真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~ 作:貴司崎
廃工場跡地でヤマト・結梨と謎の悪魔人間達との戦闘が始まってからしばらく、状況はお互いに攻めあぐねている膠着状態となっていた。
「物理反射の結界は切らさない、強化解除やデバフも細かくしてくるから攻めきれんな……まあ、地道にダメージを積み重ねていくか。【溢れるマガツヒ*1】による自動回復もあるしな」
「承知したわよサマナー、アイツら火炎無効以上の耐性は持ってないみたいだしね」
| 火炎プレロマ | 自動効果スキル | 火炎属性で与えるダメージを上昇させる。 |
| マハラギダイン+2 | 火炎属性スキル | 敵全体に大威力の火炎属性攻撃。 |
| 神矢来 | 万能属性スキル | 敵全体に大威力の万能属性攻撃。 メギド以下の消費MPでメギドラ以上の火力が出せる専用スキル。 |
高い火炎属性への適性と能力を持つキュベレが放った業火が敵全体を焼き払い、ヤマトが撃ち放つ無数の万能なる光の矢が同じく敵全体を貫くが、それでも同格の単体攻撃魔法と比べれば威力の低い全体攻撃魔法*2だけでは火力不足であり、薬による強化と悪魔人間故に装備品による防御力の強化がなされている悪魔人間達や異界のボスクラスのスペックがある【神造魔人 スクナヒコナ】を倒しきるには至らない。
加えて悪魔人間各々がケチらずに全体回復の【宝玉輪】を使ってダメージを癒したり、一体に攻撃を集中させても疲労状態の【悪魔人間 サルタヒコ】が単体完全回復の【ディアラハン】を使った回復役に徹しているお陰でヤマト達は攻めきれていなかった。
(俺とキュベレが魔法アタッカー、チロンヌプとクー・フーリンと結梨ちゃんが補助回復役パターンでやれば回せるか。火力は不足気味だがどのみち全回復させるなら手番を回復に使わせるダメージだけ与えればいい)
『【宝玉輪】も多くは持っていないだろうしな。物理反射をされると弱点が無い相手にはどうしても火力が足りないのが俺達の難点だな』
勿論魔法でもクリティカルを出せる【禍時:会心】を使えば倒せる可能性はあるが、一体ぐらい倒せてもどうせ蘇生アイテムで復活させられるだろうからと事故死防止優先で長期戦の構えを取っている。
それを裏付ける様にチロンヌプが状態異常防御の全体バリア【予防のパウパウ】を張り、クー・フーリンが【ウォークライ】を掛け直して味方全体の攻撃力と防御力を上げ、結梨が【デクンダの石】を使って味方の命中・回避率低下を解除した。
(向こうもクラマテングが【フォッグブレス*3】をしてくる上、スクナヒコナの【常世より舞う雹】にもスクンダ効果があるから定期的に解除しないと攻撃外れ事故が怖い。他にも俺が防げない緊縛属性の【バインドボイス*4】もあるから状態異常を無効にしない嵌められる恐れがある)
『俺達の
ヤマトが長期戦重視で立ち回ったのは向こうが追加の神造魔人を出してくるとか、或いは更なる薬をキメてオーバードーズパワーアップとかしてくるんじゃないかなど警戒して安全重視で余裕を持って起きたかったのもある。
無論最善は何もさせずに速攻で下す事だが難しく、また時間を稼げば援軍が来るだろうという公算もあったのだが、どうも外側は予想よりも苦戦しているらしく救助が来る気配がない。
『遠間から戦闘音が聞こえるから足止めは未だに続いている様だな。あの面子なら
(まあレベル65の神造魔人まで有しているんだから余程戦力を持ってきたんだろうな。こっちのスクナヒコナも貫通がないから属性相性無効以上をパーティーに入れれば行動を制限出来るが、スペックは十分に異界ボスといっても通じるレベルだからな。コイツの攻撃を食らうと相応のダメージを食うから回復にも手番使わないと)
