真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~   作:貴司崎

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集う因縁/京都ヤタガラス残党を倒せ!

「……それで、例の“娘”の回収は失敗したのか。あれ程の手練れを向かわせて、更には出来の良かった神造魔人まで貸与しておきながらか」

「ああ、どうやら回収対象には相当に強力な護衛が付いていた様でな。向かわせた者達は全て撃破か捕獲の憂き目にあった様だ。……自害用と情報漏洩防止用の呪詛を与えてあるからこちらの情報は漏れる事はないだろうが*1、京都陥落から付いてきてくれた希少な戦力が減ってしまった」

 

 かつての京都ヤタガラスが各地に準備していた隠し拠点の一つ、そこでは“研究職のように見える白衣の男”と“苛立たしげな雰囲気をした和装の男”が先日行った『目的の“資材”の回収任務』の結果について話し合っていた。

 ……この男達は所謂『京都ヤタガラス残党』と呼ばれる勢力の中核人物であり、和装の男の方はかつて京都にて裏の業務を担っていたそこそこの地位だった男で、もう片方の白衣の男は過去の周回からこの世界へとやってきた“過去の京都ヤタガラス残党”の代表にあたる男となる。

 

「こんな任務で貴重な人員を減らしてしまうなど、これであの愚かなダンゾウに代わって京都ヤタガラスを復権させる計画が更に遠のいたぞ。……本当にその娘を回収する必要があったのか? 無駄に戦力を減らしただけであろうが」

 

 和装の男の方はかつての京都ヤタガラスで裏の仕事を行なっていたが、同じ業務を行なって自分よりも優秀だったダンゾウにコンプレックスを抱き、故にいつかその座を追い落とそうと密かに狙っていた野心家である*2

 そして京都征伐の折に『ダンゾウと共倒れはゴメンだ』といち早く離脱した上で自分の配下やダンゾウの配下だった『根』の一部などを傘下に収め、不当に弾圧された*3京都ヤタガラスを復権させる目的で活動しており、そこでかつて見つけて確保していた影異界から現れた『過去周回の京都ヤタガラス』と遭遇して手を組む事で勢力を一気に拡大したのだ。

 

「あの娘のデータが我々が求める研究結果に必要である事はあらかじめ説明して、それにお前も納得したから今回の作成を実行した筈だが? そもそも作戦を実行したのはそちら側だろう。こっちも貴重な実戦用の神造魔人を提供したというのに。……かつての退魔生徒会といい“あんなモノ”に態々貴重な戦力を割くとはな。我々が世界を導く為には力が必要だというのに何故その大義が分からん、お陰で世界一つが滅びたのだぞ」

 

 そして白衣の男の方は【一柳結梨】と同じ世界出身のドリフターであり、その世界での京都ヤタガラスの残党勢力と神造魔人の研究資料及び各種資材を詰め込んだ『箱舟』によって世界を渡ってきた者達の代表でもある。彼の世界の京都ヤタガラスも大体この世界と同じ様なモノであり、帝都ヤタガラスがクズリュウと相打ちになって壊滅した時に文明が崩壊した日本の実権を奪おうとした*4のだが、前々から彼等を疎ましく思ったメシア・ガイア勢力に攻撃されて組織としては壊滅状態となった。

 ……そんな中で彼は残党を率いながら京都ヤタガラスの復権とメシア・ガイア勢力への復讐を考えて研究してきた神造魔人を完成させる為、京都壊滅のドサクサで失った実験体の少女(結梨)を回収しようとしたが退魔生徒会に阻止されて、最終的にはセプテントリオンの出現でかつての世界を見限ってこの世界へと逃げ延びて来たのだ。

 

「……あの娘はかつて発掘した()()()()()()()()()()()()()()にあった『神造魔人の遺骸』より作られた人造人間、悪魔としてしか作られなかった神造魔人では無く“悪魔の力を持った人間”として作る事の出来た現状唯一の成功例。謂わば我々の最終目的である“悪魔と人との完全なる合一”によって生まれる【ナホビノ】の試験品だ。そのデータがあれば我等が合一神(ナホビノ)となり絶大な力を得る事に大きく近付くだろう」

 

