真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~   作:貴司崎

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集う因縁/プライド・オブ・DAT

「……ヤマトと結梨ちゃんが中々見つからないっスね。他のキリギリスとか帝都ヤタガラスの人らは何人か見つけたのに」

「俺の【天空の眼界】の範囲内には居ないな。異界に取り込まれた際にパーティーを組んでいた俺達が近くに配置されてたから、あの二人も近くにいると思ったんだが」

「他に取り込まれた連中も全員パーティーごとで取り込まれているみたいなんだがな、少なくともヤマトに預けたCOMPに付けた【異界用強化トランシーバー機能】の電波が届かない所にいるのか? 二人は隔絶された異界の別空間にいる可能性もあるな」

 

 所変わってこちらはヤマトを除いた【チームDAT】メンバー達、彼等は同じく【擬似ボルテクス界】に囚われてから直ぐに近くにいた他のメンバーと合流した上で異界の探索を開始、そこから他に取り込まれたキリギリスや帝都ヤタガラスの人物を見つけ出して協力して異界の攻略を行う態勢を整えていた。

 ……異界に取り込まれてから()()()()()()()で他の者達との協力関係構築、及び人海戦術による異界のマップ作成を進めている彼等の手腕は流石とも言えるが、それでも拠点とその周囲が異界化したにしては異常なまでに広い【擬似ボルテクス界】の攻略には苦慮していた。

 

「何かタチの悪い“奥の手”ぐらいは隠してると思ってたけど、まさか拠点ごと受胎させてボルテクス界にするとか……本当に京都ヤタガラスは碌な事しないわね*1。まさか受胎からの魔丞化とか合一神になる事が目的?*2

「そうなると首魁をさっさと見つけ出すべきだな。捕獲した残党連中からボス格のヤツが現在の京都ヤタガラス残党のリーダー格、そして過去周回から来た京都ヤタガラスドリフターのリーダー格の“二名”いるって話だったが」

「最も捕獲しておいた京都ヤタガラス残党も一緒に放り込まれて、それからボルテクス界に出現する悪魔に襲われて全員やられたらしいがな。……部下も平然と見捨てて犠牲にする辺りは京都ヤタガラスホントにクソだなって*3

 

 京都ヤタガラスに恨みを持つ副隊長は言わずもがな、他のメンバーも護衛対象であった結梨を見失った事もあって京都ヤタガラス残党へのヘイトが順調に溜まっている(ヤマトは一人でもなんとかするだろと思われてる)

 ……最も彼等はそんな事で異界探索の手が緩む様な緩い経験はしておらず、周辺の地理や辺りを彷徨く悪魔の種類や数をCOMPに順次記録して一刻も早く異界を攻略出来る様に勤めていた。

 

夜魔キウンLV45呪殺無効 封技耐性 破魔弱点*4

 

鬼女ダーキニーLV46封技無効 物理・火炎耐性 氷結・電撃弱点*5

 

凶鳥アンズーLV48電撃・幻惑無効 封技耐性 衝撃・睡眠弱点*6

 

妖獣ヌエLV49電撃無効 衝撃・魅了弱点*7

 

龍王ユルングLV50電撃無効 火炎・魅了弱点*8

 

邪神パズスLV52呪殺無効 衝撃・混乱耐性 氷結弱点*9

 

 そんな彼等が探索する廃墟の街を模した異界には宙に浮く禍々しい星を模した夜魔、双剣を構えて威嚇する鬼女、獅子の顔を巨大な翼を持ち空を駆ける凶鳥、雷を迸らせる虎柄で黒い顔をした妖獣、虹色の皮を持つ蛇の様な龍王、獅子の顔を持つ人型の邪神などが彷徨いていた。

 

「……出現悪魔の平均レベルは()()4()0()()5()0()って所だな。平均レベルがこれなら確かに難易度の高い異界なら俺達であれば踏破出来るだろう。結梨ちゃんもヤマト辺りと合流出来ていればどうにかなるだろう」

「トモヤの【エストマ*10】を使っておけば戦闘は回避出来るからな。俺達にとっては倒しても経験にならんレベルだし」

「というか私達を見かけた時点で殆どの悪魔が逃げていくわね*11。悪魔はレベル差を察知出来るけど関係なく喧嘩売ってくる事も多いのに*12、彼我の戦力差を理解出来る個体が多いのかしらね」

