真・女神転生オタクくんサマナー外伝 ~ナホトラマン奮闘記~   作:貴司崎

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いつかどこかの真実/問答

「ゴッ……バァッ⁉︎」

「ヤマト⁉︎」

 

 突如現れた鳥面の少女──【魔人王 コンス・ラー LV99】の【死亡遊戯(確定クリティカル物理)】による手刀の一閃によって斬り裂かれたヤマトは、赤黒いマガツヒを撒き散らしながらその衝撃によって部屋の壁際まで吹き飛ばされていった。

 それを見た結梨は悲鳴じみた声を掛けつつも敵からの奇襲と判断して武器を構えて戦闘態勢を取った……のだが、不意を打たれた事もあってヤマトを攻撃したのとは別の『もう一人の影』が迫っている事に気付くのが一瞬遅れた。

 

「対応が遅いな。まあそういうタイミングを狙って奇襲したのだが」

「ッ⁉︎ キャァァァッ⁉︎」

 

邪神セト:思念融合
①物理・衝撃属性で与えるダメージが15%増加する。物理命中率が20%増加。

②最大HPが50%増加する。

③【ウアス】で消費するMPが減少する。

④最大HPが50%増加。物理・衝撃属性で与えるダメージが25%増加。

他にもHP・物理攻撃力が上昇している。

物理ギガプレロマ自動効果スキル物理属性で与えるダメージを大きく上昇させる。

ウアス物理スキル敵単体にクリティカル率50%の貫通を得た物理属性または衝撃属性の打撃型ダメージを威力160で与え、そのダメージの50%分、自身を回復する。

属性は状況によって自動で選択される(今回は物理属性が選択)

このスキルによるダメージは属性貫通を得る。*1

 

 結梨の前に現れた禍々しい雰囲気をした黒い翼を持つ男──【邪神 セト LV98(人間に変化している)】が手に持った二又の杖を無造作に振るうと、そこから破滅的な威力を持った衝撃波が発生して彼女へと襲い掛かる。

 ……その衝撃波はかつて【魔丞 セト】と呼ばれた者が使ったスキルと同名のモノながらケタ違いに高い破壊力を持っており、ギリギリで防御態勢を取った彼女の肉体をそれでも砕いてHPをゼロにしながら吹き飛ばしてしまった。

 

「ふむ、咄嗟に防御だけはしたか……ああいや、衝撃波に逆らわず飛ばされて威力を殺しながら距離を取ったか。【不屈の闘志*2】で蘇った様だしな」

「こちらも敢えて後ろに飛ばされて威力を殺してる。しかも攻撃の威力を削がれた上で手応えが軽かったからクリティカル無効……こっちと同じ【畏怖*3】と【観音神符*4】、それに“体”のステータス重点で上げてるからギリギリで耐えたか」

 

 しかし、彼等二人がこちらの攻撃を受けても上手く凌いだのを見て取ったコンス・ラーとセトは方や面白そうに笑い、方や油断のない目付きで仲魔を呼び出して戦闘態勢に入ったヤマト達を見据えていた。

 尚、コンス・ラーは【混沌の闇*5】による隠密奇襲用に呼び出していた【聖獣 バステト LV79】を引っ込めつつ、代わりに戦闘用の仲魔である【魔神 トート LV92】と【地母神 イシス LV96】を呼び出す辺り戦闘を続行する気の様だが……。

 

「待て! お前がかつて俺達の世界で【ダアト】を創り出した【魔人王 コンス・ラー】なのか⁉︎」

「そこの転輪鼓……アマラコンピューターとやらから情報を引き出したか。先程何かの情報を伝えられていた様だし、やはり観測・記録媒体だったか。……あの世界でダアトの創造の関わったかどうかならイエスと答えておく」

 

 戦闘を続行するよりも僅かに早く肉体を斬り裂かれてボロボロの状態であるヤマトがコンス・ラーに向けて厳しい口調で詰問し、それに対して目当てであった転輪鼓からの情報にも関わる事もあって思わず彼女は答えてしまった。

 ……現状のヤマトは身体に大きな斬撃痕が出来てそこからマガツヒが血の様に溢れている有り様だったが、それでも【ヨシツネ】【パールヴァティ】【メルキセデク】を召喚ながらコンス・ラーに向かい合うなどその目は死んでいなかった。

 

