真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~ 作:貴司崎
「……チィ! シキオウジ部隊はほぼ壊滅か! 分散していた敵戦力を撃破する為にこちらも兵力を分散させたのが仇になったか!」
「そもそも人工知能が未完成で人間の指示無しで三体以上での集団運用に難があったから仕方あるまい。……他の神造魔人も多くが撃破され、戦闘員も半数以上が討たれたか捕縛された以上、最早最後の策を実行する他無いだろう」
京都ヤタガラス残党への襲撃作戦が開始されてからある程度の時間が経過した頃、残党側の戦力は帝都ヤタガラスとキリギリス側に大半が撃破・捕縛される憂き目にあっていた。
それを施設中枢部で見ていた白衣の男と和装の男は半ば予想していたとは言え落胆を隠しきれなかったが、それでも戦力が足りない事は分かっていたので開戦当初から進めていた『最後の策』の準備を進めていた。
「この『箱舟』の中枢装置【アマラ転輪鼓】……これはアマラ経絡やアカラナ廻廊などへの接続によって世界の外側から情報を入手する、或いはそういった魔界の底への移動やそれを応用した世界移動の装置だが、それを利用すればこの施設の異界を魔界に繋げて落とす事すら出来るだろう」
「それで侵入してきた者達を魔界に落とした上で我々は転輪鼓の力でこの部屋……に偽装する様に改造した小型の箱舟によって別の場所に転移する。上手く行くかは賭けだが、我らはこのまま終わる訳にはいかん」
「各種研究資料や試作型の神造魔人もこの部屋に詰めておきましたから。転移した後は三業会やヤクザを頼らざるを得ないですが……」
そう、彼等は敵である帝都ヤタガラスやキリギリスはおろか、今も戦っている味方であるはずの京都ヤタガラス残党までも【アマラ転輪鼓】によって魔界に落とし、それによる混乱の隙を付いて脱出しようという外道な策を講じていた。
まあ、こいつらは『自分達だけが助かって京都ヤタガラスの大義を残さねばならない』事を本気で“正義”だと考えており、そんな最早護国組織とも言えない策を当たり前にやってしまうレベルで落ちぶれていたのだが。
「ではさっさと転輪鼓を起動させるぞ。ここの事は部下にも教えておらず偽装と隠蔽も念入りにされているが、施設が制圧されて仕舞えば見つかるのも時間の問題だ」
「ええ分かっていますよ。使う事になるのは覚悟していたので敵襲があった時点で既に準備は始めていましたから、直ぐにでも魔界落としの術式は起動出来ます。帝都ヤタガラスの連中も龍脈に結界を張るなどして大規模術式への対策はしている様ですが、アマラ経絡へのアクセスを封じる程の効果は……なんだ?」
そんな部下を見捨てるクズな策を実行に移そうと白衣の男が【アマラ転輪鼓】を操作しようとした所で、何故か“まだ何もしていないにも関わらず”転輪鼓が一人でに回り始めたのだ。
異常に気がついた白衣の男が転輪鼓の動作を停止させようとするが、どれだけ操作しても文字が刻まれた円柱の回転が止まる事はなく、むしろその回転を火花を散らせる程にドンドン強めていったのだ。
「おい、どうした?」
「おかしい、アマラ転輪鼓が勝手に起動し始めただと? この部屋は術的システムからも隔離される形でセキュリティが……まさか、魔界落としの術式を仕込んだ龍脈から逆干渉しているのか⁉︎ そんな事アマラ経絡から直接術式に介入でもしない限り……!」
慌ててアマラ転輪鼓を止めようとする白衣の男だったがまるで“より強大な力”に動かされているかの様に円柱の回転は止まらず、それなら魔界落としの術式側から干渉しようとするも既にその術式の制御件は何者かに完全に乗っ取られてしまっていた。
それでもどうにかしなくてはと原因を調べようと白衣の男が各種機材を使って調査した所、どうやら転輪鼓と接続しているアマラ経絡側から高濃度のマガツヒを介して自分達が管理している龍脈や施設結界を誰かに乗っ取られているという事が分かった。