現在謎の男達は自分達で補と回復を行いつつレベルの高いスクナヒコナをアタッカーとして攻め立てる戦術を取っていた。全体氷結属性攻撃に加えて命中・回避率低下の【常世より舞う雹】に加えて全体衝撃属性攻撃に『めまい*6』の状態異常を与える【針の太刀風】、クリティカル率が高い強力な単体物理攻撃の【ブレイブザッパー】に毒の追加効果がある【べノンザッパー】を駆使して襲い掛かる強敵なので苦戦していた。
実際、最初に攻撃を無効にして手番を奪われてからはプレスターンバトルを学習した様で、無効にされない物理攻撃を【チャージ】を入れてから使うか、物理攻撃を使ってから行動の一番最後に属性全体攻撃を行う事で能力低下と状態異常を狙うなどしている。まあ命中率を下げて上手く攻撃を回避して手番を潰せる事もあったが、それでも尚油断してHPを減らしたままだと潰される可能性が十分にある相手だ。
「クッ! まずいもう……ならば 【デカジャ】!」
「まずい、もう【物反鏡】が……【フォッグブレス】!」
「こうなったら【タルカジャ*7】だ! 一体で良い! 仕留めろ!」
「了解」
そんな事を考えている内にも相手はまずサルタヒコがヤマト達に掛かっていた防御力強化を解除、続いてクラマテングが呪術で霧を発生させて視覚を奪い命中・回避率を大幅にダウンさせ、そこにヌエが掛けた攻撃上昇バフを受けたスクナヒコナが物理耐性の無いチロンヌプへと迫る。
慌ててフォローに入ろうとするクー・フーリンとキュベレだったがスクナヒコナの小柄な身体を活かした素早い動きに、撒き散らされた【フォッグブレス】による視界不良で見事に防御網を抜かれてしまう。
「ゲッ⁉︎ オイラが狙いか⁉︎ ……どうにか
「【ブレイブザッパー】【ブレイブザッパー】」
そうして接近してきたスクナヒコナが振るう針剣をチロンヌプはどうにか回避しようとするが呪術によって動きが鈍った状態ではどうしようもなく、容赦なく振るわれた二連続の斬撃を喰らい一撃は辛うじて耐えたものの、攻撃力強化とレベル差もあって二撃目であっさりと斬り刻まれて
しかし、運良くクリティカルは出なかったので敵の手番はそこで終了し、更にヤマトは仲魔がやられても冷静に『敵が回復と反射に手番を使わなかった』事を把握して次の手を打った。死亡した程度なら後で蘇生させれば良く、ナホビノの契約であれば余程の事でもなければ仲魔はロストしないからだ。
(これまでと違ってサマナーである俺を狙わなかった辺り、形振り構わずこっちの戦力を削りに来た……だけじゃないな。あの様子だと【宝玉輪】と【物反鏡】を切らしたか。……それならここで仕掛ける。チロンヌプが落ちたから手番は減るが*8やりようはある)
『……成る程、了解したぞ少年』
そう考えた彼は仲魔に契約のラインを通してその意思を伝えると、ついでにアイコンタクトで結梨にも動きを変える事を伝えて彼女もそれに答える様に頷いた。
まあ流石にヤマトがどう動くかの詳細までは彼女も分からなかったが、敵のアイテムが切れた可能性が高い事には気付いていたので彼の動きに合わせて立ち回る事を念頭に置いた形である。
「じゃあ私は引っ込むわね。後はよろしく」
「応! 任されたぞ!」
【Change:キュベレ→ヨシツネ】
まずはキュベレが自分で召喚を解除して引っ込み、彼女に代わって再びヨシツネが召喚される……それを見た男達は物理反射の結界が無くなった事で再び物理攻撃のクリティカルで連続攻撃をしてくるのだろうと身構えたが、次に手番が回って来たヤマトの目的はそれだけでは無かった。
「さて、手数が足りないから【会心】は使いにくいが、それなら別の手がある……まずは貴様からだ!」