「やはりか! 一体何が目的でこんな異界を作り上げて……まさか転輪鼓とアマラコンピューターが狙いか?」

「……目敏い。まあここまで来れば分かりやすいか」

 

 そしてヤマトはコンス・ラーとその仲魔達は自分達と【アマラ転輪鼓】の間に立ち塞がる様に配置されたのを見て目的を看破してみせた……が、彼我の戦力差から勝ちの目はかなり薄いと判断して、それでもどうにか時間稼ぎをしようと【TALK(ムダ話)】を仕掛ける。

 ここが龍脈やマガツヒが集まる異界の中枢部(ボス部屋)であり、それ故に【トラフーリ*6】などの転移系スキルの効果が使えない可能性もある事を考慮しての一手である。

 

「やはり転輪鼓が狙いか……まさか京都ヤタガラスの術式に干渉してボルテクス界を作ったのは、そのドサクサに紛れて転輪鼓を奪うためか?」

「本当に目敏い……いや、さっき転輪鼓の制御システムから情報を受け取った様だから、そこで転輪鼓の制御装置の情報とこの異界が外部から干渉されて出来たと知った。ならそこまでバレるのは当然か。制御装置に自律行動機能があるとまでは知らなかった」

 

 実の所、ヤマトの狙いはアマラコンピューターが言っていた『異界の消滅』までの時間稼ぎであり、異界さえ消滅するのならば他のチームDATやキリギリスのメンバーと合流出来て魔人王に勝てる算段も出て来ると考えての行動である。

 だが、異界が後10分程度で消滅するだろうとボルテクス界を作った張本人であるコンス・ラーは判断しており、更に『異界の上層・下層及び現実世界の時間のズレの消滅』にも本人の能力から気付いていたので転輪鼓を入手する為にも時間を稼がれるのは面倒だと判断して勝負を急ごうとする。

 

「まあ、これ以上貴方の“無駄話”に付き合う理由は無い。時間もないから早急に片をつける」

「だがいいのか? ……俺達ではお前には勝てないかもしれないが、死力を尽くせばお前達の目論見を砕くぐらいは出来るかもしれんぞ」

「何を……チッ」

 

 その言葉に加えてヤマトが後ろの転輪鼓に意識を向けている事に気がついたコンス・ラーはその狙い……形振り構わずアマラ転輪鼓を狙って破壊する行動を取るつもりであると看破して思わず舌打ちをする。

 ……実際、コンス・ラーからすると全体攻撃魔法などを転輪鼓を巻き込む形で放てば守るのは難しいので破壊は不可能ではなく、目の前の『かつてダアトを制した合一神』は何もさせずに倒せる程に弱い相手では無いと判断している。

 

「……成る程、それならトート、貴方が転輪鼓の移送準備を進めて。多少破損してもいいから速度重視で取り外して。……セトとイシスは私と一緒に彼らの相手、攻撃を転輪鼓に通さない事を最優先して時間稼ぎに徹する」

「承知しました、これでも知恵と魔法の神で術には長けております故」

「ククク、見事に戦力と手筋を限定されたなぁ」

「分かりました、回復と防御優先ですね」

 

 しかし、ヤマト達の一手に対してコンス・ラーは魔法に長けているトートを転輪鼓の確保に回し、自らを含むそれ以外の面子で敵の攻撃を全力で防ぐという対応を取った。

 長く自らと共にいる仲魔故に悪魔としての特性以外の術者としての技量も高いトートであれば転輪鼓の確保も短時間で終えられるし、例えヤマト達が油断出来ない相手であっても防戦に徹するならば三人でも十分対応出来る冷徹な戦力分析からなる返し手であった。

 

「さてどうする? ムダ話を続けるなら付き合ってあげてもいいけど。転輪鼓を危険に晒す必要も無く時間を稼げる(数が足りなくて異界崩壊までの短時間に倒すのはほぼ無理になったから、もう転輪鼓の確保しか出来ないだろうし)」

 

 尚、コンス・ラーとしては転輪鼓は入手した時点で“異界の核”としての機能を失って直ぐにボルテクス界が消えるので、それまで時間を稼ぎつつ転輪鼓入手後に崩壊する異界に紛れてさっさと消えるつもりである。