 

 ……尚、悪魔の種類を見れば分かるかもしれないが彼等チームDAT及び他のキリギリスや帝都ヤタガラスが取り込まれたのは同じダアトを模したボルテクス界であっても別のエリア、ヤマトとアオビトが見ればかつて混沌の悪魔達の拠点【魔王城】があった【千代田区】に類似していると判断されるエリアであった。

 まあ、チームDATも事前に【ボルテクス界】についての情報は仕入れており、最悪時間の流れが違う別エリアに二人が閉じ込められた可能性も考慮はしていたが、この【ダアト千代田区】を模したエリアでも異常に広い上にそもそも別エリアの存在やそこへ行く手段すらも見つかっていないので出来る限り急ぎながら探査するしかないのだが。

 

「ただ拠点が丸ごと異界化したのに内部が廃墟となった日本風の都市、しかも異様に広大になってるとかちょっとおかしいっすよね。内部空間が広くなるのはまあ良くある事っすけど、こういう異界って元となった場所が変質する感じで異界化するのが殆どの筈」

「ボルテクス界だから特殊……って可能性は低いか? そもそも異界は現実空間を起点に魔界なりに半歩近付いたモノだから、基本的に起点となる現実空間の様相に近くなるものだ。現実が山の場所に海っぽい異界は出来ないとかが普通でボルテクス界もそれに準じる筈なんだが」

「建物を異界化しても建物内部の空間が拡張されたり内装が変わるだけで『建物の内部』と言う情報はそのままと言う例が多い筈だけど、明らかに廃墟が広がった広大な屋外になっているわよね。……これは現実の空間以外が異界の起点になってるタイプか、人間の精神が起点の【パレス】とかもあるし」

「それとここに出てくる悪魔のステータスは以前にヤマトとアオビトが纏めてた『ダアトで登場するタイプの悪魔』と同じものだな。廃墟が広がる世界ってのもあの二人からの話に出てきた過去周回の【ダアト】って世界に類似する」

 

 それでもチームDATはウルトラマン防衛チームムーブをするに当たって“キリギリス結成よりも前から”人助けの為に塩漬け高レベル異界攻略などをしてきた経験、そして取集していたボルテクス界の情報や事前にヤマトから聞いていた【ダアト】の情報より『この異界の異常さ』の理由を推測していく。

 

「この異界は『過去周回の【ダアト】を再現した異界』って可能性もあるか。発生する悪魔の能力や挙動、異界内部の様相からの推測だが」

「まあ現状だと判断要因が少なすぎて確証は無いが可能性はある。だからヤマトだけ別の場所に飛ばされたのか? ……どうもこの異界はゲームで言えば『オープンワールド』では無く『正規ルートが決められている』タイプの様だから何か法則がありそうだが」

「異界ダンジョンではよくあるタイプっすね。途中に何故かあるギミックを解かないと先に進めないとか。この廃墟も乱雑に配置されてる様に見えて特定のルートを進まないと先に進めない様になってるし、自由度高そうに見えてちゃんとルートが決まってるタイプのゲームみたいに」

「フィールドの解像度とデザインと広さ次第では凄く自由度が高そうに思えるわよね。……まあとにかくルートが決まってて過去のダアトを模してるなら、敷かれている法則は『過去の再現』かしらね」

「ならば以前にヤマトから聞いた【ダアト】での行動が異界を進むヒントになるかもしれんな。……ただ、何故こんな異界を京都ヤタガラスが作ったのかまではさっぱり分からないが」

 

 ……とは言え、彼等でも異界の法則や由来についての推測は出来ても何故こんな異界を作ったのかは分からなかったが、そもそも転輪鼓を使って異界形成を目論んだ京都ヤタガラス残党は愚か、それを利用して擬似ボルテクス界を作った魔人王でさえ『何故過去のダアトを模した異界が出来たのか分からない』状況なので仕方ないだろう。

 まあ、分からないならば調べれば良いと取り込まれたキリギリスや帝都ヤタガラスは『資料でだけみた軸の悪魔が大量に! これは検証せねば!』『せっかくのロボットバトルが台無しです。何か壊れたロボとか落ちてないでしょうか』『こちらで制御していた筈の龍脈を一瞬で乗っ取られるとか……絶対やばい相手が関わってるよな。四天王が今忙しくていないのに……』みたいな感じで総力を挙げて異界を調査しており、その中でも最強クラスのチームDATは報告にあった()()()()()()()()()へと現在向かっている所だ。

