愛感情がよく分かってない感じだが、今回彼の助けになれてより仲良くなった事に関しては非常に喜んでいる。
ヘビクラ隊長:とりあえず闇落ちフラグは回避出来そうだしヨシ!
・光属性(本人視点)を闇ムーブで揶揄うのが趣味だが、闇落ちが見たいわけでなく闇に抗って立ち上がるのがみたいタイプなので思ったより拗れてるヤマトのカウンセリングを行った。
・今は隊長なので自分の趣味より隊員の面倒を優先しており、加えてヤマト闇落ちは実力的に洒落にならないので内心では結梨ちゃんナイスと思ってた。
読了ありがとうございました。
これでメンタルケア及びセプテントリオン戦準備編は終わりになります。……次からはアレなので本家様の展開がちょっと怖いぜフフフ。