 ……自分達の事を知った彼等を倒して口封じという事も考えたが、前述の理由と相手の実力から異界が崩壊する前に蘇生不可能な(ロストする)まで倒しきるのは不可能、及び殺したとしても死体から情報を引き出すなどの手段は幾らでもあるのでここで正体がバレるのは必要経費と割り切っている。

 

「……何故、かつて【ダアト】を作る様な真似をしたんだ? 転輪鼓からの情報では『大切な人と再会する為』とあったが」

「そこまで知ったの。確かにあの博士にはこちらの目的を話したけど」

 

 それに対してヤマトが選んだのは会話(ムダ話)の続行であり、このまま戦った場合でも敗北して自分はともかく結梨が致命傷を負う可能性のある相手である事や個人として『神州受胎』の元凶の一人の情報を知りたいと考えての選択だった。

 ……つまり『出来るだけリスクを避けて転輪鼓を手に入れたい』魔人王側と、『かつて自らが巻き込まれた事件の黒幕である魔人王の情報を知りたい』ヤマトの利害が奇妙な一致を見せた事により“戦闘”ではなく“問答”が成立したのだ。

 

「ムダ話を選んだのなら少しだけ答える。……そう、私はかつて失った最愛の人を、私を助ける為にLOSTした悪魔である“彼”ともう一度再会する為に世界を渡っている。【ダアト】を創ったのも【至高天】へと至って世界をかつて私達が住んでいたモノへと変えて、“彼”と再会出来る可能性があったから。……上手くはいかなかったけど」

「……そんな程度の理由であれだけの災害を起こしたのか?」

『……ふざけているな。愛があれば許されるとでも言うつもりか?』

 

 その『やってみたけど上手く行かなかった』といった魔人王の態度に対し、かつてダアトで様々な悲劇を見た結果として仲魔や相棒と別れてでも『人のみの世界を創生する』選択をしたヤマトとアオビトの口調は嫌でも厳しくなる。

 ……だが、それらの“自分の行動を貶す様な”言葉を聞いても魔人王の表情は一切変わらず、特に怒りや反発の様子を見せる事すらせずに淡々と言葉を続けた。

 

「そう、私は“そんな程度の下らない理由”で世界を渡って災厄を巻き起こしている……とでも言えば満足? まあ他人、特に被害者から見れば私の願いなんて下らないモノだろうし」

「『何……?」』

「それに“愛”は動機にはなっても免罪符にはならない。愛があろうがなかろうが行った行為が悪業である事に変わりなく、そもそも私は自分の愛を免罪符などと言う下らないモノに貶める気はない。……私は私の意思で目的を達成する為に必要なら悪を成すだけ」

「『…………」』

 

 そんな台詞を特に怒りも悲しみもせずに淡々と言い募る魔人王に対して、ヤマトとアオビトは怒りを募らせつつも思わず絶句してしまうがそれでも今は『ムダ話』を続けるべきだと話を続ける。

 

『そんな事を言って開き直るつもりか? お前の行動でどれだけの人間が死んだと思っている』

「失ったモノを取り戻したい気持ちは分からんでも無いし、俺達も人間だけの世界を創世するにあたってそう言う気持ちがなかったとは言わん。……だが、その為に今生きている人を犠牲にしても良いと思っているのか?」

「まあ側から見れば開き直ってる様にしか見えないのは理解しているし、それを含めた私の行動を『悪』と思って許せないなら敵対するなり阻止するなり私を殺すなりすれば良い。……私は私の願いを叶える為に全力で迎え撃つし、それ以外の凡ゆるモノを轢殺する悪業を成しながら進むだけ」

 

 どうにか魔人王から情報を引き出す為に半分くらい本音を混ぜつつ敢えて強く非難する言葉を選んだヤマトであったが、その言葉を聞いても彼女は冷徹な表情のままに淡々と返答するだけであった。

 ここまでの話で『魔人王は開き直ってるか覚悟を決めてるかはともかく、他人に何かを言われる程度では動じずに自分の願いの為に動く者である』とヤマト達は判断したので、会話を続行して時間を稼ぐ意味でもムダ話の方向性を少し変える事にした。

 

「それで悪魔である“彼”とやらともう一度会いたいと言ってたが、それならもう一度召喚すれば良いんじゃないのか?」

「再度召喚されたとしても同名で別の悪魔にしかならない。私と融合して魂が消滅してしまった“彼”にもう一度再会するには通常の方法では不可能だと『散々試して』思い知ってる。……私に残された彼の残滓から蘇らせるには世界を創世出来る【至高天】の様な反則技が必要」