「馬鹿な……この施設は我らが前から準備していたもので結界も相応のモノが使われて、現に帝都ヤタガラス共でも外側から押さえつける形で追加の結界を張ってこちらの動きを阻害する程度しか出来ていないというのに……術式自体のほぼ全てを一瞬で乗っ取っただと!!!」
「まさか転輪鼓を介して内側から施設結界の制御権を奪い取ったのか! ……だが、ここまでの事が帝都ヤタガラスに出来る訳がないし、そもそも今術式を乗っ取っている者は『魔界落とし』の術式を止めるどころか
無論、現在アマラ転輪鼓を操作しているのは周囲に展開している帝都ヤタガラスでもなく、むしろ彼等も結界によって制御されていた龍脈を“何者か”に現在進行形で乗っ取られているので大混乱に陥っていた。
……そうして凄腕の術者達が管理している筈の一帯の龍脈の制御権を乗っ取った“誰か”は、京都ヤタガラス残党が残した『魔界落とし』の術式を自分に都合のいい様に改造しながら超高速で起動していく。
「何とかならんのか⁉︎」
「ダメだ! ここまで術式が起動しているのではもう止められない! このままではここら辺一帯におけるアマラ経絡との境界が崩れて異界化……【ボルテクス界】に変質するぞ!!!」
そう白衣の男が叫んだ直後、アマラ転輪鼓の回転は最大まで加速しながら龍脈を【アマラ深界】へと急速に接続していき……そして、その回転が最高潮になった時点で転輪鼓が一瞬光輝くと同時に京都ヤタガラス残党の拠点周辺は、そこに居た人間達諸共に術式に干渉していた【魔人王 コンス・ラー】によって作り出された【擬似ボルテクス界】へと飲み込まれていったのだった。
──────◇◇◇──────
……時は少し遡り、京都ヤタガラス残党の拠点へと敷かれた包囲網からやや離れた所に潜伏しているコンス・ラーはその金色の瞳──【ラーの天眼*1】と【フル・アナライズ*2】の組み合わせによって拠点一帯の全状況を把握・解析していた。
「サマナー、ご自慢のお目目の調子はどうかしら?」
「問題ない、ヤタガラスの阻害結界も過去の周回で術式のパターンは解析済みだから透過して内部情報を視る事は容易い。……解析に集中したいからバステトはこのまま引き続いて周囲の見張りと隠密の維持をお願い」
「はいはーい」
\カカカッ/
| 聖獣 | バステト | LV79 | 破魔・呪殺・魔力反射 神経無効*3 |
とは言え、流石に彼女も結界内部で動く人間や施設の能力を詳細に解析したり、両ヤタガラスが使っている術式自体を解析するなどの作業を並行して行っている間はその作業に集中する必要があり戦闘は出来ないので、仲魔の一人である猫耳の少女の姿をした悪魔【聖獣 バステト】を召喚して周囲の見張りと【混沌の闇*4】による隠蔽を担当させていたが。
「ねーねー? そういえばサマナーはあの施設を昔使った事あるんだよねぇ? 確か
「……ただ退屈なだけでしょ」
……だが、バステトは猫っぽく気まぐれな性格であるのか仕事自体は問題なくこなすが、見張りだけしてたら暇だったという理由で暇つぶしに彼女へと質問をしてきた。
まあ、多少話をする程度で解析速度が落ちる程に拙い技量を彼女はしていないし、状況を整理する意味も込めてかつて自分が日本列島を【ダアト】と呼ばれる超巨大異界へ変えた世界で協力していた『科学者』の事を含めて話す事にした。
「あの施設……というよりは中枢にある【アマラ転輪鼓】とその制御装置はかつて私が日本を異界に沈めて【ダアト】を作り【至高天】へと至ろうとした世界で協力していた『狂科学者』が保有していたモノ。……まあ結局は失敗したのだけど、とにかくあの科学者はこの世界が滅びとループを繰り返しているのが至高天に座す『邪神』の仕業であると考えていて、それに対抗するか殲滅する為の様々な研究を行っており私と協力したのもその一環だった」