| 種族超越 | 神意 | 「覇道」の神意。パーティーメンバーが習得している種族固有のマガツヒスキルをナホビノも使用可能になる。 |
| 至高の魔弾・改 | マガツヒスキル | 軍神族のマガツヒスキル。敵単体にレベル依存による特大威力の万能属性攻撃。 【軍神 ヨシツネ】が召喚されているので使用可能であり、その威力は通常の【至高の魔弾】の倍以上。 |
そう言いながらヤマトは蓄積してあったマガツヒを解放して腕部に集中、そのまま腕を前に突き出して万物を撃ち貫く魔弾を“敵のリーダー格であるクラマテング”へと発射した。
その一射は未だに残る撹乱の霧にも惑わされない
「ガ……な、に……?」
「お、おい⁉︎」
「サマナー死亡を確認、対処行動……」
「やはりリーダー格を倒せば少しは動揺するし、神造魔人も召喚者を失ったなら多少は動きが鈍ると……召喚、ジャアクフロスト!」
これまでの戦いでヤマトはあのクラマテングの男が常に指揮を行い、更に神造魔人を預けられている所からリーダー格であり倒せば多少の動揺は誘えると判断して優先的に狙い撃ったのだ。
更に彼はマガツヒスキルは発動に一切手番を消費せずに使用可能な点を活かして倒されたチロンヌプの代わりに【夜魔 ジャアクフロスト】を召喚、更なる追撃の構えを取った。
「ヒーホー! ようやくの出番だホー! 早速オイラが修行と進化で得た新たな力をお披露目……する前にパスして呼吸を繋げとか言われてるホー」
「まあサマナーは余程回避事故が怖いらしいから仕方あるまい。【デクンダ】!」
そうして意気揚々と召喚されたジャアクフロストではあったがサマナーからの指示もあったので一旦行動手番を放棄して次に繋ぎ、手番を譲られたクー・フーリンは多少愚痴りながらもキッチリ自分の役割として掛けられた命中率低下のバフを解除する。
回避事故は絶対にノウ! というのがヤマトの基本方針であり自分が攻撃したのも【龍眼】による命中率の大幅補正があったからだったりするが、それはともかくデバフが解除された事を見た結梨が残りの敵の陣容を見た上で動き出す。
「うん、クラマテングが落ちたなら衝撃相性を無効にするヤツはいなくなってるよね! 【マハザンダイン*9】!」
「グゥゥ⁉︎ だがまだ!」
「ターゲットが電撃と衝撃が得意な事は知っていたから耐性装備はつけているぞ!」
「損傷確認、設定目標の実行には影響なし」
彼女が放った衝撃波は元々『魔』のステータスの方が高い事と本人が有する【衝撃プレロマ】の効果も相まって凄まじい威力で敵全体を斬り裂いていくが、ヌエは衝撃に強くなる【旋風の籠手】の力もありダメージは軽微でサルタヒコとスクナヒコナも単純な耐久力の高さもあって仕留めきるまでのダメージには至らなかった。
……ただし、それでも少なくないダメージが蓄積した事は事実であり、更に先程攻撃に集中したせいで回復にまで手が回っていない事もあって“残った行動回数”から十分に倒しきるだけの準備となった。
「さて、ではいつも通りの役目をこなすとしようか! 【八艘飛び*10】!」
そこに念密に計算された呼吸の繋ぎ方によって得た手番からヨシツネが
……そうして出来た隙にヤマトとジャアクフロストが自らの手番をねじ込んで更なる追撃を、HPが減っていて氷結への耐性がないヌエに対して仕掛けた。
「狙いは俺か⁉︎」
「倒せるヤツから倒して手数を減らしたいのはそちらだけではない! 【逆薙*11】!!!」
まず、ヤマトが手に万能なるエネルギーを纏わせながら引き裂くような掌底をヌエへと打ち込んで痛打を与え、更に続いて極大の冷気を拳に纏わせて振りかぶったジャアクフロストが修練に裏打ちされた見事なフォームによるパンチを放つ!