『【至高天】とやらが何処までのモノかは知らないが、受胎の延長線上にあるのなら“新たな世界を作る”事は出来ても“かつての世界を取り戻す”事は難しいのではないか? 実際に俺達の創世もかつての世界を取り戻せた訳ではない』

「あれは人間の無意識に干渉して悪魔を封じ込めたから、その反動でシャドウが現れると言ったバグが起こったのが原因。……まあ、今アテがあるのは至高天ぐらいだし、それがダメなら()()()()()()()()()()()

 

 そんな風にヤマトとアオビトが大切な人である悪魔の“彼”に対する挑発的な質問、或いは至高天で目的が達成出来ない可能性などをついても魔人王はその冷徹な雰囲気を一切変えずに答えてみせた。

 ……ただ自分の目的を達成する為ならどれだけ失敗しても、或いはそれ以外の全てを犠牲としても止まらないと宣言する魔人王に二の句が告げなくなる彼等であったが、そこでこれまで黙っていた結梨が質問する形でムダ話を引き継いだ。

 

「もし、過去の世界で死んだ人や悪魔であっても、その魂は未来に受け継がれてるんじゃないの? 結梨も梨璃達ともう一度再会出来たよ」

「私と共にあった記憶がないなら先の再召喚と同じ様に別人でしかない。そもそも彼は悪魔だったから転生というより再発生だから。……同一存在との再会で納得する事を否定する気は無いけど、私はそれには納得出来なかった」

「そこまで拗らせてるなら最愛の“彼”とやらを取り戻しても、僅かな違いで納得がいかずに放り捨てるんじゃないのか? 失った過去を完全な形で取り戻すなど不可能である以上、そこまで拘るお前では目的を達成出来ないだろうに」

「だから諦めて妥協と代替品で生きていけと? それが人間として賢く正しい生き方である事は認めるけれど、私はそれでは決して納得出来なかった。……今の世界でも次の世界でもない、私は“かつての世界”を求め続けてここにいる」

 

 それでも『そんな問答はこれまでの旅路で嫌という程に繰り返し、その上で妥協せずに“かつて”取り戻そうと歩き続けてきた』魔人王の意思は一切揺るがなかった。

 

「結梨は梨璃達の事を代替品なんて思ってないよ。……前の世界の梨璃達は結梨に名前と居場所と生き方をくれた大切な人達だし、今の梨璃達は一緒に学校に通って毎日お話したり遊んだりする大切な友達。どっちも大切に思ってる」

「そう在れる事の方が人として“善い”生き方である事は認める。……でも私は“彼”のいない世界ではそう在れないから、取り戻す為に必要なら悪を成し続けるだけ」

「……その大切な“彼”とやらはお前がそこまでするのを望んでいるのか?」

「彼は私がただ生きていてくれるだけで良いと言ったからそんな事は望まない。……ただ、私が彼のいない世界を許容できないから、自ら望んで『こうする』と決めた」

 

 更に自らの本心を含めた結梨の言葉に対しても『善いモノ』と認め、失った“彼”の望みとは違うと知りながらも自らはそれをを選ばないとする魔人王に対し、ヤマト達は彼女の意思は何をどうしても変わる事が……変える事が出来ないぐらいに固まり狂っていると察してしまう。

 

「……転輪鼓を狙うのは何が目的だ? まさかまた【ダアト】を創り出す気なのか?」

「今の所その気はない。もう一度作った所で嘗てと同じ様に【至高天】に辿り着けない紛い物が出来るだけでしかないから。……転輪鼓に関しては貴重なモノだったから、メフィスト博士が残したであろう情報を含めて回収したかっただけ」

『やはりこのボルテクス界を創ったのは単なる目眩し、混乱している隙に転輪鼓を奪うのが目的だったのだな。嘗ての【ダアト】を模した内部構造にまでするとは』

「そっちは本当に予想外(マジレス)……あの博士が転輪鼓による観測を行っていたとは知っていたが、擬似ボルテクス界の形成にまで干渉出来るシステムが自律行動出来るレベルだとはね」

 

 それ故に相手の事情を探るのはもう意味がないとヤマトは考えて質問の方向性を『今回の一件について』へと変えたが、それに対しても魔人王はごく普通に見える雰囲気のまま返答してみせた。