「そこまでは知ってるよ。それで肝心のあのアマラ転輪鼓はどんな風に使ってたの?」
「色々と使っていたみたいだけど、主に制御装置を介してアマラ深界から過去周回で起きた事や逆に未来で起こり得る事、或いはこの世界の真理について知る為に使っていた。『ダアトという異界を作り上げる事で至高天の道が開けた世界があった』という情報もあの科学者が転輪鼓によって引き出したものだから。……詳しく調べてみたらその情報の確度が高かったから東京受胎とシュバルツバース、そして“改造した転輪鼓”の力を使って“ダアト”となり得る異界を作ったのだけど」
そう、彼女がかつて起こした【神州受胎事件】は科学者が得た『ダアトという超大規模なボルテクス界に近い異界から至高天に繋がる道が出来た世界がある』情報から、それと同じシチュエーションを再現すれば至高天へと至れると考えて実行したというのが真実だったのだ。
「でも結局は上手くいかなかったよねぇ?」
「……実際に調査した情報を元に【ダアト】に限りなく近い異界を作り上げて、ついでに過去か未来に起きた『ダアトと至高天がある世界』に近付ける様に“ダアトという名前を広めたりもした”がダメだった。……至高天に纏わる情報に抜けがあったか、或いは“転輪鼓に組み込んだボルテクス界の生成装置”部分の問題か。そもそもボルテクス界でもトラブル続きだったから成功率は低かった」
「だめじゃーん。転輪鼓の情報あんまり役に立ってなくなぁい?」
「転輪鼓での情報のサルベージは【見鬼】と同じ様に『使用者の見たいものを視るモノ』であるから、使用者によって同じ情報でも解釈が変わったり情報の一部が抜けたり逆に複数の情報の要素が混在する事も多い。だから単純に転輪鼓から情報を引き出しても、それは所詮“使用者にとって都合のいい真実”にしかならないから基本的に情報としての確度は低い。……ただしあの科学者は“別の観測機”を介する事で情報の確度を上げていたみたいけど」
ちなみに彼女が狂科学者の観測結果を信用したのも、狂科学者が観測した他の情報が自分が世界を渡って調査してきた情報の多くと一致しており、それを含めて転輪鼓以外の手法による追加調査でもダアトを生み出せれば至高天へと至れる可能性が高いと結論付けたのだ。
最もシュバルツバースとボルテクス界を繋げる際に魔丞や大悪魔や調査隊などと交戦した時の負傷でダアトでは余り動く事が出来ず、そこまでして作ったダアトも至高天へ繋がる事は無かったのだが……それでも得たデータは十分に“次”へと繋げられるとも彼女は考えていた。
「別の観測機? それって何よ」
「ある程度の目星は付けてるけど詳しい機構や理論までは分からない。私達は利害の一致した共犯者ではあるけど信頼関係のある協力者じゃなかったから、お互いに本当に重要な情報は相手に伝えてはいなかった。……一応、模造のダアトを作るまでの協力関係に関しては擦り合わせしてたけど、それ以降は互いに目標地点も違っていたし」
だからこそ自分も知らない機構が存在する可能性がある狂科学者謹製のアマラ転輪鼓制御装置、及び観測補助用機器は多少のリスク込みでも確保しておきたいのもあると彼女は内心で考えた。
……そして嘗て失敗した方法でも技術やデータの不足が原因ならそこを改善すれば成功に結び付けられるかもしれないとも彼女は考えつつ話を続ける。
「他にあのアマラ転輪鼓について私が知っている事は“私が提供したボルテクス界運営機能”が制御装置に組み込まれている事と、あの科学者が自分に何かあった時の為に情報収集以外にもアマラ経絡につながる機能を応用して次の週回へと自分の研究結果を渡す『箱舟』の中枢にしていた事だけ。……だからこそ、あの【アマラ転輪鼓】は多少のリスクを冒してでも手に入れておきたい。あの世界では“彼”の示したコトワリのせいで干渉が難しくて方舟の確保も出来なかったから」