「ヒーホー! オイラのこの手が光って凍る! オマエを倒せと輝き叫ぶ! 必〜殺! フロストォォォォパァァンチ!!!」
「ゴッ⁉︎ バァァァァァァァッ!!!?」
| 氷結高揚 | 特徴(IMAGINE) | 凍気の扱いに長けた悪魔。 氷結相性のスキル使用時、威力が50%上昇する。 |
| 氷結プレロマ | 自動効果スキル | 氷結属性で与えるダメージを上昇させる。 |
| 氷結ギガプレロマ | 自動効果スキル | 氷結属性で与えるダメージを大きく上昇させる。 |
| フロストパンチ | 氷結属性スキル | 凍気をまとった拳で敵を打つ特技。敵1体に対して近接攻撃力(力のステータス)に依存した氷結属性物理ダメージを与える。 更に高確率で対象に凍結の状態変化を付与する。 |
ヌエへと打ち込まれたその拳はふざけた掛け声とは裏腹に複数の氷結威力上昇効果の恩恵と相まって凄まじい威力となっており、ジャアクフロストの拳が当たった瞬間から相手の肉体を凍りつかせながら砕いて残ったHPを全て削り飛ばして
……そんな風にあっさりと二人の仲魔がやられた事に残ったサルタヒコは目に見える程に動揺していたが、それに対してヤマトは冷静に次の手を考えていた。
「なぁ……⁉︎ こんなにあっさり……!」
「戦いの流れが崩れる時は一瞬だからな」(さて、二体仕留めたがスクナヒコナは
ヤマト達にとって厄介だったのは【物反鏡】による物理反射結界によってプレスターンの起点となるクリティカルが封じられる事と、減らしたHPを【宝玉輪】によって一手番で完全回復される事であり、それがないならデバフや状態異常による事故死さえ警戒すれば十分に押し切れると想定していた。
故にアイテムが切れた時点で倒せる者から倒して敵の手番を削り、仮に蘇生されたとしても立て直しに手番を使わせてからHPを回復し切れていない相手を潰す算段だったのだ。
(まあまだアイテムがある可能性や倒したら第二形態がある可能性もあるから油断は出来ないし、状態異常防御のチロンヌプが落ちたからそっちの対策がやや不安か。俺と結梨ちゃんは【地獄のマスク*12】を持っているが100%状態異常を防げる訳じゃないから気休めだな)
『俺達が生きていれば【ディアムリタ*13】で状態異常は治せるが、負けの目があるとすればそこが最大のポイントだから注意しろ。精神と神経と魔力に連なる異常なら無効に出来るが緊縛は範疇外だ。仲魔が掛かったら【メパトラ*14】が使えるパールヴァティと交代させるか、仲魔に【アムリタソーダ*15】を使わせる』
そうして敵の内二人がやられた事で完全に戦いの流れがヤマト側に傾いたが、それでも彼は油断せずに負けの目を可能な限り潰しながら戦い続ける為にアオビトと共に打てる手を思考していく。
……かつて高レベル悪魔が跋扈する『ダアト』と呼ばれた魔界の様な場所で、サマナーである自分一人が死んだら終わりな状況で尚仲魔と共に実質一人旅で大半の敵対勢力を潰してきた彼等だからこそ、どんな状況でも可能な限り負けるリスクを減らす立ち回りがクセになっているのだ。
──────◇◇◇──────
「……勝った! 第4部完!!!」
「イエーイ!」
それから数分後、廃工場後にはDEAD状態で倒れ伏した三人の悪魔人間だった男達と、かなり損壊している神造魔人 スクナヒコナ】の残骸が転がっており、逆にヤマトと結梨はピンピンしながら勝利を喜んでいたのだった。
……まああれから倒された仲間を蘇生させて態勢を立て直そうとした連中を蘇生直後でHP低くなってたから容赦なくボコって再殺しつつ、全体バフデバフと状態異常で雁字搦めにしながら手番を封じてサルタヒコも撃破、残ったスクナヒコナを順当にタコ殴りにして勝利といった具合だったが。
「でもレベル60超えてる格上だったのに普通に勝てたね」
「まあいくらレベルが上でも五体一でタコ殴りにすれば普通は勝てる。後はこのスクナヒコナはレベルの割にそこまで強力なスキルは持ってなかったし、行動パターンも普通の悪魔みたいなルーチンで動くしかなかったから悪魔人間達を先に潰せばそこまでの脅威じゃない」