 そして何故過去周回の京都ヤタガラス残党が世界を渡る事が出来たのかと言うと、彼等は更に過去の周回から渡来して来たらしき『神造魔人の研究施設』を入手しており、それを白衣の男達を中心に密かに解析と研究を進めていたからだったのだ。その施設は世界を渡った事が原因なのか損壊こそ多かったものの、中にあった神造魔人の遺骸を始めとする神造魔人や合一神関係の情報や資材の回収には成功しており、更に『世界を渡る事のできる設備』までもがあったので彼等は修復したそれを使って現行世界へと逃げ延びる事が出来たのだ。

 ……そして現行世界に浮上した過去周回の京都ヤタガラスの生き残りだったが、その場所がこの世界での京都ヤタガラスが極秘裏に確保していた影異界だったので京都ヤタガラス残党(現行世界)と接触。お互いにボロボロで戦える状況ではなかった事と同じ京都ヤタガラスだった事が合わさって、戦闘になる事なく情報交換を行った結果として目的『京都ヤタガラス復権と日本を正しく導く』が同じであるので協力関係を結んだのだ。

 

「……戦力となる神造魔人は既に作れており、更には一時的な悪魔人間化による強化薬も三業会から得た物を改良したものがあるが、我らの目的を達成するにはそれでも足りんか」

「だから今回の回収業務すらも上手くいかなかったんだろう? 力が足りなかったから。……そうだとも、どれだけ高尚なお題目を掲げても力が無ければそれを成し遂げる事は出来ないのだ。だからこの世界でも京都ヤタガラスは負けた。そして現状で戦力が足りないならどんな手段を使ってでも更なる戦力を得なければな」

「レベル50代の戦力を量産出来るとしてもまだ足りない、やはり必要なのは雑兵だけでは無く圧倒的な『個』となる戦力。愚かなダンゾウ辺りはそれに気が付かず無様に散ったが私は違う、必ず逆賊たる帝都ヤタガラスを打倒して京都ヤタガラスをあるべき姿へと戻さねばならん」

 

 そうして手を結んだ二つの京都ヤタガラス残党は過去周回での資材と研究資料を隠し拠点に持ち込んで研究を開始、和装の男に伝手のあった三業会やヤクザから上手く交渉して“資材”を得ながら研究成果として『悪魔人間変身強化薬』や『従順な神造魔人』などを開発する事で戦力を整えていたのだ。

 ……まあどちらの世界でも京都ヤタガラスが壊滅したのは殆ど自分達が散々やらかして来た悪行への自業自得であり、まともに護国をやっていれば力が足りなくても普通に誰かが助けてくれただろうが、それに気付ける様ならばこんな所で再び外道行為を続けてはいない。

 

「欠けた戦力を補う為にも不本意ながら三業会やヤクザ共との繋がりを深めるしかないか。彼方もイマージュ技術を使う素体として神造魔人に興味を持っていた様だから、上手く交渉すれば資材と人員を引き出せるだろう」

「先立つ物がなければ研究は出来ないから仕方ないな。まあイマージュ技術程度の素体に使える神造魔人ぐらいならくれてやってもいいだろう。我々の目的はその更に上、この国を導く真なる神であるナホビノの力を得る事なのだからな。……あの『箱舟』に残されていた情報が確かならば、ナホビノの力があれば世界を思うがままに“創り変える”事すらも……」

 

 そんなどう考えても反社会勢力に援助する売国行為を行おうとする彼等であったが、本人達の中では『目的を達成する為の致し方ない犠牲』と思い込んでいるので自らの行動に何の疑問も持つ事なく京都ヤタガラス残党は更なる外道行為に手を染めようとしていた。

 ……ただし、そんな自分達だけに都合のいい理論を振り回しての悪行を続けていて誰の目にも止まらないなどという事はなく、彼等は自分達が行って来た悪行の報いを受ける事となるのだが。

 

\ビーッ! ビーッ! ビーッ! /

「これは! 警報装置が作動しただと!!! 一体何が……おい監視員! 状況を報告しろ!」

『ザザッ! ……大変です頭領! 施設周辺の結界に多数の異能者の反応を確認! 監視カメラでも破壊される直前に映像が捉えられました!』

『人感センサーにも多数の人間の反応を感知! 照合した顔と使用術式からおそらく帝都ヤタガラスの手の者だと思われます!』

「なにぃ⁉︎ まさか連中ここを嗅ぎつけたのか!!!」

 

 そう、現在彼等のアジトは京都ヤタガラス残党討伐の為に集められた帝都ヤタガラスの異能者、及びキリギリスでちょうど暇で手が空いていた襲撃参加希望者によって包囲されていたのだ。