「『人のみの世界を創世する』コトワリが世界を覆ったから私達は締め出されたもんねー。覗き見が限界だったしー」
「……結界と龍脈の術式解析も終わったからそろそろ動く」
そうして話している間にアマラ転輪鼓を含む施設内の設備の情報・内外で戦闘を行なっている霊能者全てのアナライズ情報・京都ヤタガラス残党及び帝都ヤタガラスが展開している結界や龍脈掌握の術式の構成などの『全情報を解析し終わった』彼女はアマラ転輪鼓奪取の為に動く事を決断したのだった。
……この“かつての世界を取り戻す為に”磨き抜いた【ラーの天眼】【フル・アナライズ】及び幾つもの解析系カルトマジックを組み合わせた圧倒的な情報解析能力と情報処理能力こそが【魔人王 コンス・ラー】の最大の武器であり、今の様に戦う前に相手のアナライズ情報を全て手に入れる・使われている術式の構成から脆弱性を看破する・サイコメトリーの応用で転輪鼓が二度世界を渡っている事を見破る事すら可能になっているのだ。
「この世界に来る前に『箱舟』は過去周回のヤタガラスに確保されて、そこからこの世界にやってきたみたいだから設備の大半は無くなってる。だけど肝心の転輪鼓の中枢部に狂科学者が使っていた情報処理装置も確認出来たからそれを確保すれば彼の秘匿情報を探る意味でも、新たに情報を入手する用途でも有用。最悪転輪鼓だけでも色々と使い道はあるし」
「でもどうやって取りに行くの? 今絶賛戦闘中だよ。あそこにいる連中を全員ブチのめして確保する?」
「そんなリスクの高い事は出来ない。あのレベルの強者が揃って向かって来れば負けの目が十分にある。……だから京都ヤタガラス残党と言うらしい連中が準備している『転輪鼓を利用した異界形成』の術式を利用する」
そう言った彼女は徐ろに地面へ手を着くと解析した脆弱性から龍脈を介して展開されている帝都ヤタガラスの結界に介入して機能を停止させ、更にそれと並行して京都ヤタガラス残党が使用しようとしていた『魔界落とし』の術式を彼等が完全には掌握し切れていないアマラ経絡と繋がる転輪鼓の制御装置側から干渉して制御権を奪い去る。
彼女が有する前述の異常な解析能力と本人の規格外の域まで鍛え上げた術者としての技巧を持ってすれば、少なくとも即興で展開されている結界や元の狂科学者が使っていたシステムを利用しているだけの装置を遠隔から乗っ取る事が出来てしまうのだ。
「この術式、大分出来は悪いけど転輪鼓を使っての異界創造を行って拠点一帯を魔界に近い異界へと変性させる術式みたいだから、これを少し改造して内部の広さがより広大で複雑な『擬似ボルテクス界』を形成する。そして今施設周辺にいる人間を異界の中に閉じ込めて足止めしている隙に、同じく異界に入った私が最速で転輪鼓の元へとたどり着いて回収する」
「ボルテクス界って受胎でも起こす気?」
「あくまでボルテクス界の技術を使って形成する普通の異界だから受胎も創世も起きない。単にアマラ深界からの供給で強度と内部構造が広大かつ複雑になって呼ばれる悪魔が強化される程度。異界の核に設定する転輪鼓さえ回収すれば通常の異界と同じ様に消滅するから、回収後は異能者達が混乱している隙を突いて現世に脱出してそのまま離脱する。……少なくともこのまま突っ込んで転輪鼓を狙うよりも戦闘回数は減るからリスクは少ない筈」
つまり彼女は敵と接触を出来るだけ避けながら目的であるアマラ転輪鼓を奪取する為、施設周辺をそこにいる異能者達ごと異界へと放り込んで、自分自身も中に入りつつ彼等よりも先に転輪鼓の元にたどり着いて回収する気なのだ。
……一見無茶苦茶でリスクの高い策に思えるかもしれないが流石に隠密が得意な彼女とはいえ普通に戦闘中の施設に潜入すれば高確率で見つかる上、転輪鼓を持ち帰るにも相応の作業時間が必要なのでこのまま侵入してもキリギリスの異能者達に見つかる事は避けられない。