 

「まあ、その辺りはこの異界を作ったであろう京都ヤタガラス残党の首魁二名を叩きのめして聞き出せば良いでしょ*13。今は先に進んで二人を探しながら異界の調査を進めるべきよ」

「ああ、情報によればこの先に帝都ヤタガラスのメンバーが“侵入出来なかった”という場所がある。……その場所の特徴を聞いてここが【ダアト】を再現した場所であり、ヤマト達から聞いた話を参考にすれば突破可能かもしれないと考えたからな。とりあえず試してみよう」

「……見えてきたな。確かに“ここまで熱が伝わってくる”」

 

 そうして進む彼等の前に現れたのは『天まで登る巨大な炎の壁』が先へと進む事を拒む様に聳え立つ光景だった。その炎の壁は決して見掛け倒しでは無く生半可な悪魔は触れただけで焼滅し、例え火炎無効などがあっても炎の勢いによって先に進む事を許されないというフィールドギミックとなっているのだ。

 ……ただし、そんな炎の壁を見ていたチームDATは『異界の特殊ギミックなど見慣れている』と言わんばかりに淡々と突破できる可能性のある“方法”を準備していた。

 

「さて、ダメージゾーンの類なら【コアシールド*14】で突破出来るかもと思ったが、炎が消える訳じゃないので勢いに押されて侵入は不可能って感じか。……やっぱ単なる炎じゃないな。熱は少し伝わるが直接触れない限りは物を一切燃やさないし」

「おそらく特殊な異界のギミックだろう。落とし穴とか吹き飛ばしとか何故か先に進む為に解く必要があるリドルとかみたいな。……まあ神話や伝承における“試練”などを再現した異界のギミックは珍しくもないが」

「伝承ベースの異界であればその伝承に擬えた行動を取る事によってギミックを解く事が出来る事も多い。……まあ高レベルなら力技で突破出来る事もあるが」

「典型的な『条件を満たさない限りは突破出来ない』タイプっすね。まあ高レベルの【火炎反射】持ちがごり押しでいくなら行けそうな気もするっすが……正規の方法に心当たりがあるならまずはそっちを試すべきっす」

「そうね。……確かヤマト達がいた過去周回の【ダアト】で暴れていた混沌悪魔勢力の一体【魔王 スルト】は拠点である魔王城を守る『炎の壁』を展開していた。そしてそれを突破する為に彼等は火伏せの効果がある【秋葉権現の符】を使って突破したらしいわね。……つまり火伏せのお札があれば突破出来るかも」

 

 つまりここが過去のダアトを再現した異界であるならば、フィールドギミックも過去と同じやり方を擬える事で突破出来るかもしれないと考えて彼等はここにきたのだ。加えて過去のダアトへの擬えが成功すれば、この異界が『ヤマト達が過去に経験したダアト事件と何か関係がある可能性が高い』と分かるだろうという思惑もあった。

 ……結梨がいた世界のドリフターが京都ヤタガラス残党と協力関係にある事は分かっていたが、ヤマト(アオビト)がいた過去周回の“何か”まで関わっている可能性が出て来たので出来る限り状況をはっきりとさせたいとチームDATの面々は考えていたのだ。

 

「さて、【火除神符*15】を改造して秋葉権現の真言や請願やらを書き込んでみたけど通じるかな。……オン ヒラヒラ ケン ヒラケンノウ ソワカ!」

 

 そして過去の擬えるを行う為に高位の符術師であるアンヌ副隊長の技術によって魔改造された【偽・秋葉権現の符】が真言と共に炎の壁へと放り投げられる……すると、お札が当たった部分からまるで解ける様に炎の壁が消えていったのだ。

 ……本来魔改造したとはいえ単なる消費アイテムである【火除神符】と割と適当に唱えられた真言程度で消せる炎の壁ではない筈だが、それが消せたという事はつまりこの異界には過去の【ダアト】が再現されたルールが敷かれているという何よりの証拠となる。

 