 そもそも京都ヤタガラス残党に関しては以前から帝都ヤタガラスは調査しており、これまでは男の情報操作能力でどうにか逃げのびていたのだが過去周回の京都ヤタガラスと合流した事で戦力強化の為に派手に動き過ぎた所為で隠蔽が甘くなっており、トドメに先日の誘拐未遂事件の時に捕獲された襲撃者からの情報が決め手となって拠点を突き止められたのだ。

 

「クッ、逃げ道は……全て塞がれているか! オノレェ!!!」

「そもそも研究成果が詰まったここの施設を手放す訳にもいかないからな。こうなったら迎え撃つしかあるまい。万が一の為に迎撃用に特化させた【神造魔人 シキオウジ】を出撃させるぞ。そちらも覚悟を決めろ」

「分かっておるわ! 総員戦闘準備及び施設内のトラップ全起動! 愚かにも再び我等の使命を阻もうとする帝都ヤタガラスを今度こそ殲滅するのだ!!!」

 

 緊急時用の逃走ルートが帝都ヤタガラスの手によって封鎖されており、更に施設にはキリギリスの精鋭達が多数迫っている状況を見てようやく覚悟を決めたのか和装の男は万が一の時の為に仕込んでおいた各種トラップを起動しつつ残された戦闘員達に迎撃を命じ、白衣の男も作っておいた戦闘用量産型神造魔人を起動していく。

 

神造魔人シキオウジLV58〜64破魔・呪殺反射 物理無効 BS耐性 火炎弱点

・マヒ針 ・マハムドオン ・マハンマオン ・メギドラ ・マカジャマ ・火炎リフレクト ・デカジャ ・大活脈

 

 この【神造魔人 シキオウジ】は白衣の男が得意としていた式神技術をベースにした神造魔人であり、そのお陰か躯体を作る為に必要な覚醒者に血肉も“最低限”で済ませる事が出来たので現状ではほぼ唯一同じタイプの神造魔人を量産化する事に成功した個体なのだ。

 見た目こそ紙で出来た鎧武者の様なものではあるが量産型らしく全ての躯体に【大活脈*5】と擬似的なボス補正である【BS耐性】を発現させる事が出来ており、加えて全体への破魔・呪殺・万能による対多数戦闘と麻痺や封技による状態異常による対精鋭戦闘を行い、更に火炎弱点を突こうとする相手には【火炎リフレクト*6】でのカウンターを狙うかなりの高性能機となっている。

 ……ただし素材の問題なのか起動に必要なMAG量が多くなってしまって燃費が悪い欠陥があり、個人のCOMPを使って動かすには負担が大きく、そのため拠点の龍脈とリンクさせてMAGを供給する術式で動かす形式を取っているので、実質的には拠点防衛にしか使えない仕様なのだが今の様な状況なら十分に戦力になるだろう。

 

「……量産された【シキオウジ】の数は24体、事前に設定しておいたスリーマンセルのチームで行動させて戦闘員の援護をさせるプログラム通りに動かすが構わないか?」

「ああ問題ない。それ以上の数で運用しようとすると動きが悪くなるしな。……だが現在確認出来ている範囲の敵を始末するだけでも戦力が足りん。それに連中を退けたとしても拠点が見つかった以上は更なる増援を寄越されるだけだろう。……やむを得ん、あの『箱舟』に備わっていた“あの設備”の使用を準備する。最悪“アレ”を使って攻め込んできた者達を早急に処分して離脱する」

「“アレ”を使うのか? ……確かにそれなら襲撃してきた連中も一網打尽に出来るだろうが、我々も無事で済むかどうかは分からんぞ。発動時のリスクを減らす事ぐらいは事前の準備で出来るが……」

「構わん、このままではどの道終わりである以上は賭けに出ざるを得まい。我等はこんな所で終わる訳にはいかんのだ」

 

 それでも現状の状況はかなり悪いと判断した二人は最後の手段を切る準備も同時に進めていた。この二人とも頭京都なので視野が狭く外道ではあるが能力そのものは優秀であり、戦力分析はしっかりと出来ていたが故に最悪の事態に備えての準備を怠る事はなかったのだ。