『専用スキルも俺が知っているレベル40前後の【スクナヒコナ】のそれと強度はそこまで変わらなかったからな。後は戦う前にアナライズで耐性と保有スキルを抜けたのが大きい、敵の耐性とスキルとステータスが分かっていれば余程の力の差が無い限り手を打ち間違えなければ勝てる』
そんな風にレベルが10以上も上の相手に勝ってもごく当たり前の様に振る舞うヤマトに感心の視線を向ける結梨だったが、直後に敵が明確に自分の事を知ってて狙ってきた事を思い出して表情を曇らせた。
「……でも、アイツらはどうして結梨の事を狙ってきたんだろう? 戦ってる時も結梨の事を知ってる感じの事を言ってたし……」
「そこはまだ分からんが、後でみんなと一緒に転がってる連中を蘇生させてから聞き出すなりして調べればいいだろう。色々と想像は出来るがまずはこの場を乗り越える事だ。とりあえず死んだチロンヌプを蘇生させて、万が一に備えて回復させてからコイツらの装備を剥ぎ取っておくぞ」
「……うん、分かった」
そう言うとヤマトはパールヴァティの【サマリカーム】でチロンヌプを蘇生させて、更に【メディラマ】で味方全体のダメージを回復させる。そして【ヨシツネ】【クー・フーリン】【モー・ショボー】の三体を召喚し直して周囲の見張りに立てつつ死亡した男達から装備とアイテムを剥ぎ取っていった。
とりあえず敵の蘇生と尋問は自分達だけでやるのは危険過ぎるから他のメンバーが合流してからとして、ヤマトは妙に自分が狙われた事を気にしている結梨を気遣いつつ今やるべき事に集中させておく事にした。実際敵の目的がさっぱり分からない以上はどう言ったものか判断が付かなかったからだ。
「あ、サマナー。誰か来たよー。……あれはアンヌと仮面の人みたい?」
『こちらでも確認した。敵対的な反応はないから味方で間違いないだろう』
そこまでしていた所で廃工場跡に近付いて来る気配を察知したので身構えたが、直ぐに敵ではなく妨害を撃破して援軍に来てくれたチームDAT副隊長の【ヤナセ・アンヌ】と『黎明の祈り手』の一人であるボ卿マスクの人(中身は誰かは分からない)であると分かったので構えを解いて彼女達と合流するのだった。
「大丈夫? 遅れて悪かったわね。敵は?」
「もう倒しました。死亡状態でそこに転がして装備とアイテムは剥ぎ取ってあります。それと神造魔人の方は破壊しておきました」
「おやおやおや、君達だけで倒したのですか。流石ですね。……悪魔人間と妙に高レベルの造魔の集団に襲われて少々手間取り援護が遅れてしまいました。作戦通りに行動出来ず申し訳ありません」
「私達だけで抜けて来たんだけど、途中で更に伏兵を配置していたから遅れたわ。助けに来れなくて悪かったわね。……まあ襲撃者は向こう含めて全員倒して拘束済みだけど」
ちなみに襲撃者達は相当な戦力を用意した上で組織的に動いてチームDATや黎明の祈り手を足止めしており、その方法も数を活かしての遅滞戦術や暴走気味な悪魔人間を囮にしての自爆特効、更には妨害の為の結界やトラップ的な呪術などのエゲツない戦術を使って来たので彼等でも対応に手間取ったのだが。
まあそれでも数分で決着を付けて敵を捕縛する辺りはキリギリス最前線組の精鋭達と言うべきだろうが、流石にここまで念入りなやり口だと敵はそこらのカジュアル上がりなマンハントなどでは無い“プロ”、しかも霊能力の専門的な訓練を積んだそこらのニワカカルトでは無い本格的な霊能組織に連なるで者達であると彼等は確信していた。
「……本当に何者なんでしょうねコイツら。ドリフターである結梨ちゃんの事を知ってて狙って来て、更には神造魔人まで使ってくるとか」
「神造魔人? 我々のアナライズでは『種族:造魔』と出ましたが、神造魔人とは一体どういうもので?」
『俺達もそこまで詳しくは知らないが確か古代に作られていた日本特有の量産型の神であり、悪魔の分霊を躯体に入れて生産されて戦力として運用されていたらしい。……俺が元いた世界ではその技術を復活させて人口的に再現したものが戦力としてヤタガラスで生産されていたな』
「ふぅん……それとミツヒロ と私の見立てだけどコイツらが使っていた術式やアイテムは日本式、しかも“京都ヤタガラス”が使ってたものでほぼ間違いないわね。私にもいくつか見覚えのある術式があったし」