「あー、やっぱり過去周回のダアト再現された説が正しいかしらね。ただヤマトの話では『お札の力で炎の中に入れた』って話だから、かき消された辺り本来のものより劣化してるのかしらね」

「或いは過去の再現が重視されているのかもな。……とすると確か続きではこの炎の壁を超えた先でボスが『……我が炎をかき消すとは何者だ』

 

 \カカカッ/

魔王スルトLV65火炎吸収 BSに非常に強い 氷結弱点*16

 

 そして炎の壁を越えた先に待っていたのは溶岩の様な肉体を持ち巨大な炎の剣を携えた悪魔【魔王 スルト】であり、かつてのダアトと同じ様に【魔王城】への道を阻む様に炎の壁を作っていたのだ。

 そして、今もかつてと同じ様に炎の壁を越えてきた敵手を葬るが為に炎の剣を構えて戦闘状態に入ろうとするが……。

 

『汝らは“ベテル”の者か? ……汝らの崇める神は死んだ。そして世界はもうすぐ滅びを迎えようとしている……故に我がこの世界を焼き尽くしてやろうというのだ「はいはい、異界の中ボス程度が何言ってるのか」

「イマイチ発言の意図が掴めない辺りやっぱり過去の再現っぽいな。ベテルなんて組織はこの世界にはないぞ」

「世界が滅びそうと言われてもちょっと否定出来ないっすが、今年もウルトラマンの新作が放映される以上は滅ぼさせないっす!」

「今年はシリアス路線っぽくて隊長が変身するとか中々面白そうな要素が多いからな! それに他にもセブン55周年とかDX蛇心剣とか情報が盛りだくさんだから文明は維持されなければ困る」

「シン・ウルトラマン三部作が完結するまで世界を滅させる訳にはいかない」

 

 その発言から『過去の再現説』が高まった事を確信したチームDATの面々は、ウルトラオタとしての魂の叫びを放ちつつさっさと片付けて先のエリアを探索しようとスルトのセリフを遮って準備を整えて戦闘を開始した。

 

「とりあえず火炎耐性持ちを出すか。召喚、デカラビア、ケルベロス、アナンタ。そしてアナンタは早速全体バフだ」

「ならそれに重ねて新しく手に入れたバフスキルも使ってみましょうか。ペルソナ、ラクシュミ。 【ラスタキャンディ】」

 

無終なるもの自動効果スキル自ターン開始時、連動効果が発動「1ターンの間、味方全体の攻撃力・防御力・回避と命中を20%増加させる」

 敵ターン開始時、連動効果が発動「1ターンの間、味方全体の攻撃力・防御力・回避と命中を20%増加させる」

延長強化自動効果スキル自分が使うカジャ・ンダの効果時間が1ターン延長される。

蓮花がもたらす富特性自身が味方に対して発動する補助効果のターン数が2増加する。

ラスタキャンディ補助属性スキル3ターンの間、味方全体の全能力を1段階上昇させる(真5仕様)

【無終なるもの】に上書きして攻撃・防御・命中・回避が二段階上昇。

 更に上述の自動効果スキルと特性により効果が6ターン継続する。

 

 元よりヤマトとアオビトから聞いた話から炎の壁を突破した後はボスとの戦闘になると予想していたチームDATの動きは素早く、先手を取って即座にバフを掛けると共にスルトの弱点である氷結メインで先制攻撃を仕掛けていく。勿論事前に【マッスルドリンコ】を決めるなど準備は万全の状態だ。

 

「アナライズ終了、スルトは氷結弱点だから【アクアンズカートリッジ*17】を使う。後は反撃スキル持ちだから物理攻撃には注意。【アームショット*18】」

「じゃあ氷結魔法が安定っすかね。多分ヤマト達みたいにクリティカルからの連続攻撃(プレスターンバトル)もして来そうっす」

「クリティカルからの連続攻撃を受ければ乙るから【観音神符*19】は準備しておけ」

 

 更にケンジロウが氷結属性銃撃を出来る様にした【DATハイパーバスター】でスルトの腕をピンポイントで撃ち抜き攻撃力を下げ、トモヤが氷結属性で最大級の威力を持つ単体魔法【ブフバリオン】を放ってその巨体を凍りつかせる。