 ……こうして京都ヤタガラス残党と帝都ヤタガラス及びキリギリス有志による戦闘が開始され、京都残党側はかつての敗北の経験からか取り得る手段を全て使ってでも敵対者を撃破する事を早期に決めたのだった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 一方その頃、京都ヤタガラス残党の拠点を発見した帝都ヤタガラスは間髪入れず強襲する事を決断、それに協力するチームDATや黎明の祈り手*7などのキリギリス有志も各々の目的で襲撃に参加する事となった。

 今回は相手が相手なので帝都ヤタガラスが主体となって襲撃作戦を行う事となっており、有志の参加者は大まかな指示には従って貰う予定になったので掲示板で募集しても『ヤタガラスの指示とか聞きたくないなぁ』みたいな考えの者もそれなりにいたのでそちらの集まりは少し悪かったが、逆に帝都ヤタガラスと繋がりのあるメンバーや京都ヤタガラスに恨みがあるメンバーが集まったりしたので結果的に結構な戦力が集まっている。

 

「おおっと、結構呪いとか科学的なものとか入り混じってるトラップが仕掛けられているな。隠れてるヤツもいるから不意打ちには気を付けろよ」

「ほお、少なくとも京都征伐の時よりはまともに迎撃する気があるみたいだな。いきなりGP爆上げからの悪魔大量召喚とか仕掛けてくると思ったが」

「その手の細工が出来ない用に帝都ヤタガラスの術者が周囲の龍脈に干渉してるみたいですね。ついでに退路も封じているみたいです」

「そうしている間にキリギリス勢が襲撃を掛けると。とりあえず敵の術者を殴って潰しておくか。金目の物を漁るのは後でいいだろ、多少はお目溢ししてくれるみたいだし」

「ドーモキョートジンのミナサン、キョートスレイヤーデス。……ハイクを読め、カイシャクぐらいはしてやる」

「殴っても文句を言われない京都ヤタガラス残党とか最高だね。良いストレス発散になる」

 

 それで戦局に関してだが概ね帝都ヤタガラス&キリギリス側が優勢であり、京都征伐時などから得た情報によって京都ヤタガラス残党が使う術式の大半を解析していた帝都ヤタガラスの術者が相手の転移による逃亡や罠や結界などの多くを無効化。更に京都ヤタガラスの戦闘員もインフレ極まった現在の前線で戦っている者も多いキリギリス有志には不利な戦いを強いられていた。

 それでも悪魔人間化薬による強化と拠点に仕掛けられた罠や呪詛を使った奇襲でレベル差をどうにか埋めて戦える戦闘員もいたり、途中から出てきた戦闘用神造魔人と連携する事によってどうにか防戦している状況だった。

 

「「「侵入者を確認。排除します」」」

「おぉ! アレが噂に聞く神造魔人ですか! 見た目は和風な鎧武者風ロボットといった感じで中々いいセンスですね! では性能の方はどんなものかを確かめなければなりませんね……ではロボトルファイト! レディーゴー!!!」

「見せて貰おうか、新しい神造魔人の性能とやらを!」

「刹那、トランザムは使うなよ!」

「了解! トランザム!」

「なんか造魔研究部のメンバーが自分の造魔と向こうの神造魔人でロボットバトルし始めましたよ! ちょっと見に行っていいですか?」

「バカ! 気持ちは分かるけどこっちにも敵が来てるんだよ! レベルが高い悪魔人間やロボットは高レベルの連中に任せて他狙うぞ!」

 

 しかし神造魔人と言っても平均レベルは50〜60強程度、それ以上のレベルの中ボスが割とよく出る現環境で揉まれたキリギリス勢にとっては対処出来ない相手ではなく、特に造魔に詳しいメンバーなどが(ロボットバトルがしたいから)中心となって戦っていた。

 そんな風にレベルの高い者達が神造魔人の相手をする中で事前の話し合いで『結梨に決着を付けさせる』と決めたチームDATも、彼女を護衛しながら連れて京都ヤタガラス残党の拠点へと殴り込んでおり迎撃に出てきたシキオウジと交戦していた。

 

神造魔人シキオウジ×3LV61〜64状態:DEAD

 

「……ふうん、随分とレベルが高いシキオウジだったけどまあ倒せない程の相手じゃなかったわね。強化解除に封技と万能全体攻撃が面倒ではあったけど」

「破魔と呪殺の全体攻撃と高いHP、後は物理破魔呪殺が効かず状態異常にも強い耐性に弱点を補う火炎反射を含めて、地力が低いと数を揃えても勝ちにくいスペックではあったな。……まあ実力で上回る者を複数用意すれば普通に倒せる程度の相手だが」