そう言いながらアンヌは連中から回収した【滅却の札】の一枚を指に挟みながら厳しい視線を向けていた。彼女クラスの術者であれば同じアイテムでも製法の違いなどがはっきり分かる上、その札の製法が『自分の札のもの』によく似ていたからこそ確信するに至ったのだ。
「京都ヤタガラスはこの前の征伐で実質壊滅したんだけど、それでも生き残りとか当時外回りに行っていて事件に関わらなかった連中も多いからね。……その殆どが上層部に嵌められた被害者とか上と折り合いが悪くて左遷されてた枠だからそっちは問題にはなってないんだけど、そうでないとクズ共で征伐から逃げて外道に落ちた連中もいるからね。そういう連中が色々事件を起こしてるとは聞くけど」
「その割には今回は余りにも組織だって動き過ぎていますから、バックには相応の勢力が関わっている可能性が高いでしょう。少なくとも生き残りが個人規模の事件を起こすのとは訳が違います」
「京都ヤタガラスの生き残りっぽい連中が以前別世界の京都ヤタガラスに狙われた結梨ちゃんを狙って、更に日本古来の技術に由来する神造魔人を使ってた……何か繋がりそうで微妙にチグハグな感じではあるな」
「どういう事なんだろう?」
個別の要素を上げると『関わりがありそうなんだけど微妙に繋がりが見出せない』と思える今回の事件に彼等は首を傾げていたが、まあとにかく今は戦闘の後始末を優先して分からない事は“今倒れている連中から聞き出せば良い”と思い直した。
「ま、詳しい事情は捕らえた連中から聞き出せば良いでしょう。なんか自決用の呪いとかも見えるけど、この程度なら解除した上で蘇生させられるわ。悪魔人間化が溶けた瞬間に朽ち果てるとかそのレベルの呪いは使われて無かったし」
「神造魔人の残骸も調べてみましょうか。造魔の専門家に渡りを付けておきましょう。……人間の方は死体から情報を引き出す手段もありますし、出来るだけ長く耐えて貰いたいものです」
……そうして『絶対に情報は引き出す』という漆黒の意思を持ってイイ笑顔を浮かべる二人によって念入りに拘束された男達と神造魔人の残骸は回収されていったのだった。それぞれ憎っくき京都ヤタガラスが関わってる事と保護してる可愛い少女が狙われたのでヤル気満々なのだが、それを見てヤマトはちょっと引いてた。
あとがき・各種設定解説
ヤマト&アオビト:レベルが10程度上ぐらいの相手ならまあ倒せる
・これでもレベル70超え悪魔が普通に出てくるダアトをほぼソロで踏破して、最後には自分と同じレベル99合一神3人を倒して頂点に立っているので相応の戦闘能力や戦術は持っている。
・ただどちらかと言うと対人よりも対悪魔戦の経験が多く、元は単なる一般高校生でダアトでに実戦経験のみを積んでいたので隙はあるが自覚はしているので現在訓練や学習で補ってる。
・とりあえず敵に弱点がない事が多い対人戦では確定クリティカルか貫通できない反射魔法対策に万能属性魔法か【セーフティ】をアタッカーに覚えさせるかとか考えてる。
一柳結梨:経験は薄いが戦闘の立ち回りは何故か出来る
・ちなみにかつての周回で京都ヤタガラス残党に人間扱いされずに追い回された経験がトラウマとなっており、生徒会の友人の支えで持ち直したが精神がやや自己犠牲的になったのでドゥべへの特攻に繋がった。
・この世界に来てから再び学友と友人になって持ち直したが、今回の一件で再度狙われた事もあってやや気落ちしている上に自分を囮にする案を積極的に提案するなど微妙に悪い方向に向かっている。
・それに対して大人組も仲のいいヤマトにフォローさせつつ、速攻で付け狙ってる連中を叩きのめした上で学校の寮に放り込んで友人達と一緒に過ごさせればいいだろうと考えていたが、思った以上に敵が面倒くさいヤツらだったのでちょっと頭を抱えている。
・何だかんだで生まれて一年も立っておらず人生経験が不測しており、更に経験の殆どが文明崩壊後の友人達との日常と戦いの日々に偏ってるせいか情緒が育ちきっておらず思い詰めがちだが、自分より強くて頼りになる大人の言う事には素直に従うから危険へと飛び込んだりは今の所していない。
読了ありがとうございました。
謎の連中の詳細設定とかは次回。話の間でボ卿達とチームDATベテラン組がたっぷりと“尋問”をするので情報は引き出せます。