 自身よりレベルの高い超人達の二段階強化された上での弱点攻撃にスルトは大きく怯んで動揺するが、そこに残った者達は油断なく補助を重ねるか通る攻撃を更に繰り出してダメージを稼いでいく。

 

『貴様らぁ! 神の恩寵も届かぬこの堕ち果てた世界で何故そこまで抗う!!!』

「ふぅん、所詮は過去の再現だからボロが出てきたか? まあ影法師に何言っても無駄かも知れんが答えてやる……()()()()()()()()()()()()!!!」

「私達は趣味で正義の味方(ヒーロー)をやってるのよ。そもそも世界が滅びるのに抗わない防衛チームとか解釈違いも良いところでしょ」

「例え地球を滅ぼせる脅威の前に迷って折れても、最後には立ち上がるのがウルトラマン(人間を守る超人達)と共に戦う防衛チームっす!」

「俺達は世界を救うヒーロー(ウルトラマン)にはなれんかもしれないが、例え微力であっても自分が住む世界を守る為なら抗わない理由はないだろう」

「それが俺達【チームDAT】だ、冥土の土産に覚えておくと良い」

 

 動揺したスルトの言葉に対して彼等は|【チームDAT】としてのプライドを込めた魂の叫び《ウルトラマンオタクガチ勢の主張》で返して、そのままスルトが放つ超高温の豪炎と相対しながらボス戦を続行した。

 ……まあ、流石にキリギリスでも上澄み勢である彼等がレベルが70も無いボス単騎に負ける事などなく、順当に勝利した後で引き続き逸れた二人を全力で捜索していったとさ。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 ……そんなチームDATとスルトの戦闘を眺める者が廃墟となったビルの上にあった。最もその影が眺めているのはこの【ダアト千代田区】を模した擬似ボルテクス界全てであったが。

 

「…………ふむ、成る程。やはりこの擬似ボルテクス界の内部はかつての【ダアト】を模した内装になっている。ここは【千代田区】に似ている? 一時期ここらを拠点にしてた混沌の軍勢にスパイを紛れ込ませてたから見覚えがある」

 

 勿論、その正体は京都ヤタガラス残党が有している【アマラ転輪鼓】を奪取する為に彼らが企てた『魔界落とし』の術式を乗っ取り、それを使ってこの擬似ボルテクス界を作り上げた“黒幕”とも言える者……【魔人王 コンス・ラー】その人であった。

 彼女は過去周回のダアトの事を知っていた事もあって予定通り異界へと入り込み、取り込まれたキリギリス達が手間取っている間に異界の構造を把握した上で中枢部へのルートを割り出していた。

 

「……いやなんでダアトを模した内装になってるの? 異界の内部も想定より広くなり過ぎてる……これだからオリチャーはガバる」

「草」

 

 ……まあ、それはそれとして自分が作った筈なのに予想外に内部構造が広くなっている上、何故かかつての【ダアト】を模した構造となっているのには『いったいどういう事だ』と頭を抱えていたが。

 

「相変わらずサマナーが計画した事には予想外の事態が付きまとうわねぇ。これまでも予想外の事態の所為で暗躍が上手くいかない事が良くあるし」

「黙っててバステト。……自分の建てた予定通りに事が進まないなんてのは私が一番良くわかっている。だから予想外になる事自体は予想通り、逆に言えばこの予想外も予定通りと言える」

「幾ら何でもそれは無理矢理すぎであります」

「ヘケトうるさい。……それにダアトを模した異界ならある程度地理を知っている私に有利だし、確かに予想よりも広いけど私の目なら問題なく地形を把握出来るのだからむしろキリギリス達を長く足止め出来ると考えればプラスになってる。既に転輪鼓がある異界の中枢部もこの下にあるもう一つのエリアだと分かってる」

 

 そんな風に仲魔から突っ込まれている彼女だが実は既に【千代田区】の構造は完全に把握しており、更にこの擬似ボルテクス界にはもう一つ別の大型空間──ヤマトと結梨が取り込まれた【台東区】を模したエリアがある事まで既に突き止めていた。

 ……上記の発言も決して言い訳というだけではなく、彼女はこれまでの経験から予定外の自体に陥った時にも冷静にリカバリー出来るだけのメンタルと技術を有しているのだ。

 