「物理無効含む耐性ガチガチなやつの相手なら【バイパースマッシュ(100%属性)】が役に立つ。まあ【気合い*8】入れて普通に物理スキル使う方がDPSは高いんだが。基本は最大威力になるまで時間かかりすぎのゴミスキルだし」

「火炎反射されてもそれ以外の魔法攻撃に耐性があるわけでもないっすから、とりあえず氷結属性で攻撃すればオッケー」

「レベルが上回っていれば多少しぶとい程度の相手だったな。強化もされてないメギドラなら連射されてもデバフかけとけば死にはしない」

 

 まあレベル70オーバーが揃っているチームDATにとっては大して苦戦する程の相手では無かったので、雑に瞬殺した上で施設の探索を続行する事となったのだが。彼等は今回参加した中でも最精鋭であり帝都ヤタガラスからの信頼も厚いので首魁である和装の男の撃破や中枢部の制圧なども出来ればやっても良いと言われているのだ。

 なので早急に施設内を移動する為にケンジロウの魔眼による【天空の眼界*9】と、京都ヤタガラスの術式を熟知しているアンヌ副隊長が中心となって施設内のトラップを突破しつつ中枢部への道筋を探していた。

 

「術的・科学的問わず把握出来た範囲内のトラップをマップに記しておくぞ。俺は妹と違って【マッパー】は使えんしな」

「事前調査によって帝都ヤタガラスが得てくれた施設内の地図と照らし合わせつつ、結界や龍脈の配置から逆算して……多分この辺りが呪術的には中枢部だと思うわよ」

「地下か。まあこの手の拠点の中枢部やボス部屋は屋上か地下にあると相場が決まっているしな。問題は途中のセキュリティをどう突破するかだが……正規方法を探しつつダメなら力押しで」

「壁や扉は壊せば大体なんとかなるしな。ただ拠点内部は異界化もしているから他のチームや帝都ヤタガラスと連絡を取りつつ注意して進むべきだろう」

「どうせ京都の時みたいにヤバいちゃぶ台返しみたいな手段を使ってくるに違いないっすからね」

 

 そして拠点の探索で大活躍するのが魔眼使いであるカリヤ・ケンジロウであり、フィールドを把握してトラップを看破する眼界によって安全なルートを導き出し、戦闘員からの奇襲や隠蔽されたトラップも【心眼】や【幻視】によって見破る事によって安全かつスムーズに彼等は拠点を進んでいた。

 彼はレベルこそ低いが鍛えられた魔眼による探知技術によってチームDATの探索面における最重要メンバーとして扱われており、今回もまたその実力を遺憾なく発揮していた。

 

「すごくスイスイ進んでくねー。流石は二水のお兄さん」

「チームDATはプロの大人の集まりだからな。この調子なら直ぐに中枢部と今回の一件をやらかした首魁に会えるだろう。準備はいいか?」

「うん、とにかくこんな事をしているヤツをぶっ飛ばすよ!」

 

 決意を秘めた表情で『むんっ!』と胸の前で拳を握り締める結梨を見て大丈夫そうだと安心したヤマトは、自身もアオビトと協力して油断なく周囲の状況をマップ機能で把握しながら進んでいった。

 総合的に見れば京都ヤタガラス残党討伐作戦は帝都ヤタガラスとキリギリス勢側の圧倒的な優勢で進んでおり、このままいけば順調に残党の討伐は恙無く終了する……様に思われた。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 そんな激闘が繰り広げられている京都ヤタガラス残党の拠点の周囲には多数の帝都ヤタガラスの異能者達の姿があった。彼等は外部から人払いの結界や敵側の大規模術式を抑える為の結界の展開、又は京都ヤタガラス残党達の逃亡防止及び外部からの援軍が来る可能性を考えての監視網の設置などを行う後方支援任務に就く者達だ。

 レベルこそ突入した者達よりは低いものの後方支援に必要な技術を高いレベルで習得しているプロ達であり、帝都ヤタガラスにとって万が一にも禍根になる可能性がある京都ヤタガラスを確実に制圧する為の様々な役割を担っている縁の下の力持ち的な存在であった。

 

「……まさか“アレ”がこの世界に漂着していたとは。妙な縁もあったもの」

 