 ……最も彼女としては転輪鼓を狙っていたとバレた以上は隠す必要のない情報だけを選んで話しているし、“今の所【ダアト】を創る気はない”と言うのも嘘ではないが、それも“嘗てと同じやり方では意味ないからしない”という意味でしかない。

 

「……お前はこれから何をする気なんだ?」

「さっきも言ったけど自分の目的に向けて進むだけ、具体的な方針まで言う気は無いけど。……どうせそろそろ『あの三勢力(トライアド)』が動くだろうから、その動きを見つつ高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に立ち回るだけだし」

『掲示板でも話に上っていた崩壊する世界で収奪や虐殺を行っていた連中か。貴様はそいつらとは関係ないのか?』

「無関係、どころか目的がかち合えば敵対する。……『次にどうにかすれば良い』と考えている連中とは根本的な所で相容れない」

 

 勿論、魔人王としても態々言う意味はないので今後の行動に関しては適当な事を言ってはぐらかしたが、内心では『出来ればキリギリスと三勢力は良い感じに潰し合って、こっちに目を向ける余裕がなければ良いな』とも思っている。

 なので『トライアド』については多少の情報は渡す気もあり、自分には特に実害がない範囲内でムダ話が出来るなら問題ないとも考えてそちらに話題を移していった。

 

「あの連中の大半は“この世界の基準なら”雑魚か中堅って所だけど、幹部クラスに関してはレベル100越えもいる上に今までの周回で奪ってきたリソースから物量と総戦力は相当なもの。……特に貴方の様なナホビノなら三勢力の中でも“合一神がいる勢力”である【新しき神話】辺りは狙ってくるかもね」

「レベル100越え……はこの世界では今更としても【新しき神話】? 確か掲示板では各神話へ進行して氏子とかを奪ってるとか載せられてたが」

「【エデン】【禍の団】【新しき神話】……連中はお互いに敵対してるから戦力増強に余念がない。勢力を拡大する理由は各々で違うみたいだけど、全て今の世界の事は『次の為の資源』ぐらいにしか見ていない。……まあ私が言える台詞じゃないけど」

 

 そう皮肉げに言う魔人王であったが、ここでヤマト達を始末出来ない以上は自分の情報がキリギリスに渡るのは確定なので、それなら三勢力の脅威を宣伝して注目をそちらに向ける……事が出来れば儲け物程度には考えていたが期待はしてないのでムダ話の域を超える情報は話さなかった。

 

「連中とは何度か交戦してるけど基本的に関わらない様に立ち回ってるから大した事は知らないけど、過去の世界で容赦なく人類を絶滅させてる相手だから警戒しておいた方が良い」

『そうすれば貴様が動きやすくなるからか?』

「まあそれもある。……連中のレベル100越え級幹部の相手は勝ち目が薄いから避けたいし、貴方達キリギリスの最精鋭とも戦いたくない。私の目的にとってはどちらも邪魔」

「お前の立場からすればそうだろうな。……ただ、保有する()()()()()()()()()()()()レベル100越えクラスの最精鋭相手でも早々負けないんじゃないか?」

 

 そうして適当な事を言ってはぐらかそうとした魔人王であったが、そこで瞳を【アナライズ】の光で輝かせたヤマトからの言葉に始めて眉を細めて雰囲気を僅かに揺らがせた。

 ……“お互いに”会話しながらアナライズをしている事は気付いていたが、魔人王側は術で妨害していたので通常のアナライズで情報が抜かれるのは僅かに予想外だったのだ。

 

「……へぇ、アナライズ妨害はしてたけど少し抜かれたか。良い“眼”をしている」

「こっちの情報だけ抜かれっぱなしだと思うなよ。……と言っても全て見えた訳でもないし、見えたからと言って弱点にはならないんだろうが」

 

コンス・ラー保有自動効果スキル(一部)
・物理無効 ・氷結吸収 ・呪殺吸収 ・精神無効 ・神経無効 ・魔力無効 ・地獄のマスク ・奈落のマスク ・活脈 ・大活脈 ・魔脈 ・大魔脈 ・三段の剛力 ・三段の賢魔 ・三段の恵体 ・三段の猛速 ・三段の強運 ・物理プレロマ ・物理ギガプレロマ ・火炎プレロマ ・火炎ギガプレロマ ・万能プレロマ ・万能ギガプレロマ ・タルカオート ・ラクカオート ・スクカオート ・ラプラスの魔 ・ハイリストア ・セーフティ ・龍眼 ・呪いの大還元 ・猛反撃 ・貫通 ・延長強化・大 ・食いしばり ・不屈の闘志 etc