「この擬似ボルテクス界がかつてのダアトを模した構造になっているのも、中核である【アマラ転輪鼓】がダアトを観測していたからと考えれば辻褄は合う。あの狂科学者は転輪鼓を主に観測機器として使っていた訳だし、転輪鼓とセットの観測機器もそのままだったから“観測”によって“認知”されたある種の【パレス】に近い性質か。……そもそも転輪鼓によるボルテクス界の操作には認知世界の技術も使われていたから、その機能を持つ観測機器が誤作動を起こしたならこうなる事もありえる」

「流石はサマナー殿、冷静で的確な判断力であります!」

「ただこの辺りの部分は私も知らない技術が使われてるみたい、遠隔の解析でも分からないブラックボックス部分が存在していたし……転輪鼓と制御装置を確保しておく必要性が上がった」

 

 ここの転輪鼓は嘗て失敗したとは言え超大規模ボルテクス界の創造に関わったものだったので彼女としても確保したかったのだが、ここまでの機能を有していたのは予想外であったので“自身の目的”に役立つ可能性が高まってきたと判断したのだ。

 

「それで、目的である転輪鼓の元に行く方法は分かったのか?」

「そちらも解析済み。ここの基本法則は『過去のダアトの再現』であり下のエリアへの入り口はかつて【魔王城】と呼ばれていた混沌の悪魔達の拠点にある事は突き止めた。そこまでの行き方は過去を再現した異界らしく配置された混沌の悪魔の影法師を倒せば進める様になっている……けれど、一々戦闘してる暇もないし戦えばキリギリスに気付かれる可能性が跳ね上がるから“裏技”を使う」

「裏技?」

「私はかつてのダアトではその前の負傷もあって戦闘を避ける為に表立って動けなかったけど、情報を入手する為に混沌の悪魔の軍勢の一人として潜り込んでいた事がある。だからその事実を持って私を『混沌の悪魔の一人』と異界に認識させて、既に魔王城の奥に辿り着けると解釈させる事によって戦闘を全て避けて次のエリアに行く」

 

 事実、彼女は異界に入り込んでから3時間でイレギュラー極まる異界上部エリア全域の解析と誰にも見つからない形で下の階層に行く方法の準備を終えており、それらを異界を凡ゆる手段で探索しているキリギリスや帝都ヤタガラスに見つからない様に成し遂げたのだ。

 

「ただし、今この階層にはかつてダアトを制したナホビノたる彼と神造魔人の少女の姿が無い。おそらく過去に魔王城を踏破した経験のある彼等は最初から“クリア条件を満たした”とされて次の階層に送られている。当然異界の解決を考えて中枢に向かうだろうから急ぐ必要がある、どうも下のエリアの方が時間の流れが速いみたいだし」

「うーん、これはまたイレギュラーの予感」

「そうなったらまた対処すれば良い。行くよ」

 

 そうして方針を決めた彼女達は決してキリギリスに見つからない様にバステトのスキル【混沌の闇*20】や得意の隠密術式を使いながら、同じバステトのスキル【疾風*21】の恩恵によって高速で異界のゴールである魔王城まで駆けていったのだった。

 

 

 ──────◇◇◇──────

 

 

 一方その頃、実は正規ルートでショートカットしていて上層にて仲間達から探されていたり黒幕から要注意と見做されているヤマトと結梨だったが……。

 

「はっ、光ってる自動販売機発見! 全力ダッシュだ!」

「えぇ? そんなに喉乾いてたの? 異界の中の飲み物とか食べ物は食べない方が良いって言われたけど」

「いや、自販機を探せば【黄金の三角石】とか【取手付ゲーム機】とか【謎の木乃伊】とか手に入るかもしれないからつい……光ってる自販機を見つけたら全力でアラレちゃんダッシュするのはナホビノの性だから仕方ないんだ」

『まあ昔は良く日本全国自販機巡りをしたが、今はそもそも買い取ってくれる者がいないから単なるガラクタにしかならないだろう。ギュスターヴはこの世界では見かけないしな』

「それもそうか、彼がいてくれれば写せ身もマッカで手に入るのに……」

「良く分からないけど、自動販売機で手に入るのは飲み物じゃないの?」

 