ならば異界に放り込んで混乱している隙に転輪鼓を狙った方が遥かに戦闘を回避しての奪取が上手くいく可能性が高く、丁度京都ヤタガラス残党がやろうとしている事を利用出来るからそこまで手間もかからないと考えての策である。
「とりあえず出現悪魔の設定は私が問題なく異界を踏破出来て、かつ異能者達への足止めになる程度だから“レベル40〜70”ぐらい。異界形成時には空間が歪んで範囲内の人間はある程度近くにいる人間で纏まって適当な所に配置される筈だけど、転輪鼓の側にいる二人は邪魔だから遠くに転移する様にして……流石に私がいきなり転輪鼓の側に行ける様に調整するのは無理か、余り時間もないし」
「要するに早い者勝ちで異界の中枢部に行くんだよね。大丈夫なの?」
「普通に行くよりも奪取出来る可能性、戦闘を避けられる可能性共にこうした方が圧倒的に高いから問題ない。……何より、ボルテクス界やそれに準じる異界を
そうして異界形成の術式を自分に都合の良い様に可能な限り調整を行った後、普段慎重な彼女としては珍しく自信がある口調でそう宣言すると共に新たな二体の仲魔を呼び出した。
「ケロケロリ……吾輩が呼び出されたと言う事はまた雑用でありますかな。サマナー殿」
\カカカッ/
| 聖獣 | ヘケト | LV69 | 電撃・破魔・呪殺無効*5 |
「目的は異界の踏破であれば我々の出番であろうよ」
\カカカッ/
| 聖獣 | スフィンクス | LV86 | 銃撃吸収 破魔反射 火炎・氷結・呪殺無効*6 |
呼び出されたのはフィールドで使う便利スキルを詰め込まれた【聖獣 ヘケト】と戦闘に加えて【ディスアーミング*7】でフィールドのトラップの解除も出来る【聖獣 スフィンクス】であり、ここにパーティーに強力な隠蔽効果を付与するバステトを加えて彼女が異界などの特殊環境を踏破する際に使っている仲魔となっている。
……彼女の強みはこういった特殊能力を持つ仲魔、或いは戦闘に特化した仲魔を何種類も保有している『サマナーらしい』ものである。そういった仲魔と自分の技術を持って様々な世界で暗躍を成功させ、更にはドリフターの中でも“世界を渡り積極的に滅ぼしている三大勢力”と幾度となく交戦しながらも生き残っているだけの実力に裏付けられた自信でもあるのだ。
「……よし、異界形成の準備は終わった。これから擬似ボルテクス界が作られたと同時に私達も異界に侵入、そうしたらバステトの隠密で姿を隠しながら私の目とヘケトの感知スキルで異界の中心核を把握して異能者達が混乱している隙に全速力で戦闘を避けながら移動する。到着したら異界の核であるアマラ転輪鼓を回収すれば核を失った異界は自動で崩壊するからその隙に離脱。上手くいけば誰にも見つからずに目的を達成出来る」
「おお、流石はサマナー殿、完璧な作戦でありますな!」
「まあこのまま潜入して目標物を回収するよりは見つからない可能性も高いだろうがな」
「でもサマナーって結構間が悪いことがあるからうっかり誰かと遭遇したりしてねぇ」
「……多少のリスクは飲み込む。目的を達成する為にも可能性のある物品は確保する」
そうして準備を終えた彼女は最後の一押しとして龍脈に自身のマガツヒを流し込むと、それをキッカケにして周囲の展開されていたヤタガラス式の術式の制御権が全て彼女のものとなり、即座に施設中枢部にある【アマラ転輪鼓】が与えられた指示通りに動いて【擬似ボルテクス界】を形成し始める。
そして転輪鼓によって作り出された【擬似ボルテクス界】が施設周辺を飲み込んでいった所で、彼女達も【龍脈渡り】を使ってその中に飛び込み目的である転輪鼓を回収する為に動き始めたのだった。
──────◇◇◇──────
「……クッ、ここは……?」