 そんな彼等が敷いている厳重な監視網の範囲内、しかし拠点を包囲している者達から多少は離れた所にマフラーを付けて眼鏡を掛けた一人の少女が人払いの結界を無視して踏み入って来た……のだが、監視している帝都ヤタガラスの人間は誰一人としてその少女の存在に気づく事はなかった。

 ……これは別に彼等がサボっていたとか監視網に不備があったとかではなく、単に少女が“帝都ヤタガラスですらも捉えられないレベルの隠蔽の術式”を使えるレベルにある規格外の異能者だからである。

 

「確かあの『狂科学者』は世界を渡る『箱舟』を作っていた。……少し視てみたけどあそこにいる神造魔人は彼の作った物と類似点があるから、あの中にあるアレ……【アマラ転輪鼓】は以前の周回で彼が使っていた物に間違いなさそう。私も使わせて貰った事はあるから解析した結果から同じ物で確定……多少のリスクを負っても手に入れておくべきか」

 

 ……そんな事を言いながら眼鏡の奥の瞳を金色に輝かせた少女──【魔人王 コンス・ラー LV99】は京都ヤタガラス残党の拠点中枢部にある【アマラ転輪鼓】を奪取する為に動き出したのだった。

*1
京都征伐時、及びその後の事後処理で既に解析済みだったので副隊長が解呪した。

*2
ダンゾウも彼の内心を察していたが能力と使い道があるので見逃されていた。

*3
※本人の中では。それとダンゾウに隔意があっただけで京都への忠誠はあったので復権狙い。

*4
一応文明崩壊時の治安維持も目的にはあったが。

*5
最大HPを大きく上昇させる。真5出典。

*6
味方全体に次のターン最初に受ける火炎属性の攻撃を反射するバリアを張る。DDSAT出典。

*7
検証作業で忙しすぎるので極一部のメンバーのみ。

*8
一度だけ自分の物理攻撃力を2.5倍に強化。真3出典。

*9
遠距離の敵パーティの認識LVを2に、中距離以内の敵パーティの認識LVを3にする。遠距離以内のトラップを発見する。




あとがき・各種設定解説

京都ヤタガラス残党:過去と未来の京都が一つに……!
・……なった所で帝都ヤタガラスとキリギリスの連合には普通に押される程度の総力だが、所詮は敗残者の集まりが合併しただけなのでしょうがない。
・過去と未来の京都ヤタガラス残党はお互いに確執が無いわけでも無いが現環境のインフレ具合は理解しており、それもあって争ってる余裕も無い事は分かっているので協力関係自体は出来ていた。
・迎撃戦力にはシキオウジ以外にも動かせる神造魔人をほぼ全て出しており、他にも各種結界やトラップで頑張って足止めしているので戦いにはなっているがジリ貧。

帝都ヤタガラス&キリギリス:ヒャッハー祭りだー!
・キリギリス勢はヤタガラスと縁がある者や京都ヤタガラスに恨みを持つ者、後は造魔に興味のある者が中心となって戦闘を行い、帝都ヤタガラスの方は一部精鋭以外は主に後方支援を行う事で住み分けしながら連携を取っている。
・黎明の祈り手メンバーも一部参加しているが結梨の護衛と首魁の撃破はチームDATに任せており、自分達は施設にドリフター関係の情報がないか探る側に回っている。

コンス・ラー:うわぁ野生のボスキャラが練り歩いてるぅ!
・元々自分を人修羅に出来るぐらい研究者・術者としては一流だったが、そこに加えてかつて失ったモノを取り戻す為に技術を世界を渡りながら長い時間を掛けて磨いているので魔人王としてのスペックに加えて異能者としての技巧を組み合わせる事で術者としては規格外の域に達している。
・マフラーは人間だった頃にも付けていたので今も人間へ変装する際にもアナライズ妨害の霊装として身につけており、その隠蔽を突破しても人間態自体に仕込まれている普通の霊能者のステータスが見える偽装術式で『能力を隠蔽した異能者』にしか見えない二段構えの偽装になっている。
・眼鏡の方も同じ様な理由で身につけている霊装で、かつて人修羅だった頃に入手した使い減りしないアナライズアイテム【万里の遠眼鏡】の改造品であり、本人も【フル・アナライズ】が使えるが手軽に解析する為やアナライズトラップ対策に必要に応じて使用している。


読了ありがとうございました。
ネタバレ:京都ヤタガラス残党は単なる前座件かませ犬です。最後に現れた魔人王の“本気”は次回でたっぷり描写する予定。
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