 

 自分が見知ったスキル故に解析できた範囲内でも“自動効果スキルだけで”20を優に超える数を習得している魔人王を見て、ヤマト達は十中八九【写せ身合体】を駆使して悪魔のスキルを習得していると辺りを付けた。

 

「これまで世界を渡り続けてどれだけの写せ身からスキルを得てきたんだ? はっきり言ってダアト時代の俺達よりも遥かに強いだろ」

「同じ写せ身合体を使えるなら当然気がつくか。……単にレベル100を超えられない非才の身である私が超越者達と渡り合う為に自己改造を繰り返しただけ、世界を渡り続けた()()1()0()0()()()()の時間で自己強化を行えば誰でもこのぐらいは出来る。私は完全な悪魔でないからスキル所有可能数にそこまで制限は無い。……最も、ここまで強化した所で三勢力のボスクラスには勝ちの目がほぼないけど」

 

 世界を渡る中でかつて敗北した【カグツチ】の様な相手に二度と負けない為、そして自らの目的を阻む者を排除する為に続けてきた魔人王の研鑽の果ての一部がこの圧倒的なスキル数である。

 尚、そのスキル群を一部とはいえ見破られたにも関わらず魔人王には大した動揺は無いが、そもそも見破られたから攻略される様なギミック系スキルは所持しておらず、基本的に自らの能力を底上げして戦闘を有利に進めるスキルを優先してとっているので解析された程度ではその実力は揺るがない。

 

「ククク、中々楽しくおじゃべりをしている様だなサマナー。久しぶりの我ら以外との会話を楽しむのも良いが情報を抜かれているぞ?」

「特に抜かれたら困る情報は話してないし……此方の解析は全て終了している。彼がダアト事件と相方との立ち位置が入れ替わっている事や【アマラコンピューター】の情報は過去視で読み取れた」

 

 加えて、魔人王側の解析によってヤマトとアオビトの合体状態や結梨の出生など現在の詳細情報に加えて、先程仮想空間内での会話までも過去視の術を使ってほぼ全て解析されていた。

 

「……そして今使っている“私の知らない神意”についての情報も入手した。彼等が会話に干渉する神意を使っていたのが此方側がここまで話す事の一助になっていたとはね」

「……通じるかは賭けだったがな」

 

話神の威光覇道の神意会話相手の悪魔が、たまに無条件で仲魔に入るようになる。

経験を積んだナホビノの威光により相手に畏れを抱かせて無条件で交渉を成功させる。

会話系スキル及び会話行動に対しても低確率だが無条件で成功させる効果もあると裁定。

話神の高み覇道の神意ナホビノのレベル以上の悪魔を会話で仲魔に出来るようになる。

経験を積んだナホビノの威光によりレベル差による悪影響を無視して契約を成立させる。

会話系スキル及び会話行動の際のレベル差によるマイナス要素を軽減する効果もあると裁定。

この二つは転生と前世を正しく思い出したヤマトが新たに発現させた神意*7

 

 実はヤマトとアオビトは仮想空間での会話という形で『前世の神格との遭遇』を経験した事で新たな力が目覚めており、新たな二つの神意を攻撃された時に残っていた御厳で発現させて会話交渉を優位に進めていたのだ。

 ……最もあくまで僅かに魔人王の選択が『会話』に向きやすい様に無意識へと僅かな干渉をしている程度であり、解析されてしまったので今後は通じないのだが。

 

「……サマナー、転輪鼓の確保は完了しました。多少の修復は必要ですが使用可能な状態だと思います」

「ありがとうトート。……異界が崩壊して来た、思ったよりも早い。これに乗じで龍脈渡りで脱出する」

 

 まあ、その直後にトートが設備から取り外したアマラ転輪鼓を持ってきた事、それと同時に異界全体が振動し始める『異界消滅の前兆』が起きた事によって魔人王は撤退を優先する方向性になったので戦闘になる事はなかったが。