 ……なんか割と元気にダアト下層を走り回っていたとさ。

*1
濡れ衣……ではないけど主犯でもないです。

*2
合一神になる事は目的でしたがここで受胎までする気はありませんでした。

*3
これは合ってる。

*4
真5仕様。

*5
真5仕様。

*6
真5仕様。

*7
真5仕様。

*8
真5仕様。

*9
真5仕様。

*10
一定時間、エネミーシンボルとの接触時に戦闘にはならずに消滅させる。真5仕様。

*11
真5のエネミーシンボルは主人公のレベルが高いと逃げていく事が多い。ただしレベルに関係無く向かってくる個体もいる。

*12
他のメガテン作品ではフィールドを進むだけで悪魔と自動エンカウントする仕様が多い。

*13
知らないしもう死んでます。

*14
次の満月までダメージゾーンを無効化する。

*15
自分への火炎相性の攻撃1回に対し、ダメージを半減する消費アイテム。

*16
真5ボス仕様【スルト】を基本に『魔界落ちして作られたダアト』設定の異界に合わせてレベルを上昇。

*17
DATハイパーバスターにセットすると銃撃攻撃が氷結属性銃攻撃になるぞ!

*18
敵単体に銃撃属性攻撃を行い、攻撃力を一段階下げる。

*19
自分への攻撃がクリティカルだった場合、それを通常の成功に変更する。クリティカルを無効にするプレスターン対策アイテムとして準備していた。

*20
パーティの認識LVを3下げる。周辺にも影響を齎す。

*21
移動速度が2倍になる。




あとがき・各種設定解説

チームDAT:防衛チームが世界の滅びを前に諦めるのは解釈違い
・そんな理由でキリギリス結成前から世界滅亡の噂を聞いてからむしろ積極的に仕事をこなしており、だからこそ全員の実力がキリギリスの中でも上澄み勢になっている。
・今回ネタ発言が多いが普段の任務で他人の目がある場合は防衛チームムーブ優先でネタ発言を控えており、後はヤマトがいる時は頼れる先輩ムーブするのでふざけが少ない事などが原因。
・ちなみに現行世界ではヒーロームーブしてるけど過去周回ではそもそも結成されずに個人個人がアレなムーブしてる方が多い、特にヘビクラ隊長は95%ぐらい邪神憑依からの闇落ちでオーブ序盤のめんどくさいジャグジャグムーブしてる。

魔人王:致命的に間が悪いタイプ
・例えると安価だと良くファンブル出すタイプのキャラであり、それ故にここまで拗れた訳だが……最悪の状況でも初志を“諦められない”メンタルと失敗を覆せるだけの能力と才能があるから終われない。
・要は能力と才能と性質は最強系主人公に相応しいレベルであるが、例えば最初のエロダイスで100分の1出す感じの(笑)運命力とか主人公補正が足りない感じ。
・ただし敵がクリティカル自分がファンブル出しても固定値の差で蹂躙出来る“地力”、奇策によるジャイアントキリング程度なら対処出来る“手札”、自分のやる事は上手くいかない事が分かってる故に油断や慢心のない“精神”を持ってるので格下ではまず勝てない。

ヤマトと結梨:元気にダアトを探索
・……している様に見えるが結構余裕はない模様、詳しくは次回。

擬似ボルテクス界:過去周回のダアトの模倣
・千代田区を模した上層と台東区を模した下層に分かれており、上層の【魔王城】を模したダンジョンを攻略する事で下層へと進む事が出来る仕様。
・ボス敵などは過去の再現として生み出されたシャドウに近い存在になっているが、出現悪魔に関してはかつてダアトで発生していた軸の悪魔が召喚されているので仲魔にするなども可能だったり。
・実際の過去周回のダアトでの混沌の悪魔との戦いでは色々とやらかした連中がメシア教とヤタガラス過激派に殴られている隙に、ナホトラマンを中心とするベテル精鋭が魔王城へと侵入を試みる感じだった。
・最終的にはベテルの他の連中が戦線離脱か囮になる中でナホトラマンがソロでトップの魔王達を斬首するRPG勇者ムーブをかまして壊滅させたりしているが、今回は混沌の悪魔達のみの限定的な再現になっている。


読了ありがとうございました。
次回は下層でのヤマト達の活動を書いて集う因縁編は終わりかな……そこから彼等自身も知らない過去の秘密が明かされる展開予定。
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