『どうやら異界に飲み込まれた様だな。副隊長達が懸念していた京都ヤタガラス残党の奥の手だろう*8』
「隊長達の警戒は当たったか、とりあえず周囲の確認を。このパターンならまずは誰かとの合流を優先して」
施設の中枢部に向かう途中で魔人王によって創り出された擬似ボルテクス界に飲み込まれたヤマトとアオビトだったが、転移系トラップや異界形成に閉じ込められるなどのトラブルにあった時の対処法も事前に聞かされていたので焦る事無く行動出来た。
『周囲には生体反応は無し、だが悪魔の反応をいくつか確認。しかも空間中のマガツヒ濃度が異常に高い、通常の異界ではないな』
「まさか【ボルテクス界】か? ……後ここは廃墟の中っぽいが外に出て異界の様相ぐらいは把握しておくべきだな」
そこまで確認した所で彼らは飛ばされた廃墟の中から外に出た。空間中のマガツヒ濃度から【ボルテクス界】かそれに準ずる特殊な異界である可能性が高い所までは予想しており、京都ヤタガラス残党がまさか受胎までやる気があるのではと懸念を抱きながら彼等は周囲の地形を確認する。
……だが、二人がそこで見た光景は明らかにさっきいた施設よりも圧倒的に広大な異界内部と見渡す限りの廃墟であった……が“彼等にとって”それは予想をはるかに上回るぐらいに
『ここはまさか……しかし余りにも似過ぎてているぞ……?』
「……“ダアト”……なのか?」
何故なら彼等が見た光景はかつて“東京”と呼ばれた都市の成れの果てとなる廃墟が地に広がり、更に地上の一部や天空に歪な形状のオブジェクトが存在する高濃度のマガツヒで溢れた異界……過去の世界で嫌という程に見た【ダアト】と呼ばれた超大型異界に限りなく酷似したものだったのだから。
あとがき・各種設定解説
京都ヤタガラス残党:かませにもなれずに壊滅しました
・拠点で抵抗していた者達も順当にキリギリスに敗北、首魁二人も魔人王が『邪魔だった』と言う理由で作り出された擬似ボルテクス界(悪魔平均レベル50以上)の何処かに飛ばされて終了です。
・ちなみに回収した転輪鼓のシステムは一部解析不能なブラックボックスであったが、機能の使用には支障がなかったのでそのまま使ってた……から機能をより知っている魔人王にその隙を突かれて乗っ取られた感じ。
魔人王コンス・ラー:本気(戦うとは言っていない)
・直接戦闘よりも潜伏しながら暗躍する盤外戦術の方が得意であり、自分がそこまで強くないと知っているから可能な限り戦闘のリスクを下げる方針で動く事が多い(本人の直接戦闘能力が低いとは言ってない)
・今回出した仲魔も主にダンジョン探索用に写せ身合体で有用スキルを詰め込んでカスタム(殆どガワしか残ってない)した者達で、それ以外にも戦闘特化のレベル90以上となる仲魔を複数保有して使い分けてくる。
・まあ直接戦闘能力よりも術者・研究者としての技術の方が遥かにヤバいタイプである事は確かで、超広域アナライズやかの【魔神皇】の如く超大型異界形成からの擬似的な魔界落としすらも準備さえ出来ればやってのける。
・ちなみに今回の異界形成は元の仕掛けを利用したとはいえ遠隔かつ短時間で行ったので、内部の広域化と現出悪魔の調整(後は首魁二人の排除)ぐらいしか出来ておらず、内装が“ダアト”に近い感じになった上に予想以上に広くなっているのには『何で?』と驚いている模様。
ヤマト&アオビト:順調に攻略してたら異界に飲み込まれた
・ちなみに異界形成時に中にいた人間は巻き込まれて異界のどこかに配置されるが、これは空間が操作される事で移動しただけでありパーティーを作るぐらいに近い距離にいた人間はそのパーティー毎に纏めて配置される……基本的には。
読了ありがとうございました。
そういう訳でここからが本番の『ダアト再攻略編』になります。ここで主人公達の過去が現在に追いつき始めますのでお楽しみに。