 消滅しかけている異界での下手な戦闘は“有らぬ所に飛ばされる”などの事故が起きやすいので魔人王・ヤマト達共に行う気は無かったが、それでもヤマトは強い意志を込めた瞳を浮かべながら魔人王に呼びかけた。

 

「待て。……お前は自分の目的を達する為には何があっても“もう止まれない”んだな?」

「……止まる気は無い、これからもこれまでも。例え全てを犠牲にしてでも私は望んだ世界を手に入れてみせる」

「そうか……お前がかつての【ダアト】の様な災禍を起こすのなら、その時は必ず俺達がお前を倒して止めてみせる」

「そう……好きにすれば良い、私も好きにする」

 

 そんな問答の最後に異界の消滅は加速度的に進んでいき、それに乗じて魔人王が【龍脈渡り】によってその場から消え去った事で【魔人王 コンス・ラー】と【合一神 八坂ヤマト】の初めての遭遇と問答は終わりを告げたのであった。

 ……お互いに『おそらくいつか再び出会い今度は戦う事になるだろう』と感じる奇妙な予感を抱いたまま……。

*1
D2出典。スキルレベル3なので命中率30%上昇。

*2
戦闘中に一度だけ、HPが0になる攻撃を受けた時に耐え、HPが全回復する。真5仕様。

*3
覇道の神意。戦闘開始時、敵全体に対しランダムに1種類の3ターン持続する能力低下効果が1段階掛かる。攻撃力低下が選択されていた。

*4
消費アイテム。自分への攻撃がクリティカルだった場合、それを通常の攻撃に変更する。

*5
パーティの認識LVを3下げる。周辺にも影響を齎す。

*6
逃走可能なバトルから必ず逃走する。ボス戦など逃走不能のバトルでは機能しない。

*7
真5において【話神の威光】【話神の高み】は『転生』『新生』を問わず“二週目”以降のプレイ時に習得出来る神意。




あとがき・各種設定解説

八坂ヤマト/アオビト:今回は負けイベント兼会話回
・現状だと魔人王に勝ちの目が無いので相手の目的を考えて上手く会話へと持ち込んだが、ダアト事件の元凶を逃すしか無かったので内心は穏やかではなくどうにか戦力強化出来ないかと考えている。
・ちなみにアオガミの残留思念と出会い前世の記憶を明確に思い出したので覚醒条件を満たしており、今回出てきた二つの『話神』神意の他にも取り戻した力がある……具体的には特殊合体と悪魔全書(ウン百時間以上の結晶)

魔人王コンス・ラー:リスクは避ける主義なので会話に乗った
・基本的にリスクや余計な敵を作るのは避けるので無意味な悪行はしないのだが、目的達成の為なら止まれないぐらい狂っていて犠牲無く目的を達成する手段は粗方やり尽くして既に失敗しているので大災害を起こす事すら厭わなくなっている。
・ただし、今回は擬似ボルテクス界で場を混乱させた隙に転輪鼓を回収して誰にも見つからずに撤退する予定が、色々なイレギュラーが重なって自らの存在がキリギリスなどこの世界の人間にバレたので転輪鼓を手に入れても収支はマイナスだと思っている。
・レベルは99止まりだが写せ身合体を駆使した自己強化による多数のスキル群で戦闘を補助しており、写せ身合体で得られるのは汎用的なスキルのみである事もあって何かハメ技的なギミックがある訳ではなく地力の高さと複数の手札で状況に対応するサマナータイプ。
・ヤマトと比べると単純に戦い方や戦闘能力が上位互換な上、隙が少ないのでジャイアントキリングが非常にし難いので単純に魔人王の地力を上回るしか勝ちの目が無いので相性の悪い相手。
・ただし今回は転輪鼓確保が目的で、更に魔人王には何もしなくても後10分程度で異界が崩壊する事が分かっていたので戦闘を行う余裕が無かったのもあり会話で注意を引きつつ目的のブツだけ持っていく事にした模様。
・今後の行動は不明というか実はまだ具体的には決めていないが、とりあえず至高天へと至る方法を中心にどうにか目的を達成する方法を探してこの世界で暗躍する模様。


読了ありがとうございました。
今回はウルトラシリーズ的にラスボスの途中顔見せ回。ラスボス戦をやるにはフラグが足りない。……後、真5準拠だったダアトでレベル99まで上げてたあたり、ナホトラマンは相当やり込んでます。
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